12 夜の帳を星達の瞬きが彩り、情感に浸る少女達は天敵に襲われる。そして福音は鳴らされた
2016/8/28 12:00 2/4
「出た」
「私もーっ!」
「うそーん?」
しばらく進んだ所で、例によってオオカミと戦闘になった。四匹の群れと遭遇。近づくまでに石ころショットガンして、弱ったオオカミに俺、リラ、オーちゃんが突進。殲滅した。
そしてみんなでスゥ……フヤァ~したらさ、なんか出たらしい。俺以外。なんでなんで? スゥっと吸収吸収っ。そんで……いや、考えるな!
スゥ──
『アクセス──個体名ロコ・T・ルリッタ』
おおっ来たっ! マジか!! グッジョブ! 俺っ! 天っ才っ!!
『存在力吸収量強化を取得しました』
「ぎゃああああああ!!」
うああー! それ、ダメなヤツじゃねーの? 馴染ませるヤツ、先に取得しないと死んじゃうヤツじゃねーの!? フヤァ~前だからっ!?
「ど、どした? ロコ」
「な、なーにっ!?」
「……存在力吸収量強化を取得しました……」
二人の顔が青くなる。ダメなヤツだもんな……。
「ど、どうしよう……ロコちゃん……」
「と、と、とりあえず、休憩。溜めたら危ない」
「そ、そうだよね」
少し場所を移動して、得た存在力が馴染むのを待つ。
「…………ふぅ。良かった。存在力5の時、四匹のオオカミでは上がらないみたいだあ」
二人もホッとしている。これはしばらくの間、存在力は減らせないなあ。雷電出してて強化できなかったのが幸いした。存在力4まで下げてたらヒドイ目にあってたかもしれん……。
二人の技能がなんだったのか気になったので聞いてみたら、声を揃えて「存在力順応」と教えてくれた。
「なるほど、それっぽいね。それを早く取得しないと危ないなあ」
「ガンバレ!」
「スゥ……フヤァ~、だよ! ロコちゃんっ!」
「フヤァ~、大事!」
「わ、分かった」
大事なフヤァ~部分をもう少し詳しく聞く。身体の中心から全身に広がるイメージということが分かった。なるほどな!
そんでユユが吸収量強化を羨ましがったので取った時の感じを二人に教えた。たぶん吸収するイメージが強いと取っちゃうんだろう。ゴーレム強化にガンガン減るからそんなイメージを無意識にしていたのかもしれない。
そういえば存在力は吸収しなくても上がったよな。調べ物とか整理とか魔力を込める簡単なお仕事とか。魔力を込める簡単なお仕事か?
「存在力ってさ、訓練とかでも上がるん?」
「上がるよー」
「むしろ3くらいまでは訓練」
「魔力を込める簡単なお仕事でも?」
「上がる」
「でもやっぱり、討伐するほうが上がりやすいのー」
ふーむ上がりやすいか。今の俺には鬼門だなあ。頑張って技能取るしかないが。
技能と言えば空手とか付かないのか? 魔法は付いてるんだからありそうなもんだけど……拳法的な技能は無いのだろうか。あーでも俺の妄想拳法なんか役に立たないってユユが言ってたってことは格闘系技能もあるはず。空手って認識がダメなのか? ちゃんと使ってないってのもあるか。投石とか結構使ってたし中途半端だったかなあ。練習もそんなにしてないし。
あ、というか格闘技能はリラが持ってるじゃん。ラヴィッシュ・アーツってヤツ! 格闘技能あるじゃん! 空手もイケるか……?
