6-糾弾④
大変お待たせ致しました。
会場に居た貴族達が騒めきだす。
「良き考えでは?
素晴らしい方ではないか・・・!
身銭を切って行うとは中々出来ることではない。
ましてや学校ともなると、莫大な予算が必要になる。
流石はリンデンシールド家といったところか!」
父親の腹心である伯爵を皮切りに、多くの貴族達が公爵家を褒めそやす。
「…それはロヴェル君が提案したのかね?」
ヴィルの一言で、周囲の賛美・尊敬の視線と対照的に私の背筋にゾッとした物が走った。
ロヴェルの名は、学院ではリリアーネしか知らない。
加えて本人の名前はロヴィ・メルヴァンであり、ロヴェルは親しい間柄である家族と私、リリアーネしか知らないし呼ばない愛称のはずだ。
絶句した私に、元からヴィルは答えを求めていないのか、ひとつ頷くと言葉を続ける。
「教育の偉大さ、与える影響をきちんと理解出来ていない様だ。
…私にはね、願いがある。
国民に、同胞に、幸せな人生を送って欲しい。
そしてその次の世代にも。
未来の我が子達にも。
君は優しいけど、それは欠点でもある。諸刃の剣だ。
其処に付け込まれたんだね。
だからこうして革命家に利用される。」
ガンガンと頭が痛む。
…革命家?
「争いの芽は摘み取らなければいけない。
例えそれが私の婚約者だとしても。」
あの、ロヴェルが?
会場の温度が急速に冷え切っていくのを感じた。
思わぬ展開に、皆がどうするべきか戸惑いを隠せないでいる。今や彼等はこの見世物の野次馬でしかなかった。
「そんなことッ、あり得ませんッッ!!
ロヴェルと話をさせてくださいませ!!!」
私は切羽詰まった大声で言った。
けれどそうして口では否定したものの、何処か納得していた。
サロンを開いている事は、秘密にすること。
学び舎を建てるのは、私が提案した事にすること。
様々な取り決め。
「勿論だとも。
監視付きではあるが、面白い話を聞けるだろう。」
私の両腕が王家の騎士達に掴まれるのを感じる。
しかしそれは、どこか現実味のない、あやふやな出来事に思えてならない。
視線をそらす事なく、真っ直ぐに合わせられる瞳。
目の前の彼は、一体誰だ。
違う。
変わったのは、彼ではない。
……………………私だ。
地面がグラグラ揺れている。
ちゃんと、立てているだろうか。
私は、彼のことをちゃんと見ていなかったのかしら?
無知で周囲をきちんと見れていなかったのは、自分であったらしい。
…ふふっ。
なんて、、愚かなのかしら。
よもや自らの手で、国を滅ぼしかねない反乱因子を大切に育てていたとは。
生きていることさえ、今は苦しい。
私の意識はそこで途絶えた。
稚拙な文章ですが、此処まで読んで頂きありがとうございます。
感謝の念に堪えません。