13 ゴブリンでいっぱい
2016/8/28 16:00 3/4
「ゲット!」
「よ、よかった~!」
リラは涙ぐんで喜んでいる。大げさだとは思うものの心配させ過ぎてしまったようだ。ユユはパチパチ拍手してくれているが、どこか不満そう。技能取得ができなかったのだろう。
「ありがと! リラ、ゴメンね。心配かけちゃって」
「うぅん、いいよーっ! 無事だったもん!」
「ユユもありがとね! いっぱい吸収するイメージだよ!」
「うん、やる」
「あ、存在力が上がったっぽい」
「ンッ! 私も上がった」
熱い風呂に入った感じがしたので、レコーダーを確認すると存在力は6に上がっていた。良かった、これで休憩中に一気に上がることも無いだろう。はぁ~一安心したぜぃ。ユユは7になったようだ。リラは上がってないから、存在力10ってのは結構な存在ってことなのかねえ。
と、いうことで──ネクストミッションだ。
ロコちゃんは核宝石しか取ってなかったから、リラに教わりながらユユとゴブリンの解体を始める。角を根元から抜く。正直、臭いしヌリュっとしてるし気持ち悪いので触りたくないが、難しいことではなかった。触りたくなかっただけかもしれない。
角と核宝石と討伐報酬で銅貨二枚なので、やるしかない。ユユも顔を顰めて嫌そうにしている。生ごみが溜まった排水溝に汚便所を混ぜたような臭いだもんなあ。
角を抜いたら次は核宝石だ。核宝石の位置は心臓と同じ、というか核宝石が心臓の代わりになっているらしい。肉を裂く感触がナイフを伝わる。胸を開いて肋骨をへし折り、取り除く。これは|肋骨がくっ付いてる真ん中の骨《胸骨》をもぎ取る前準備だ。クッサイ……。真ん中の骨を取り除き、核宝石を掴み、血管を千切りながら取り出して終了。角以外はロコデータと実経験で問題なし。
ユユの顔が青白くなってる。大丈夫か?
「お尻の穴と頭の中、ゲジゲジで繋がった気分……臭い」
「残りは私がやろっか~?」
「自分でやる。リラは見てて」
リラは慣れてんのか、全然平気そう。
「斧があったら中心を外してゴブリンちょん切って、核宝石を取り出せそう」
「それってゴブリンのお肉に手を入れないとダメっぽそうだよー」
「それもそうかあ」
「うぅ、気持ち悪いこと、言ったらダメ」
「あっ、ゴメンねユユちゃん」
「おっと、ゴメンゴメン」
リラと一緒に謝りながら淡々と解体する。さっさと分解して手を洗いたいしな。
ユユはちょっと時間がかかって、二体目は十分ほど要した。葉っぱで手を拭って地面に穴を掘り死体を埋める。みんなで川辺に戻り休憩することにした。
汚れた手袋とナイフを洗う。いつまでも臭う気がするな。剥ぎ取り用の手袋、もっとあった方がいいかも。ついでに核宝石も洗う。ゴブリンの核宝石は五百円硬貨程度の小石サイズで、汚れたトルコ石みたいな物だ。
「ご飯にしよっか!」
「うっ!?」
「い、今からあ?」
「食べられる時に食べないとね!」
「欲しくない……」
「スパルタだ……」
「スパルタ?」
「あー……厳しいねってことだよ、リラ」
そういえばスパルタは国の名前だったか。そりゃ通じない。
ぐったりしているユユを余所に昼食の準備をするリラ。鬼じゃ。鬼がおる。かまど作りと火起こしでもやるか。
食事は薄味のスープと乾パン。せめてもの情けってヤツだろう。なんとか食す俺とユユにリラは言う。
「すぐ慣れるよー。後、五体くらい解体したら!」
キュートな笑顔は悪魔の微笑みに見えた。
「ロコ、オオカミの毛皮、まだ入る?」
「うん、まだまだ平気かな。ボクが袋だらけになるけど」
「いっぱいになったら、後はゴブリンで稼ぐしかないね!」
丁度いいねと笑うリラ。いくないよ……。でも数をこなすならオオカミよりゴブリンの方が稼げるのか。綺麗に皮を剥ぐ必要が無いので時間が掛からない。クサイ、キモイ、ゲーしそうになってもいいなら……の話だけど。よし、ガンバルか!
†
ガンバッタ。俺達ガンバッタ。
俺、存在力9になったよーやったね!
リラは存在力11に、ユユは存在力8に上がった。やったね!
オーちゃんも上がったらしい。やったね!