「ちょっと次は格闘戦してみるよ。技能取れるかもしれないし」
「π拳なんか無駄!」
「いや、π拳は冗談だけど空手っていう格闘技が使えるんだよ。ボク」
「大丈夫なの~?」
「ちょっと試すだけだよ。夕方までもう少し進んでおこうよ」
「試すの危ない」
「そんな心配しなくても大丈夫だってば」
渋る二人を大丈夫大丈夫と説得して歩みを進める。襲撃は特にない。全身に存在力が広がるイメージをしながらフヤァ~する。難しいな。魔力とは違うエネルギーだし、あやふやなパワーだもんな存在力って。存在力ってなんだ。存在する力? 存在する力ってなんだ。この世界にありつづけるための力? この世界に俺というものを認識させるためのパワー? 世界樹に? 分からん。
スゥ……ふやぁ~。魔力に乗せて広げるのか? すぅ……ふやぁぁぁ……ふわぁ。あぁ……なんだろう? 暖かい。身体を包む穏やかな力……あぁ……そうか、これが──
『アクセス──個体名ロコ・T・ルリッタ』
──存在力。
『魔力操作を取得しました』
「んぬぅぁぁぁああぃっ!」
「きゃっ!?」
「っ!?」
「っと、ごめん。フヤァしてたら魔力操作取得しちゃった。全然違う。ぐぬぬ」
「いいなあ……ロコちゃん」
「うん、羨ましい」
「魔力操作って今までよりコントロールできるってことかな?」
「早い。精密」
「魔力を拳に纏って叩いたら怪我し辛いし威力もちょこっと上がるよー」
「エンチャントウェポンですね? ワカリマスワー」
くっそー何が、これが──存在力。だよ。恥じかかせんなよ。カッコつけてんじゃねーよ? 全然ちげーよ!!
水面を赤く染める夕日が、俺の羞恥を誤魔化した。
今日はここまで。野営の準備を始めよう。俺は石を積み上げてかまど代わりにしたり、テーブルや椅子代わりになりそうな岩を用意する。存在力が上がったからといっても筋力も上がるわけではないみたいだ。ステータス的にはHPが上がる感じなのかね?
俺がキャンプ地を整えている間に、リラとユユが枯れ木や食える野草、キノコとか果物を取ってきた。鍋でお湯を沸かす間に、リラがオオカミ肉をミンチにして香草と山芋(?)を混ぜて肉団子を作った。ミンチにする際に使用した岩はとても肉々しくなったため、川にドボンしておいた。沸いたお湯に食料をぶち込み、具沢山スープにする。
「久し振りに魚を食べたい」
「ダメ」
「ダメだよー?」
「知ってる。いっぱい食べたから知ってる」
毒魚じゃないのがどの魚か分からないもんな。とりあえずニジマスっぽいのがアウトってのは覚えてるけどさ。
取り止めのないことを話しながらお食事タイム。海で食うラーメンや、祭りで食う焼そばみたいな美味しさだった。うん、まあ……雰囲気ご飯はそれはそれで美味しいもんだ。食事を終えて、片付けを済ませ焚き火を囲む。
流れる川のせせらぎが心を癒す。川辺から仰ぐ夜空には星々が瞬いている。涼やかな風に揺れる焚き火の柔らかい灯りに照らされた少女達の横顔は、まるで絵画のようで俺は思わず見とれてしまう。普段から一緒にいるのに、二人の横顔に俺は感動して俺の心を──
「ウンチ」
「あんまり離れちゃダメだよー」
「あんまりだー……」
聞いてた。俺、聞いてた。日本でも異世界でも、子供がウンコの歌を歌ってるの、俺、聞いてた!
言われた。俺、言われた。日本でも異世界でも、子供がソーセージもって「私がなに考えてるか分かるぅ?」ってドヤ顔で言われた!
知ってた。俺、知ってた。日本でも異世界でも、子供はウンコとチンコが大好きなんだって俺、知ってたっ!
ヘニャリと脱力した俺にリラが問う。
「なーに? ロコちゃん」
「うーん……綺麗な星空の下で、焚き火の灯りに照らされた二人の横顔がさ、絵画の中から出てきたみたいで……見とれてたらウンコ。感動した時にウンコ」
「ふ、ふ~ん……それはダメなロマンチックだね……」
「うん。ダメなヤツだった」
「ところで星空ってな~に?」
「え? あ、星じゃ……なくて精霊魂だっけ? ほら、空のキラキラ」
「あぁ、うん。そう。異世界だと星っていうの?」
そうだよーと返事したところに、拭く物がなかったのか指に引っ掛けたパンツをクルクル回しながらガニ股で戻ってくる美少女ユユ。それはアウトだろ~? そして服を脱ぎ散らかして水浴びを始めた。俺も水浴びするか。そういえば気候があまり変ってないような? この世界に来た時も初夏くらいだったような。まあいいか。服を脱ぎ散らかして川に入る。
「うー、ちべたいっ」
「ホントだ! 冷たーい! あはははっ、ヤー!」
リラも入ってきて水鉄砲してくる。俺も手のひらでジャバジャバと水を弾き、リラとユユに浴びせる。弾ける飛沫が月明かりに照らされて煌めいている。まるでこの手に掴める星空だ。それが目の前にある四つの小さなサクランボを彩って思わずむしゃぶり付きたいです! むしゃぶらないけどね。そのくらいの自制心はあるつもりだ──って思ったけど摘んだりしたことあるから自制心なかったかもしんない。ゴメンナサイ!
