遺伝繁殖
封鎖され人っ子一人残っていない高速道路を慎吾は走行していた。
乗り捨てられた車が静止した今もその騒ぎを彷彿とさせた。
あと少しで東京に入る。
Code:06は新たな知識を求め必ず東京を目指すだろう。先回りして必ず仕留める。
慎吾には暴走した不安を抑えるかのように異常なまでの興奮状態があった。
#一時間後 山梨県某山腹
あと少しで東京との県境に入ろうとした時、悲鳴が聞こえた。
悲鳴の方に向かうと街中でCode:06・・・・・いや、Code:06になりかけた人間が暴れていた。
「まさか、遺伝繁殖!?」
遺伝繁殖
Code:06が備わったこの世の物とは思えない繁殖だった。
Code:06には血液内部に独自の侵食白血球というのがある。普通の白血球は血液ないに侵入した外部微生物やウィルスと戦い感染症を防ぐ物だがこの侵食白血球は他生物の血液内に侵入し内部構想を変えるという侵食行動を行う。このような繁殖をするのがCode:06だった。
あの時アタッシュケースに入った資料によれば慎吾自身も侵食白血球により体組織は完全に書き換えられてしまったがなんとか脳への侵食だけは手術で間に合ったとのことだった。
「Code:06・・・・息子というよりはコピーだな。」
「うわーーーん。」
ふと、町の様子を再確認する。
コピーの前方30m・・・逃げ遅れた園児だ。
「くそっ、邪魔な。」
一般人の前では昆虫形態にはなれない。
人間のままコピーの前へ飛び出す。
「グリリリリリリリリリ。」
奇妙な規則音とともに走ってくるコピー。
だが本体よりは知能は低いようだ。
足をかけて吹っ飛ばす。建物へと突っ込んだ。
「あきちゃーーーーーん。」
「ままーーーーーーーーーー。」
親が迎えに来たらしい。
(邪魔くさい。さっさと消えろ、戦いの邪魔だ。)復習にとりつかれた慎吾はこういう考えしかもてなかった。
その時、
突然首から建物内へ引っ張られた。
「奴め・・・・・・蜘蛛まで食らったようだな。」
資料によればCode:06の遺伝繁殖個体の能力は本体が最新で手に売れた生物の情報が全面に出るようだ。つまり、俺のときはカマキリが最新だったらしい。
だが好都合だった。建物内ならカマキリ怪人になれる。
すかさず慎吾はカマキリ怪人になった。前日に本体と戦っていたのでかなり楽だった。
動きが止まって見える。素早い慎吾の攻撃にコピーは虫の息だった。
調子に乗っていた。そう、建物に入った時点で気付くべきだった。
両腕の鎌でトドメに入った・・・・・振り下ろした・・・・・・鎌が・・・・・・鎌となった手首が切り落とされた。
建物中に蜘蛛の巣が張り巡らされていた。
そしてその糸はまるでワイヤーのようだった。
いくら怪人とはいえ生物は生物。
気が狂いそうな痛みだった。
「ギェエエエエエエエエエエエエエ。」
傷を抑えようとしただがコピーに思い切り踏まれる。
グリグリと引き潰そうと踏んでくる。
「ゲェエエエエエエエエェエエエ。」
激痛と悔しさでヒキガエルのような声を上げる慎吾。
そのとき慎吾は心の中で思った。
(俺はカマキリ怪人だがスペックとしてはCode:06と同じだ。カマキリの概念に縛られるな。)
そしてコピーが高笑いを上げた瞬間つま先が鎌になった・・・・・・。
「てめぇ、調子こいてんじゃねぇ。」
コピーの弱点である脊髄に刺さった。
コピーは断末魔の叫びを上げて死んだ。
だが痛みで錯乱した慎吾は倒れたコピーの亡骸を原型を途絶えるまで攻撃し続けた。
やがて慎吾は我を取り戻したように東京を目指した。
慎吾は怖かった・・・・・・
このまま自分は心の奥まで怪人になるのだと・・・・・・。
慎吾は泣きながらバイクを走らせた。
その涙が枯れたとき。
ついに東京に突入した。