獣撃戦隊ゴートリガー(フルストーリー・全十五話)
『獣撃戦隊ゴートリガー』1
・トリガー・オン!
2025年、四月。その青年は大学に入学した。根住乾、今年で十九歳になる。無事、第一志望の大学に合格したのだ。
「今日からここが俺のキャンパスか~!」
武者震いをする乾はスーツを着直し、正門を潜った。すると入学式の会場側から一人の青年がやってきた。
「乾」
「美龍君!」
鳥居美龍。乾の幼馴染で、一年先輩だった。
「お前もここの大学に来たのか」
「うん。カウンセラーを目指してるからな」
「そうか。じゃあ俺と同じ学科だな」
「そうだな」
二人は入学式の会場に向かい、式を終えてキャンパス内を散策した。
「美龍君はどこのサークルに入ってるんだ?」
「俺は考古学サークルだ」
「考古学サークル?カウンセラーと何の関係が?」
「まぁ、ちょっと訳アリでな……」
「ふぅん……?じゃあ俺もそのサークルに入ろうかな」
「生半可な気持ちで入っちゃ駄目だぞ」
「何で?」
「訳アリなんだ」
「よく分からないけど……美龍君が入ってるなら安心だ。俺も底に入る」
「まぁ他にもサークルはあるんだ。ゆっくり決めな」
「おう」
一週間後、乾は本格的に大学の講義を受ける事となった。同時に、美龍と同じ考古学サークルに入部した。そこは日本の様々な考古学を学ぶところで「特に変わった様子は無いけどな?」と思いながら先輩の于鷺ヘビーと羊馬ミザルと談笑していた。
「先輩方はどうしてこのサークルに?」
「俺は、まぁ、導かれたというかね……」
「導かれた?」
「私も似たようなものよ」
「導かれたってどういう事ですか?」
「君もここに入ったからには、それ相応の覚悟を持っていないと駄目だからな?」
「覚悟って……美龍君も言ってましたけど、生半可な気持ちで入るなってどういう意味なんですか?」
「それはね……」
そこでチャイムが鳴り、ヘビーとミザルは「やべっ!」と慌てて支度をした。
「次の講義が始まる!悪いがこの話はまた後でな!」
「じゃあね~!」
「あ、はい……」
ヘビーとミザルは急いで部室から出ていき、入れ替わりで美龍がやって来た。
「よう。乾」
「あ、美龍君。もう講義は無いのか?」
「あぁ。それより過去問いるか?」
「あ、お願い」
それから二人はまったりと部室で過ごした。そこへこの大学の考古学者、笹江トニーがやって来た。
「やぁやぁ。お待たせ。君がこのサークルに入って来た新入生か?」
「ども。根住乾と申します」
「乾って珍しい名前だね」
「犬と猪からの鼠を掛けてって事で親が名付けてくれたんです」
「へー。君はもしかしたら選ばれるかもね」
「選ばれるってどういう意味なんですか?」
「まぁいずれ分かるよ」
「は、はぁ……?」
そう話していると、何やらアラートが鳴った。五味九頭が現れたというアラートだった。美龍は「ここから出るな!」と言って部室を出ていった。それを心配して乾も追い掛けた。その時、トニーは何故か止めなかった。
現場に駆け付けると、人々が怪人に襲われ、恐怖心を出していた。それを五味九頭は食べていた。その五味九頭は鼠のような姿をしていた。
「止めろ!」
思わず乾は声を掛けてしまった。
「何だぁ?テメェ……?」
威圧感に押されつつも乾は言った。
「お前達、五味九頭だろ!?こんな事はもう止めろ!」
「俺達だって生きたいんだ。食事くらい良いだろ?人間が他者の命を喰らうのと同じだ」
「だからって人間にする必要は無い!」
「じゃあ他の生き物なら良いって言うのか?つくづく傲慢だな。人間と言うのは」
「俺が相手になってやる!」
「やってみろ!このガキが!」
乾は五味九頭に飛び蹴りをした。しかし通じず、吹き飛ばされてしまった。
「クッ……!」
「お前のその恐怖心、貰うぞ?」
乾は思わず目を伏せてしまった。その瞬間、銃撃音が鳴った。目を開けると、そこには吹き飛ばされた五味九頭がいた。後ろの方を見ると、青い戦士がスナイパーを構えていた。
「大丈夫か!?乾!」
「な、何で俺の事を……?って、その声、美龍君!?」
「そうだ!何でここに来た!?」
「五味九頭がどんな奴か見に来たんだよ……」
「馬鹿っ!自分の命を大事にしろ!」
五味九頭は起き上がり、再び乾に襲い掛かって来た。咄嗟に前に出てスナイパーを構える青い戦士こと美龍だったが、銃を叩き落とされ、吹っ飛ばされた。
「美龍君!」
「へへへ……じゃあたっぷりお前を喰わせてもらうぞ……?」
「誰か!助けて!?」
「その恐怖、美味そうだな……!」
「誰かー!助けてくれー!」
その声に呼応するかのようにまたも後ろから銃声が鳴った。それは何発もあり、五味九頭は跪いた。
「何だ!?」
美龍を起こしつつ、今度は緑色の戦士と桃色の戦士が現れた。
「大丈夫か?ブルー」
