03 ボクとポクの間くらいの発音を心がけるクラスチェンジしたつるぺたぷにちっこい乙女の秘密プリティを感じろ
2016/8/24 20:00 3/3
頬を撫でるやわらかな風に乗って香る草木の匂い。深い森に射す木漏れ日に誘われて、ふと目を覚ませば愛しいあの娘の微笑が──
「って、もうええわ!!」
お母さんに叱られちゃうような野獣のポーズからの後ろ蹴りがゴブに炸裂した。蹴上げるようにアゴを打ち抜いたせいで、ゴブの首の骨はへし折れる。一・撃・必・殺! ツッコミ蹴り! って、もうええわ!!
フム、この耐久力の無さがゴブをザコモンスターたらしめているのかもしれないなあ。一匹なら問題無く倒せるようだ。刃物持ちと戦闘にならないように気を付けよう。結構怖かったし。今まで生きているのは単純に運が良かっただけだと思う。寝てる隙に殺されてないからねえ。パンツ破かれても犯される前だし。
初日の洞窟に続いてまたしてもノーパンだけどな!
目覚めるとノーパン! なんのイベントだそれっ!! 露出の目覚めはネーヨ!?
クッソー、股のところが破けてたパンツはただのボロ布に成り下がった……。
「テッテロリロリ~ン。ボロ布を手に入れた!!」
取り敢えずパンツもう無いから破れたマシな方のパンツをはいて、この場を離れよう。またゴブに会っても面倒だ。森の中にゴブリンの死体を投げ入れて川下に進む。
昨日さ、水飲んで顔洗ってサッパリしたらさ、疲労のせいで川の側で寝落ちしてしまったようなのさ。ホント、マジ、運がいい。
今のところさ、まだ無事だからさ。
ホント、マジで気を付けよう……。
辺りを気にしつつ川辺を暫らく移動。座るのに丁度いい岩を発見したのでバックパックに何が入ってるのか、ちゃんとチェックしようと思う。ロコちゃんの記憶だけじゃなく自分の目で見て確認したほうがいいだろう。
んー……TRPGのルールブックに描かれてたような道具が色々と入っている。そこら辺の知識とロコデータで、使い方がなんとなくでも分かるのは幸いかもしれない。
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<所持品>
財布x4 水袋×2 保存食×6食分 袋 ウェストポーチ 油 タオル×2
火打石と打ち金 ロープ15m フック付きロープ5m ピッケル ピトン×4
レコーダーと紐付き革製カードケース(定期入れみたいな) 手鏡
ウェストポーチの中:ゴブリンの核宝石×9
自分の財布の中:小銅貨×18 銀貨×1
拾った財布の中:小銅貨x32 銅貨x2 銀貨x5
水袋は一つにつき2L位入りそう
応急セット
<装備品>
解体用ナイフ スリング スリングブリッド×7個 短いロープ
ブーツ 厚手のシャツ チューブトップの肌着 破けパンツ
血塗れの破け厚手シャツ 血塗れの破けチューブトップの肌着
元パンツのボロ布
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気温も上がってきてるし、なんだかんだで多分昼過ぎくらいかと思う。お腹空いたぜ。とりあえずメシにするか。何も食ってないから腹が減った。キュートなボディから効果音が出ちゃってるし。
食料が心許ないから早めに手に入れないとマズイんだけど、まあ時々魚が跳ねている。魚が取れれば保存食の節約が可能だな。釣り道具は持ってないしガチンコ漁しかないかな?
川辺に点在する大きめの岩を探して漁の準備。元のボディでは持ち上げることのできないような岩を頭上に掲げ──
「トゥッ!」
ヒーローっぽく掛け声を上げて岩をぶつける俺。テッテレー! 成功! 魚がプカリと浮かんで、川を流れて行く。
「うわあっ待って」
びしょ濡れた。
三匹確保した俺は魚の下処理を済ませた後、火を起こす為に枯葉や枝を集める。火打石や油がバックパックに入ってたから、火おこしはそんなに難しくなかった。魚を焼くついでに服も洗って乾かそう。素っ裸で洗濯洗濯~。
この際だし、身体も洗ってしまうか。水浴びにはちょっと気温が低いだろうけど……まあいいや。ううぅ~ちべたい。大自然の中、素っ裸は凄い開放感だぜ。ついでなのでおしっこもする。凄い解放感だぜ。
解き放て!
