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英勇者の天敵  作者: バル33
プロローグ:死は一瞬でおとずれる
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プロローグ


 英雄・勇者・ヒーローと称される人は嫌いだ。

 おいおい、なぜ嫌いなんだジャパニーズボーイ? と、聞かれれば”わからない“と返答する。

 物心ついた時からそうなのだ。

 始めに気づいたのがテレビで放送していたヒーロー戦隊もの。

 見ればとてつもない嫌悪感に包まれたのが最初。

 たまたま気に入らなかっただけと時間を置き、違うヒーロ戦隊ものを見ても結果は同じだった。


 アニメが受け付けないだけかもと英雄が題材の小説を読むと、これまた激しい嫌悪感が押し寄せた。

 では漫画ならどうかと試し読みすると吐き気がした。

 なら、実在する人物だとどうなるか試しても……嫌で仕方なくて堪らない。

 底から湧き上がる負の感情の理由(わけ)が未だに不明のままだ。

 はぁ……こんな過去の記憶を思い出した原因は友人が渡した『勇者召喚で呼ばれてからはチートスキルで世界を渡りウハウハな人生を楽しみます』……という小説を受け取ってしまった。


 いらないと何度も断ったのだが、鼻水を垂らして涙を流しながら「受け取ってくれ!」と、頼まれたら断れ切れなかった。

 しぶしぶ鞄に入れたのちに、道中でちょこっと読んだら拒絶反応が起きた。

 タイトルだとか……内容がだとか……関係なく、勇者(・・)ものだったからだ。

 もう全力で投げたい気分に包まれたけど、なんとか感情を抑え込んで小説を鞄にしまい今に至る。


「いつになっても克服できねえなぁ」


 快晴の空に見上げ一人言を呟く。

 こんないい天気になにを言ってるのか。

 ……と、視線を戻すと前方に人がいる。

 さっきまでこんな人いたっけ?

 まあ、いい。 曲がり角もない直線の道なのに気づかない時点でどうかしている。


 にしても、金髪ロングヘアーのちっちゃい子が陳腐な場所にいるとは珍しいな。

 海外の人が立ち寄る観光地でもないし、歴史的遺産もない。 ……てことは迷子か?

 迷子なら困ったなぁ。 英語が話せないので意思疎通できない。

 ほっとくわけにはいかないし、一応声をかけてみるか。


「ハ、ハロー……?」 


 反応なしと。

 声が小さかくて聞こえなかったのかな?

 次は声量を大きくしますか。


「ハ――――え?」 

 

 ドスッと鈍い音が鳴り、唐突に、左胸に衝撃が走った。

 何が起きたのか理解するのに数秒かかったのち、痛みで我に返った。

 淡く輝く蒼い物で刺された。 目と鼻の先にいる奴に。


「あっ……が……ぐく」


 体験したことのない激痛に意識が途絶えそうになる。

 視界は霞み道路には血の池ができあがっていた。


「て、んめえ……!」

 

 笑ってやがる。 よろめく俺を見て。

 見下しやがって……くそ、朦朧とする。


「こ……の……」


 襟を掴み顔面を殴ろうとするが腕が上がらなかった

 一発ぐらい殴りたいのに反撃する力も沸いてこない。


「…………かっ……」


 魂が抜けたように倒れる。

 人生の半分も生きてないのに殺されて終わりなのか。

 奪われるだけの人生だったのか。

 ああ……ちくしょう……もう…………だめ……だ。 い……しき…………が――――――――。


「くふふ、準備が整ったね。 マイルームに戻ろうか」


 不敵な笑みを浮かべる少女は、光の粒子になり地上を去った。

 少年の遺体と蒼いナイフは時が経つにつれて塵になる。

 現場には血も肉も凶器も灰になり、残されたのは制服と鞄。

 世界から完全消滅したのだ。

 少年の人生の幕が終わった日であると同時に始まりでもあった。

    

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