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02 生ごみが溜まった排水溝のデロデロを手に取ってネリネリした物を顔に近づけてキッタナイ公衆便所の中で嗅いだような臭いと女子のおケツ

2016/8/24 12:00 2/3

 さてさて、ゴブリンの寝床は死体で臭いしキモイので早々に脱出しよう。魔法を使えるようになってテンション上げてる場合じゃないぜ。棍棒とブリッドを回収して唯一の出入り口へ向かう。ゴブリンがまだいる可能性は高いので音に気を付けての移動だ。


 寝床から出て道なりに進むと25mプール位の広場があり、肉や骨が散らかっていて異臭を放っている。ボロボロのテーブルや切り株で作られたイスがある。食堂……なのだろうか? ゴブは不在のようだけど凄く臭いぞ、ここ。


 通路は前後左右にあるな。後ろはさっきいた場所だからいいとして、正面と右の道は曲がっているせいで奥まで見えない。左は──ゴブリンが二匹、アギャアギャ言いながら動いている。わりと騒がしい。こっちに気付く様子はない。と、なると正面か右か……。まずは右からかなあ。なるべく離れて移動しないと気付かれてしまうかも。正面に突っ切るのは危ないと判断する。右側が出口に通じているといいんだけどなあ。

 行くか。取り敢えず正面を北と仮定しておこう。


 東の通路を壁沿いに進む。10m程進むと、道が南に曲がっていて先が見えない。神経を研ぎ澄ませ、コッソリ覗くと通路はクネクネと更に奥へ続いている様子。またしても先は見えない。足元と音に注意しながら進む。それでも俺の荒い呼吸と足音が洞窟に反響してしまう。狭い通路の圧迫感が心拍数を上げていく。俺は……どんどん深みにはまっていくように感じた。


 深みだった。うへあ……。奥の方にゴブリンが一匹。しゃがんで何か作業している様子が見える。そして行き止まりっぽい。ハズレだ!! あ、でもなんか武器とか袋とか箱とか見えるな。もしかしてお宝だろうか? うっ、お宝っ。スリングで始末できるか? あ、いやマテマテ、いつの間にかプロテクションが切れてる。いつ切れたんだろうか……素材取ってる時かな? とすると効果は五分くらいだろうか。俺はプロテクションフィールドを再展開してスリングブリッドを取り出す。よく考えたら“俺が”使ったことないスリングで攻撃するより、ただ投げればいいじゃんね。


 ゴブリンが背を向けた時、狙い済まして石弾を投擲。投げつけたブリッドはゴブリンの首にめり込んだ。頭を狙ったんだけどなあ……まあいいや、結果は同じだろう。近寄ろうとした瞬間、別のゴブリンが現れた! マジかーっ!


「ギョオ、ギャギョギュギャギョー……ギョッ!?」


 倒れたゴブリンに話しかけていたNEWゴブが、駆け寄る俺に気付く。接触するまで後3mくらい。背後に立てかけてある槍を取ろうとして、俺から視線を切った。お前は選択を誤った。そいつは愚策だぜーっ!


「っりゃっ!」


 持ってた棍棒を投げつける。変だなあ、殴る武器なのに投げてばっかりだ。

 まあ棍棒は見事に命中したからいいけどね。しかしそのせいで武器に向かって倒れ、派手な音を出してしまった。ヤベッ。


 …………どうだ?

 ……平気……っぽい…………か?

 OK、大丈夫そうだ。良かった。だけどこの二体の核宝石(コアジェム)は諦めたほうがいいかもしれないな。下の階があるみたいだし。

 そう。通路からは見えなかったんだけど、壁際に穴が開いていて縄梯子が下の階に続いている。正直、一人で探索なんてするもんじゃないし、ここにある武器か道具か──何か使える物を拾ってさっさと戻ろう。


 えー……錆びたナイフに錆びた剣。石の槍に棍棒…………使えねぇー! 革製の盾や鎧もあったんだけどさ、汚い&臭すぎて触るのもためらわれるのさ。装備品は諦めるのさ。

 だがしかぁ~し! 何個かあった小袋。どうも人間の財布を奪った物らしく、お金をゲットした。小銅貨三十二枚、銅貨二枚、銀貨五枚。ゴブリンの核宝石が一個銅貨一枚だから、そこそこの収入になった。

 コンビニとかで売ってる、あんぱんサイズのライ麦パンが二つで小銅貨一枚。大衆浴場が小銅貨三枚だから、たぶん小銅貨一枚が百~二百円くらいの価値なんじゃないかと思う。

 つまり俺は少なくとも、五万五千二百円拾った。もし金貨があったら一気に十万円だったから、ないのは残念だけど……まあゴブリンとか剥ぎ取ってる場合じゃねぇ! 急ぐのだ。逃げるのだ。こんな臭い洞窟からはさっさと撤退だー!!

