14 だって女の子の身体を大人の男が寄ってたかってつついてんだもの。ロコ男。
2016/8/28 20:00 4/4
鼻孔をくすぐる甘く涼やかな香り。身体を包むシーツを優しく暖める陽射しが、小鳥達と朝の挨拶を交わしている。まどろむ意識が徐々に晴れて行く。
ふぁぁと欠伸を一回。伸びをして、ほぐした身体を起こす。艶やかな肌をシーツが滑り落ちて、あらわになるのはチェリーブロッサム。可愛らしい花柱の頭がおはようサンシャインしている。素晴らしい目覚めですよー。さすが高級宿。普段の七倍ちょいだもんね。さすが高級宿。飾られた花の香りが素晴らしい。さすが高級宿。大浴場も綺麗だったしマッサージも気持ち良かったし、ご飯も素晴らしかった。さすが高級宿。朝ご飯にはなんか果物……否、フルーツが付いていた。さっすが高級宿ぉ~。
「皆さん、事件です」
銀貨三枚消えました。猪の鼻亭は空き部屋なしで泊まれなかった。近場の宿にも空きはなく、方々探してやっと見付けた空きのある宿はこの高級宿だけだった。風呂は豪華だし、晩飯はディナーって感じだし、宿っていうよりホテルって感じもイイっちゃイイんだけどさ。魔法士ギルドに泊まれば良かったんじゃねーの? バカだよねー。気付いたのディナー食ってる時なので後の祭りってヤツだった。俺、頭の中がヘロヘロだったみたいだ。こうなったら行くトコまで行っちゃうよーってな感じで、出発だ。今日の予定は買い物とゴーレムチェックなのさ。
さて、さすがの高級宿を出て右手に見えますのは当ゴリアテの貴族街になります。さらに奥をご覧ください。そこに見えますのはこの地を治めるなんちゃら辺境伯が御住まいになる館でございます。
奥さん奥さん、囲いもあるんですって! へーカッコイ~。領主どんに用事は一個もないので左手に進む。右手、北側の貴族街に近い店は高級品が多いんだよね。騎士団とか高給取りらしいし。そんで昨日泊まったさすがの高級宿、実は高級宿的には低ランクらしい。
出る時に耳にしたんだけど護衛っぽい人が偉いっぽい人に「この程度の宿しか取れなませんでした。申し訳ございません」とか謝ってたんだ。
泣きそう。俺はあんな辛い思いをして銀貨五枚の報酬で、この程度の宿でヒーヒーだもんなあ。金貨もっと欲しい。騎士団に入ったら給料は金貨なんだろうな。騎士団、カッコイイし入ってみたい気もする。三人で入ったらペタン娘月影の魔女達じゃなくてペタン娘騎士団になるかもしれないが。
漫画的に表現すると、足音の描き文字がザッザッじゃなくてペタンコッペタンコッになるよーペタン娘ナイツは!
