クロユメ。
君が壊れていく光景を見た。
真っ白な壁に塗りたくられた黒い絵の具。
膝を抱え、蹲る君の名を呼んでも
君はふりむかない。
真っ黒な絵の具。
真っ黒な夢。
そんなクロイユメをみた。
次は歩道橋だった。
小さな子供のために
引っ掛かった赤い風船をとろうとした君を
真っ赤な手が突き落とした。
ぐしゃり、と
君の体がつぶれていく。
君の血の匂いが
鼻の奥にこびりついて離れない。
そんな真っ赤な夢をみた。
そんな優しい君を突き落とした
アイツはひそかに
笑ってた
その次は僕の家だった。
入ってきた悪人から
僕を守ろうとした
君は僕の代わりに
真っ赤になって消えてった。
抱き締めた君の身体の熱が
いつまでも僕の腕に絡みついていて
机の上に並べた
二つのコップだけが僕を見ていた。
そんなクロユメを
今日も
誰かの体温が残るベッドで見て
そんなクロユメのなかに存在した
不確かな愛情に
すがって、
囚われて。
そんな思い出話を
今日もクロユメのなかで
君とした。
…ああ、もうすぐお別れの時間だ。
少し寂しいけれど
もうお別れだ。
「さよなら。」
君を突き落とした真っ赤な手は
君の笑顔を奪った悪人は
君の心を孤独にした人間は
―全部全部、僕だった。
「それじゃあ、さよなら。」
また後で。
僕がこのセカイから消えないように
また君が守ってくれるんだよね?
「待ってるからね。」
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