「ふいぃ~」
身体を拭いて焚き火に当たる。魚の焼加減を見ながら乾パンとドライフルーツを食べる。乾パンは乾パンっていうかビスケットみたい? 塩味だけど。干し肉を齧るとかなりショッパイので、舐めながら魚を食べることにした。魚が焼ける芳ばしい香りが漂う。異世界で嗅ぐ初めてのいい匂いに、涎があふれまくりだ。
背びれ辺りの小骨を毟り取っていざ実食。かぶりつくと口に広がるは爽やかな竹林のような芳香。パリリとした皮から漂う芳ばしさが引き締まった魚肉の味を引き立てる。咀嚼しながらペロリと干し肉を舐めれば、燻製肉の旨味を吸った天然塩が1ランク上の味を提供してくれた。ウヒョー!
あまりにもいい匂いだったので皮ごと齧っちゃったけど泥臭くないな。水が綺麗だからかも? なんだよなんだよ!? うめぇぞ!! 思わず饅頭の決め台詞を呟きそうになった。だって俺に語りかけてくるんだよ? 風が!
三匹全部平らげた。ちょっと食いすぎた。お腹がポコッと出てしまった。
さて、いい加減乾いただろうし服を着よう。全裸終了のお時間です。
そしていよいよロコちゃんの顔をチェック。手鏡を持ってたからな!
洞窟で気付いてたら曲がり角チェックがもっと安全だったんだけどね。被害はなかったから良しとする。
手鏡を覗くとびっくりしたロコちゃんが映っている。おぉ~結構カワイイ!
ロコちゃんがニコーっと笑う。いや、今は俺でもあるんだけど可愛かったから思わず笑みがこぼれて、鏡の中のロコちゃんが笑顔になるという無限カワイイ地獄……これはいくら睨んでもカワイイだけじゃん。このカワイイ顔でガン飛ばしてもナデナデしたくなるだけだね。威嚇したって、むしろ飛び込んで行くね。皆まっしぐらだ。きっと。
とくちょう:つるぺたぷにちっこい
かみのけ :ワインレッド、腰まで伸びているツWINテ(※)
ひとみ :ワインレッド、つぶら、ややたれ目
おっぱい :つるぺたぷにちっこい
※ツWINテとは
俺の魂の閃きが、たった今与え賜うたツインテールの呼び名。
何者にも負けぬ、勝利を約束された神々の髪型だ!
つるぺたぷにちっこい萌えH・ドワーフで、ダークビジョン完備してる上にハイパワーの魔法少女。うーん、これがチートってヤツか。女になっちゃったのはアレだけど不幸中の幸いかもしれないな。日本に帰る方法を探すのに利点となるであろう!
となると、大前提として死なないってのは当たり前だけど、このロコちゃんの身体に傷を付けてはいけない。このキュートなボディに傷は厳禁だ。俺が抜ける時にまっさらな身体でロコちゃんに返さないとな。
つまり、モンスターがいるこの世界では、高い戦闘力が必要だ。鍵になるのは生成魔法[AA]。アサルトアームズだろう。何を生成可能なのか、色々と試してみよう。
まずは棍棒の代わりの武器かな? ん~……うん。
イメージを固め、魔法円を展開して世界に書き込む魔法の呪文。
「集え精霊。謡えよ、謳え。精霊よ──ジェネレイト・トンファー……セットアップ」
う……ぉ……抜けていく。結構魔力を消費するな……スリングブリッドに比べて大きいし鉄製なのが原因か? でも……。
「ふぅぅ……できた! そういえば英語でもトンファーだったんだろうか?」
一対の銀色に輝く鋼の旋棍。持ち手側の先端は杭のように尖らせた一品でーす。銃とか手榴弾も試したかったんだけど残りの魔力じゃ無理っぽい。プロテクション用に残しておこう。そもそも手榴弾は英語だとなんて言うのか分からないしな……スローイングボム?