ゴブリンはみんなで五匹ずつ解体した。その後更に出たゴブをリラとユユが五匹ずつ解体、俺は穴掘りだ。慣れっこだ。例えレイプ目になってたとしても、穴掘り解体なれっ娘だ。やれる娘なのだ。どんどん殺っちゃうよー! ヤッタネ!
どーなってんの!? 体感で六時間くらいの間にゴブリン二十五匹、オオカミ四匹と戦闘になった。ゴブリン多くないか? 俺が報告してなかったから、こんなことになってんのか? ヤバイ。
リラやオーちゃんの索敵が正確なので、先制攻撃できる。投石による遠距離攻撃が有効すぎて一方的な殺戮になってるんだが、数がヤバイよな。
ゴブリンの巣から町までの五日間でもこんなに倒してない。
ということは、増えたって考えていいだろう。
「報告してなかったの、今更だけど悔やまれる……」
「知らなかったんだから仕方ないよー」
「できるだけ殲滅」
少女達に慰められた。ええいナデナデするんじゃないユユよ。洗ったとはいえ、ゴブリンをクチョクチョした手で撫でるんじゃないっ。
まあ……考えようによってはチャンスでもある。力を付けるにはいい機会か。技能もここ二日で増えたしなあ。
リラは投擲の技能を得たそうだし、ユユは存在力吸収量強化を取得、スリングも上達した。
俺は……存在力が増えただけだ。残念っ。でもまあ、俺にとっては存在力こそがキモなので良しとしよう。今は存在力9だから4pは使えるな。耐久をまず上げるのが正解かな? 出しっぱにできるし。……ゴブリンもまだまだ出そうだし。
何はともあれ、今日はここまで。キャンプ地を築こうの巻き。リラとユユは食べられる野草とか探しに行った。俺は──集え精霊。謡えよ、謳え。精霊よ。
「アルター・ゴーレム・セットアップ」
ムニャムニャ呪文を唱えてアーセナルの雷電に接続。強化するッス。
出力3 耐久7 速度3 制御1 核LV1
強化したッス。耐久に4pぶっ込んだ。
ぅうぅっ……相変わらず存在力が減る感覚は嫌だなあ。肛門から内蔵を引っこ抜かれるというか、爪先だけ引っ掛けてビルの屋上からぶら下がるというか……。オヒョォォって感じ。
大人平均を4と仮定すると、雷電を大人にするには後8p存在力が必要ってことだ。
おっしゃ、ガンバロー。まずガンバルのは~? かまど作りだ。雷電を出して一緒に作業する。
「雷電、石を積み上げてかまどを作るんだ!」
雷電は、石を……ひたすら積み上げてた。賽の河原ごっこ? ゴブリンが来たら処分してやるぜ。
平な石を探して持って来るよう命令したら、平な石を見付けた所で止まった……知力が足りねえっ!? ○○を△△。くらいしか命令を出せないことが発覚したッス……。石を積み上げてかまどを作ったのは俺でした。
「ただいまー!」
「…………まー」
二人も戻って来たし、食事の準備だな。といっても昨日と同じメニューなんだけど。汁系しか作らないのは乾パンがパサパサだからなのだあ。この乾パンってさ、日本のよりガッツリした感じなんだよね。お腹に溜まる。そんなこんなでキノコと葉野菜の種類が昨日と違う、雰囲気汁の完成です。
「疲れたー。クサクサのヘロヘロのクッタクタだあ」
「同意……」
今日は早めに休もうと提案するリラに俺とユユは頷く。片付けを終えて、焚き火を囲みながら今日の反省や、明日の予定等を話す。
オオカミの皮はまだ入るけど、時間節約にもなるし今後は尻尾のみとした。綺麗に剥がないと、買い取り価格が下がるからね。
ゴブリンは可能な限り討伐することに。角と核宝石が無事なら問題ないのでビシバシ剥ぐよ。チンポコがひょぉぉってなるけど(チンポコないがそんな感じ)片方だけ剥いて臓器に手を突っ込んで核宝石をもげば、掛かる時間が三分くらいで済むんだ。
問題は死体の処理に時間が掛かるってことだな。といっても穴掘って、放り込んで、土を被せる、で二十分足らずって感じだけど。
「死体ってさ、埋める必要ある?」
「害獣の餌になっちゃうから埋めた方がいいんだってー」
「ゴブリンを食べるのがいるんだ?」
「いる」
「オオカミとか虫なんかが食べるはずだよ」
「ほっとく」
「えー? ダメだよ……ユユちゃん」
「あ、腐ったら帰り道キツそうだ」
結局埋めるしかないっぽいなあ。火魔法や土魔法があれば楽そうだけど、ナッスィング。あれ……毛皮とか平気だろうか? 処理してないからダメになるかもしれないなあ。 まあ腐ったら捨てればいいか。
「ライデン、穴掘らせる!」
ユユの提案に俺はピキューンときて納得した。荷物持ちとか考えてたじゃんかよ。ったく、早く気付……ピキューン!!