 何気に疲労で足も重いから戦闘は避けたいのでござる。


 静かに急いで悪臭食堂まで戻った。壁にへばりついて様子をうかがう。

 北側の通路からはゴブリンの話し声が聞こえてきた。何匹かいるなあ。でも遠ざかって……るような? そんな感じがする。

 西側の通路にゴブリンは確認できない。さっき西側にいたヤツ等が北の通路に行ったのだろうか、それは分からないが寝床の死体に気付いた様子はない。


 となると……だ、西の通路かな。抜き足刺し足忍足。静かにお邪魔しよう。

 コソコソと南側の壁に沿って反対側の通路へ移動する。覗き見たところ、小部屋と中部屋がくっ付いたような感じで、床には桶や壷が置かれている。ゴブリンはいないみたいなので調べてみると桶には水が入っていた。そんでもって壷の蓋を開けたらさ、虫がウジャウジャみっちり入ってて蠢いてた……貯蔵庫のようだ。たぶん。

 ハズレだーっ!! 北が正解か……いくらなんでも、一回降りた先で上に登ってから出口ってことはないだろう。ないよな?


 気を取り直してゴブリンがいるであろう北の通路へ向かう。悪臭で頭が痛くなってきた。なんていうか、生ごみが溜まった排水溝のデロデロを手に取って、ネリネリした物を顔に近づけてキッタナイ公衆便所の中で嗅いだような臭いってのが近いような……つまり早く外に出たい。


 もういっそのこと走りぬけて、もしゴブリンがいたら轢き殺すみたいに弾き飛ばすか? あー……でもそいつ等が刃物を装備してたら危ないか。今のところ棍棒持ちにしか当ってないけど、剣とか槍があったってことは使うヤツがいる可能性があるな。階層ごとに強さが違うとか?

 あ、待てよ? なんか勝手にここは一階って決めつけてたけど地下かもしれないじゃんね。しかも地下五階とかだったら……ヤバイ。


 暢気に構えてた自分が恐ろしい。一気に体温が下がったような感じがした。どこかで休憩するか? でもそんな場所ないよなあ。死体がないのは通路とここ。通路は階下に通じてる所と、行き止まりに通じてる所だから逃げ場がない。

 かといって、ここはゴブリンが戻ってくるかもしれないしなあ。水袋から一口。生ぬるい水で喉を潤す。行くしかなさそうだ。

 ……水が腐ってなかったってことはロコちゃんは死んで間もないのだろうか?


 周囲に気を配りながら北側の通路へ。分岐もなく曲がりくねった道を進む。ここも一本道みたいなので前方に注意を向ける。後方からくるとしたら、もう階下からしかないので距離があるし無視していいだろう。


 暫らく進むと空気が新鮮になってきた。出口は近いっ!

 先行してるゴブの声も聞こえないし、ここまでくればもう大丈夫だと思う。ヤッター! 俺は自由だー!!


 別にフラグなんかじゃない。自由になった。こちらファンタジーな世の中にいる大貝千尋(オオガイチヒロ)です。深遠なる常闇の迷宮から生還しました。コンバンハ!

 夜です。森です。飢えに支配されつつあります。テンションアゲアゲで誤魔化さないと泣いちゃいそうデス!!


 闇雲に進んで迷子になっちゃったからな……夜の森コエェ……。だってさあ、さっさとゴブリンの洞窟から離れないと、またエンカウントしちゃうかもしれないじゃん? だから走って逃げても仕方ないと思うんだ、俺。

 まあ……失敗だったってのは認める。


 どうしよう。いや、どうしようも、こうしようもないか。腹減ったし水も残り少ない。補給が必要だ。洞窟からは離れたけど、近くに水場があると思うんだよね。ゴブリンが暮らしてたし、洞窟内には水場はなかったし。まあ地下にあるって可能性も捨てられないけど、一階に水を溜め込んでたからな。


 川か湖を探そう。木に登って辺りを眺めてみるか。木登りなんて久し振りだけどロコちゃんは剛力だし、体重も軽いだろうから難しくはないだろう。


「トゥッ!」


 ヒーローがジャンプする時風の掛け声を上げて、側の木にへばり付く。木の幹を身体全体で抱え込んでいるので、下から覗くとパンツがまる見えである。女子のパンツがまる見えなのである。汗かいてるからお尻にピッタシくっ付いてて形がバッチシ分かってしまうのだ。

 適当に作詞した「女子のおケツ」を歌いながら登っていると、パンツを掴まれた。


「んにゃあっ!?」


 開脚した股の部分を掴まれて、ゾワリとした悪寒が走り変な声が出た。


「ギュブブ、ギョンギャ、ギャッギェーン!」

「クソゴブかよっ!」


 幹を押すように手放しながら、後ろ回し蹴りを放つ。しかし、一瞬早く飛びしざったゴブリンには届かない。地面に降りた俺はゴブリンと対峙した。ギュフギュフとニヤケ面を晒しているゴブリンは、両手にナイフを持っていた。

 ヤバイ……棍棒投げた後、回収してない! せめて十秒っ!


