敗北
慎吾は烈風と爆発音で目を覚ました。
民家の窓は割れ外には火災が見えた。
時刻は午前3時40分、普通ならば動植物が寝静まり夜行動物達が静かなハンティングをしている時間である。
何が起こったのだろうか・・・・・、
外に出ると所々で人が倒れている。
「おい、しっかりしろ。誰にやられた。」
瀕死の兵士は答える、
「我々は・・・・・国連軍・・・・・、遺伝子工学の権威である・・・松田人六博士を殺害した犯人を・・・・この先の公民体育館内に・・・・追い詰めt・・・・・。」
国連軍兵士を名乗る男は行き耐えた。
慎吾はバイクにまたがり町の中心、公民体育館に向かった。
「あれだ、凄い火だ。」
ドーム型の体育館と思わしき建物は炎をまとい赤々と輝いていた。
その時だった、
《Code:06確認。Code:06確認。体内カラ無機物、火薬反応。》
バイクからアナウンスが出始める。
「無機物と火薬!?
まさか、軍の武器まで吸収したのか。」
風向きが変わる。
ヘリが3機、浮上していた。
慎吾の身体に虫の知らせかのごとく悪寒がはしった。
「空に逃げるな。空では無防備すぎる。」
遅かった。ヘリが2機撃墜された。なんとか1機は逃げた。
体育館にバイクで慎吾は突っ込んだ。
中心に奴はいた、念願のやつだ。
だが前にあった時とは違う。
バッタだけでなく他の昆虫の特徴所々に様々な武器も見えた。
「うぉおおおおおおおあああああああああ。」
感情が高ぶる。何事もなかったように再生していた片腕がカマキリのような鎌になった。
無造作に振り下ろした鎌は奴の右肩に食い込んだ。
黄色い体液が噴水のように吹き上がる。炎にてらされたその光景は鮮血の溢れではなければどんなに幻想的な物であったか。
そうなったのもつかの間腹部にわずか一瞬ひと蹴り入れられた。
そのまままっすぐ真後ろ20mほど吹っ飛んだ。
「グアアアア。」ぐあああ?常人なら内臓が吹っ飛んですでに瀕死だ。
やっぱり俺は人間ではもうないのだ。
怒りが、悲しみが、こみ上げてくる。感情が制御できない。
もう遅かった。
慎吾の顔は完璧なカマキリになり、両腕も鎌になった。
狂ったように、奪われた物を奪い返そうとするかのように、慎吾は奴に斬りかかる。
怒りに、本能に身を任せて。そして今の己をあざ笑うかのように滝のように流れる涙。
切って切って切って切って・・・・・・・
何もせず、やられるがままのCode:06。
身体全体から吹き出す血。切り落とされる左腕。
何もせず受け止めるその姿はまさしく不気味そのものだった。
慎吾の体はすでに人間ではなかった。Code:06の3倍もの身長のあるカマキリ。
巨大カマキリが羽を広げ日の出を迎えようとする薄明かりに満ちた空へ飛び立つ。
最後の一撃にかかった。
罠であろうということはカマキリにはわからなかった。
左腕を掲げた切り口から見える・・・・・機関銃の銃口。
規則正しい破裂音が人のいない朝焼けの静寂に鳴り響く。
#午前5:45 日の出
雲ひとつない青空、薄っすらと形を残す月。
Code:06の前で無残に倒れる慎吾。かすかに息は残り姿も人に戻っていた。
片足を付き、静止したCode:06・・・・・・、
揚羽蝶のごとく極彩色の蝶の翼を広げ空の彼方に消えた。
慎吾は2度も負けたのだ。
倒れた慎吾の目から血の混ざった薄紅色の涙が滴り落ちていた。
つづく