日が暮れるまで歩くか。服やタオルなんかをバックパックにしまって、トンファーを腰に巻いているロープに挟もうとして気付いた。
尖ってたら歩く時に当って傷ついちゃうじゃん? バカじゃんね……仕方がないので手に持ったまま進むことにしよう。
敵対生物に遭遇することなく夕方を迎えた。でっかい岩が組み上がってる所があるので、そこを利用して天岩戸風ちいさな祠を作成。ハイパー筋肉万歳だね。これで安全に寝ることができるぜ。
魚を四匹ゲットして晩飯とする。魔力も多少回復していたので食後はのんびりと風を感じながら、プロテクションフィールドの練習を行なった。少しは早くなったと思う。
見上げた夜空の星は、日本から見る並びとは違っていて、知らない場所にいることを実感させられた。
「ハハッ」
アンニュイな気分になるとか乙女かよ。寝るか。明日はできる限り川下に進もう。
──そして翌朝。
春の日差しが爽やかな朝ですね。気分もリフレッシュいたしまして、どうもお早う御座います。ロコ・T・ルリッタこと元チヒロ・オオガイです。今日の目標は町の発見です。そういえば今の俺は、つるぺたぷにちっこいキュートなガールなんだから俺ってのは合わないなあ。私? 私か……企業戦士だったら慣れてるかもだけど、使ったことねーな俺。僕……か? いや、こだわるか。ボクだ! 俺のことはボクと呼ぼう! ボクとポクの間くらいの発音を心がけよう。元男と発覚するのは色々ヤバイと思う。ちゃんと女の子に偽装しないとトイレとか風呂とか困りそう。
風呂かぁ。女の子とお風呂かぁ。おっぱい揉み合いっことか夢を見たいナー。
透明人間に夢や憧れはありませんか? ボクはあります。
もし自分が女だったら……とか考えたことはありませんか? ボクはあります。
より深く女の子に偽装するのだ!! おーっぱいぱ~い!
血で染まったシャツを腰に巻き、ロープで帯のように締める。ナイフを装着してスリングと弾袋を挿み、昨日作ったトンファーを装備する。ヒュィンヒュィンと回転させると気分出るな。
おっしゃ! 太陽に向かって走ろうぜ! 出発進行、おーっ!
それから三日。酷い下痢に悩まされた……キュートなガールはプリティガールにクラスチェンジしたのです。
プリティガール時代に何度か戦闘になった。ゴブリンやオオカミだ。ゴブリンは騒がしいので近づく前に気付けたから石弾投げて遠距離攻撃、つまり主砲正射三連ゴッコした。でもオオカミには苦戦したんだ。速っ近っ群れっ! だった。石弾を出してる暇なんてなくて、足元の石を蹴飛ばしたりトンファー投げたりでかなり慌てたよ。ドワーフパワーのグルグルトンファーアタックで回転力が高かったからなんとか撃退できた感じ。倒してはいない。オオカミ怖い。二度と会いたくないぜ! 乙女の秘密プリティも漏れたし……ってなんだよ秘密プリティって! 考えんじゃねーよ? 感じろ!
そんなこんなしてる内に、毒耐性の技能を得た。レコーダーも更新されるみたいなので、偶にチェックした方がいいだろう。
ちなみにプリティ女子の秘密プリティは目に染みるほど臭かったので、二回目以降は川に浸かって主砲正射三連した。問題はない。はず。たぶん。
技能を得るほど生水は怖いってことで。
そして乙女の秘密プリティが治まった翌日、この世界に来て五日目の昼──
俺はついに町へと辿り着いた。ここからはしっかり女に擬態して生きなければならない。大貝千尋は一旦お休みだ。俺はロコとして元の身体に戻る方法を探すのだ!
そう意を決して川の対岸に見える門を目指して石橋を渡る。
そして──見せてもらおうじゃないか。ファンタジー文明の力を!
「ごっはん! ごっはん! おっいしい、ごっはん~っ! イェーイ!!」
<所持品>
財布x4 水袋x2 袋 ウェストポーチ タオル×2
火打石と打ち金 ロープ15m フック付きロープ5m ピッケル ピトン×4
手鏡 応急セット レコーダーと紐付き革製カードケース
ウェストポーチの中:ゴブリンの核宝石×9
<装備品>
鉄のトンファーx2 解体用ナイフ スリング
厚手のシャツ チューブトップの肌着 破けパンツ 短いロープ ブーツ
▼破損している物
血塗れのシャツ 血塗れのチューブトップの肌着 パンツ
<所持金>
小銅貨x50 銅貨x2 銀貨x6
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生成:鉄のトンファー
消費:保存食 油 スリングブリッド
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名 前:ロコ・T・ルリッタ
性 別:女
年 齢:12才
種 族:H・巌の民
存在力:9
技 能:生成魔法[AA]
毒耐性(NEW)
▽
種族特性
暗視 筋力強化
言 語:母国語 共通語
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次回ペタン娘魔女AA第四話「ダバァしたペタン娘魔法少女は時を置き去りにして頭髪の絶対防衛ラインを気にする」にセーットアーップ!
次話は08:00です。