「あぁ、ありがとうございます。グリーン。ピンク」
「雑魚は片付けたから、後はアイツだけだよ」
「そうですか。じゃあ行きましょう!」
「あぁ!」
「うん!」
ブルー、グリーン、ピンクは銃を持ちながら五味九頭に向かって行った。訳が分からず乾はそれを見守っていた。乾は「俺にも力があれば……!人々を助けられるのに……!」そう思うとトニーの持っていた謎の銃が共鳴し、光の球となって飛んでいった。
「やはり……彼が四人目か……」
そうトニーは呟いた。
乾は目の前に光の球が現れると、一瞬仰け反った。しかし光の球は「自分を掴め」と言うかのように乾の前に動いた。乾は恐る恐るそれに手を触れると、光の球は弾け、リボルバー銃に変わった。
「これは……!?」
それを遠くで見ていたブルー、グリーン、ピンクは「何っ!?」と驚いた。
「弾を込めろ!」
遠くでトニーが叫んだ。
「た、弾……?」
「そうだ!弾を銃にセットして、シリンダーを回転させてから自分の頭に撃ち付けるんだ!」
「そんな事をしたら死んでしまう!」
「覚悟があれば大丈夫だ!君が人々を救いたい。その気持ちがあれば、変身出来る!」
「へ、変身……?どういう事ですか!?」
「詳しい事は後で説明する!早く変身を!」
「こ、こう、か……?」
乾は球を込めてシリンダーを回転し、銃を頭に突き付けた。
「俺は……!皆を守る!皆の未来を守る為に!」
ブルーは「止めろ!お前が戦う必要は、悲しむ必要は無い!」と言うが、乾は「今目の前で失う悲しみを黙って見過ごす事は出来ない!俺は……!俺は……!あの時も怖くて助けられなかった……!だから、同じ過ちを繰り返さない為にも、このトリガーを引く!」と言った。
そう言って銃を撃つと、体が変化し、赤いスーツを身に纏った。
「こ、これは……!?」
「君は選ばれた!レッドトリガーだ!」
「れ、レッドトリガー……?」
「その銃、トリガーマグナムで敵を撃て!」
「は、はい!」
レッドトリガーはトリガーマグナムを握り締め、五味九頭に向かって打った。その瞬間、少し疲れた。「銃を撃った事が無いから当然か」と思いながら何発も打って行ったが、なかなか五味九頭にダメージを与えられずにいた。
「そんな攻撃でこの俺が倒せるか!」
五味九頭は更に殴る、蹴るの攻撃をしてきた。
「このままでは終われない……!」
苦戦していると、突如トリガーマグナムが赤く光り、何だと思ってもう一度シリンダーを回してトリガーを引くと、マグナム銃が出現した。
「これは……!?そうか!レッドマグナム!」
どこからかそう理解させるように自然とその言葉が出て来た。そしてそのマグナム銃を手に「レッドマグナム!」と叫びながら二丁拳銃で五味九頭に向かって行った。
ブルーが遠距離でブルースナイパーを撃ち、前進でグリーンのグリーンショットとピンクのピンクマシンで滅多打ちにして、最後にレッドが飛びながら上空から滅多打ちにした。そして最後にレッドがトリガーマグナムとレッドマグナムを合体し、一丁の銃にした。
「これで終わりだ!」
レッドは照準をロックした。
「ロック完了!発射!トリガニック・レッド・ショット!」
レッドのマグナムは巨大な弾を発射し、五味九頭を倒した。
「……これでまた一年……」
ふとトニーはそう呟いた。
「……ふぅ」
ブルー、グリーン、ピンクがレッドの所に駆け付けた。
「お疲れさん」
「お疲れ」
「お疲れ様」
「は、はい……」
「お前が選ばれるとはな……」
「やっぱりあそこに集まるのは選ばれた人間なのかもね」
「あそこ……?」
ブルー、グリーン、ピンクはシリンダーから弾を取り出し、変身を解除した。グリーンはヘビー、ピンクはミザルだった。
「せ、先輩方!?」
「お前も変身解除しろよ」
「あ、は、はい……えーっと……」
レッドも弾を取り出し、変身を解除した。
「これから宜しくな。レッドトリガー。根住乾君」
「え、あ、は、はい!宜しくお願いします!」
そしてトニーも加わり、五人は被害に遭った人達を手当てした。その最中、トニーは乾の瞳孔や舌の唾液量、皮膚の怪我具合を診察した。「何故?」と乾が聞くと「変身後の体に異常が無いか調べている」と答えた。トニーは「また一年か……」と呟いた。何が一年なのか分からずにいると、トニーは「無闇に変身はしないでくれ給え」とだけ言って大学へ戻った。
「なぁ。美龍君。あの『一年』ってどういう意味?」
「……今は知らなくて良い」
「……?そう?」
「それより何だ。ちょっと飲みに行こう」
「でも俺、まだ十八歳……」
「当たり前だろ。スマドリだよ。スマドリ」
「新しい仲間の歓迎会だ」
「もっと根住君の事、教えてくれる?」
「良いですよ!」
研究室に戻ったトニーは「彼らは後、約五十年の命、か……」と呟いた。
『獣撃戦隊ゴートリガー』2
・彼女の心にトリガー・オン!
