22 生ごみが溜まった排水溝のデロデロを手に取ってネリネリした物を顔に近づけてキッタナイ公衆便所の中で嗅いだような臭い──再び
2016/9/3 20:00 3/3
陽光に誘われて目覚める六日目の朝。森と川を駆け抜ける涼しい風が届ける──生ごみが溜まった排水溝のデロデロを手に取ってネリネリした物を顔に近づけてキッタナイ公衆便所の中で嗅いだような臭い……起きたらゴブリンの死体が四個あった。
「近い近い近いっ!」
オーちゃんよ、モチョット遠くへ置いてくれないかな? そう伝えるも、ウギャ?とか言いながら首を傾げられた。そんなやり取りをしていたら、アーとかウーとか唸りながらリラとユユも起きてくる。薄暗い中、唸りながら地面を這いずるとゾンビみたいだからやめて欲しい……。
アレ? 俺ってゾンビみたいじゃんね!? 死体に入って動かしてるし。そして精霊魂はゴーストかね。市民権を得てんだなあ。アンデッドはいないと考えていいんだろうか……でもまあ、それなら腐った死体を相手にしないで済むんだから助かるか。
「くーさーいーよぉ~」
「ウー……」
俺が片付けるか。朝ご飯を頼みつつ、ゴブリンをソリに乗せて離れる。オーちゃんが着いて来てくれるようだ。テキパキ捌いて森の中に埋める。
ゴブリンの核宝石を引っこ抜いて思い出したけど、雷電を強化してなかったぜ。充電時間のこともあるし、さっさと戻ってパワーアップさせちゃおう。
「おかえり」
「ご飯、もうすぐできるよー」
「ちょっと雷電強化する。忘れてた! 核LVを増やすから充電時間も増えちゃう」
ジューデン? とか疑問を持たれたけど、あとあと。
ゴーレムの兵器工場に接続する。
「アルター・ゴーレム、セットアップ──其の身で大地を震わせよ。九十九の御神の巌巌の、腕力は旗印。頭顱を象る黒曜の、大なる銀杏の冠よ」
なんとなく魔法の呪文を口に出して唱え、気分を盛り上げる。我ながら中々カッチョイイ呪文だと思ってるのだ。
<雷電 爲右エ門>
出力7→8 耐久10 速度5 制御5 核LV4→5
存在力を2p使って出力と核LVを上げた。そして核宝石を十個投入っ! 更に核LVを6にしちゃうんだぜーっ……って思ってたのに制御が6に上がったんだけど……。
「ナンデッ!?」
「なーに~?」
「どうした? ロコ」
『アクセス──個体名ロコ・T・ルリッタ』
「ぬぁえっ!?」
「これは……いつものロコ。いただきます」
「はい、ロコちゃん。ご飯食べよ~!」
「あのさあのさ、核宝石入れたら勝手に制御が上がって、そしたら今度は──」
「ロコ、早く食べる。洞窟で泊まりたくない」
「そうだねー。臭いんでしょ~?」
「……う、うん」
確かに。ゴブリンの洞窟に泊まりたくないな……アレは地獄だ。二時間ぐらいでも頭の頭痛がヘッドバンキングする感じになっちゃうんだよ。マジ勘弁。
討伐隊に風魔法士がいたみたいだし、空気の入れ替えしてるといいなあ。地下二階まであるっていうし、単純に三倍でも六時間も悪臭と戦わなければいけない。B1~2のマップくれたのはホントありがたいよな。討伐隊に感謝。
食休みもソコソコに、荷物を纏めて出発する。洞窟に入るので、ランタンは取り出しやすくしておく。
「シュッパーツ!」
リラの掛け声を合図に、南西へ向かって進む。戦闘にならなければ三十分ほどで到着予定。
森々しい森はレーザーのように朝の光を地面に落とす。幻想的で神々しい雰囲気をかもし出すので、俺は便宜上神様の光と呼んでいる。雲の隙間から光の束がパーって差すアレ。アノ現象ってなんていう名前なのか以前調べたことがあるんだけど、チンダル現象とかギャグっぽい名称だったんだよ。だから神様の光と呼ぶ。雰囲気力の問題で。
何度か経験しているが、うねる木の根や岩が苔で覆われているので、とても歩き辛い。これから南の森を狩り場にするなら慣れないとなあ。足元ばかりに気を取られていると魔獣に対して無防備になっちゃうし。リラとオーちゃんがいるから対処できてるってだけでさ。
「気配察知が欲しいなあ。ねえリラ、どうやって鍛えればいい?」
「うーんっとねぇ……えーっと……なんかこう、ニューッと来るのを感じ取るんだよー」
「リラ……サッパリ分からないよ?」
だからこう、ニューッニューッとか言いながら風呂に浸かってお湯を両手で集めて身体に当てるような身振り手振りをやっている。それがニューッと部分なの……か? ニューッて何が来るんだろう?
