意識ーゆるふわ女子とオネエ男子の場合ー
さて、お次は、ゆるふわ女子とオネエ男子です。
「見て見て春くんっ!うさぎのぬいぐるみかんせーい!」
「あら、可愛く作れたじゃない!じゃあ優璃ちゃんの可愛いうさちゃんに、アタシ特製レースとお花のコサージュをプレゼントしちゃうっ」
「わああ、有難う春くん、可愛いー!」
かすかに聞こえる運動部の掛け声。
窓から差し込む、はちみつ色の光。
バターたっぷりのあまいお菓子の香り。
うららかな放課後。
私は、空き教室で、春くんと一緒にハンドメイド小物作りをしていた。
「さてとっ、優璃ちゃんのうさちゃんも完成したことだし、お次はレジンで何か作らない?ペンダントとかとっても可愛いのよねっ」
「うん、作りたい!じゃあこれから雑貨屋さん行きたいな、可愛いパーツ見たい!」
春くんは、手先が器用でハンドメイド小物はお手の物。
しかも料理上手な男の子だ。
私は女の子なのに、男の子な春くんに完璧女子力が負けている。
そんな春くんは、口調も柔らかで一人称もアタシ。
お姉さんの影響らしいけれども、皆からオネエと認識されている。
女々しいとかなよなよしているだとか言う子も多いけれども、私はそんな春くんが大好き。
だって、ちょっと男の子って苦手だし。
春くんが男の子臭くないのは、私にとってはとても嬉しいことなの。
それに、下手の横好きながらハンドメイド小物作りが大好きな私にとって、春くんは憧れ。
だから、春くんは男の子って意識しなくても大丈夫な、とてもとても大切な友達。
そう、思っていたの、ずっと。
これから起こる事を、私は全く予想していなかったから。
「でねっ、それでね、鈍いヒロインにやきもきして男の子が拗ねちゃうの!なんでもないって!」
「あらまあ、可愛いわねっ」
「ね、きゅんきゅんしたの!」
「その漫画見たいわ。イラストも綺麗なんでしょう?」
「うん!明日学校に持ってくるねっ。他にもきゅんきゅんする所があってねー・・・・」
レジン小物に使う可愛いパーツを買えて、ほくほくしている帰路。
私は、春くんに大好きな少女漫画のときめきポイントを力説していた。
「あまりにも鈍いヒロインに痺れを切らした男の子がね、ヒロインに迫るの!壁に手をついて、女の子の顔を覗き込んで、まだ俺の気持ちに気づかないの?って………」
「あらあら」
私の高揚した様子に、クスクスと春くんは笑う。
そして、ふと真顔になった。
「こういう感じかしら?」
一気に春くんとの距離が近くなる。
春くんの指が、ブロック塀にとんっと当たったのを目の端で捉えた。
「へ?」
見上げると、春くんの顔が、目の前にある。
「ここで、こう言うのよね」
そして、囁いた。
『まだ俺の気持ちに気づかないの?』
「・・・・・っ!」
かああああと、頬に熱がたまる。
男の子特有の低い声で。
一人称が俺で。
まるで、いつもの春くんじゃない。
女の子より女の子らしい春くんじゃなくて・・・・。
男の子、だ。
春くんは、男の子だ。
そんな分かり切っていたはずの事を私は思い、ぴきりと固まった。
そんな私を見て、春くんがはっとして、指をブロック塀から離し、身体を離す。
「ご、ごめんなさい優璃ちゃん、思わず・・・・」
「あ・・・・」
春くんも、顔が赤い。
でも、多分私はもっと赤いの。林檎みたいに。
「・・・・っ、わ、わたし、ごめんなさい、あの、帰る、えっと、ま、また明日ね!」
「えっ、ちょっと待って優璃ちゃん・・・・!」
慌てたように言う春くんの顔が見れなくて、俯きながら全速力で走り出す。
だってもう、前みたいには、戻れない。
春くんが、男の子だと、意識してしまったから。
いかがでしたでしょうか。
作者も流行に乗って、今流行りの壁ドンを取り入れてみてしまいました。
壁ドンは二次元だからこそときめくと思います!!
さて、また本編では出てきていない、2人のフルネームをこちらに書かせて頂きます。
川野春貴
水島優璃
となっておりますっ。