息子
「ぐぁあああああああああ。」
ドゴーーン!!
崩れ落ちる2人。
絶望的状況であった。
国連軍は逃げ惑う市民を尻目に慎吾とオルテガを攻撃して来た。
「我々国連軍はあくまでも敵対戦力の殲滅にあります。至急市民はご避難ください。
「小春・・・さ・・ん。
幸助・・・。」
急げ、急がなければ。
瓦礫の下の2人が・・・・。
慎吾は倒れた市民を助ける。
子どもを、老人を、警官を・・・・、
もう少しで小春と幸助の元にたどり着く・・・・・。
その時!!
「怪人め、市民から離れろ。」
ドゴーーン!
「ぐぁあああああああああ。やはり、あいつらは俺を狙っている・・・・。」
『六式お兄様・・・・。」
出血でフラフラになったオルテガが近づいてくる。
『お兄様は、失敗した・・・私・・・事、
あなたを・・・葬る・・・気・・です。』
お互い大砲の猛攻で体力が限界に来ていた。
《六式、聞こえますか。ただいまそちらに急行しています。》
ドットキャットだ。どうやら慎吾の危機を察知したようだ。
《すでに、良樹さんに連絡しました。あと3分ほどで自衛隊が合流するそうです。》
『お兄様、何があったのですか?』
「あと3分で自衛隊が来る。」
しかし砲撃は止まらない。
これをいいことに市民を皆殺しにする気なのか。
『私が、市民を狙う大砲を攻撃します。
あなたは私を追いかけて攻撃してください。』
オルテガが市民を狙う戦車を破壊する。
すると戦車の大砲が一斉にオルテガを狙う。
そうか、表向きはオルテガの殲滅だ。
だから、どうしても奴を打たなければならなくなる。
「まてぃ。」オルテガを攻撃。
再びオルテガが移動し戦車を攻撃。
追いかけて攻撃を繰り返す。
すると自衛隊がやって来た。
「貴様ら、何をしている。」
「くそッ、全軍引け。」
やっと救助が始まった。
ふと後ろを見た。オルテガが虫の息だった。
オルテガをおぶって慎吾は消えた。
#14:34 廃校保健室
血のにじむ包帯、痙攣するからだ。
オルテガは確実に死に向かっていた。
「お・・・兄様・・・・、いや・・・、慎吾さん・・・・。小春は・・・・。」
「無事病院に搬送されたよ。」
「そうか・・・・・、僕の・・・・役目は・・・・もう・・・終わり・・・・か。」
笑顔をうかべるオルテガ。
「諦めるな、今からなら戻れる。幸次郎に戻れる。」
「いや、彼女の・・・・あの笑顔を見て・・・・・わかった・・・・、
君が・・・・そばにいた方が・・・いい。」
慎吾は涙が溢れて来た。
最後の最後まで夫で有り続けようとする幸次郎に。
その数奇な運命に。
「君・・・・が、守って・・・あげ・・・て・・・・くれ・・・・。
頼んだよ・・・・・。」
オルテガ・・・・いや幸次郎は静かに目を閉じた。
「ぢぐしょおおおおおおおおおおお。」
慎吾は崩れ落ちた。
幸次郎はただ愛し、自らも愛して欲しかっただけだった。
彼はその愛すると言う役目を慎吾に託した。
悲しむのもつかの間小春から電話が来た。
「もしもし、どうしたんですか。」
「幸助が、幸助がぁあああああ、早く来てぇええええ。」
ただ事ではない。
その声が状況を物語っていた。
#14:51 中央病院
息を切らした慎吾が走ってくる。
「何があったんですか!!」
前田さんが洋平を連れて離れる。
「幸助が息しないのよ。」
「幸助が・・・・・。」
息を飲んだ。今は緊急治療室にいるらしい。
すると医師が出てきた。
「お母様、手の施しようが有りません。
最後にだいてあげてください。」
部屋に入る。今にも死にそうな幸助が横たわっている。
「慎吾さん・・・・・。」
小春が泣き崩れる。
慎吾は決断した。
「小春さん、いいですか。」
小春はただ頷いた。
「最後の手段を使います。でも、それをすればもう幸助は人間ではなくなります。
それでもいいですか?」
「幸助が生きててくれればいい。
お願いします・・・・・。」
慎吾は決心し、手首を切る。
滴り落ちる鮮血。この鮮血を弱ってゆく赤ん坊の小さな口に含ませる。
数秒後幸助は呼吸をし心拍も戻った。
「幸助・・・よかったぁ。」
小春も笑顔を取り戻し安心と安らぎの涙を流す。
それを見ると慎吾は緊急治療室を後にした。
#数分後 屋上
心地よい風が慎吾の肌を駆け抜ける。
幸助は助かった。けどもう人間ではない。
もう普通に生きられはしない。
あの時の自分と同じだった。
俺のせいだ
俺が悪いんだ
俺と会わなければ
俺が殺した
俺が狂わした
「慎吾さん。」「慎吾さん。」「シンゴぉ。」
「来るな!!」
慎吾は泣きながら叫んだ。
その時体はカマキリ怪人になった。
3人は驚いた。
3人は慎吾の六式としての姿しか見たことなかった。
「俺は化け物だ。あいつらと同じだ。
醜い身体と心を持った化け物だ。
幸助だっていずれこうなる。」
慎吾は頭を床に何度も叩きつける。
「俺は幸助を化け物にした。醜い姿に、悲しい運命に。」
すると後ろから小春が走ってくる。
小春は慎吾の腕に噛み付いた。
腕から滴り落ちる血、それを飲みだした。
「何してるんだ!!」
小春を引き離す。
「私ももう怪物になった。これで同じ。幸助と、あなたと。」
「なにがしたいんだ。」
「そばにいて欲しいの。ずっと支えて欲しいの。幸助が化け物になるんだったら、責任感じていなくなるくらいなら、そばにいて支えてあげてよ。」
小春はカマキリ怪人を抱きしめる。
「一緒にいて、支えて・・・・・。」
泣き出す小春。
カマキリの怪物は次第に人の姿に戻っていく。
「俺で、いいのか・・・こんな怪物で。」
小春が慎吾の口を奪う。
洋平の目を隠す前田さん。
「いいの。あなたじゃなきゃ嫌なの。」
慎吾は覚醒-ヘンシンした。
「君を、みんなを・・・・全力で守らせていただく。」
慎吾は帰る場所を今ここに見つけた。
掛け替えのない家族を・・・・・。
そして、決心した、
国連へ・・・・本拠地へ乗り込むことを・・・・・・。
つづく