散歩がてらフラフラ店先を覗きながら、目的の雑貨屋さんに。ゴツゴツした石を組み上げた外見で、店内は所狭しと商品が並べてある。百円ショップみたいな雑多さ。買う物は決まっていたけど、ヘロヘロと視線を彷徨わせながら商品を物色する。
メモ帳十枚綴り、筆記用木炭と消し木で小銅貨七枚。
油三個で小銅貨三枚。
革製多目的手袋四組。銅貨二枚。
合計で銅貨三枚のお買い物。
小袋をくれたので文房具を入れておく。
メモ帳は薄茶色の画用紙っぽい物。店主いわく、木を薄く削って錬金術で作った液体に浸け込むことで柔軟性を持たせているそうだ。
木炭はパステルみたいなので、消し木は(食パン+バルサ材)÷2みたいなキューブ形の物だった。錬金術で作ってることにカルチャーショックをうけた。
続いて魔道具屋。木造のこの店の窓辺には花が飾ってあり、綺麗に掃除された店先でネコが日向ぼっこをしている。エルフ魔女に似合いそうな店構え。残念ながら野太い声で「おう、いらっしゃい」と声をかけられる。
キュアポーション欲しいんだけど銀貨一枚した。うう……買えなくはないけど、さすがにキツイな。傷薬にしておくか。銅貨三枚だし一個買っとこう。
買う物は決まってたのに予定外の物を買ってしまったなあ。そして猪の鼻亭に向かい、二日分の銅貨八枚支払って宿を取り直してから魔法士ギルドへと歩みを進める。
<所持金の更新>
小銅貨十三枚 銅貨二枚 銀貨三枚 金貨一枚
無駄使いはしていない……と、俺は考えるのだが……はたして……。メモ帳はいらなかったかなあ? 油もストックがあるし。うーん。
四日で五万円稼いで、一晩たったら六千円に。あっという間。さすがペタン娘、財布すらペッタンコにしてしまうとは侮れない称号だ。
「ロコちゃーん!」
「あ、リラ。オハヨー」
ギルド前でリラと出会った。ゴブリンでいっぱいだった彼女は、もう元気いっぱいだ。獣人系はタフなのかもね。
「ギルドになんか用事?」
「うんっ。核宝石に魔力を込めるお仕事しようと思って!」
「魔力操作狙いかあ」
「そうだよー」
ちゃんと反省を生かすいい子だなー。そういえばユユと違ってツッコミながらじゃれ合ったりしないから、リラにはπ拳使う機会がない。なんてこった!
とか思ってたら俺は何個くらい核宝石に魔力を込めたのか聞かれたので教えた。
宿代を稼ぐためには一日四十個が最低ラインだと。仕分けとか合わせると、ご飯からご飯の間くらい時間がかかるのだと。一個三~五分で小銅貨一枚。
四~五時間で銅貨四枚。自給千円くらいなんだよね。実は書庫整理よりも賃金は高い。
でもずーっとやってると目に核宝石が焼き付いて、ないのに見えてしまうのだ。俺はこの現象をファントムたんと呼んでいる。雰囲気力が高まるので。しかし雰囲気力が高まったところで何かあるわけではないのがネックだ。
「た、大変なんだね……でもガンバルよー!! ロコちゃんは何しに来たの?」
「ボクは雷電の強化とチェックだよ。核LVを一個上げようかなーって」
「核LV上がるとどうなるの?」
「たぶん命令を増やせるはず。今は二個っぽいんだよね。“穴を”“掘れ”とか。予想だと四個指示できるんじゃないかなーってさ。“穴を”“掘って”“ゴブリンを”“入れろ”みたいに」
まあ、単純に知能がアップするって可能性もあるけどどうだろうね。
そっかー、と相槌を打つリラと一緒に魔法士ギルドの扉をくぐる。
「じゃあロコちゃん、私こっちだからー。後で訓練場に行くね、ナイフ投げの練習するんだ~!」
「投擲技能、増えたもんね! リラは偉いな~ムギュー!!」
「きゃあっ!? もーロコちゃん……あれ? なんかいい匂いするー」
抱き付いてやったのだ。最初はビックリしてたけど、クンクン嗅がれた。そんなリラはビックリクンクンカワイイ。
そして──俺は悲しい現実を語るのだった。ションボリするぜ。
「……銀貨三枚の宿に泊まってしまったのです……お風呂とマッサージが大変素晴らしかったのでございます。でも昨日の収入は銅貨六枚になりましたのでございまする…………」
「ロコちゃん……も、もうちょっと計画的に……」
俺は腰を九十度曲げて謝罪した。
「申し訳ございません」
おっかしいなあ? なんかB型の友達っぽい行動になってる。電子レンジ買ってくるー、と出かけてゲーム機買ってきてた人に。異世界のせいかもしれない。気をつけないとアブナイッ!
