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英勇者の天敵  作者: バル33
第二章:守護竜の役目
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その12


「か、肩腕でホロウタカピの一撃を止めた!?」


 体重を乗せた落下攻撃を防いだ事実に目を疑うような顔をするサーレ。

 威力ならばキメラ以上だが、俺にダメージを与える攻撃力はない。

 ホロウタカピとやらが三匹の力を重ねれば、やっと傷を負わせるのに届きうるだろう。

 そんじょそこらの魔物では、俺からすればありんこと大差ない強さだ。


「ふんっ!」

『ぎゃぴゅ』


 (くちばし)を掴んだまま大きく腕を時計回りをさせ、ホロウタカピを地面に叩きつけた。

 絶命するまでには至らないが全身の骨はバキバキに折れているだろう。

 数分後には死ぬ。


「すまないな。 国が滅ぶとなれば殺生をしなければいけない」


 キメラも同様だができるだけ魔物は殺したくない。

 魔物といえど元いた世界では動物の立ち位置と変わらないのだ。

 一点違うのは魔力を保有してるか、してないか、だけ。

 もしも魔力がなければ凶暴性はなく体躯(たいく)も小さい普段目にする動物と同じだ。


「想像以上にバカげた力だね。 君が敵だと絶望しかないね」

「誉め言葉どうも。 さっさとずらかるぞ。 ティ竜の卵を持っていてくれ。 身体強化の衝撃で潰してしまいそうだ」

「承知しました」


 竜の卵をティに渡したことでプレッシャーから解放された。

 猛ダッシュで卵を奪取した時やホロウタカピの落下攻撃を受けた際、正直ひやひやしていた。

 身体強化中は上手く力の制御は難しいゆえ、加減がいまいちわかっていない。

 添える程度で持ってはいたがそれでも壊しそうで怖かった。

 損傷はないようだし戦犯にならなくて安心したよ。


「確保は無事完了。 教会までティさんを全力で守るから、ティさんは転ばないよう足元に注意してください」

「はい」


 素っ気ない二文字で会話が終了する。

 大事な卵の中心を囲うよう三人で頂上を降りた矢先に魔物の群れと遭遇する。

 黒い霧を放つトカゲ型の魔物とタールに塗れた狼型の魔物が、餌を待ってましたと言わんばかりによだれをダラダラと垂らしている。

 厄介な魔物の数だ。 さばくのに時間がかかりそうだ。


「ふふふ。 闇属性の魔物か。 相性がいい」


 尋常じゃない魔物の数を目にしてサーレは笑っていた。

 あまりの戦力差に頭がおかしくなったのか、否。 あの顔は勝ち試合に行く強者の表情だ。

 相性がいいということは……サーレの扱う属性は必然と一つである。


「聖なる光よ我が元に収縮せよ!」


 鞘から引っこ抜いた剣に眩い光の粒子が集まっていく。

 神々(こうごう)しく煌めく光剣に見惚れてしまった。

 サーレが得意とする属性……これが聖属性の輝きか。


「さあ、かかってこい!」


 魔物の群れに挑発すると、恐れもせずに牙を向けて噛みつこうとする。

 頭蓋骨をかみ砕こうと飛び掛かるが、光の圧縮した剣で両断された。

 両断した表現は正しくない。 剣が触れた瞬間にかき消したがあってる。

 剣を振るうたびに魔物は浄化され次々と消滅していく。

 真正面から戦っても勝てないと理解したのか、魔物は四方八方にばらけて取り囲んできた。


「姑息な手を考える。 けど無駄だよ」


 一斉に竜の卵に目がけて突進する魔物の集団だが焦りの色を見せないサーレ。

 なにか秘策がありそうだ。


「聖域……展開。 ホーリウォール!」


 地に光の剣を差し込むと周囲に浄化の壁が建設され、息を合わせて踏み込んだ漆黒の魔物群れは天に召された。

 大量にいた魔物は一瞬で壊滅させたサーレに拍手を送る。


「恥ずかしいからやめてくれ。 たまたま相性がいい魔物だったから圧勝しただけだよ」

「勇者らしい姿を拝めたからついエールを送っていた。 お前なら四勇相手でも引けを取らないだろうな」

「……現実は足元にも及ばないけどね」

  

 苦い顔でそう呟く。

 魔物の群れをたった一つの魔法で消し去る実力があっても同格ではないと。 

 的外れな発言をしてしまった。 四勇とやらは想像してるよりはるかに強大な存在かもしれない。


『ガアアアアウゥゥ!』

「残党がまだ……間に合わない!」


 全滅したと気を抜いた途端に黒い影が竜の卵を――ではなく無防備なキュレイピアに飛び掛かっていた。

 壊すのは諦めて食い殺せそうなターゲットがキュレイピアに向いたようだ。

 ホーリウォールを展開しようにも彼女の頸動脈を噛み切る方が早い。

 やれやれ俺の出番――


「ホーリーランス」


 ――なかったようです。

 突如として黄金色の槍が狼型の魔物を貫き霧散する。

 きょどる素振りもなくキュレイピアは欠伸をして眠たそうにしているが、横では我が目を疑った表情で見つめている者がいた。


「魔道具を装備してなく、詠唱もしないでどうやって魔法を発動した? ホーリーランスは無詠唱不可の魔法だろ、君」

「さあねー。 教えてあげなーい」


 後頭部に腕を組みながら山を降りていく金髪の少女。

 魔法のロジックは必ず避けては通れない手順がある。 詠唱する部分だ。

 無詠唱は例外だが、詠唱がなければ魔法は発動しないのは鉄則のルール。

 たしかにキュレイピアは詠唱している様子が動作一つとしてなかった。

 謎がまた深まったな。


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