10 チンッ!
2016/8/27 20:00 2/2
頬を撫でるやわらかな風に乗って香る草木の匂い。抜けるような青空の下、降り注ぐ陽の光を浴びて、波立つ水面が煌めいている。爽やかな空に、小ぶりで桜色の先っちょが映える。ん……な、んだ? おっぱいの先っちょ的な部分だ?
「んにゃあぁあぁぁあんっ!?」
「起きた」
「ロコちゃん!」
「あっひゃ? ぅあんっ、ろこ触ってんにょっ?」
「ロコ、ウンチ自分で洗う」
「え? ウン……うわあっ! 裸っ、えっ!? 露出タグガボウッゴボッ────ブヘァッ!?」
川から上がろうとしたら、ちゃんと身体を洗えと再び川に落とされる。コント?
話を纏めると、どうやら俺は休憩中にいきなり鼻血と涎を噴いて気絶した後にウンコシッコ漏らしたらしい。川沿いだとウンコ漏らすルールなん?
あー……思い出した。なんか体内が“沸騰するぅっ”的な感じになっちゃったんだ。戦闘後に休憩してたら突然、死を意識する状態になったんだ。
これはいったい……?
えぇ……っと? まず連続でオオカミに襲われた。撃退しつつ移動して、休憩に入った。身体が沸騰して弾けそう、死!? で気絶して……カワイイ女の子の前で……お漏らし……しかも洗われた……うぅぅ。何? なんなんだ? 意味分からない!
ちょっと泣きそうなのを耐えながら予備の服に着替える。荷物を全部持って来て正解だった。ローブは……リラが洗ってくれたみたいだ。ごめん……ウンコまみれのローブ洗わせちゃったっぽい。恥ずかしい……死にたい。
……って、まさかこんな所で伏線が回収されるなんて……なんだコレ? ヒドイ! 死にたくネーヨ!?
「ご、ごめん……その……アリガト」
「ダイジョブ」
「そうだよ! 力を合わせるのがパーティだもんっ!」
とリラが力説する。いや、それは分かるんだけど、分かるんだけどさ。
ウンコだからなあ……。
「急に気絶しちゃうし、心配したんだから……ねえロコちゃん、大丈夫なの?」
「あ、うん。もうなんともないけど……」
「ならいい。あと、私の存在力上がった」
俺とリラはおめでとうと拍手する。ユユはなんか照れていてテレカワイイ。オーちゃんも頭をスリスリして祝福しているみたいだ。
「あれ? 存在力が上がった時ってレコーダー見ないでも分かるの?」
「熱いお風呂入った感じ」
「そうそう、チリチリーってなるんだよねっ!」
熱い……沸騰……俺はレコーダーを取り出して見てみる。
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存在力:6
技 能:生成魔法[AA]
毒耐性 耐久力強化(NEW)
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「うぁ、存在力が一気に+5してるし技能が増えてる……しかも耐久力強化……」
+5かよ。+5はレンジでチンな感じ(?)だったからマジでヤバイ。増えた技能もお得感アリアリだけど死にかて取得とか笑えない。
そういえばLV上がるとLVアップに時間かかる、みたいな状態になるのかな?
「ねえ存在力ってさ、高いと上がり辛くなる?」
「なる。だからロコは変。もう私と同じ。ズルイ」
「しかも耐久力強化なんて盾役の人みたいに何度も何度も何~っ度も、耐えて出るヤツだしねー」
「技能ってすぐ分かるじゃん? 頭ん中にお知らせくるから。でもボクは聞いてないんだ。気絶後だ、コレ。多分死にかけ……たんだ。アレ……」
「ロコは多分、ドワーフと始祖の民のハイブリッド。オリジン、成長早い」
「エルフか小さな民の血も入ってそうじゃない? 耳がちょっと長いし」
「異世界の民、ドワーフ、オリジン、そしてエルフかミジェット。ロコは無節操」
「ボクのせいじゃないし!」
フム、一番濃いのがドワーフってことか。それにしてもH・ドワーフのHってハーフじゃなくてハイブリッドなんだな。カッチョイイ。そんで人間は成長早いのか。それはそれでラッキー。
あ、オリジンってのは普通の人間のことだ。肉体的な特徴はない。成長が早いってのは今知った。
そんでもって俺はなんでドワーフの耳がH・エルフ的な耳と思ってたんだろうか?