なんか刹那的に生きてる気がするッス。
「後でね~」
「ふぇ~い。じゃあねー」
リラと別れて訓練場へ。ゴーレムの兵器工場に接続して雷電を強化する。俺の存在力は6だから……1pだけかな。
予定通り核LVを上げ……ついでなので制御も上げた。だって1ってダメそうじゃん? つまりこうなった。
<雷電 爲右エ門>
出力4 耐久7 速度4 制御1→2 核LV1→2
雷電を呼び出して腕相撲や、かけっこで性能をチェックしてみた。
腕相撲は……ダメか。全く勝負にならない。ロコ筋は10とかあんのかね。
一方、速度4は俺よりも早かったので俺の敏捷度は3ってところかな……って、よく考えたら移動速度なんて身体のサイズも影響するんだから、かけっこじゃ計れないのではなかろうか。
「雷電、突っ張りを繰り返せ」
ン~……突きの速度は習い始めの大人くらいかなあ? こっちも試しに正拳突きを繰り返してみると、俺の方が速い。5~6くらいはありそう? うーんよく分からないなあ。雷電と一緒に、ブンブン腕を振っていると声がかかった。
「さっきから面白いことをやっているね。何をしているのかな?」
おおーっとビクッリした。考えてみたらシュールな光景だったかもしれん。腕相撲する子供とゴーレム。かけっこする子供とゴーレム。そんで極めつけは宙に向かって突きを繰り返す子供とゴーレム。笑える……。笑うなー! にこやかに近づいてくる兄ちゃんに返事する。
「性能チェックしてるんだ。戦闘用に作ったのに、まだ使ったことないし。使えるか分からないので!」
あ? この人、雷電よりちょっと低いくらいの背だ。190cmくらい?
「へぇ、もし良ければ手伝うよ?」
「じゃあ雷電、ゴーレムと競争してもらっていいですか? 大人平均の数値化したいので!!」
兄ちゃんが回りに声を掛け、十人集まってくれた。制御じゃなくて出力を上げていれば、もっと分かりやすかったかもなあ。とか思いながら横一列に並んでもらう。なんか恥ずかしそうにしているが気にしない。糧になってもらう。
「よーい、どん!」
カワイイ声が訓練場に響き、参加していない人達の注目を浴びる。
結果は身体を鍛えている魔法士には負け、事務関係の魔法士とはほぼ同着。研究職の人には勝った。フム。
「レディ~──ゴーッ!」
腕相撲も先程と大体同じ結果に。
「やっぱり大人平均は4かなー。たぶん5あれば実戦に投入しても良さそう」
「つまり、今は無理……と?」
「うーん……いえ、盾としてなら平気だと思います。耐久には7つぎ込んでますので」
「となると、攻撃はロコくんが?」
「そですね。プロテクションして突っ込んで殴る……が基本かなあ。攻撃力だけは高いし」
そういえば副長のプロテクション、凄かったよな。この人等はどんな感じなんだろうと思い、聞いてみると見せてくれた。副長のには及ばないまでも、俺達のプロテクションフィールドより魔力が濃く、かなり凝縮されているように見える。ここまで圧縮すると剣や槍などの刃物からも守ってくれるらしい。磁石の反発力が強くなっていく感じといえば分かりやすいかな。
試しにつつかせてもらった。ズブ。
「ぬぁおっ!?」
貫いた。アレーッ!?
「驚いた……本当に攻撃力が高いんだね」
俺も俺も、とプロテクションしているので結局全員分つついた。ズブズブ。
「プロテクションフィールドより鎧のほうがいいんじゃあ……ないですか?」
「一応……剣で切られても羽箒で叩かれる程度にまでは軽減するはずなのだが……」
「えっ? そんなに!? スゴイなあ……練習ちゃんとしないと」
「いや、そのパワーにこっちがビックリしたよ」
でもまあプロテクションフィールドは魔法士にとって基本で大事なものだからと、効率的な練習法を教えてもらった。
手のひらに魔力を集めて圧縮展開。というのを、グー、パー、と繰り返しながら開閉の速度を上げていくそうだ。グパグパグパグパと最速にできたら、体内で同じようにグーパーするんだと。
「難しい……。そういえばボクのプロテクションの強度ってどのくらいなんだろう? ゴブリンとかオオカミの攻撃は全然効かないんだけど、他は知らないし。あ、耐久力の技能が出たからオオカミの攻撃に耐えられてるのかも?」
ってことで俺のプロテクションフィールドをチェックしてもらう。素早く圧縮し、ぬぅんっ! 展・開っ!!
