野望
エレベーターは静かに上がっていく。
ワイヤーの巻き上がる微かな音、心拍、呼吸。
慎吾の感覚は研ぎ澄まされていた。
こうしてる間にも洋平の血で体は徐々に進化して行ってるのだ。
チンッ!!
ついた、展望室だ。エレベーターのドアが静かに開く。
まだ午前中だというのに空は黒い雲に覆われていた。
これが文明の破壊と関係あるのだろうか。
展望室の奥、悪趣味な玉座に奴は座っていた。
『やあ、兄弟。ようこそ僕の城へ。』
「悪趣味な城に玉座だな。いつから趣味が悪くなったんだ?」
軽く挑発を試みる。
『兄弟、君もつまらなくなったな。本当にしたいのは挑発ではなく決着・・・だろ。』
「その前に聞きたいことがある。なにが目的だ。」
するとCode:06は玉座の横のレバーを下ろした。
すると電気が通い監視カメラが一斉にこちらを向く。
『最終決戦は全世界に生中継だ。その前に僕の計画を話そう。』
Code:06は静かに窓際を歩き出した。
『国連は僕が暴走した時のために父さん、松田博士に超粒子爆弾を埋め込むことを命令した。つまりまさかの時の安全策さ。』
だが、僕が完成した時点で国連の半分は僕の支配下だった。僕の実験直後に僕の血液を霧状にして基地内に散布した。
だからこんなの意味ない。だから有効活用しようと実験を続けた。
放射能のように癌を誘発するわけでもない。
だが超粒子がなにを傷つけるかついこの間わかった。』
するとCode:06は慎吾のヘルメットを真空波でバラバラにした。
「空気・・・いや空間か。」
『そうだ。空間に傷をつける。昔なんかの学者が言っていただろう。世界には今と同じ時間を流れる全く別の並行世界があると・・・。』
「パラレルワールド説・・・・。」
Code:06は慎吾にそれだと言わんばかりに拍手した。
『あの考えは本当らしい。並行世界があるかは別としてな。
超粒子、並行世界と並行世界の間に存在する時空間を形成する物質だ。
超粒子は同物質の爆発に2時間遅れて誘爆する性質がある。それを安定させるためには代わりとなる同意力の爆発を時空間内部で起こすこと。』
「待て、そんな爆発が起これば・・・・。」
『烈風が世界中を包み電子機器は熱で狂うだろうな。』
慎吾は全てを察した。これが奴の計画。
烈風で建物と機械は全て使えなくなる。
文明を奪う、それはこういうことだった。
「なぜ、人間は生き残るぞ。人間を滅ぼすのが目的じゃないのか。」
『私の目的は超遺伝子獣が生態系の頂点となること。』
そう言うと肉片がまだこびりついている人間の頭蓋骨を放り投げて来た。
『生きるためには食事がいる。
人間はソレだ。つまり家畜に文明という過ぎたおもちゃは必要ない。』
「キサマァぁあああああああ!!そんな理由で、みんなを、人間を殺して来たというのか。」
するとCode:06は呆れたような仕草をし出した。
『当たり前だ。そんなことも忘れてしまうとは、博士はなんて酷いことを・・・・・、
兄弟、待っていろ。すぐに戻してあげるからな。』
「覚醒-ヘンシン」
二人は距離を保ちながら歩き出す。
『この放送で君を殺すより君が仲間になった方が家畜にはいい薬になるだろうしね。』
飛びかかってくるCode:06。速い、これまでに戦った時よりはるかに。
殴られた慎吾は壁に叩きつけられる。
『兄弟、君は最初で最後の弟さ。僕は君を愛してるんだ。戻ってこい。』
そう言って近づくCode:06にパンチを浴びせる。
「断る。俺は最後まで戦士として戦い続ける。」
『さみしい、さみしいなぁ、兄弟。』
蹴りがみぞおちにヒットする。
足払いをしたがかわされた。攻撃を続けるが当たらない。
『仕方ない。体を動けなくした後に直接脳に血を流し込んでやろう。』
その時、Code:06の爪が後頭部に刺さる。と同時に動けなくなる。
『しばらく動けなくさせた。大丈夫さ。』
そう言って今度は頭に傷をつけて血を注ぎ出すCode:06。
「やめろおおおおおおおおお、ぐあああああああああああああああああ。」
頭が燃えるように熱くなる慎吾。
そして意識がなくなり地面に崩れ落ちた。
つづく