乾が仲間になった翌日、同じ大学に通う一人の女性がいた。彼女は乾と同じく新入生だった。趣味の考古学を学ぶために考古学サークルに入部しようと思いやって来た。
「失礼しまーす」
「おっ。何だ何だ?」
「牛虎鬼門と申します。是非この考古学サークルに入部させて下さい」
「あー……ちょっと待っててくれるか?」
「はい」
ヘビーはトニーに電話した。トニーはすぐに部室に現れ、鬼門を見た。
「……君が五人目の可能性があるな」
「五人目?可能性?何なんですか?」
「まぁいずれ分かる。それより考古学に興味があるって?」
「はい」
「じゃあちょっとコレを見てくれ給え」
トニーはトリガーマグナムを鬼門に見せた。
「な、何ですかコレ?銃?」
「これを見て何も思わないかい?」
「そうですね……何か、懐かしいような、そんな気がします」
「そうか。じゃあこれは君に授けよう」
「え?ど、どうしたら良いんですか?」
「その時が来れば分かる。じゃあ適当に資料でも眺めておいてくれ給え。私はこれで失礼するよ」
そう言ってトニーは研究室に戻っていった。その後をヘビーは着いて行った。
「ちょっとちょっと!トニー先生!」
「何だね?」
「良いんですか!?犠牲者が増えるかもしれないんですよ!?」
「一人の命と数十億の命。君ならどちらを取る?」
「そ、それは……!」
「まぁそういう事だ。じゃあね」
ヘビーは部室に戻った。
「何なんですか?あの人」
「ウチの顧問だよ」
「えっ!?あんなに若いのに!?」
「十歳で大学を卒業して、十三年ここで働いてる二十五歳の笹江トニー先生だよ。ちなみに独身ね」
「あ、そこまでは興味無いです」
それから乾、美龍、ミザルがやって来た。その日は新たなメンバーに対しての歓迎会をする事にした。その後、帰り道で五味九頭が現れた。牛の頭に人型の体だった。
「な、何アレ!?」
「知らないのか!?五味九頭だ!」
「あれが!?」
牛の化け物はパチンコや競馬から帰って来た人々の感情を食べていた。どうやら喪失感を奪っているようだった。更に賭け事に対して執着心を得させて課金させ、破滅へと向かわせていた。
「止めろ!五味九頭!」
「何だ?お前達は?」
「それは今から死ぬお前に言う必要は無い!」
「小癪な……!」
牛の化け物は五人に突進していった。そしてそのまま通り過ぎ、壁に埋もれた。暫く出られないようで。もがいていた。そこに乾、美龍、ヘビー、ミザルの四人は変身した。但し、乾以外の三人は「チェンジバレット装填完了!トリガニック・チェンジ!ゴー!トリガー!」と言って変身した。乾は「え?あ?え?と、トリガニック・チェンジ!」と言ってぎこちなく変身した。そして四人は牛の化け物に突っ込んでいった。
一方で鬼門は金を失った人達に駆け寄った。そこでは「家族の為の金だったのに……!」「これが当たれば母さんの手術費が支払えたのに……!」と後悔する人達で溢れていた。
「……五味九頭!この人達が何をしたって言うの!?」
「あぁ?自滅だろ?自分の欲に溺れて結果こうなっただけだ」
「許せない……!絶対に許せない……!」
その瞬間、鬼門の持っていたトリガーマグナムが黄色く発光し、宙に浮いて目の前に出た。
「これは……!?」
「駄目だ!それを使っちゃいけない!」
ブルーは止めようとした。しかしレッドは「弾を込めてバレルを回転して自分の頭に向かって撃て!」と叫んだ。ヘビーやミザルは「馬鹿!何言ってんだ!?」と慌てて止めたが、もう遅かった。
「えーっと……確か……トリガニック・チェンジ!」
弾を込め。バレルを回し、自分の頭に向かって発砲した。すると黄色い戦士、イエロートリガーが現れた。
「一緒に戦おう!」
「うん!」
レッドはイエローと共に銃を乱射していった。そしてイエローは自分の専用武器の事に何故か気付いた。イエローはバズーカを取り出し、乱射した。牛の化け物は圧倒され、やがて倒された。
「やった!」
「やったな!イエロー!」
変身を解いた五人は集まった。
「おい!乾!お前何勝手な事をしてるんだ!?」
「何でだよ。美龍君?折角得た力なんだからバンバン使わないと……」
「お前は何も分かってない!この変身には危険が伴うんだ!そう簡単に使っちゃいけないんだよ!」
「えぇ?どういう事?」
「トニー先生から言われてないの?」
「何をですか?」
「昨日の今日だ。知らされていなくて当然だ」
「でも……!」
「まぁまぁ美龍君、落ち着けよ。根住君、牛虎さん。この事はキチンと話しておくべきだと思うから言うね?」
「何ですか?」
「でも、トニー先生の許可が無いと……」
「羊馬さん。良いんだ。知っておかないと、犠牲者が出るかもしれないから」
「何なんですか?」
「ここでは何だ。カラオケにでも行こう」
一同はカラオケに寄った。そこでヘビーは銃撃戦隊ゴートリガーの事について話した。
変身すれば、一年寿命が縮まる事。武器を使えばその分だけ寿命が縮まる事。つまり、戦えば戦う程、自分達は死に近付いて行っているという事を。
「そんな……!?何でそんな重要な事をトニー先生は教えてくれなかったんですか!?」
「覚悟が無いと変身出来ない。つまり、この話を聞いて覚悟が揺らいだらもう変身出来ないから。というのが理由らしい」
「……だからって……!」
「これを聞いた上でこれからも戦うかどうかは君達に任せる。今この場でトリガーマグナムを俺達に渡してくれても構わない」
乾と鬼門は少し黙り込んだ後「少し時間を下さい」と言ってその日はアパートに帰った。そこでは乾と鬼門は実は同じアパートに住んでいる事が分かり、今後の為にもと連絡先を交換して眠りに着いた。
それから数日が経ち、二人は学校に通い続けたが、部室には行けずにいた。しかし更に数日後、また目の前に五味九頭が現れた。今度は虎の化け物だった。その怪物は人々の虚無感を喰っていた。賭け事への闘争心を暴走させ、また賭博に全財産を賭けさせて持ち金をゼロにする事でその虚無感を食べていた。
それを見て乾と鬼門は躊躇った。このまま自分達が戦って良いものか。「死ぬんだぞ?」と思いながら。しかし乾は変身した。
「根住君!?」
「俺は、この力で人々を救う!俺にしか出来ない、俺だけの力だから!それが正義って事じゃないのか!?」
「……そうだね。そうかもしれないね……」
レッドは虎の化け物に向かって行った。その姿を見て、更に虚無感に苛まれる人々を見て、鬼門は覚悟を決めた。
「レッド!私も戦うよ!私の為じゃなく、皆の為に!」
鬼門も変身した。そして二人は虎の化け物に向かって行った。そこへブルー、グリーン、ピンクも登場し、五人で戦った。今度は無闇に銃を使わず、殴る、蹴る等の格闘術で戦った。しかしそれでは埒が明かず、結局銃を使う事になった。ブルースナイパーとレッドマグナムで虎の化け物を跪かせた後、ブルーは言った。
「五人の武器を合わせるんだ!」
五人は武器を合体させ、巨大なキャノン砲「トリガニック・キャノン」を作り、虎の化け物に放射した。牛の化け物は爆発四散し、ゴートリガー達は勝利した。
「結局、戦うんだな?」
「はい。俺は、皆の為に戦います。この命を犠牲にしてでも」
「それは違う」
「え?」
「自分の命と引き換えに助けた命には、必ず代償が着く。罪悪感という、大きな代償がな」
「その責任が分かっているなら、これからも戦って頂戴?」
「……分かる為にも、これからも戦います。それじゃあ駄目ですか?」
「……お前らしいな」
「鳥居君?」
「いや、コイツは良いんです。昔の事もあるし。乾の事はこのままでいさせてやって下さい」
「牛虎さんは?」
「牛虎さん。君も同意見か?」
「はい」
「そうか……じゃあ許そう。ようこそ。考古学サークルへ」
こうしてゴートリガーは五人になったのだった。
後日、一同はトニーの所へ行き、精密検査をした。現状では特にこれといった身体的異常は見られなかったが、少し気になる点があった。老化スピードが早まっているという事だ。この事から逆算すると、彼らの命は残り五十~六十年という事になった。
その現実を受け止め、乾と鬼門は改めて気を引き締めて戦う道を選んだのだった。
『獣撃戦隊ゴートリガー』3
・過去のアイツにトリガー・オン!
