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SAMONNER  作者: churunosu
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あっ、忘れてた。

・・・ん?ここは・・・?


朦朧とした意識のなか、俺は目を開ける。


・・・知ってる天井だ。というか俺の部屋の天井だった。じゃあさっきのは全部夢だったのか。そう思って、起き上がろうとするが、


・・・重い。胸の上にリュックサックでも乗せていただろうか?


無理やり体を起こすと、水色のリュックサックは「ぎゅむっ!」という音をたてて胸の上からベッドの下へと転がり落ちる。


まあそんなリュックサックは持っていないわけで、


一体俺は何を乗せていたんだろう?そう思い、俺はベッドの下を見下ろす。そこには、


「ちょっ、いきなり起きないでくださいよ・・・。」


水色の髪をした美少女、ハヅキが痛そうに鼻をおさえていた。口の端にヨダレの跡が付いている。


「・・・寝てたのかよ」

「いいえ、看病してました、レイジさん。」


誇らしげに彼女は胸を張る。ただでさえ結構大きい胸がより強調された。

健全な男子であるところの俺は目線がどうしてもそこに吸い寄せられてしまう。

おいおい、こいつもしかして重力魔法使えんじゃねえの?


「レイジでいいよ。睡眠薬だって言ってたじゃねえか、別に大丈夫だ。」

「私もハヅキでいいです。そんなわけにはいきません。肩の傷だっていつ開くかわからないですし。」


肩には包帯が巻かれていた。ハヅキが巻いてくれたのだろう。


「なあ、そういえば今日は何日だ?あの後どうなった?」


あの後とは勿論ハヅキが誘拐され、それを俺が助け出した日の事である。


「今日は5月24日の午後4時ですね、レイジさんが眠った日の翌日です。

あの後私は一度小屋を出てギルドに戻りました。その後ギルドに報告して、救援をつれてレイジさん達を家まで送り届けたわけです。」

「ここ、俺の部屋だよな。」

「すいません、手帳を見せさせていただきました。」


そうか、俺はいつもウエストポーチに手帳を入れている。


俺が、俺の部屋にいることを納得していると、ハヅキが不思議そうに聞いてくる。


「あの、対睡眠作用のあるって言って飲んだアレ、何だったんですか?」

「ああ、あれか、あれはフィッシュバーガーのソースだ。つまりハッタリだ。まだギルドに登録もしてないやつが解毒薬なんて準備できてるわけない。」

「えっ、」


ハヅキは驚いたような顔をする。その表情はだんだん以前見た見下したような顔になって、


「やっぱり冒険者って、馬鹿ばかりなんですね。なんだか尊敬して損した気分です。」


・・・ふむ、性格にも変化なし、と。

けっこう可愛いと思って損した気分です。

だが、起きるまで見守ってくれていた事には感謝しているので、


「ありがとう、もう大丈夫だ。」

「そうですか、ではわたしはこれで、」


ハヅキは玄関に置いてあったカバンをもって部屋を出ていく準備をした。

玄関のドアがしまる途中、彼女は頬を少し赤らめて、


「でも、戦ってるとこ、結構かっこよかったです。」


と言って出ていった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



この国では17才になると、自分たちの職業を選ばなければならない。

ラダマント王立学院、そこはこの国に数ある学院の内の一つだ。

ここでは、騎士(ナイト)射手(アーチャー)罠師(スカウト)召喚士(サモナー)魔術師(メイジ)死霊術士(ネクロマンサー)の職業を選んだものたちを育てるための学院だ。

中でも騎士科は入ろうと思う人数が年々増えているらしく、俺はその試験で落ちてしまった。

ラダマント王立学院の様な戦闘系の職業を育てる学院の他にも、

神官(ブリースト)付与術士(エンチャンター)聖騎士(パラディン)回復屋(ヒーラー)のような教会系を育てるアルメサス大聖堂。

考古学者(アケオロジスト)錬金術士(アルケミスト)法律学者(ロワイア)数学者(マトマティカ)のような学問系を育てるクロニカ私立学院などがある。



ところですっかり忘れてたんだが、俺は入学式をサボってしまっていた。

今日は5月25日の午前9時、普通なら今日は学校は休みなのだが、いきなり二日もサボった俺は昨日の分の必修授業を今日受けることになっていた。俺は何を言われるのかと少し緊張しながら職員室に来ていた。