「ゴメン、やっぱり分からない。……ん? ニューッとなんかが来る? こっちから出して調べるんじゃなくて、向こうが出してるなんかニューッとしたのを感じる……やっぱりサッパリ分からないよ……リラ」
「ニュッ、だったかも~?」
「取れた!」
「は!?」
「おめでとーユユちゃん!」
「凄い! 教えてよユユ!」
「ム? ロコ、もう持ってる。魔力操作」
「あ、気配察知が取れたのかと思った」
なんの話か分かってないみたいだったので、話の流れをユユ伝えた。ニュッニュッとか言いながらニュッとした何かをパタパタ両手でかき集め始めるユユ。何それ、カワイイ。またしてもペンギンっぽい。
「手をパーにしたほうが分かるかも~?」
「分かった」
ニュッニュッ言いながら気配をかき集める二人はニュッカワイイ。なんだよニュッカワイイって……。
三人でニュッをしていたらリラが一言。
「よく考えたら、今は周りに気配がないから意味がないかも~?」
「ムゥ……」
「な、なるほど……あっ、あそこ! ゴブリンの洞窟だ」
そして入り口の側にこんもりと小山がいくつか。……ゴブの死体がギュウギュウ詰めになってんだろうな。
ランタンを取り出し明かりをつける。雷電に持たせたいところだが……充電時間が足りない。
「雷電どうする? あと一時間半ためたら五時間動ける予定だけど」
「ライデン、下の階に降りれない」
「じゃあ地下二階だねー」
言われてみればその通りじゃんね。
「思い付きで出すトコだった!」
「相談するの正解。ロコはお姉ちゃんが見守る」
「明かりは私が持つね! お姉ちゃんだしー」
「ふ、ふん。そうやってお姉ちゃんぶってるのが子供の証明だもんね」
さあ行くかって時に話しこむのはなんでだろうね?
マップを見ながら行き先を決める。後ろから襲われても嫌なので、虫と水の貯蔵庫から覗くことにした。その後、俺が目覚めたゴブリンの寝室へ行く。
しかしパーティを組んでるだけで、こんなに違うのか。一人だった時は圧迫感や不安が襲ってきたのにな。心強い。
「行こう」
俺の言葉に頷く二人。血の跡や焼け焦げた岩肌が激しい戦いの印。そんな入り口に突入する。
道なりに進み、まず到着するのはゴブリン食堂。ランタンの明かりでぼんやりと見える対面の壁一面に……血痕。
「な……なんだアレ……?」
「まとめてプチってしたんじゃないかな~?」
「ブレイズメンとエアロフォース、参加してた。エアロフォースの人が攻を焦った。間違いない」
「ブレイズメンにすぐ突っかかるもんね~、エアロフォースの人。この僕に任せたまえ諸君! とか変なポーズでやっちゃったんだよ? きっとー」
「そんなことしても一番になれない。さすがナルシスト、大人気ない」
「あぁ……あの人か。チョット気持ち悪い感じのヒョロ男」
「でも強い。不思議」
「ね~」
「魔力操作にヒョロヒョロとか気持ち悪い男とかナルシストは関係ないから。ないよな?」
ないらしい。良かった。良かったのか? まあいいや、右──東側にある貯蔵庫を覗きに行く。実を言うと初日は方角が分かってなかったから仮だったんだけど、百八十度ずれてたみたいだ。一階は俺が書いたマップだからな。大体合ってたようで良かったぜ。
「ゲジゲジした虫がいっぱい詰まってるツボはちゃんと粉砕されてる?」
「されてない。虫もいる」
「ユユちゃん、よく平気だね~?」
「ホントホント。アレ見た時さ、お尻の穴からザワッて入ってきたような感じになったもんなあ」
「鳥のご飯、虫の時がある」
「ああ、なるほど……納得」
ここは虫だけのようだ。ゴブリンもいないし、寝室に向かう。向かうんだけど壁が……。血糊のカーテンをくぐるみたいで気持ち悪いな。気配は感じないそうなのでズンズン進む。そういえば臭いは臭いんだけど、以前ほどじゃないのは殲滅済みだからかね。
「ゴブの寝床は前と同じっぽいな」
「臭い」
「それでも前よりマシだよ。風魔法士が換気したのかもね」
「ム? 役に立ってる。意外」
「イヤイヤ、有用だから討伐隊に組み込まれてんでしょ」
「ムー……四元魔法め、強い。ズルイ」
「ブッブーッ! その思考はダメだユユ。変な人でも努力の結果強くなったんだよ。四元魔法だから強いって考えだと勝てなくなっちゃうじゃん?」
「わかった。その内勝つ!」
「おい、ニューロコ。オレの話を聞いてくれ」
とかリラがいきなり話しかけてきた。
「リラ?」
「何か入った」
「入った?」
「いいから聞けって、ニューロコ! オレはロコ、その身体の元持ち主だよ」
「オレっ娘かよ!?」
「い、いいだろ別に!」
「似てる……どっちもロコっぽい。プヒーッ」
そりゃあどっちもロコだからね! と息ピッタシの新旧ロコ。てかニューロコって……じゃあキミはオールドロコかい? ユユはゲラゲラ笑っている。
「このカワイイ顔でオレっ娘……ないわ~……オレっ娘はダメだろ? ロコちゃん」
「カ、カワイイとか言うな! オ、オレはオレだもん!!」
「いや、カワイイよ。初めて鏡見た時さ、凄いビックリしたもんな……ボク」
「だ、男子にモテたことなんか全然ないっ。だから違う!」
リラの中に入ったロコが喋ってんだけど、リラがオレっ娘になると似合わねぇ。勿論、ロコも似合わないと断言する。そんでオレっ娘はモテない気がするよ?
