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英勇者の天敵  作者: バル33
第一章:奴隷たちの悲劇
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その1


 目が覚めたら真っ暗の空と、建造物が一つない白色の大地が永遠と広がっている……現実世界ではない。

 刺されたことを思い出し、胸元を確認するが、傷どころか制服の破れもなし。

 ただ一つだけ確証なのがこの世を去った事実だ。


 二の腕をつねると痛いし、なにより殺された記憶が繊細に覚えている。 

 残念夢でした……なら幸福だった。

 刺された感触は嫌でも染みついている。

 血液が胸から溢れ激痛と死の恐怖。

 あれが幻とは信じられない。


「景色が変わんねえな」


 一キロぐらいは歩いただろうか。 景色に変化はなし。 真っ白な世界が続いてるだけ。

 天国なのか、地獄なのか、さっぱりわからん。

 閻魔大王なり、天使なりと、イベントが発生するもんじゃないのか?

 死後の世界ってのは、こんな殺風景の空間に閉じ込められるが真相だとはガッカリだ。

 

「いやー、はっはっは。 遅れてすまないねえ」


 後ろから女の声!

 やっとイベント発生したか。


「やあ。 気分はいかがかな?」


 振り向けば、透明な椅子に座るロリっ子少女がニヤニヤしている。

 やっと誰かに会える! ……と、歓喜はなく怒りに支配された。

 なぜなら目の前の少女は寸分狂わず俺を殺した人物だからだ。

 金髪の長髪に、あの体型、そして幼い面は見間違いようがない。


「さいっっっこうに気分は悪いよ。 ――殺人鬼が目の前にいるからな!」

「おほー。 威勢はいいね」


 嘲笑する金髪っ子に突進する。

 作戦なんてありゃしない。

 ニヤけた面をぶん殴りたい一心で向かったが、


「拘束せよ、ホーリーチェーン」


 呪文みたいのを奴が唱えた直後に身体の自由が効かなくなった。

 なにが起きたのか自分の身体を見渡すと、金色に光る鎖が絡まりついていたのだ。

 ほどけない。 なんだよこれ。


「ごめんねえ。 こうでもしないと話が進まないから拘束させてもらったよ」 


 ケタケタと嘲笑ってきやがる。

 ムカつくロリっ子だ。 今すぐにでも殺してやりたいが、光る鎖は千切れそうにない。

 俺の腕力では破壊はできないな、クソ。


「うん、君の怒りはごもっともだ。 だけどねえ、こちとら事情があるからしょうがなかったんだよ」

「あ゛? てめえの事情のために俺を殺したってのか。 ふざけてんじゃねえぞ!」

「キャー。 ガンダケデ、オカサレルー」


 目つきが悪いのは否定はしないが、今は別だ。

 棒読みでまだバカにした態度を示してくる。

 見下しやがって。 


「ま、おふざけはこれくらいにして……君こと、桜井翔太(さくらいしょうた)を殺傷した理由(わけ)を話そう」

「…………」


 無害な一般人をロリっ子の都合で殺されて理由もクソもあるか。

 というかなぜ本名を知ってる? 対面してから一度も口にしてないはずだけど。


「思春期の君みたいな子が好きな、剣と魔法がある異世界ってのがあるだろう? 我が管理する異世界が、荒れに荒れ果ててねえ。 このままのペースで荒廃すると、百年足らずで世界が滅んでしまうのだよ」

「けっ、滅んでしまえ」

「……滅ぶってのはつまり我の死を意味するんだよね。 つまり異世界は我の分身体ってわけさ」

「はっ、死んでしまえ」


 滅ぼうが、死のうが、んなこと他人事だ。

 俺には関係がないことだ。


「うっ、ひぐ……酷いよ」

「嘘泣きはやめろ」

「あはっ☆ ばれちゃったか」


 片目を瞑って舌を伸ばし、握りこぶしを頭に乗せるてへぺろポーズを取りやがる。

 可愛くもなんでもない。 剛速球を顔面にぶち込みたいだけだ。

 これほどまでに憎たらしい人物は早々に出会えない。


「で、滅びる前に異世界を君に救ってもらう魂胆さ」

「はあーーーー………………俺じゃなくてもいいじゃねえか」

「どうしてだい?」

「どうせ闇の世界に陥れる魔王を倒すため、勇者召喚または転生して、討伐しに行けってことだろ。 誰でもいいじゃねえか。 不慮の事故で亡くなった人を異世界に送れば解決だっただろうに」


 わざわざ健全で未来がある若者をチョイスしなくて良かっただろうが。

 頭がクルクルパーなのか。 単なるバカなのか。

 あー、余計にイライラしてきたよ。

 真面目に話を聞いて損した。


「んー、君の発言は全て間違いだよ。 魔王を倒すために異世界に送るんじゃないよ。 掃除をしてもらうために送るんだよ」

「はっ? 掃除?」

「そ、お掃除」


 人差し指を立てて、にこにこと笑顔で『掃除』と抜かすロリっ子に腹が立つ。

 あれか。 山に捨てられた粗大ごみとか、海に捨てられた廃棄物を掃除しろってか。

 尚更、俺を選んだわけがわからん。

 ふざけているのか。 真面目に話す気があるのか……


「お前――」

「ノンノン。 君が言いたいことは大体わかるよ。 ゴミ拾いとかするためにとか想像してるけど違うよ。 掃除ってのは、英雄と勇者を始末する殺し屋って意味さ」

「……は?」


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