さすがに入学早々に二日も休んだら何を言われるかわかったもんじゃない。


ふと、前から気だるそうな男が歩いてきた。フラフラしている。

男は俺の目の前で立ち止まり、


「ああ、てめえが二日もサボった馬鹿か、」


いきなりそう言い放つ。

だが全くその通りだ。文句は言えない。


「召喚術の講師のレイファーさんですね。召喚士科のレイジです。ご迷惑をお掛けしてすいませんでした。」

「ったくだ、あー、ダリぃ。とにかくさっさと済ませるぞ。」


そう言ってレイファー先生は廊下を歩いていく。俺はそのあとをついていく。



着いたのは大きなグラウンドだった。そこには神官の服を着た女性が一人突っ立っていた。


「あー、アイツは神官?だっけな、のイェーハだ。ここで職業付けてもらってこい。」


そう言ってレイファー先生は俺を前に押し出す。


あの服で神官じゃなかったら法律違反だろ。


そう思いつつ、俺は前に進み出る。


「召喚士科のレイジさんですね、待っていました。では、さっそく儀式をとり行いたいと思います。」

「はい。遅れてすいませんでした。」

「いいですよ、毎年何人かは遅れますし。今年も騎士科の方でもう一人遅れた方がいらっしゃいます。」


そう言ってイェーハ先生?は、自分の周りに魔力で大きな魔方陣を作って魔法の詠唱に入った。

たちまち俺の周りに大量の魔法文字が浮かび上がり、上下左右に動いて組み合わせを変えていく。

だんだん文字が一列になり、俺の周囲をぐるりととりかこむ。

ハア!と、イェーハが力を込める様な仕草をした瞬間、一気に魔法文字の間隔が狭まった。

中心にいた俺の体に魔法文字が入り込む。


キィンという音がした。


・・・それだけだった。自分の体の周りをみても、特に何もなく、


ただのグラウンドに俺が立っているなあ。


としか感じなかった。まさか失敗!?と思って首にかけたステータスプレートをみると、


job samonner(new)


とだけでていた。


「あの、これだけですか?」


思わず聞いてしまう。


「あぁ、そうだが?っつーか何でみんなそんな同じ反応しかしないのかね?」


と、レイファー先生に言われる。


・・・マジか。


もうちょっと派手なもんだと期待していた儀式はかくもアッサリと終わった。


「ん、もうめんどいからここで召喚士の授業始めちゃうぞー。」


そう言ってグラウンドの隅で勝手に授業を始める。


「わー」


パチパチと横でイェーハさんが拍手する。


何て能天気なんだ・・・


かくして俺は青空教室で授業を受けることになった。


「えー、まず召喚士とは、自らの精神に宿る守護魔獣、または自分が契約した人、魔獣、精霊を自分の周りに召喚して戦う職業だ。

一人が契約できる数は、守護魔獣の素質で変動するぞー。

ま、ヤバい記録には127体分もの契約をとり行ったやつもいるが、大抵3~8体だ。気にするなー。

守護魔獣を召喚すれば、左右どちらかの手の甲に紋章が宿る。

契約する度にその紋章に色がついていく。127体のやつは多すぎてベクトルになったらしいぞー。

契約した人、魔獣、精霊はー、魔力を払えば召喚できるってだけじゃなく、

契約しただけでお互いの強さに応じてお互いにステータスの上昇効果を与えてくれるからなー。」


わー、お得ー!と、横でイェーハさんが合いの手を入れる。

なんでそんなにノリノリなんだよ、

と心の中でツッコミながら続きを聞く。


「守護魔獣は、すべてが自分の精神に宿っているから、召喚しても魔力に影響はない。

だが、契約した奴らは召喚する度に魔力を食うから気を付けろー。

ま、それよりもステータスの上昇率のほうが高いから特に気にはならん。

せいぜい魔力切れを起こすなってことだ。

あと、守護魔獣と、契約した人、魔獣、精霊すべてにいえることだが精神、魔力を一部や全部共有している。だからお互いにしゃべらなくとも話せる。いわゆるテレパシーだな。

最後に、召喚士同士の契約、一度他の召喚士と契約した奴は自分とは契約できないから気を付けろ。

ま、こんなとこだ。

それじゃあさっそく新米召喚士のレイジ君に守護魔獣を出してもらいましょー。」


「おー、がんばれー。」


レイファー先生は話してるうちに目が覚めたらしい。

んっ!と、伸びをして、この広いグラウンドに出ている部活中の学生を全員立ち退かせる。


「守護魔獣って、そんなにでかいんですか?」

「いや、小さいやつもいるが、毎年2,3人はすげえでかいの出すんだわ。

そんで前にちょっと事故が起こってな、近くで訓練してたメイジども20人が軽く吹っ飛んだ。」

「今年は4人が大きいの出しましたねー。」

「・・・。」


ちょっとじゃねえよ。大惨事じゃねえかそれ。


頭のなかでツッコミながら、俺は魔力を使い、地面に魔方陣を描く。

最初のみは守護魔獣を呼び起こすために十分な魔力がいる。

召喚士の試験で魔方陣の描き方、適性検査については合格している。

果たしてどんな奴が出てくるのか、そう思いつつ、


どうせならでかくて強いやつがいいなあ。


と、考える。すると、


パアッ


魔方陣が輝き、魔方陣の中に組み込まれていた魔法文字がうかびあがり、ドームを形成する。

ドームの中の光の量がどんどん増えていき、目で直接見れなくなった途端、


パァン!


という音をたててドームが破裂!