「パンツは大人パンツだったじゃん。お洒落してるじゃん? 誰かのために大人パンツだったんじゃん? まあゴブに破かれてダメになっちゃったけど……そこはゴメン」
「おおおお大人パンツとか言うな!」
「あきゃきゃきゃ、ククふっ……ヒィ……臭っ、で、でも最近直して、ンフフ、今はいてる。ロコのパンツ、キュンってなってる。間違いなッケホンッグケホッ、臭いウエー大人」
臭い中でツボにハマったユユは爆笑しつつ悪臭を吸いまくる自爆攻撃してる。クールな外見してんだからクールビューティな大人に育って欲しい。
「そうそう、最近やっとロコの大人パンツはけるようになったんだ。なんか高くてさ、かぼちゃパンツしかはいてなかったからシュっとしてはき心地いいよ!」
「やーめーろーっ! 恥ずかしいコト言うなよぉっ! オ、オレの顔で……」
「でも良かった。元ロコがどうなったのか気になってたんだ。意識が残ってるってことは、いつか転生できるんだよな?」
「ダイジョブ。別人だけどロコは記憶を持って、きっと復活」
「そ、そうかな!? ヤッタ、じゃあオレはあのクソ野郎に……ああっ! 話! 話がある! ここは危ないんだ! お──時間切れになっちゃった~」
「おぃいっ!?」
「ロコのせい」
「ユユちゃんもでしょぉー」
しまったなあ……まさかこの顔でオレっ娘とか思わなかったから話が脱線しちゃったよ。もっと聞きたいこともあったんだけどな。例えばどこから来た、とか。まさか時間切れになるんて思わなかったし……。
「なんか大事な話を聞き逃したっぽいヨ?」
「ここは危ない」
「あとは~“お”って言ってたねー。お?」
リラの言葉が日本語に変換された俺には分かった。「おって言ってた」つまり……追っ手。ロコは追っ手に殺されたということが。
マテマテロコよ、チョット待て。
「まさか前のロコって犯罪者じゃないだろうな……」
「えーっ!?」
「だってさ、ここで死んでた……んだよ? 追っ手にやられたんじゃ?」
「ムー……そんな悪い感じじゃなかった」
「そうだよー。ユユちゃんも言ってたけど、二人とも似てたもん。ここは危ない、お前等逃げろとかじゃない~?」
「うーむ……確かに悪いヤツならいちいち教えてくれないかあ」
ただ、ここが危険ってのはどうなんだろう? 少なくとも殲滅前の話なんじゃ?
「ここが危ないってのは今のことなんだろうか?」
「そうだよねぇ? 大氾濫の前兆ってことだったのかなあ」
「もう、殲滅済み」
「終わった話っぽいなあ……帰る? 危ないのかもしれないし」
「前のロコ、なんでここにいたのか分かってない」
「地下三階に魔法陣があるみたいだから一応行ってみよ~?」
「あのロコなら、なんかまたリラに入りそうな気がするけどな」
同意は得られたけど、一応魔法陣を見に行くことになった。折角ここまで来たんだしな。ただ、突拍子もなくオッチョコチョイでどこか抜けてる俺に似てるから、たぶん平気っていう理由は納得できないのである!