しかし……水着回ならぬ全裸回とはいかに!?
三人でクタクタになるまで遊んだ。はて、何か引っ掛かる。
「アレッ? クタクタになるまで遊んだらダメじゃん!?」
「あっ!!」
「……ダメ」
男は幾つになっても子供心を忘れないものだ。身体が子供だから問題ないのだ。少々無粋な視線を放ってしまったが子供なので問題ないのだ。
「寝ようかー?」
「うん」
「見張りはどうする?」
「私、耳栓しなかったら気付くよー」
「それって疲れないん? リラ」
「うーん……少しは疲れるかも?」
「オーちゃんがいる。問題ない」
「じゃあ任せちゃうね!」
うーむ、俺って役立たずだなあ……。今のところ力があるってだけだ。なんてこった!
「ガンバル!」
「なーに? ロコちゃん。寝るのをガンバルの?」
「リラ、ロコは考えたことの最後を口に出してる。だから急に変。気……にするの無……駄……」
「分析されてしまった~。そして合ってる気がする……」
「そっか……寝よ? ユユちゃん、もう寝ちゃったよ」
「そだね」
おやすみーと声を掛け合って川辺で川の字になって寝る。なんちゃってー。とか思ってる内に寝てた。疲れていたようだ。そして特に襲われることもなくいつの間にか翌朝を向かえてる。朝焼けが眩しい。ん──~っ、寝袋があるだけでかなり違うなあ。結構すっきり目覚めたぜ。リラは既に起きていて朝食の準備をしてた。
「おはよ、早いねリラ。なんか手伝う?」
「おはよー! ユユちゃん起こしてー。ご飯できるよ!」
「わかった。──ユユ、ユユ、早く起きないとこちょぐりの刑だよー」
「うぅ~ぅ……らめ……」
寝袋から引きずり出して無理やり起こしたユユは、朝食を食べ終わる頃、ようやくちゃんと起きた。
移動が目的なので、なるべく戦闘は避けたい。吸収量強化なんて技能を取っちゃったせいでこまめに休憩を取らないといけないしな。
さーって、行こうか!
今日の目標は、馴染む技能と格闘技能だ。歩きながらフヤァーのイメージ。倒した時のことを思い出しながら練習してみるか。吸収してんだもんな。分かるはずだ。俺の中に入ってくる異世界パワー。馴染め馴染め俺に馴染め。存在力を感知できればなんとかなりそう? そういや、気配察知とかって他の生き物の存在力を感知してる?