耳が長くても、なんの疑問も持ってなかったな。TRPGのルールブックに描いてある小人系種族の絵、耳がちょっと尖ってる系だったし空目したのかな。ミジェットの人は見たことないけど、たぶんそういった小さい種族なんだろう。……オリジンの血よ、ガンバレ! ドワーフもエルフもミジェットも絶対ちっちゃいよ! ペタン娘の称号が無くても四分の三の確立でちっちゃく育ってしまう。ガンバレ!
「それでも早過ぎだよー。オオカミ十二匹で存在力+5って」
「あ、もしかして来訪者補正だったり? チートってヤツ!」
「チート~? 私、ロコちゃん語は分かんないよ」
「えーロコ語って……そ、そんなに変なコト言ってる? ボク」
「言ってるよー!」
「ロコ、ロコ、特異魔法+Hオリジン。それが原因」
「おぉっ、なるほど!」
「そっかあ!」
H人間かあ。俺とリラは思わず納得。ユユを褒めまくった。照れてちょっと赤くなってるユユはまたしてもテレカワイイ。ただ、H人間って字面はHENTAIっぽいな!
女に擬態して女の子とイチャつく俺は紛うことなきHENTAIか。擬態っつーかTSったんだが。まあ男の夢の一つ、透明人間的なアレだよアレ! おっぱい見たいし揉みてーんだよ。男はな。
「今日、終り?」
「そのほうがいいんじゃないかなぁ……」
「え、大丈夫じゃん? まだお昼前だし。ご飯食べてもう少し狩ろうよ」
「だ、大丈夫なの? ロコちゃん」
「平気平気~」
「ダイジョブならやる。私、存在力上げたい。ロコに追いつかれた」
「え~別にイイジャン。どうせ……下がるよ? 雷電を強化するし」
「やる! オオカミ倒す!」
「大丈夫かなあ?」
「倒す!!」
やる気を漲らせ、両手をブンブン振るユユに絆されたリラも結局折れた。まあ、俺も存在力を上げたいしな。軽く食事を済ませて俺達は探索に戻った。そういえば──
「この川の上流にゴブリンの巣があるんだよね。五日くらいかかると思うんだけど」
一人だったし臭かったし、地下は諦めた洞窟。
「そうなの? ほっとくと増えちゃうよゴブリン」
「行く。ゴブリン倒す!」
「準備が足りないよー」
「明日から遠征してみる? 場所はあんまり覚えてないんだけどさ」
「そう……だね。でも一応ギルドに報告もした方がいいよ!」
「そんじゃ、サクっと狩りしてササっと帰ろう」
「倒す!!」
「ユユちゃん、分かったから……」
とはいうものの、そうそう簡単にはいかない。準備をしている最中にリラとオーちゃんが接近する何かに気付いた。俺達は川を背に、包囲されている様子。臭いが風に乗って、おびき寄せてしまったらしい。
「六……ううん、七匹。オオカミの群れ。近づいて来てるよ。プロテクション準備して!」
「殺す!!」
リラが教えてくれる敵の数にゴクリと誰かの喉が鳴る。なんかみなぎっているユユはスリングに石をセットしている。
俺は……どうする? 投石か? 出すか? 耐久力がイマイチ不安だが、まあやってみるさ。フウゥゥ、まずは──
──丹田に魔力を集め凝縮。ギュッと溜めるのに、まだ三秒程かかってしまうが……よしっ! 濃縮魔力をワンタッチの傘みたいに身体へバッと広げる。プロテクションフィールドを展開したところでオオカミが森から駆け出てきた!
間ーにー合ーわーな~い!!
「だーっ! っりゃあっ!!」
石を拾い、駆け寄りながらオオカミに向かって投げつけるものの避けられた。オオカミの接近する速度が少し鈍る。腰に差したトンファーを抜き放つ。右足で足元の砂利を弾きつつ内回しで前方に出して腰を落とす。肘を九十度曲げ、胸の前に腕を八の字に置く。不動八双の構え。下段攻撃に備える。
オオカミは左右に展開して襲いかかってきた。
中央の三匹が俺に向かってくる。リラとオーちゃんは左右に突っ込んで行く。ユユがスリングから放った拳大の石は、俺の頭上を越えて明後日に向かって飛んでった。
「失敗」
練習してないしな。未来に飛んでも仕方ない。
「数が減るまで前に出るな、よっ!」
ユユに声をかけながら気合の一撃を放つが避けられた。オオカミの攻撃に合わせて、カウンターでダメージを与えようとしてるんだけど、カンフー映画の効果音のような音がボッボボッボと鳴るだけ……当らぬ! チョロチョロしやがって!!