(座れ、雷電!!)
思い付きで試したけど、雷電は立ったままだった。思考では命令を出せないようだなあ。ピキューンできない。
雷電とオーちゃんに警戒を任せ、水浴びをして寝ることにした。疲れていたせいで、あっという間に意識がなくなった。
三日目の朝。爽やかに目覚めたかったが、少し離れた所にゴブリンの死体が積み上がっていた。オーちゃんがドヤ顔っぽくキリリとした表情で座ってら。
「グッジョブ!」
ただ、雷電がいない。俺の意識がなくなると帰るんかな? 俺は雷電を呼び出して、森の中に連れて入る。雷電にショベルを渡して穴を掘るよう命じ、二人を起こして解体することにした。
ユユに食事の準備を任せて、リラと一緒に八体分の素材をもぎ取る。今日もゴブリンズとのバトルは多そうだ。となると、雷電はしまっておいたほうが強化しやすいだろうと思い、帰還させる。
しかし……今回の遠征で合わせて四十匹くらい倒してるはず。うへぇ……でも銀貨八枚かあ……うひー。
「ゴブリン安過ぎぃ!」
「どした? ロコ」
「ゴブリンの報酬、銀貨八枚くらいだよ。今」
「しょうがないよ。ゴブリンだもん」
「ゴブリンはクズ。ゴミ。カス。くたばるといい」
リラもユユもゴブリンが嫌いのようだな。当然俺も嫌いだが。金にならんヤツは悪だ!
ハンター達も狙わないから増えに増えてんだろうなあ。俺はまだ見たことないけどイノシシやクマなんかの方が稼げるんだし、埋める手間を考えると……な。
俺等はオーちゃんと雷電が掘ったり埋めたりの手伝いをしてくれるからまだマシなんだけど。
とはいえ、大して進んでないのにボコボコ出て来るゴブリンに、俺達はこれ以上進むことを諦めるしかなかった。
昼になる前にゴブリンを計二十匹討伐とかさ、ウンザリさ。
ゴブ多過ぎぃ!
俺の存在力は7に、オーちゃんも上がったみたい。そして何も考えず、雷電の筋と敏を+1した。してしまった。
疲れたさ。
心がさ。
ちなみにオーちゃんはゴブリンを食べない。文明に触れているせいで、美味しいご飯を知っているからね。
町に戻りながら三人で報告内容を纏める。
川上に向かって二日目辺りからゴブリンが増えている。
五日目辺りにゴブリンの巣がある。
死体の処理に時間が掛かる上に、数が多いので一組のパーティでは突破が困難だと思われる。
「報告、こんな感じ?」
「そうだねー」
「大した広さじゃなかったから、巣に入りきらないあふれたゴブがうろついてんのかなあ」
「火の魔法、欲しい。なぎ払いたい」
そうだな。俺もリラも、思わず頷いてしまった。リラがこんなことに同意するのは珍しい。多分、存在力吸収する技能が欲しくてユユと一緒に、倒したゴブリンの側でスー……ってしてたからだと思う。鼻の中がゴブリンでいっぱいだよーとかボヤいてたしな。敏感な嗅覚で悪臭を吸いまくったら仕方ないだろう。敏感じゃない俺とユユもゴブリンでいっぱいだったよ。リラの鼻の中は物凄い数のゴブリンでいっぱいなんだろう。可哀想過ぎる……鼻の奥がツンってなった。別にゴブリンでいっぱいだからじゃない。
そして残念ながらリラだけ吸収量増加の技能はまだ得ていない。俺があっさり取得したのは存在力の増減が激しくて、本能的に危険を感じていたのかもしれないな。とはいえ、どうせならもうちょっと楽チンな魔法が欲しかったなあ。
計四日のプチ遠征は肉体よりも精神が疲労する遠征だった。夕焼けに染まる町へ辿り着く頃には、三人ともぐったりしていた。更に二回襲われて、追加で合計八匹のオオカミを討伐したし。なんかもう無心で拳を振ってた。でもそれが良かったのか、素早いオオカミにも攻撃を当てることができるようになった。今までは力み過ぎてたみたいだ。そして剥ぎ取りしている時に、俺とユユの存在力が上がった。俺は6、ユユが9だ。
狩人ギルドで素材と討伐の報酬をもらう。
オオカミ討伐数 十八匹 銅貨三十六枚分(肉無しなので一匹あたり銅貨二枚)
ゴブリン討伐数 五十七匹 銅貨百十四枚分
計 銀貨十五枚
一人、銀貨五枚になった。
<所持金の更新>
小銅貨十三枚 銅貨十六枚 銀貨六枚 金貨一枚
町から二~三日の距離にこれだけのゴブリンが出ているので、狩人ギルドも何かしら手を打つようだ。俺達以外にも報告があったらしいし。魔法士ギルドにも報告するよう頼まれた。
報告を済ませた俺達は、ヘトヘトだったので明日はお休みってことにした。町が小夜衣を纏い始める。さっさと帰りましょ~う。ただ、ユユがヘロヘロなので家まで送ることに。リラんちはユユんちのお向かいさんなので丁度いいや。荷物も預かってるしな。
ユユのお母さんに晩御飯を食べていけと誘われたが、まずはお風呂に入ってのんびりしたいので断った。たぶんゴブリン臭いし。
なんだかんだとあったけど、色々得るものも多かったので良しとしようじゃないか!
