出会い ー俺様と女王様の場合ー
オムニバス、まず最初は、俺様と女王様です。
とても暑い午後だった。
だらだらととめどなく汗が吹き出て、制服のシャツを湿らすのがなんとも気持ち悪い。
今すぐブレザーを脱いでしまいたい。制服のリボンをとっぱらってシャツのボタンを開けたい。
そうしてば、きっとかなり涼しくなるのに。
ああ、もう。
なんでこの私が、こんな目に遭わなきゃいけないの。
「もう、最悪っ」
そう吐き捨る。
でも歩く。てくてく歩く。
何故なら、学校へ行かなきゃいけないから。
今日は高校の入学式。
晴れて華の高校生になる私は、これからもっと輝かしい未来を送れるはず。
だから我慢するのよ自分。春だとは思えない気温でも我慢するの。
ほら、校門が見えてきたわ。教室へ入ればクーラーも効いてるはず。頑張るのよ、私。放課後はきっとアイスが食べられるわ。
そう自分を励まし、やっと目の前にそびえている校門へと足を踏み入れようとした、その時。
急に、視界が真っ暗になった。
どうして?だなんて考える間もなく、どんっと衝撃が体に伝わる。
「わ・・・・」
数歩よろめき顔を上げると、そこには端正な顔立ちの見知らぬ男子が居た。
この男子がぶつかってきたという事が分かり、私は眉をつりあげる。
この私にぶつかるだなんて、この人。
この人、むかつくわ!
そう思った矢先。
「お前、この俺にぶつかるなんて良い度胸してるな?」
男子が、片頬をあげてそう言う。
その言葉にぽかんと口を開け、私は数秒固まった。
「な、な、な………」
あまりのことに口を魚のようにぱくぱくさせてから、私は男子を睨みつける。
「貴方こそ、この私にぶつかるだなんて良い度胸じゃないの!この私の事を知らないの!?」
「お前が誰だろうが何だろうが関係ないね。俺が通ろうとしたのをお前が邪魔をした。重要なのはそこだ」
「何を言うの、ぶつかって来たのは貴方でしょう!」
「いや、お前」
「貴方よ!」
元々暑くてうんざりしていたのに、怒りで余計に暑くなって、頬が上気する。
なんでこんな事になるの、私は早く涼しい教室へ入りたいのに!最悪だわ!
そう思っていると、私のことを面白そうに眺めていた男子が、何か悪巧みを思い付いた子供のような顔をして私を見た。
「ああ、分かった。まあ良い、俺がぶつかったという事にしてやっても良いよ」
「は・・・・?」
突然引いた意図が分からず眉根を寄せると、ふいに男が身を屈める。そして。
ちゅっ。
頬に、何かが触れた。
驚き動けないでいると、男子が顔を離し、にやりと笑った。
「これでチャラな、生意気女」
なんなのこの俺様は・・・・!
そう思い、ぷるぷると震える。
今まで己の美貌と知性で皆を魅了してきたこの私に。私に!
「全く納得出来ないわ!」
私の声が、春の空いっぱいに響く。
あの頃は、この男子と長い付き合いになるだなんて知らずに。
私の高校生活が幕を開けた。
如何でしたでしょうか?
最後のちゅっはまあ、明記しておりませんがほっぺたにキスですね、はい。
なんてベタな。もう古いわ、ネタが古いわ。
正直申し上げますと、作者はもうキャラの路線が分かりません。
俺様なんでしょうか、チャラいんでしょうか、それともナルシストなんでしょうか。
この3つは紙一重ですかね・・・・。
ちなみに、まだ本編に2人の名前は登場しておりませんでしたが、こちらで発表致します。
俺様は 園田茜
女王様は 牧原真由
ですっ。