果たして中にいたのは



黒いプレートに赤いヒビの入った鎧を、腕と脚に着け、胸と腰にはピッタリとしたこれまた黒い布をまいた

金髪の・・・自分と同年齢程の少女だった。なぜか腰に竜の翼のようなものをはやしている。



鋭く紅い目でこちらを見据える少女はすごく綺麗だった。


自分の手の甲を見ると、禍々しい赤黒い紋章がうきでてでいる。


「っていうか、人が出ることってあるんですか?」


予想では大きな狼のようなものを期待していたので少し拍子抜けしながらもレイファー先生に聞く。


「おお、すげえのが出た。」


なぜか軽く目を見開いて口を開けている。

今のレイファーさんに気怠そうな空気はない。

とても鋭い眼差しを少女に向けている。


「人ですよね?」

「いや、違うよレイジ君、彼女は・・・」

「竜人族だ。」



竜人、それは一般には思考力をそれほど持たない竜が長い月日を経て知恵を持ち、人の形をとったもの。

千年生きた竜がそうなると言われているが、実際に確認することができず、

大半は人を見つけると襲って来るため、接触すら困難。

人間の思考力と、竜の理不尽なまでの強さをあわせ持った世界でも最高レベルの強さを誇る生物。



とっさにレイファー先生は身構え、イェーハさんはキレイーと呟く。


(あなたが(あるじ)ですか、すいませんが・・・)


テレパシーだろう、脳に直接声が聞こえる。


「話しかけてきてます。」

「あんまり刺激するんじゃないぞ。」


グラウンドの隅に緊張感が溢れる。と、少女が大きく身体をのけ反らせ・・・


ヘクシュ!


くしゃみをした。レイファー先生、イェーハさんがビクビクゥ!と跳ねる。


(そのコートを貸してくれませんか?)


寒そうに伝えてくる。

コートとは俺の着ている召喚士科であることを示す白いラインの入った黒いコートだ。

ちなみに騎士科は赤いラインに白、罠師科は緑のラインに赤、射手科は灰色のラインに緑

死霊術士科は紫のラインに灰、魔術師科は黒いラインに紫だ。

1~5月、10~12月はそれを着ていれば下に何を着てもかまわない。


(良いけどそんなに寒い?)


もう5月下旬、普通に暖かい気候だ。


(一般には強いと思われがちな竜人族はすこぶる寒さに弱いのです。)


ダッ!とこちらにダッシュしてきて俺のコートを奪う。


あまりにも速い動作に他の三人はついていけなかった。


しかし大きな黒い手甲(ガントレット)のせいでコートに腕が通らない。

ガッガッ!と何度か苦戦した後、ビリッ!と脇の部分を破いてしまって泣きそうな顔を向けてくる。


はあ・・・。


「その大きなガントレット外せよ・・・。」


そこでようやく気がついたらしい、両手の手甲を外して地面に置く。

ズン!と、重そうな音がして手甲の置かれた周辺に小さなヒビが入った。

何て重さなんだ。


ようやくコートを着れた事に満足したらしい。

襟をあわせて「はふぅ。」と、満足げな息をついた。


さっきの脅しのような竜人についての説明は何だったのだろうか?

ずいぶん友好的かつ使役(あつか)いやすそうな少女だ。


さっきまで身構えていたレイファー先生やイェーハさんも「この子やっぱり人族かしら?」などと相談する始末である。


「なあ、大丈夫かアンタ?」


さっきまで歯をガタガタ言わせていた少女に質問する。


「ああ、名前を言っていませんでしたね。

私の名前はエクリプス・レーヴァンティン、千年竜(サウザンド)です。

以後お見知りおきを、主。」


そう言ってエクリプスはペコリとおじぎした。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「竜人か、結構レアなやつがでたな。」

「そうですね。でも、強いかどうかは一度闘わせないと分かりませんね。」

「それにしても、アイツの腰にぶら下がってたサーベル、どっかで見たことあったんだが・・・。」

「案外、昔の知り合いの息子さんなのかもしれませんね。」

「まあ、この学院にいる見習い召喚士は5000人、竜人はあいつ以外に10人いる。」

「守護魔獣の強さに溺れなければいいですね。」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「ん、これで昨日の授業の内容は終わりだ。明日までにこの用紙に書いてこい。」


その後、レイファー先生に召喚士科以外に自らの希望で受ける授業を記す用紙を渡され、俺は学院を後にした。

召喚士科は、召喚術の授業以外に基本魔力操作の授業を受け、それ以外の授業最低2つを取れば、卒業だ。


(なあエクリプス、お前って守護魔獣になる前の記憶ってあるのか?)


帰り道、エクリプスに何となく気になったことを質問する。


あの後、寒がるエクリプスを自分の魔力に戻したのだが、その後も声にせずとも会話できるようになっていた。


(ありますよ。というか主は私の正体を知っているはずです。)

(えっ?いや、全然覚えが無いんだが。)

(ふむ?主は使えるでしょう、重力魔法。)

(おいおい、じゃあまさかお前・・・)

(はい。かつて人間たちにギガンテスと恐れられ、勇者の手によって殺されたあの竜です。

主は私の血を受け継いでいる唯一の人間ですよ?)


(・・・マジかよ。)

怒涛の勢いで書きました。

よろしくお願いいたします。

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