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英勇者の天敵  作者: バル33
第二章:守護竜の役目

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その3


「ちょちょっっ! どこに連れていくのかな!」


 身体をくねくねと捩らせ抜け出そうとするが、そうはさせない。

 襟をより強く握りしめ脱出不可能にする。

 聞く耳持たずで国外に向けて早歩きし、殺気の(こも)った瞳でロリっ子を睨んで、


「君に対してやる行為を教えておく。 国から連れ出して、監視の目がなくなったらまずは身ぐるみを全部はがす。 次は両足をへし折る。 その次は両腕をへし折る。 さらに両眼を抉り、最後は生き埋めの刑に処する。 冗談ではなく本気だからな?」


 とびっきりの悪顔でロリっ子に言い放つ。

 と、ビビったのかプルプルと子犬のように震えて怯えている。

 もう誤魔化さないだろう。 まだ知らんぷりするならやるまでだが。


「降参です。 なので下してください。 お願いします」

「やっと観念したか。 俺が貴様に山ほど聞きたいことがあるのはわかってるよな?」

「はいはい、がっつかなくても細大漏(さいだいも)らさず教えますよーだ。 君に伝える時期が超スピードで早まっただけだしー」


 人に殺意を抱かせる言動は、寸分狂いもなく俺の知るロリっ子だ。

 捕獲したし、ティの所へ戻るとしよう。 


「先に言っておくが、誤っても逃げるなよ? 二回目の逃亡は容赦しないからな」

「重々承知してますー。 どーせ君からは逃げおおせるのは、天地がひっくり返っても無理無理」


 やけに過大評価してくれる。

 神様的な存在だから、ワープでも使って瞬時に別の場所に移動して、逃げる芸当をしそうなのにな。

 まあ、それも後々解明されるので考察しなくていいか。

 万が一に備えてロリっ子に腕を掴み、元の場所へと帰還する。

 絵面は少女誘拐しているおじさんみたいで不快だ。

 街中の住民からの痛い視線は気にせずに横切っていく。

 気にしてたら負けなので無の心で徒歩だ、徒歩。

 

「おまたせ」

幼気(いたいけ)な子を無理やり引っ張ってきてどうされたのですか?」

「うぅ~……お家帰りたいよ~……ママぁ、パパぁ……」

「……キツネが。 コイツがこの世界に転生させた本人だよ」

「理解しました。 この人相当腹黒いですね」


 残念ながらティに嘘は通用しない。

 ロリっ子の目論見も破たんしたわけだ。


「初対面でゲス認定されたヒドイ。 我、無垢で純粋な穏やかな心の持ち主なのに」

「冗談は顔だけにしてくれ」

「あなたと同意見ですね」


 どんどんティに内心の感情を読まれてるぞ。

 口を開けば開くほど好感度は下がるばかりだぞ、ロリっ子さん。


「ちっ、上手く意思疎通しやがって……恋仲の関係かコイツ。 よっぽど親愛してるんだね」

「違うわ、どアホ。 旅の仲間なだけだ」

「恋人ではありません。 サクライの所有物なだけです」


 ついに本性を現したなゲスロリめ。

 しかも恋人と誤った見解をされなさる。 どこでカップルと思えたのだろうな。

 仲良くしてるそぶりもしてないし、それに出会って間もないので付き合うのもあり得ない。


「ほっほーん。 奴隷を買収するとは飢えてるのかい?」

「見当違いだ。 住処もなく行く当てもない奴隷を保護しただけだ。 置き去りにするってわけにもいかにだろ」

「まあ、君が奴隷を買おうが、娯楽をしようがどうでもいいけど…………英雄と勇者は放置しないでよ。 ゆめゆめ目的は忘れるな」

「お前に説教されなくてもわかってる」


 小さいくせに突き刺さるようなプレッシャーを放ってきた。

 身体がちっこくても底知れない力を感じる。

 何者なんだと問いたいが、第三者に介入されない場所に移りたいな。

 提案してみるか。


「なあ、宿に泊まらないか?」

「オーケー。 丁度足を休めたかったんだ。 でも、彼女は別の部屋にさせてもらうよ」

「その点は心配はいらない。 俺と同じ志をした者だから一緒の部屋でいい」

「へえ、珍しい個体だね。 君の言葉を信じて同席させよう」


 疑う余地もなくあっさりと許可をした。

 少しぐらい疑ってもいいのではないかと、一句。

 よほど俺を信頼しきっているのだな。

 こっちはロリっ子のこと信頼してないけど。


「ではでは、付いてきたまえ」


 返事をするもの面倒なので、会釈だけして背中を追う。

 噴水エリアから伸びる一直線の道の緩やかな坂を上がっていくにつれて、建造物が大きくなっていき、豪華になっていく。

 途中ですれ違う人の服装もグレートアップし、いかにもお嬢様やお坊ちゃまと言った富豪の人だ。

 ……さっきの居た所とは大違いだな。

 上層は富裕層が住んでいるってことね。


「到着! 街一番の宿に泊まれるのを嬉しく思いなさい」


 えっへんと偉そうに言いやがる。

 高級な宿なんて望んでないだがな。

 足を休めるところなら安くてもいいのに……ま、奢ってくれるから良しとしよう。

  

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