その日、美龍は乾の家に遊びに来ていた。
「美龍君。愛美ちゃんとはどう?」
「愛美な……まぁ、まだ傷心中って感じだな……」
「そっか……」
愛美。それは美龍の恋人である。過去に事故で大怪我をしてから美龍のアパートに引き籠り中である。体自体はもう治っているのだが、精神の方に問題がある。あの怪我以来、外に出るのが怖く、家から出る事が出来なくなってしまった。大学には進学せず、買い物以外の専業主婦的立ち位置で暮らしている。実際、実家から美龍のアパートに来る時も一苦労だったらしい。PTSDを発症してしまい、アパートに来てからも暫く挙動不審だったらしい。
「アイツも、大変だからさ……」
「でも愛美ちゃん、良かったな。美龍君みたいな彼氏が出来てさ」
「どうだかなぁ……?あの日以降、一切外に出てないからあんまり意味無いんじゃないかなって正直思う」
「そんな事無いよ。絶対に愛美ちゃんからしたら美龍君は助けられてる存在だって」
「そうかなぁ……?」
部屋の様子を見に来て、日用品の買い出し等の店等を美龍が紹介し、そのままアパートに帰った。美龍のアパートでは愛美が料理を作って待っていた。
「ただいま」
「おかえり……ご飯出来てるよ……」
「今日は何?」
「ビーフストロガノフ……」
「そうか。愛美のビーフストロガノフは美味いからな。楽しみだよ」
「ありがとう……」
二人は夕食のビーフストロガノフを食べた。いつものように静かに黙って食べるのだが、この日は愛美が珍しく口を開いた。
「そうそう……私ね……今日外に出たんだ……」
「えっ!?本当か!?」
「うん……ここの駐車場をクルッと回った……」
「そうかそうか!頑張ったな!」
「う、うん……えへへ……」
そのまま二人は風呂に入り、眠りに着いた。
翌日、サークルにて一同はミーティングをしていた。
「トニー先生。何でゴートリガーの副作用を教えてくれなかったんですか?」
「理由は簡単。世界を救う為の小さな犠牲を求めた。それだけだ」
「俺達の命はどうなったって良いって言うんですか……!?」
「まぁまぁ落ち着け。乾。俺達も知ったのはつい最近なんだ」
「美龍君。何で?」
「最近の研究でやっと分かったのだよ。このトリガーマグナムは装着者の寿命を縮めると」
「じゃあもっと研究を進めて寿命を延ばす方法を見付けて下さいよ」
「そう怒るな。牛虎君。君達は神様に選ばれたんだ。それだけでも光栄に思わないと」
「こんなの悪魔の所業と何ら変わらないじゃないか!」
「根住君……まだ分かってないようだね?これは人類を救う為の非常に英雄的行為なんだよ?それに選ばれただけでも誇りに思いなさい」
「何だと!?」
「乾!」
怒る乾を美龍が止めた。
「まぁ私もいずれ加わるから。それまで頑張ってくれ給え」
そう言ってトニーは部室を出ていった。
「何で皆怒らないんですか!?俺達は嵌められたんですよ!?」
「根住君。俺達だって怒りたいさ。でも、事実、最近の研究で寿命が縮まると聞かされたんだ。それはもう取り返しが付かないんだよ」
「だけど、こんな物は国に明け渡すのが普通じゃないんですか!?」
「一度持ち込んだんだよ。根住君。私達同席でね。でも、帰ったらこのトリガーマグナムは先生の机に戻っていたのよ」
「何で……?」
「分からん。ただ、もし仮説を立てるとしたら、あのトリガーマグナムは先生を後見人に選んだんじゃないか、というものだ」
「美龍君……」
「ところでさっき先生が言ってた『私も加わるから』ってどういう意味なんですか?」
「さぁ……?裏が読めない人だからな。そこはよく分からん」
その日、一同は解散した。
乾は久し振りに愛美に会いに、美龍のアパートに遊びに行った。
「ただいま」
「おかえり……あ、乾君……?」
「久し振り。愛美ちゃん」
「どうしたの……?こんな所まで来て……?」
「あれ?美龍君から聞いてないの?俺、渋井大学に入学したんだよ」
「あ……そうだったんだ……おめでとう……」
「ありがとう」
「まぁ立ち話も何だ。上がれよ」
「お邪魔します」
三人は久し振りに再会し、故郷の事を話した。とは言っても、あの事故の事を思い出させる為、本当に近況報告だけをしたのだが。
「そっか……おじさんもおばさんも元気なんだ……」
「あぁ。愛美ちゃんも元気そうでよかったよ」
「今日はどうだった?」
「そこの横断歩道まで歩いたよ……」
「凄いじゃないか!」
「でも渡れなかった……」
「いやいや!そこまで歩けるようになったんだったら大きな進歩だ!よし!今日は寿司でも喰おう!」
「えっ……い、いいよ……そんな大袈裟な……」
「大げさで良いんだよ!なっ!?乾!?」
「そうだなー。あの頃より大分進歩したもんねー」
「そ、そう……?えへへ……」
美龍はデリバリーで寿司を注文し、三人で食べた。
「それじゃあ、愛美の進歩と、乾の入学を祝して、カンパーイ!」
「カンパーイ!ありがとー!」
「カンパーイ……えへへ……」
三人は食事を終え、昔話にも花が咲き、宴もたけなわで解散した。
美龍は「途中まで乾を送っていく」と言って乾と一緒に少し歩いた。