「コンニャローッ!」
「ロコ、下手。行け、オーちゃん」
シビレを切らしてオペークパンサーに指示を出すユユ。チョット!? 右側がフリーになったら危ないじゃんユユ! あ、なんかもうオオカミは倒れてる。オーちゃん強っ!
そう思った時、足を甘がみされた。
甘がみ? ペットのイヌがジャレついて、アムアムしてる感じ。
「グルルル」
「んんにゃらああああああっ!!」
齧られた足で内回し蹴りを放ち、オオカミを巻き込むように大地へ叩き落とす。プニプニのあんよが命を刈り取る死神の鎌と化す。くるりんぱ。
「ァァアアアァァィッ」
気合とともに震えるほど力を込めると、足元から骨の砕ける音が響いた。燃えよ龍っぽくなっちゃったが他意はない。関係ないけど、JCの裸画像なんかで有名な酔拳とかで主役のJ・CさんはB・Lさんに首の骨を折られる役で出てた。全然関係ないけど。
そんな俺の横をリラが走り抜ける。後ろを振り返ると既に始末されたオオカミが転がっていた。強いなーリラ。そして逃げ出そうとしていたオオカミに肘打ち。悲鳴を上げて倒れ伏した。
ユユが駆け寄ってくる。
「ダイジョブ?」
「問題なし!」
ん。と返事をしたユユはオーちゃんに引き倒されているラストオオカミを叩き始めた。
「ギャインッギャインッギャインッギャインッギャイ──ン……」
ユユの「死ぬまで殴る」ってヤツだ。うーむ、ユユはもっと力を付けたほうがいいかもな。
俺は大して役に立ってない……やはりオオカミは苦手だ。うーむ……。リラがなんか生温かい目でコッチ見てる。うぬぬ。
「ロコちゃん、大丈夫?」
「ん? ああ大丈夫。ペットのイヌにジャレつかれたくらい」
「耐久力強化、いい仕事してる」
「へぇ~結構、軽減してるみたいだねっ!」
「だねっ! 儲けっ! ヌー……ジェネレイト・ショベル──セットアップ」
「儲けって……死にかけたんでしょ~? 毒耐性の時も……」
雑談しながらオオカミを集め、ショベルを生成。呆れられつつも穴掘りを開始。
「ロコは一人だと死ぬ。明確」
「ロコちゃんは守ってあげないとダメだね!」
「うん。お姉ちゃんが守る。決定」
「また、お姉ちゃん、ぶり、だした、しっ……と」
それじゃあ、解体を始めようか。
リラに教えてもらいながら、ユユと一緒にオオカミの皮を剥ぐ。前足を切り取って他は穴にポイ。肩と首辺りの肉が一番マシらしい。肩ロースってヤツかね。その他の部位は買取不可なんだってさ。ちなみに核宝石はない。魔獣ではなく野獣だから。でもゴブリンより強いんだよな。だから討伐報酬はゴブリンより高い。肉と皮も合わせて銅貨三枚。ゴブリンの1.5倍だ。新米ハンターには丁度いい感じ。ちなみにゴブリンは角+核宝石+報酬で銅貨二枚。
そんなことを考えながら場所を移して休憩に入る。十二匹で+5だったが七匹だとどうだろう。あ、でもあの時は存在力1からの上昇だったからか。レコーダーを確認。えーっと今は6だから、存在力は上がらないかな。
「んっ? 上がった」
「ムッ!? ズルイ!」
「ロコちゃん早~い」
「あ、オーちゃんも上がった。ヨシヨシ」
俺とオーちゃんの存在力が上がった。ユユにはズルイとか言われたが、今はオーちゃんを撫でながらニコニコしている。オーちゃんはなんかウニャウニャ訴えている。カワイイ。
しかし、なんだろうね。女の子に早~いとか言われたら胸にくるものがある。DTだけど……。
さて、オオカミ戦が終わって思った。この辺りでの狩りなら存在力4~6くらいが丁度いいかもしれないと。存在力が上がりやすいみたいだし?