えー、もらったマップを見てみると魔法陣の所に×印が付けられているので討伐隊が何かしら処理を施したんだと思う。俺達がどうこうする必要はない。まあ、何をする魔法陣なのか分かんないんだけども。
地下一階を軽く探索。輪になった通路から、小部屋に数本の道が伸びている。ゴブリン三匹と四匹のグループが紛れ込んでいたが危なげなく処理。死体は帰りに外で埋めることにした。掘って埋めるには地面が硬いし。だから解体も後回し。
そして俺の存在力が6に上がった。10になったら二体目のゴーレムを作ろうかな。忍者タイプの速いヤツ! ニンジャーッ! ……はダメだ。そういえば忍者はリラとユユに毒だった。となると、アサシンっぽいのでなんか生成するか。そんなことを考えながら環状線北側のB2入り口へ向かう。
地下二階に降りるとヒンヤリと涼しい。広い。武道館くらいはあるんじゃなかろうか。奥からは流れ落ちる水音が聞こえる。強キャラが現れた時のような描き文字が俺には見える。リラが向けたランタンの明かりがうっすらと見せる地底湖。その奥は暗闇が続いている。地面は錆びた装備や血で、とっ散らかっててキチャナイ。
予定通り雷電を呼び出して、俺達はマップに書いてある中央辺りの魔法陣へ向かった。そこには簡易な祭壇が作られており、四隅には何かを供えるような台が置かれている。石畳の床に魔法陣が彫られていたようだが、既に破壊されていて原型を留めていない。そんでもってここも血塗れ。床に置いたランタンが照らしちゃったのよ……気味が悪いデス。
「ここで魔物を呼んでたのかな?」
「そんな雰囲気、してる」
「お前等なんで奥に来てんだよっ! 早くに──また時間切れだよ~……あっ、誰か来る!」
「早く逃げろ?」
「誰か……ってなんだ? こんな場所で馬に乗ってる」
地底湖のほうから現れた誰か。誰も何も──ロコの敵ってことだよな? コイツ。
「おやおや、これはまた小さなお客様ですね。しかもロコさんに──再び相見えるとは思いませんでした。そして……あなたのお陰で計画が失敗したということも」
冷たい声色で俺に話しかける男の表情は、折れた大木を模様にした仮面に隠れて見ることができなかった。
<所持品>
財布x4 水袋x2 袋x4 寝袋 ウェストポーチ 油x5 火打石と打ち金
ロープ15m フック付きロープ5m ピッケル ピトン×4 ショベル
保存食x16 革製多目的手袋x6 手鏡 応急セット 傷薬x2
レコーダーと紐付き革製カードケース 雷電用バックパック
小袋(メモ帳十枚 筆記用木炭 消し木) 鉄棒 剣帯 鉄のソリ
ポット コップx3 鉄串x3
タオル×2 バスタオル×2 歯ブラシx3
シャツ×3 チューブトップの肌着×2 かぼちゃパンツ×3 大人パンツ×1
<装備品>
鉄のトンファーx2 解体用ナイフ 火蜥蜴のローブ(耐火、耐斬撃、耐刺突)
革のグローブ 厚手のシャツ チューブトップの肌着 かぼちゃパンツ ブーツ
クナイベルト(腕用x2 腰用) 飛苦無x15 石弾x9
<所持金>
小銅貨x0 銅貨x2 銀貨x1 金貨x1
<雷電 為衛門>
出力8 耐久10 速度5 制御6 核LV5
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消費:保存食x1
リラ、ユユの重い荷物を預かっている
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名 前:ロコ・T・ルリッタ
性 別:女
年 齢:12才
種 族:H・巌の民
所 属:魔法士ギルド
月影の魔女達
存在力:7→5→6
技 能:生成魔法[AA]
毒耐性 耐久力強化 存在力吸収量強化 魔力操作
存在力順応 病気耐性 状態異常耐性
▽
種族特性
暗視 筋力強化
言 語:母国語 共通語
称 号:ペタン娘魔女
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名 前:リラ・ポル
性 別:女
年 齢:13才
種 族:兎の民
所 属:魔法士ギルド
月影の魔女達
存在力:13
技 能:交霊魔法
ラヴィッシュ・アーツ
聴嗅覚情報強化 気配察知 存在力順応
投擲 存在力吸収 魔力操作
▽
種族特性
脚力強化 鋭敏聴覚 鋭敏嗅覚
言 語:母国語 共通語
称 号:ペタン娘魔女
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名 前:ユユ・ヒッティネン
性 別:女
年 齢:12才
種 族:月の民
所 属:魔法士ギルド
月影の魔女達
存在力:11
技 能:使役魔法[魔獣]
存在力順応 存在力吸収量強化 投擲
魔力操作(NEW)
▽
種族特性
夜目 闇属性
言 語:母国語 共通語
称 号:ペタン娘魔女
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次回ペタン娘魔女AA第二十三話「カオス! 俺の言葉で動揺したのをちゃんと見ていた二人が、乙女語録に記載してはならない言葉で敵を口撃して敵と俺にダメージを与えた。」にセーットアーップ!
次回は08:00です。