「カモーンッッ!」
ズブ。
「にゃっひゃ!」
「速さじゃなくて魔力の圧縮が大事だよ。注意して」
ギュッとだ! もっとだ、もっと輝け! と声援を受けながら圧縮ぅぅ~ッ──
「ォォオオオッ、はあっ! 来ぉぉいっ!!」
ズブズブ。
「ぎゃはははぁああーあー!! あっひゃ? いいっ!?」
俺のプロテクションをチェックしている魔法士達の後ろに、レイプ目のリラがいつの間にか立って──ってヤバイ!
「リラ! ストーップ!!」
「おわあっ!?」
リラたん怒りの鉄拳はなんとか回避された。全員でプロテクションの練習だと、リラの誤解だと、そう説明したのだが彼女の怒りは収まらない。
だって女の子の身体を大人の男が寄ってたかってつついてんだもの。
そりゃあダメだ!!
みんなでゴメンナサイを三十分くらいリラに言い続けた。俺が紛い物の女の子だから全く気にしなかったのが原因だ。完全に俺のせいだー。
モウシワケゴザイマセンッ!!
<所持品>
財布x4 水袋x2 袋x4 寝袋 ウェストポーチ 油x5 火打石と打ち金
ロープ15m フック付きロープ5m ピッケル ピトン×4 ショベル
保存食x30 革製多目的手袋x6 手鏡 応急セット 傷薬
レコーダーと紐付き革製カードケース 雷電用バックパック
小袋(メモ帳十枚 筆記用木炭 消し木)
タオル×2 バスタオル×2
シャツ×3 チューブトップの肌着×2 かぼちゃパンツ×2
▼破損している物
大人パンツ×2
<装備品>
鉄のトンファーx2 解体用ナイフ ローブ 革のグローブ 剣帯
厚手のシャツ チューブトップの肌着 かぼちゃパンツ ブーツ
<所持金>
小銅貨x13 銅貨x2 銀貨x3 金貨x1
<雷電 為衛門>
出力4 耐久7 速度4 制御2 核LV2
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購入:油x3 革製多目的手袋x4 傷薬 メモ帳十枚 筆記用木炭 消し木
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名 前:ロコ・T・ルリッタ
性 別:女
年 齢:12才
種 族:H・巌の民
所 属:魔法士ギルド
月影の魔女達
存在力:6→4
技 能:生成魔法[AA]
毒耐性 耐久力強化
存在力吸収量強化 魔力操作
存在力順応
▽
種族特性
暗視 筋力強化
言 語:母国語 共通語
称 号:ペタン娘魔女
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名 前:リラ・ポル
性 別:女
年 齢:13才
種 族:兎の民
所 属:魔法士ギルド
月影の魔女達
存在力:11
技 能:交霊魔法
ラヴィッシュ・アーツ
聴嗅覚情報強化 気配察知
存在力順応 投擲
▽
種族特性
脚力強化 鋭敏聴覚 鋭敏嗅覚
言 語:母国語 共通語
称 号:ペタン娘魔女
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名 前:ユユ・ヒッティネン
性 別:女
年 齢:12才
種 族:月の民
所 属:魔法士ギルド
月影の魔女達
存在力:9
技 能:使役魔法[魔獣]
存在力順応 存在力吸収量強化
▽
種族特性
夜目 闇属性
言 語:母国語 共通語
称 号:ペタン娘魔女
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次回ペタン娘魔女AA第十五話「ミスリルチェインの下着ののち、忍者。ところによりハァハァでしょう。とのこと。」にセーットアーップ!
明日からは20:00の一話更新になります。