と、なれば──魔法円を展開して世界に書き込む魔法の呪文。集え精霊。謡えよ、謳え。精霊よ──
「!?」
「えっ!? 何やってんのロコちゃん!」
「アルター・ゴーレム、セットアップ」
ゴーレムの兵器工場に接続し──其の身で大地を震わせよ。九十九の御神の巌巌の、腕力は旗印。頭顱を象る黒曜の、大なる銀杏の冠よ──雷電に繋げる。
<雷電 爲右エ門>
出力3 耐久3 速度1→3 制御1 核LV1
「は~ん、こうなるのか……フム。いや、ちょっと雷電の強化をね」
「さっき痛い目に遭ったばっかりなのに……存在力下げるぅ?」
「ロコは考えなし」
「おっし終わった。大丈夫だよ。存在力-2くらいなら大丈夫でしょ。っとそうだ、ンンンッ、ロード・ゴーレム、セットアップ……来い! 雷電。ボクと腕相撲!」
展開しっぱなしの魔法円から雷電が現れる。筋力チェックだ。レディ、ゴー! はい、俺の勝ち。弱……なんだ……弱……。速度は? ちょっと歩かせてみる。俺等が歩く早さくらいか。大人が歩くよりは遅い。フムー。
「リラ、ユユ、雷電と腕相撲してみて。筋力チェックして数値化したいんだ」
「また突然変なコト言い出した……」
「……わかった」
リラには負ける。ユユには勝つか。ユユは身体を鍛えてるわけじゃないし一般の子供と同じくらいだとすると、子供平均は2くらいかなあ。3だと大人に届かない感じだし大人は4以上なのかな。
うーん……戦闘にはまだ使えないなあ。荷物持ちと穴掘りくらい? 天下無双遠い……。もう一個くらいなら強化してもいいだろうと思ったのだが、出してると強化できなかった。残念。
「ちょこっとずつ強化するしかないなあ」
「帰ってから強化すればいいのにー」
「リラ、ロコに言っても無駄」
「ソナコト、アリマセーンヨ?」
二人はジトーっと俺を見てる。もっとカワイイ顔で見ておくれ?
<所持品>
財布x4 水袋x2 袋x2 ウェストポーチ 油 タオル×2 バスタオル×2
火打石と打ち金 ロープ15m フック付きロープ5m ピッケル ピトン×4
保存食x6 革製多目的手袋x2 手鏡 応急セット ショベル
レコーダーと紐付き革製カードケース
厚手のシャツ シャツ×2 チューブトップの肌着×2 かぼちゃパンツ×2
▼破損している物
血染めのシャツ 血染めのチューブトップの肌着 大人パンツ×2
<装備品>
鉄のトンファーx2 解体用ナイフ ローブ 革のグローブ 剣帯
シャツ チューブトップの肌着 かぼちゃパンツ ブーツ
<所持金>
小銅貨x21 銅貨x4 銀貨x1 金貨x1
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素材:オオカミの毛皮×19 オオカミの肉×38(両前足分)
生成:鉄のショベル
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名 前:ロコ・T・ルリッタ
性 別:女
年 齢:12才
種 族:H・巌の民
所 属:魔法士ギルド
月影の魔女達
存在力:1→6→7→5
技 能:生成魔法[AA]
毒耐性 耐久力強化(NEW)
▽
種族特性
暗視 筋力強化
言 語:母国語 共通語
称 号:ペタン娘魔女
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名 前:リラ・ポル
性 別:女
年 齢:13才
種 族:兎の民
所 属:魔法士ギルド
月影の魔女達
存在力:10
技 能:交霊魔法
ラヴィッシュ・アーツ
聴嗅覚情報強化 気配察知
▽
種族特性
脚力強化 鋭敏聴覚 鋭敏嗅覚
言 語:母国語 共通語
称 号:ペタン娘魔女
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名 前:ユユ・ヒッティネン
性 別:女
年 齢:12才
種 族:月の民
所 属:魔法士ギルド
月影の魔女達
存在力:5→6
技 能:使役魔法[魔獣]
▽
種族特性
夜目 闇属性
言 語:母国語 共通語
称 号:ペタン娘魔女
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次回ペタン娘魔女AA第十一話「稼ぎの全てをアサシンにつぎ込まざるを得ないほどの憤懣に駆られる少女は勇ましき詩を歌い魔法の理を認識した──スー・フヤァ──」にセーットアーップ!
次話は08:00です。