「良かったな。愛美ちゃん」
「あぁ。今日は来てくれてありがとな」
「いやいや。美龍君と仲良くやれているようで良かったよ」
「でもたまにな……あの日の事を思い出して、夜に一人で震えてたりとかするんだよ……」
「どう乗り越えるかが鍵だね。もう一押し出来たら良いんだけど……」
「まぁまだ二十歳にもなってないんだ。いずれ時間が解決してくれるだろう」
「だと良いんだけど……」
一方その頃、地下では五味九頭が作戦会議をしていた。
「ファースト。アンタの部下はこの前やられたな」
「そうだな」
「シックスス、セブンス。お前達の部下もやられたな」
「そうだねー」
「そうだねぇ」
「次は俺達の番だ。良いな?」
「良いだろう」
「リト、出て来い」
そこには鳥の化け物が現れた。
「私はここに、サード様」
「人間達のトラウマを抉って来い」
「畏まりました」
そうしてリトは地上に繰り出た。
リトは高所恐怖症の人間を見付けては足で掴んで空高く舞い、落とした。それを何度も繰り返し、やがて工事現場を崩したり、交通事故を引き起こしたりした。
それがニュースとなり、美龍は眉を顰めていた。
「どうしたの……?そんな怖い顔して……?」
「あ、いや……今日はどうする?」
「今日はあの横断歩道を渡ってみようと思う……」
「そうか。車には気を付けろよ?」
「うん……」
美龍は大学に向かった。
愛美はトラウマを改善するべく、あの場所ではないが、横断歩道に向かった。しかしやはり怖くなり、引き返そうとした。その瞬間、リトによって暴走したトラックが愛美の方に突っ込んだ。愛美はパニックになり、涙と鼻水を垂れ流し、失禁してその場に蹲った。そこにリトが現れ、彼女のトラウマから来る恐怖や悲しみの感情を食べて「これは極上だ……!」と彼女を連れ去った。
一方その頃、大学では美龍がつまらなさそうに講義を受けていた。そして緊急警報が鳴った。五味九頭の出現アラートだった。詳しい事を大学側からメールで全生徒に一斉送信され、それを確認した美龍は取り乱した。
「愛美……!?」
そこへ乾も駆け付けた。
「美龍君!」
「乾!行くぞ!」
「あぁ!」
二人は現場に向かった。
そこは採石場で、愛美は体を縄で括り付けられ、クレーンにぶら下がっていた。目を覚ました愛美は発狂した。それを見てリトは「美味しいご飯だ」と負の感情エネルギーを集めていった。ある程度集めたところで一旦地下に戻り、エネルギーをサードに渡した。「このまま集めて来い」と言われ、リトは再び地上に繰り出た。
そこでは既にレッドとブルーが駆け付けており、ブルーはブルースナイパーでロープを弾き、ジャンプして愛美を抱き抱えて着地した。
「大丈夫か!?愛美!?」
「その声……美龍君……!?」
「そうだ!ごめんな!遅くなって!」
「う、う、う……うわぁああああああああああああああああああ!怖かったぁあああああああああああああああああああああああ!」
「すまない……!すまない……!」
そこへリトがやって来た。
「あらま。感動の救出劇を見逃してしまったな」
「貴様!五味九頭!」
「私はリト。もうその女から得られるエネルギーは全て吸い取った。後は好きにしな」
そう言ってリトは飛び立とうとした。ブルーはすかさずブルースナイパーでリトの羽を撃ち抜き、地面に叩き落とした。
「この私に傷を付けるとは……!」
リトは攻撃をしようとブルーに駆け寄るが、後ろからレッドが二丁拳銃で連撃した。その場に倒れるリト。そしてそこにヘビー、ミザル、鬼門も駆け付けた。
「お待たせ!」
「先輩!それに牛虎さんも!?」
「後はフィニッシュか?」
「はい。ここは俺にやらせて下さい」
「おう」
「ミザル先輩、牛虎さん。彼女をお願い」
「分かったわ」
「分かりました」
ミザルと鬼門は愛美を連れて非難した。
ブルーはブルースナイパーとトリガーマグナムを合体させ、トリガニックスナイパーを完成させ、照準をロックした。
「照準ロック!喰らえ!トリガニック・ブルー・スナイプ!」
トリガースナイパーから青い閃光が走り、それがリトを撃ち抜いた。
「この私が……この私がぁああああああああああああああああ!」
リトは爆発四散した。
その後、病院に向かった美龍は愛美に面会に行った。
「愛美!」
「しーっ!ここは病院だよ?静かに」
「あ、悪い……な、何か元気そうだな?」
「何かね?あの化け物に連れ回されてる間に、今までのトラウマとかがスッカリ消えちゃったんだ」
「えっ……!?体は何ともないか!?」
「だから、しーっ!」
「あ、ごめんごめん……体は何ともないか?」
「精密検査もしてもらったけど、至って健康だって」
「そうか……!良かった……!」
「ごめんね。美龍君。これからは私、ちゃんと生きていくから」
「あぁ……!あぁ……!」
感情を食べてしまうという特殊な生物。五味九頭。彼らは人々を幸せに導く存在なのかもしれない。事実、皮肉にも、五味九頭のお陰で一人の女性が救われてしまったのだった。彼女は、超常的捕食によって精神が安定してしまったのだった。
『獣撃戦隊ゴートリガー』4
・全ての動物にトリガー・オン!