「ねえ、リラの気配察知って存在力を感じてんの?」
「え? 分かんない。音とか臭いの気がするけど……言われてみると存在も感じてるのかなあ?」
「う~ん……存在力って謎だなあ。なにかあるってことだよね。分からないのに、あるんだよね? 分からないのにある存在ってなんだろう? 一昔前の旨味成分なん? ダシ効いてないのかい?」
テッテッ、ロリロリ~「ダシのちから」とかありそうだな、Ms.美味しっ娘に。
「ロコ、考え過ぎ。存在力は感じるもの」
「そうだった」
リラとユユは魔力操作の練習をしながら進むようだ。感じる魔力が確かに俺よりぎこちないな。魔法士としては俺より経験を積んでいるはずなのに、なんで俺の方が先に取得できるんだろうと思って二人に聞いてみる。俺との相違点は核宝石に魔力を込める仕事をほとんどやっていない、ということだった。そういや、俺は日銭を稼ぐのに結構やったからなあ。単純に努力(?)の差っぽい。それを伝えるとリラは笑って誤魔化し、ユユは口を尖らせた。二人には退屈な作業みたいだ。生活に追われて退屈な仕事をやるしかないって状況は俺にとって馴染み深いことだった。泣きたい。お、俺だって異世界に来てまでそんなバイトしたくなかったよ! 心の中でそんな慟哭を上げているとオーちゃんが警戒態勢に入る。
「リラ。来るの、何?」
「うん……全部で……六体。戦ってる。……二対四」
多分だけど、と前置きしたリラが言うにはオオカミ二匹とゴブリン四体らしい。よく分かるなあ。鋭敏な聴覚と嗅覚、その情報を的確に判別する強化型の技能と気配察知のおかげだそうだ。目を瞑ってても戦えそうだが、障害物なんかは分からないらしく目が見えないと無理なんだとか。
「殲滅」
「りょーかいっ。ボクに任せてよ」
俺は小さめの石を集めてもらい、三個ずつ投げる。セットポジションから下半身の体重移動とともに鞭のように腕をしならせて、ドワーフ力が火を吹いた。ストラィーック、アウト! 三個投げてるから一投でワンナウトデース。第二投からはドンドン投げる。泣いても許さない。バンバンぶち込む。無敵の遠距離砲撃、主砲正射三連っ! ゴブリン級巡航艦、撃破しました! くたばれゴミども!
「ロコちゃん右っ!」
「ロコ、左!」
リラとユユが同時に叫ぶ。さすがにオオカミには不意打ち以外かわされた。いいだろう。格闘技能取得の糧となってもらおうか!
息吹に合わせ、魔力が身体を覆う。魔力操作を覚えたおかげか、プロテクションの展開が早くなった! 左右から足に襲いかかるオオカミを下段払いで捌きつつ一歩後退。前羽の構えへ。猫足立ちの右前足で体勢を崩したオオカミを即座に蹴上げる。ってうおおっ宙に浮いた!? カギ突きで追い討ち。空中コンボとかどんなロマンよ!? もう一匹は……足をガジガジしてる。痛くない。
「ぬんっ」
覇王風の掛け声を上げて覇王奥義風のチョップで仕留めた。うーん、やはり一対一じゃなきゃ攻撃を喰らうなあ。今後の課題だろう。ちなみに技能は取得してない。さばけるようになったら取れるのかもな。リラとユユはスゥ……をしている。っとフヤァー……広がれ。吸収した存在力、広がれ。身体に巡れ。俺に入ってくる存在力よ、俺の中に巡れ……フヤァ~。あっ、そうか……そういえばゴーレムん時に俺が薄まるヤツじゃんね。だったらそれが俺に入ってきて濃くなる……って違う違う、考えるの違う。無心に、ただ無心に……。
感じろ────
『存在力順応を取得しました』
──脳に響く福音は世界樹レーラズの声。
名 前:ロコ・T・ルリッタ
性 別:女
年 齢:12才
種 族:H・巌の民
所 属:魔法士ギルド
月影の魔女達
存在力:5
技 能:生成魔法[AA]
毒耐性 耐久力強化
存在力吸収量強化(NEW) 魔力操作(NEW)
存在力順応(NEW)
▽
種族特性
暗視 筋力強化
言 語:母国語 共通語
称 号:ペタン娘魔女
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名 前:リラ・ポル
性 別:女
年 齢:13才
種 族:兎の民
所 属:魔法士ギルド
月影の魔女達
存在力:10
技 能:交霊魔法
ラヴィッシュ・アーツ
聴嗅覚情報強化 気配察知
存在力順応(NEW)
▽
種族特性
脚力強化 鋭敏聴覚 鋭敏嗅覚
言 語:母国語 共通語
称 号:ペタン娘魔女
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名 前:ユユ・ヒッティネン
性 別:女
年 齢:12才
種 族:月の民
所 属:魔法士ギルド
月影の魔女達
存在力:6
技 能:使役魔法[魔獣]
存在力順応(NEW)
▽
種族特性
夜目 闇属性
言 語:母国語 共通語
称 号:ペタン娘魔女
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次回ペタン娘魔女AA第十三話「ゴブリンでいっぱい」にセーットアーップ!
次回は16:00です




