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あくまで家庭教師  作者: たまお
1/5

ゼブル1

ひさびさに形ある世界に引っ張られる感覚がした。

具体的にいえば全身に釣り針を引っ掛けられるような感じだ。

やれやれ、この引っ張られ方からするに余程強い力の持ち主らしい。

こういう力のある人間は怒らせると厄介だし、

さっさと願いをかなえて帰るに限る。

ろくでもないことを頼まれないように祈りつつ

俺は形ある世界にたぐり寄せられていった。


ここで大事なのがなんでもいいから姿を持つ事だ。

形なき世界の住人はそのままでは存在できない。

スライムでもデーモンでもなんでもいいんだが

俺はあえて人の形を取ることにしている。


人間の姿をしてると罰を受けにくいってのがあるし

厄介な事も起こりにくいからだ。(ずっと前ににデーモンの姿を取った時は協会に追い回されるわ天使に消されそうになるわで散々だった。)


今回なるのは灰色のローブをまとい人懐っこい顔をした浅黒い肌の青年だ。

この姿は自分でも気にいっている。

このやさしそうな顔に免じて早く帰らせてくれよと

願っていると不意に光が満ち溢れた。

召喚されたようだ。




まず目に入ったのは独特の模様が入った魔法陣だ。周りを見渡すと魔法陣は一つだけではなく多数あることがわかった。

しかもどの魔法陣の前には子供がいて、何かを唱えている。

(大規模な召喚だな・・・戦争か何かするんだろうか。しかし子供に召喚をさせるのか?めんどくさそうだ。)


そんな事を考えていると

「おい!見てみろよジェシカの奴人間を召喚してるぜ!」

と男の子の嘲るような声が聞こえてきた。

そのは男の子俺の魔法陣の近くを指さし

腹を抱えて笑っている。

(うーん、人間って俺の事か?ってことはジェシカって子が召喚者か!

さっさと願いをかなえて帰らせてもらおう!)


そして男の子の指差す方に目を向けると一人の

女の子が半泣きでこちらを睨みつけていた。

13~15歳ぐらいでショートの金髪とルビーのように赤い目が美しい

利発そうな子だ。


「えーっと・・・ジェシカ?でいいのかな?

俺はゼブルって言うんだけど・・・」


できるかぎりの人懐っこい笑顔でやさしく声を掛けるが

その一言で何かが女の子の何かが切れたのか

端正な顔をゆがめて

声を出して泣き始めてしまった。


「ちょ、ちょっと!そんなに泣かないでよ!」


急に呼び出されて泣かれるとか俺の長い人生でもめったにない事だ。

オロオロとしている俺の前で声を上げて泣く金髪の女の子。

女の子が泣きやむ様子はなく

周りの子供たちも何事かと集まってくる。


そんな中を

「なんだ!騒々しい!」

と白髪で神経質そうな顔をしたおじいさんが子供をかきわけて近くにきた。


「なんじゃこれは!ジェシカ!この授業では小悪魔を召喚しろといったはずだ!

人間を召喚しろなどと誰が言った馬鹿者め!」


その言葉に周りの子供達がどっと笑う。

それまでまで泣いていたジェシカも周りに苛立ったのか


「違います!魔法陣に間違いは無かったし呪文だってきちんと・・」

「言い訳するな馬鹿者!多少優秀だから庶民でも今まで

おおめに見てやっていたというのに!

貴様のような奴はアインツ魔法学校にはいらん!

荷物をまとめてここから出て行け!」


その一言でジェシカの顔は真っ青になった。


「そんなっ!お願いします退学だけは!」

「くどいぞ!今日の授業はここまでだ!さっさと寮にもどれガキども!」


白髪のおじいさんは肩を怒らせてどこかにいってしまい子供達も冷笑を残して教室をでていってしまった。

そして教室に残ったのは俺とジェシカの二人だけになってしまっていた。

正直まだ展開に追いつけていない。


「なんか・・・ごめんね?」


恐る恐るジェシカに声を掛けてみる。


「い、いいわよ別に。こっちこそどっかから引っ張ってきたりして

わ、悪かったわね。」


しゃくりあげながらも返事を返してもらえてほっとする。

これでまた大声で泣かれたりしたらどうしようかと思っていたところだ。


「それでね・・・俺の名前ははゼブルって言うんだけど・・・」


いまさらなにを、といった表情でジェシカが睨みつけてきた。


「あの、一応君の名前を直接教えて欲しいんだけど・・・。フルネームで。」


はあ?といった顔になるジェシカだがすぐにああ、なるほどといった顔になる。


「そうね、フルネームがわからないと後で面倒だものね。

(迷惑料とか請求できないし)

ジェシカ・ルーベルトよ。」


「ありがとうジェシカ・ルーベルト。じゃあ願いを聞いてもいいかな?」


ジェシカはポカンとした顔になり、次にちょっとほほえんだ。


「あのね、無理に気を使わなくても大丈夫よ。

私はもうこの学校の生徒ではないから

力はないし、元が貴族じゃないからあなたに危害をくわえたりもしないわ。」


そういって悲しそうにうつむいた。さっきの白髪のおじいさんの言葉をおもいだしたのかルビーのような目に涙がたまっていく。


「ただ願いがもしかなうなら・・・この学校でもっと、勉強して、国で一番の魔法使いになり、たかった・・・。」


しゃくりあげながら途切れ途切れに言葉をもらす。

俺は肩を震わせているジェシカの頭にそっと手を乗せて


「その願い、ゼブルの名に懸けてかなえるよ!まずは退学を取り消させないとね!」

人懐っこい笑顔でそう言った。



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