愛美の救出劇から早数週間。乾にとってあの時救えなかった友人であり、美龍にとってカウンセラーを志す切っ掛けとなった愛美が五味九頭によって救われてしまってから、五人はとある疑問を持つようになった。
「五味九頭は本当に悪い奴らなのか?」
それを聞きに五人はトニーに会いに行った。
「トニー先生」
「何だい?」
「五味九頭は本当に悪い奴らなんですか?」
「何を言っているんだい?悪いに決まっているだろう」
「どうしてそんな事が言えるんですか?」
「逆に聞くけれど、何かあったのかい?」
「実は……」
美龍は語り出した。愛美が救われたという事実がある事を。そして過去に襲われた人達もその後、精神が安定しているという事についてを。それを聞いてトニーは溜め息を吐いた。
「……まさかそういう事になっているとはね……」
「教えて下さい。本当に彼らは悪なんですか?」
「……着いて来給え」
トニーは五人を連れて大学の地下に向かった。そこには昔の人々が描いたとされる席番の絵があった。
「これは……?」
「日本のとある古墳から発見された壁画だ。これには、あの五味九頭が描かれている」
そこには確かにあの鼠、牛、虎、リトの姿に似た化け物が描かれていた。また、乾や鬼門が戦う前に美龍達が戦っていた化け物も描かれていた。
「この古代文字を解析した結果分かった事がある。彼らは、この世の不の感情を生み出した根源なのだよ」
五人は「何ですって!?」と驚いた。
「彼らがいる限り、この世から不幸、不運、マイナス感情は消えない。つまり、彼らは負の感情の具現化に過ぎないんだ」
「そんな……」
「さぁ、もう話は終わりだ。また彼らを見付けたらすぐに倒すんだ。良いね?」
五人は「はい……」と答え、項垂れながら帰った。
それぞれが自宅に帰り、各々過ごした。
ヘビーは家に帰ると、兎や犬、猫等が出迎えてくれ、その日の嫌な事が全部消えたような感覚になった。
「ただいま、ただいま~!お~、皆元気そうで何よりだ。よし。今から晩後は作るからちょっと待っててな?」
ヘビーはペットフードを調理して振舞った。ガッツキ具合が凄く、それを見てヘビーは笑みが零れた。「コイツ等の為にも、俺が世界を救わなきゃな……」と思いながら、その日は皆と一緒に寝た。
翌朝、ヘビーは休日だった。車で買い出しに出て、そこで色々玩具や食材を買っていき、帰った。その帰り道、近所の公園で子供達がボールのような何かを蹴って遊んでいる所を目撃した。それはボールではなく、猫だった。猫がボール代わりに蹴られて遊ばれていたのだ。ヘビーはすぐに車を降り、子供達に拳骨を喰らわせて追い払った。ヘビーは猫をすぐに助け、動物病院で診てもらった。不幸にも、その猫は死んでしまった。「また助けられなかった……!」と落ち込むヘビー。
動物病院から出ると、さっきの子供達が親を連れて文句を言いに来た。
「ちょっと貴方!貴方がこの子達に暴力を振るったのね!?」
「それはコイツ等が猫を蹴り殺してたからですよ」
「そんな犬や猫の方が人間よりも大事だって言うんですか!?」
「命に優劣なんかありません」
「この子達は酷く傷付きました!どうしてくれるんですか!?」
「傷付いて当然です。だって、そうでもしないとちゃんとした教育が出来ないからです」
「私達の教育が間違っているとでも言いたいんですか!?」
「そうです。命を大切にしない人間に、将来があるとでも?」
「何て憎たらしい……!貴方、渋井大学の生徒ね!?この事は学校側に通報させて頂きます!」
「ご勝手にどうぞ。私は一切間違っていないので」
「反省しなさい!」
「反省するのは貴方達の方だ。あの猫は死んでしまった。そこのガキ共に詰られて殺されたんだ!」
「うぐっ……!」
「では私はこれで失礼します」
そう言ってヘビーは自宅に帰った。帰るなり、ペット達が集まって来た。
「遅くなってごめんな?今、飯作ってやるから」
ヘビーは浮かない気持ちでご飯を作った。それを察してか、ペット達は足元に擦り寄って来た。
「あぁ、ごめんな?さっきちょっと嫌な事があったからさ……お前達は恵まれてるなぁ……」
ヘビーは「ほら」とご飯をペット達にあげた。
「いっぱい食えよ~?」
ヘビーはその日、少し一人になりたくて一人だけでベッドで寝た。
翌朝、ヘビーは大学からの連絡で呼び出された。昨日の暴力事件の事だった。ヘビーは学生課の先生の所へ向かった。
「何でしょうか?」
「『何でしょうか?』じゃないでしょう?貴方、昨日、子供達に暴力を振るったそうじゃないですか」
「あぁ、その事ですか……あれは百パーセント、向こうが悪いです」
「何があったか知りませんが、暴力はいけません」
「何があったか知ったら暴力は許されるんですか?」
「……一応、訳を聞きましょうか」
ヘビーは昨日の出来事について話した。すると学生課の先生は頭を抱えた。
「んー……貴方の話だけでは何とも言えないですが……それは確かに子供達が悪いですねぇ」
「でしょう?でも今のご時世、暴力がいけない事くらい俺だって分かりますよ。でもね、暴力を振るってでも教えなきゃいけない事だってあると思うんですよ」
「……とにかく、貴方は明日から二週間の停学処分です。良いですね?」
「分かりました」
ヘビーは一度家に帰り、ペット達にご飯をあげてから部室に向かった。