宿を取って、まったり風呂につかる。ポカポカでいい香りのお湯が心と身体をほぐしてくれた。美味しいご飯で腹を満たしてから荷物の整理をする。必要な物とかリストアップしておいたほうがいいもんな。
えーっと……油一瓶、保存食二日分を消費っと。
血染めシリーズのシャツ&肌着は装備の手入れに使用してボロボロになったので捨てた。
ん~っと……買う物は多目的手袋、装備の手入れ用タオル……か?
あー……っと、装備の手入れ用は一番ボロくなった服でいいか。金がもったいないし。うん、手袋だけでいいや。
明日は買い物と雷電チェックでギルドへ行こう。予定を立てながら柔らかなベッドに潜り込んだ。この世界に来てからは小夜衣など着ない。全裸で寝る派閥に入ったので。枕もフカフカでいい匂いがするなあ。寝袋とは違うぜ! あっという間に俺は眠りに落ちた。
<所持品>
財布x4 水袋x2 袋x4 寝袋 ウェストポーチ 油x2 火打石と打ち金
ロープ15m フック付きロープ5m ピッケル ピトン×4 ショベル
保存食x30 革製多目的手袋x2 手鏡 応急セット
レコーダーと紐付き革製カードケース 雷電用バックパック
タオル×2 バスタオル×2
シャツ×3 チューブトップの肌着×2 かぼちゃパンツ×2
▼破損している物
大人パンツ×2
<装備品>
鉄のトンファーx2 解体用ナイフ ローブ 革のグローブ 剣帯
厚手のシャツ チューブトップの肌着 かぼちゃパンツ ブーツ
<所持金>
小銅貨x13 銅貨x16 銀貨x3 金貨x1
<雷電 為衛門>
出力4 耐久7 速度4 制御1 核LV1
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消費:油x1 保存食x6
廃棄:血染めシリーズのシャツ&肌着
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名 前:ロコ・T・ルリッタ
性 別:女
年 齢:12才
種 族:H・巌の民
所 属:魔法士ギルド
月影の魔女達
存在力:5→6→7→8→9→5→6→7→5→6
技 能:生成魔法[AA]
毒耐性 耐久力強化
存在力吸収量強化 魔力操作
存在力順応
▽
種族特性
暗視 筋力強化
言 語:母国語 共通語
称 号:ペタン娘魔女
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名 前:リラ・ポル
性 別:女
年 齢:13才
種 族:兎の民
所 属:魔法士ギルド
月影の魔女達
存在力:10→11
技 能:交霊魔法
ラヴィッシュ・アーツ
聴嗅覚情報強化 気配察知
存在力順応 投擲(NEW)
▽
種族特性
脚力強化 鋭敏聴覚 鋭敏嗅覚
言 語:母国語 共通語
称 号:ペタン娘魔女
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名 前:ユユ・ヒッティネン
性 別:女
年 齢:12才
種 族:月の民
所 属:魔法士ギルド
月影の魔女達
存在力:6→7→8→9
技 能:使役魔法[魔獣]
存在力順応 存在力吸収量強化(NEW)
▽
種族特性
夜目 闇属性
言 語:母国語 共通語
称 号:ペタン娘魔女
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次回ペタン娘魔女AA第十四話「だって女の子の身体を大人の男が寄ってたかってつついてんだもの。ロコ男。」にセーットアーップ!
次回は20:00です。