 頭上で腕を交差し、内回しで円を描きながら腰へ。視線で威圧をかけながら──


「コォォォォォォォォォォォォォ……」


 ──息吹。

 流れるように両掌を相手に向け前方に出す。後ろ足に重心を置き、前足は踵をやや上げる。防御に優れた前羽(まえば)の構え。

 ゴブリンはまだニヤニヤしてる。まあ……つるぺたぷにちっこい女の子が空手の構えを取ってもカワイイだけかもしれない。そんな俺に油断しているんだろうが準備は完了したぞ?


「カッ!!」


 俺の身体を濃密な魔力が覆う。プロテクションフィールド展開!

 それが分かったのだろう。驚きの声を上げてゴブリンが襲いかかってきた。刃物を持っていても、突きの早さは然程でもない。落ち着いて対処するんだ。プロテクションも効いてる。大丈夫!


 ゴブリンの連続攻撃を回し受けで捌きながら隙を窺う。怪力少女のロコ、受けといってもそれは最早手刀に近い。当らない攻撃と腕の痛みにイラついたのか、振るう腕の動きが大きくなる。ゴブリンの内側に攻撃を捌きつつ、掴んだ腕を引き寄せる。(たい)を崩したゴブリンの膝を前蹴りで破壊し、頭を引き寄せて膝蹴りを叩きこんだ。


「ふぅ……」


 パンツ二枚とも破けた……でも、どうしようもない。二枚とも股の部分が千切れててピラピラめくれてしまうんだ。下半身まる見えはいくら男でも恥ずかしいンスけど……。

 そしてコイツが持ってたナイフは、どっちも錆びてる。損して得取れってか?


 股間を撫でる風を直に感じ、俺は羞恥と木登りを加速させた。


 木の天辺まで登った俺は、眼下に望む森に目眩を覚える。森過ぎるんですけど……。町とか村とか見えないし。もっと高い木があれば見渡せそうなんだけど、似たような高さだしなあ。

 キョロキョロ視線を彷徨わせると、森が途切れてるっぽい所を見つけた。まあ、その向こうも森だから川かな? そう遠くなさそうなので、方向を見失わないように気を付けて行こうか。


 そういえば今のところゴブリンにしか遭遇してないけど、クマとかイノシシとかいそうだなあ。オオカミなんかも……。騒がしくしてたら逃げてくんだっけ?

 早く人のいる所に行きたいぜ。一人は怖いもんな。せめてサモナーとかテイマーだったらパートナーを増やせる可能性もあったんだけど、生成魔法だしな。


 うーんアサルトアームズ……か。アサルト、強襲とか突撃とかそんな感じの英語だよな。アームズは武器とか兵器とか……って、なんで英語なんだろう? 英語圏の人が国でも起こしたのだろうか? 共通語が英語っぽい言語だし。てか、アクセスとか語りかけてきた脳に直接システムさんも英語っぽい言葉……謎過ぎる。


 あー違う違う、そんなの今はどうでもいい。生成魔法で何か武器作ったほうが良さそう。棍棒忘れてきたしな。川に着いたら試そう。空気がヒンヤリしてきたからもうすぐ見えそうだし。

 とか考えてたら川に到着した。確保ぉぉぉーっ!!


 冷たい川の水に顔を突っ込んでがぶ飲みした。生き返る~。

 この川を下れば町か村があるんじゃないだろうか。木の上からは見えなかったんで一日二日じゃ着かないだろうけど、絶対あるはず。なかったら泣いちゃうね。

取得:財布(小袋)x3→小銅貨x32 銅貨x2 銀貨x5

消費:スリングブリッドx1 棍棒x1

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名 前:ロコ・T・ルリッタ

性 別:女

年 齢:12才

種 族:H・巌の民(ドワーフ)

存在力:9

技 能:生成魔法[AA]

種族特性

 暗視 筋力強化

言 語:母国語 共通語

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 次回ペタン娘魔女AA(ウィッチダブルエー)第三話「ボクとポクの間くらいの発音を心がけるクラスチェンジしたつるぺたぷにちっこい乙女の秘密プリティを感じろ」にセーットアーップ!

次話は20:00です。

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