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~実は異世界の処刑人の家系でした~  作者: 悲涙煌蘭
第一章 真受
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9修行ファイル3 雪那は天求山で

雪那は眠れなかった。家という場所は心を癒す空間であり、一番心落ち着く場所だと思っていた雪那だが、その考えは間違っていたと思い始めた。


それもそのはず。今まで日本という国で暮らしてきた孤児院でもこんなことはなかった。

いや、あるわけがない。



―――――家が氷でできているなんて…。



壁にイス、風呂場やベッドでさえ氷でできている家がこの世にあるなど誰が考えるものか。

風呂の湯船?すら冷水なのである。


(…………夢であってほしい)


心の中でそう思う雪那。

現在雪那がいる場所はアファルシュの北にそびえ立つ、この世界で第三位の高さを誇る山『天求山てんきゅうさん』の中枢、約12817m(全体で25624m)地点にある家にいた。


召喚前の気候が秋の終わりに対し、こちらは1月。この時期のアファルシュの山々はみな山頂部分を白く染める。(なお、蒼真たちのいる『ナウシャル』はとある方法にて白く染まらずにいる)


なお、今更であるが、四人が現在すんでいる場所は実は別荘であり、本来の家は王都の中心部にある。その事を聞いた雪那は内心ほっとした。しかしその後、二ヶ月はここで修行をすると聞いて表情を凍りつかせた。


~~それから一週間がすぎたある日~~


相変わらず吹雪いている家の近くで雪那と雪那の父晶夜はある魔物と対峙していた。その魔物の名は『ダノウルアウス』通称“赤目の雪男”。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

《ダノウルアウス》

高ランクの魔物で単体でも一般人であればひとたまりも無い。体重は約20~30㎏程度。身長は約2~3mくらい。特徴はその巨体を覆い隠す白い毛と、その隙間から獲物を狙う赤い瞳。主な攻撃方法は木でできたハンマーや岩など。その巨体からは想像できないほどの俊敏な速さで移動するため苦戦する人も多い。更に、吹雪いてい山などにしか出没せず、吹雪でその身を隠すなどの隠密能力も高い。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


それが現在六体二人の目の前にいる。普通ならここに来たことを後悔し死ぬか生きるかの戦いに出るか、逃げるかなのだが…。


「ねぇ、この魔物って強いの?」

「ん?弱いぜ、お前からしたら。」

「………………ホントに?それはそれで嫌なんだけど。」

「とりあえず俺が一、二匹サクッと殺るからマネでもオリジナルでもいいから殺ってみろ。」

「う、うん。」


そう言って晶夜は右手を前にだし手を広げた。

そして………


「まずな、自分の手のひらに冷気を集めるイメージをしろ、そんでもってそれらを固めるイメージをするんだ。…………こういう風にな。」


そう言った瞬間、晶夜の手の前で氷の塊が生成された。その氷は先が剣のようになっており、更に回転し始めた。


……そして放たれた。放たれた氷の塊は一直線に進み一体のダノウルアウスの体を貫通した。その痕から大量の血が出血し、地面の雪を赤く染めた。


「後はそうだな…今のが一番簡単な形だがもうちょい頑張ればこんなのもできるぞ。」


そう言って両手を地面につけた晶夜。そして…


「『氷瞬建柱グランディティーアイス』」


刹那、一本の先の尖った氷の柱が地面から突き出て、またも一体のダノウルアウスを絶命させた。

その事によるためか、他のダノウルアウスの殺気が強くなる。


「ってまぁこんな感じだ。やってみろ。」

「自分の好きなやつでいいの?」

「ああ、好きにやれ。詠唱とかも好きにしろ。俺は日頃から使わねぇからどういうものがあるかは知らんがな。」

「わかった。」


雪那は目を閉じた。その瞬間何かを察したのか一体のダノウルアウスが雪那に襲いかかったのだか…遅かった。


「『その冷気は我が体を廻り、我が慈悲すらも凍てつかせる。氷劍の舞踏アイシェルダンス』」

「 !!」


その言葉紡がれた瞬間、数十本の氷の剣が雪那の回り円環の状態で出現し回りだし、襲いかかってきたダノウルアウスの腕を切り裂いた。切り裂かれた腕は空に舞い上がり地面に落ちた。腕を落とされたことに驚きつつも痛みにもがき苦しむダノウルアウス。

しかし、雪那の攻撃は止まらない。円環の状態で回っていたはずの氷剣が静止し、剣先を残りのダノウルアウスに向けた。そして「舞え」っという雪那の一言で氷剣は次々とダノウルアウスに迫った。一体だけ致命傷となるような攻撃は避けたものの、かすり傷を受けたが、残り二体は見事に串刺しされていた。

残った一体は手に持つ棍棒を上にあげ、降り下ろしたが…


「『此方は氷海に佇む者。此方に近寄りし者に永遠の眠りを―――囚飲の氷牢アズナーク』」


その詠唱のあと、突如現れた氷壁によって降り下ろされた棍棒の動きは止められ、さらには、氷壁に触れた棍棒の場所から徐々に凍っていく。それに気づいたダノウルアウス咄嗟に棍棒を手から放したのだ、氷壁が網の様になって広がり、逃げ場を閉ざされた。

少しずつ氷壁と氷壁との隙間が埋められていき、遂には外からダノウルアウスの姿が見えなくなった。


「おい、お前一体どんな技使ってんだよ……。」

「どんなって…普通のやつ……かな。多分。」

「…………帰るか。」

「帰るって……王都に?」

「バカか。まだあと一ヶ月半以上はこの山から出ねーぞ。」

「えぇー。」


雪景色では目立つ真っ赤に染まった場所で、雪那の心の叫びが吹雪に掻き消されることなく響き渡った……。



次の話かその次の話かどちらか無茶苦茶遅くなるかもですけどご了承ください(泣き)。

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