ヘビーが着くなり、乾、美龍、ミザル、鬼門が詰め寄った。
「ヘビー先輩!停学になったって本当ですか!?」
「お?あ、あぁ、うん。まぁな……」
「何があったの?」
「また一から説明か……」
ヘビーはまた説明した。すると乾は憤り、美龍は肩を落とし、ミザルは寄り添い、鬼門は悲しんだ。
「何て悪ガキだ!俺でも手が出ますよ!」
「でも暴力はいけませんよ。ヘビー先輩」
「気持ちは分かるよ。貴方は何も間違ってない。と、私は思う」
「その猫ちゃん、可哀想ですね……早く見付かっていればまだ助かったかもしれないのに……」
「皆、ありがとう。でも確かに暴力はいけなかったなって今は思う」
「大人ですね」
「これでも成人済みだ」
「それは俺達もですよ」
「いや、酒が飲める年齢って意味で」
一同は「ははは」と笑った。そこへトニーが現れた。
「こらこら。停学処分になったんだろう?ここに来ちゃ駄目じゃないか」
「トニー先生。でも停学は明日からなんで」
「あ、分かってたか。ちぇっ」
「で?何の用ですか?」
「何。今調べていた研究が結果を出したからその報告にね」
「何ですか?」
「五味九頭は何も人間達の負の感情だけを喰う訳じゃないらしい。動植物、魚介類にもその対象を移す事が出来るらしい」
「何だって……!?じゃ、じゃあウチの子達にも影響が出るのかもしれないんですか!?」
「君の子が何だかは知らんが、まぁペットにも悪影響って事だな」
「何て厄介な……!」
一方地下では五味九頭が作戦会議をしていた。
「次は我々、エイスとナインスが出ます。宜しおすか?」
「良いだろう」
「ベヒ。こちらにいらっしゃい」
そこに蛇の化け物が現れた。
「アタシゃここに」
「孤独感を探してきなさい」
「あいよ」
ベヒは地上に繰り出て、様々な動物を丸呑みにしていった。そして腹の中で暗闇に一人(一匹)孤独という環境を作り出し、その負のエネルギーを蓄えていった。ある程度エネルギーが溜まっていったところで一度地下に戻り、エイスとナインスに振舞った。その後、また地上に出ては同じ事を繰り返した。負のエネルギーを取り終えた動物達はその場に捨てられた。動物園の動物も街中に置き去りにされたりで、街はパニックになっていた。
そこへゴートリガーの五人が現れた。
「五味九頭!」
「何だ?お前達は」
「こういう者だ!」
ヘビーはトリガーマグナムで一発撃った。弾丸は逸れ、地面に当たった。
「行くぞ皆!」
五人は弾をトリガーマグナムに込めた。ヘビー、美龍、ミザルは「チェンジバレット装填完了!トリガニック・チェンジ!ゴー!トリガー!」と言って変身した。一方で未だ慣れていない乾と鬼門は「トリガニック・チェンジ!」とだけ言って変身した。
「グリーントリガー!」
「ブルートリガー!」
「ピンクトリガー!」
レッドとイエローは「……え?」と言った。
「ほら!続けて!」
「え、あ、はい……?れ、レッドトリガー!」
「い、イエロートリガー!」
「獣撃戦隊!ゴー!トリガー!」
グリーン、ブルー、ピンクは決めポーズをした。それにならってレッドとイエローもそれっぽいポーズを決めた。何故か後ろでは爆発が起こった。
「何だ!?攻撃か!?」
「俺達へのエールだ!火打石みたいなものだ!行くぞ!」
「応っ!」
「えぇ!」
「え、あ、はい!」
「は、はいっ!」
ベヒは人型の蛇の軍勢を生み出し、ゴートリガーに送り込んだ。ゴートリガーはそれぞれレッドマグナム、ブルースナイパー、グリーンショット、ピンクマシン、イエローバズーカで対応した。粗方片付いた後、グリーンはベヒに向かって行った。
「五味九頭!何故こんな事をした!?」
「生きる為さ!アタシ達が生き残る為の生存戦略さ!」
「それで生き物にストレスを与えてるって言うのか!?」
「そのストレスも無くなるんだから良いだろうが!」
「良くない!そもそもストレスを与えないのが正しい生き方だ!」
「じゃあ殺して食うのも悪い事じゃないか!?我々よりお前達の方がよっぽど残酷じゃないかぇ!?」
「黙れ!」
グリーンはトリガーマグナムとグリーンショットを合体させ、トリガニックショットを作った。
「喰らえ!トリガニック・グリーン・スプラッシュ!」
逃げようとしたベヒだったが、広範囲に広がった散弾銃の弾を避けられず、ベヒは倒れた。
「ふぅ……」
五人は変身を解いた。
「お疲れ様です」
「お疲れ様です!」
「お疲れ」
「お疲れ様ですー」
「あぁ。お疲れ。今日の事をトニー先生に報告しに行こう」
「そうですね」
五人はトニーの研究室に向かった。
「トニー先生。今日の報告です」
「あぁ。ご苦労様。どうだったね?」
「はい。動物にも効果があるみたいです」
「そうか。やはりな」
考え込むトニーに、乾はふと問い掛けた。
「あの、変身する前に言ってる前口上って何なんですか?」
「前口上?」
「バレットが何たらとか、トリガニック・チェンジとか何とか」
「あぁ。それは単なる私の趣味だ」
「は?」
「戦隊なんだから何か自分を鼓舞する掛け声があった方が覚悟が決まるだろうと思ってね。まぁ覚えておき給え」
「は、はぁ……?」
「メモを渡そう」
トニーはメモ用紙に前口上を書いて乾と鬼門に渡した。二人はその後数日間、ひたすらにそれを覚えたのだった。
『獣撃戦隊ゴートリガー』5
・人助けの為に生きる彼女達にトリガー・オン!
