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英勇者の天敵  作者: バル33
第二章:守護竜の役目
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その10


「サクライ、異世界に来たのは二日目前ほどだろ。 君の発言は相当勇者を憎んでるように聞こえる。 四勇の悪行を目撃したことがあるのかい?」

「面識はないんだが……」


 横目でチラッとキュレイピアに見つめて「話してもいいか?」とコンタクトをする。

 片目をつぶってウィンクをし「話してもいいよ」と返信がきた。

 勇者に知られようが支障とはなり得ないってわけね。


「……前世はこの世界で平凡に暮らし生きていた。 だけど、赤髪の勇者に村を襲撃され命を落としたのち、日本に転生した。 その後はロリっ子のこやつに殺され戻って来たわけさ……頭のネジが外れた英雄と勇者をこの世から消すために」

「本当……なのか? さすがに作り話にしか思えない」

「なんなら力の一部をお見せしようか? し――」

「――結構だ。 君の自身に満ちた態度はハッタリじゃないだろう。 歴戦(れきせん)を潜ってきたからなんとなく直感でわかるよ」


 身体強化を見ずに勘だけで察するとはかなり強い勇者かもしれない。

 それとも教会にいる子供たちにシスターを気にしてか。

 どっちでもいいか。 胡散臭い話を信じてくれたことだし。


「サクライが何者で目的もはっきりとした。 欲しいのは四勇の使用できる魔法、固有(ユニーク)スキルの詳細だろ。 情報を提供するかわりに私の受注したクエストに同行してもらいたい」

「魔法とか固有(ユニーク)スキルの情報はいらないんだが……なにかの縁だ。 協力するよ」

「そうと決まれば仕度の準備をしよう。 行き先はハビルコ山脈だ」


 満面の笑みで上機嫌になるサーレが変に思えた。

 同行するだけなのにテンションが上がる理由がわからない。

 まさか……ホモだったりして。 うう、考えるだけで鳥肌が立つ。

 


                       ◆



 ケツを掘られるのを警戒してから数時間後、ハビルコ山脈の八合目ぐらいに到達していた。

 頂上に近づくにつれて冷気が体温を奪っていく。

 無詠唱で炎系統選んでおけば良かったと今さら後悔している。


「寒くはないか、ティ。 寒かったらコートを貸すから」

「お気遣いは無用です。 包帯を巻いてますので結構あったかいですよ」


 親指を立ててグッジョブされて可愛いと感想。

 露骨に嫌そうな顔をされず、シスターから包帯とコートがタダで貰えたのだ。

 食事もご馳走になってもう、教会の人たちには頭が上がらない。


「頂上に着く前にサクライには聞きたいことがある。 答えたくなければ黙ってくれていい。 使用可能な魔法と固有(ユニーク)スキルを教えてくれないか?」


 歩く速度を合わせて肩を並べ訪ねてくる。

 いくら勇者といえど最初から魔法を全ての魔法を扱えるわけではない。

 魔法を扱うには魔力適正てものがあるが、勇者には苦手な分野は存在ぜず、習得するのも一般の魔法使いより数倍早い。

 そして膨大な魔力を保有し、一部の者は固有(ユニーク)スキルを所持している。

 習得したい魔法は時間さえかければなんでも覚えられ、底知れぬ魔力量。 転生者はスタート時点から反則級なのだ。

 現地民からすれば天才中の天才に見えるだろう。 

 そんな破格の人間が世界を蝕んでいるわけだが……。


「身体強化と無詠唱の水魔法だけ使える。 固有(ユニーク)スキルはない」

「もう二つも習得したのか。 しかも無詠唱魔法をたった二日の間で覚えるなんて」

「いや、身体強化も無詠唱の水魔法も転生得点で付いたおまけだ」

「はあ!? 私は転生得点は貰えなかったぞ。 ずるいな、サクライは」


 ふくれっ面でムスッとするサーレだが、男が頬を膨らませてもちっとも可愛くない。

 誰得なのだろうか。


「といってもなあ……それ以外の魔法の習得はできないぞ。 最初から二つ魔法を持つ代償に、他の魔法は覚えるのも扱うのも無理だからな。 悪い面の方が多い」

「あれ……私の方が恵まれてる?」

「総合的に見ればそうだな」


 別に魔法は戦う以外にもいろんな役割がある。

 火を(おこ)したいのなら道具はいらないし、喉が渇いたのなら水を買わなくてもいい。

 ストックした数だけ日常生活は便利になるし、魔物退治も楽になる。

 メリットだらけなのに不満をぶつけられるのは少々不愉快だ。


「ごめんサクライ。 恵まれていたのは私の方だった」 

「わかればよろしい」

「……あれ? 気になるんだけど、基本魔法ストックが多い方が、戦闘では断然有利だし知識量の差でも負ける。 魔法の数を増やせないのに勇者に勝てる見込みがあるのかい?」

「敗北はあり得ないな。 どんな相手だろうが勝利の二文字のみだ」


 自信満々なのは極点魔法である身体強化を、超えられる魔法誰も保持していないからだ。

 たった一つの絶対無比の魔法にかなう者はいないのだから強気の発言ができる。

 けして調子に乗ったイキリではない。

 

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