覚悟
#21:00 松田邸
無駄に広い応接室と言う物だろうか・・・・、お茶を出され固まっている慎吾。
前には若い女性、横には小学生。
「まぁ、どこからお話ししましょうか・・・・・。」
この二人こそ俺の命の恩人である博士の息子と娘らしい。
「まぁ、こうなったのはですね・・・・。」
慎吾はあの日から今日までの出来事を包み隠さず全て話した。
変身もみせアタッシュケースの資料も全てみせた。
「と言うわけです。あい。」
すると使用人さんであろうか、老婦人が入ってきた。
「まぁ、長い旅であったでございましょう、お食事とお風呂がご用意してございます。
こちらへ。」
すると女性が慌てて出る。
「前田さん今日はもういいわ、あとは私が。」
「いえいえ、私もそのお話聞かせていただきたいの。うちに帰っても誰もいませんからね。」
すると前田さんと言う人が風呂場に行く。
「じゃあ、風呂をお先に失礼します。」
すると洋平が走ってくる。
「一緒に入ろ。」
そういえば洋平はさっきまで一緒にいたから飯も風呂もまだだったな。
「ダメよ、洋平。ご迷惑になります。」
「いや、一人で入るよりは賑やかでいいです。それにまだ腕が完全に再生したわけじゃないので背中が洗えなくて・・・・。
背中流してくれるか、洋平?」
すると洋平は笑顔で首を縦に振る。
入浴後、夕食を食べた。
「うまい。こんな飯は何年ぶりだろう。」
高校生から一人暮らしだった慎吾は久々に家庭の味と言う物を知った。
「あらぁ、喜んでいただけて光栄です。」
すると2階に上がっていた娘さんが降りてくる。
「真柴さん、お部屋の支度ができたので鍵をわたしておきますね。」
「そんな、こんな美味しい食事や風呂まで入れさせてもらって宿泊まで。」
すると女性はいえいえとそぶりしながら言う。
「弟を助けていただいたのにこれでは足りないくらいです。それにお住まいが見つかるまでは大変でしょうしうちはいつまでいてもらっても結構です。」
その言葉に涙が流れる慎吾。
「ありがとうございます。あ・・・・、えと・・・・・。」
すると女性は顔を真っ赤にして慌て出した。
「私ったら聞くだけ聞いて自己紹介を忘れてました。
私は松田 小春。そちらは弟の洋平。こちらがお手伝いの前田菊さん。そして上で寝ている息子の幸助です。」
「息子と言うと旦那さんは?」
すると少し嫌そうな顔をした小春に変わって前田さんが話し出した。
「お嬢様の旦那様は安藤幸次郎。国連軍に所属していて先月離婚されました。」
慎吾は何か突っかかった。
「厚かましいようですみませんが明日旦那さんについて詳しく教えていただけませんか?」
そう言うと前田さんと小春は少し相談した後首を縦に振った。
その後慎吾は部屋に行き眠りにつく。
#2:56 スカイツリー中部鉄骨
ひたすら無視を食うCode:06。そこにあつまる3つの影。
『兄上、遅くなりました。』
『遅くなった?何をしてたこの野郎。』
一体が止めに入る。
『兄者、落ちいてください。』
するとCode:06は泣き出す。
『痛いんだもん。僕ら超遺伝子獣なのに傷が治るのが遅いんだもん。』
『お兄様、奴はどうやら松田洋平と接触していたようです。』
するとCode:06は笑い出した。
『そっかぁ、やっぱそこまできちゃったか。
そろそろ国連軍を動かそうかな。
頼んだよジグル。」
するとジグルと呼ばれた人影は消えた。
#5:57 松田邸ガレージ
ブルルルルルル!!
エンジン音で飛び起きる慎吾。
ガレージへ走る。
《少年、そのキャンプとやらにゆくぞ。》
「おー!!」
「待て待て待て待て!!」
慎吾が止めに入る。
「流石にバイクと子供だけじゃ危険だよ。」
《しかし、六式。私は洋平とキャンプに行くために作られたのだ。》
慎吾は呆れた顔で言った。
「いいか、キャンプってのはランドセルで行くもんじゃないんだぞ。」
「シンゴキャンプ行ったことあるの?」
「あるぞ、学生の時は仲間と一緒にキャンプに何度も行ったもんだ。」
「ふぅ〜ん・・・。」
「ふっw・・・・・・。」
俯く洋平の頭にヘルメットをかぶせる慎吾。
「朝飯まで時間あるだろ、公園までひとっ走りするか。」
慎吾は洋平を連れて走った。朝方で土曜日、
車も少ない。
復讐にとりつかれ一時は怪人になりかけた慎吾。彼を変えさらには笑顔まで取り戻させてくれた洋平。
慎吾は彼に感謝をしたくて仕方がなかった。
「なぁ洋平。」
「何?シンゴ。」
「バイクってのはな、風になれるんだ。」
「なんで?。」
「こうやって風を感じながら走ると景色に、自然に、溶け込んだようになるだろう。
そうすると、心まで風になってくんだ。」
「よくわかんないや。」
「洋平、今気持ちイイか?」
洋平はうんうんと何度も首を縦に振った。
「じゃあ、もう風になってるよ。」
公園についた二人は一通りの遊具で遊び、ベンチで缶ジュースを飲んだ。
「洋平、ありがとな。」
「なんで?」
洋平は首を傾げる。
「こないだまで俺、どうにかしてた。イライラして、人が羨ましくて、何か壊したくて仕方なかった。けど、お前に会っていくらか楽になったんだ。」
すると洋平はジュースを飲み干してこう言った。
「僕もありがと。」
「なんでだよw」 「ジュース買ってくれたから。」
笑った。腹が痛くなるまで。笑顔一つがこんなに大切だったと始めて知ったかもしれない。
うちへ向かって走っている途中。
《六式、私は今のあなたの方が好きですよ。
最初あった時は魔物そのものだった。一時期はCode:06より恐ろしかったです。》
「ドットキャット・・・・。」
今はもう復讐ではない。守る戦いだ。
みんなを・・・・人々を・・・・。
ガレージにバイクを戻した時、朝食の魚が焼ける匂いがした。
つづく