その日、大学は休講になった。最近、五味九頭の頻繁な出現で大学側もやや慎重気味になって来たからである。
急遽休講となり、しかもヘビーもまだ停学処分中で暇な為、久し振りに鬼門は考古学を勉強しようと部室に向かった。部室にはミザルがいた。
「羊馬先輩」
「あら、牛虎さん。お疲れ様」
「お疲れ様です。羊馬先輩も休講ですか?」
「えぇ。今日はどの学部も休講だって」
「そうなんですか。そこまで見てませんでした」
「うっかりさんねぇ」
二人は自販機に向かい、珈琲を片手にミザルは一服した。
「あ、煙草平気?」
「大丈夫です。父が喫煙者だったので」
「そう」
鬼門は少し気まずい雰囲気に耐えられず、ミザルに質問をした。
「あの、羊馬先輩って……」
「ミザルで良いよ」
「え、あ、はい。じゃあ私の事も鬼門で良いですよ」
「そう。で?何?鬼門ちゃん」
「えーーと、ミザル先輩って何学部なんですか?」
「医学部医学科だよ」
「へー。頭良いんですねぇ」
「この大学に来てるんだから皆頭良いでしょ」
「それもそうですね」
「鬼門ちゃんは?」
「私は教育学部教育学科です」
「あら。じゃあ将来は先生?」
「はい」
「そう……でもゴートリガーになったからには、将来が無くなる事も覚悟しなくちゃね」
「そうですね……先輩は医師志望ですか?」
「当然」
「今を生きて、未来を捨てる覚悟は何処にあるんですか?」
「そうだねぇ……今助けたい人が目の前にいたから、かな?」
「助けたい人って、恋人とかですか?」
「ブッ!違うよ!純粋に目の前で困ってる人がいたから!」
「あ~!何か怪しい~!」
「五月蠅いなぁ……そういう鬼門ちゃんは男の方はどうなのよ?彼氏くらいいるんじゃないの?」
「はい。いますけど?」
「ほーら、やっぱりいないんじゃ……って、えっ!?いるの!?」
「いますよ?」
「ど、どんな人……?」
「この大学の二個上の先輩です。私が高校生の時の家庭教師でした」
「あ、へ、へー……意外……」
「そんなに変ですか?」
「いや、こう、清純そうに見えて意外とヤる事ヤってんだなって……」
「私達はプラトニックなお付き合いをしてますので」
「あ、そう……って事は彼氏さんは文系?」
「いえ。ミザル先輩と同じ医学部医学科です」
「え?じゃあ同期じゃん。名前は?」
「牛虎浦城君です」
「牛虎……あ、いたねぇ。あれ?でも牛虎って……?」
「従兄なんですよ」
「あ、そうなんだ~!へ~。身内でお付き合いしてんだ?」
「まぁ、そうですね」
煙草を吸い終え、二人は部室に戻った。
一方その頃、地下では五味九頭が作戦会議をしていた。
「今度はこのフィフスとフォースが出るぞい」
「出るぞーい」
「良かろう」
「ウヨ、カモ~ン!」
そこに羊の化け物が現れた。
「はいよ~。フィフスの姉御~」
「人々の疲弊感を奪って来なさ~い!」
「あいよ~!」
そう言ってウヨは地上に繰り出た。ウヨは人間の疲れを無くす特殊なネックレスを作り出し、人間達にそれを着用させて延々と働かせたり勉強させたりした。結果、疲れない体で働き、勉強し続け、最終的に疲弊感を取り戻させ、一気に疲れさせた。バタバタと倒れる人々に、救急外来はパニックになっていた。
「最近元気になってる人が多いな」と思うミザルと鬼門。そして目の前で人が一人倒れた。ミザルは応急手当をしつつ、鬼門は救急に通報。すぐに救急車がやって来たが、その人は「まだ働ける……!まだ働ける……!」と譫言を言っていた。「そんな事言ってる場合じゃない!」と救急隊員の人に言われながら搬送されていった。搬送先で「過労だ」と言われた。そんな倒れる人を何人も目の前で見てしまった二人は「もしや五味九頭……!?」と思った。もう一人、女性が倒れた。「あの子達の為に働かないと……!」と自分の子供達の為に働こうとするシングルマザーだった。そんな女性を見て鬼門は「貴方がそこまでする必要は無いんですよ」と諭したが、「貴方に何が分かる……!?」と怒りをぶつけられてしまい、一瞬怯んだ。しかし鬼門は「体あってこその家族でしょう?まず自分の体を大事にして下さい」と言って彼女を宥めた。やはり搬送先で「過労」だと言われた。「その後、街に出て二人は妙に疲れている人達が溢れている事に気が付いた。
彼らを応急処置し、二人は大学に戻った。もしかしたら五味九頭の仕業かもしれないとトニーに聞きに行った。そこでトニーは「おそらく五味九頭の仕業だろう」と答えた。そして二人は残りの三人に連絡を取り、五味九頭の捜索に出た。男性三人はそれぞれ一人ずつ、女性二人は一応二人で四組になって行動した。暫く捜索を続けていると、とある館に辿り着いた。占い館だった。そこには元気の無いサラリーマンや受験生と思わしき年齢の子達が館に入っていき、出てくるとネックレスを着用して出てきていた。そのネックレスを着けている間は非常に元気よく動いているようで、ふとそのネックレスを見せてくれないかと頼んで渡してもらうとその直後、そのネックレスを着けていた人は倒れた。病院に運ぶと「過労だ」と言われた。これは五味九頭の仕業だと確信した二人は三人に連絡を取り、その占い館に挑んだ。
「五味九頭!」
「何すか?営業妨害っすよ?」
「アンタ、五味九頭だろう!?」
「だったら何すか?」
「倒す!」
「ほほう?やってみろよ。人間風情が」
ウヨは覇気を出し、五人を外に放り出した。五人は「チェンジバレット装填完了!トリガニック・チェンジ!ゴー!トリガー!」と言って変身した。
「ピンクトリガー!」
「イエロートリガー!」
「レッドトリガー!」
「ブルートリガー!」
「グリーントリガー!」
「獣撃戦隊!」
五人は声を揃えて「ゴー!トリガー!」と叫んだ。
「人々を過労死させるまで働かせるなんて言語道断!」
「家族の大切さが分からない悲しき生き物め!」
「その疲労感を取り除こうとしているのに、何で止めるかなぁ?」
「黙りなさい!今後は国の未来と医療が人々を救うわ!」
「家族の愛が、世界を救う!」
「行くわよ!イエロー!」
「えぇ!ピンク!」
二人はトリガーマグナムで銃撃していった。
「何であの二人、あんなに気合い入ってんだろ?」
「さぁ……?」
「そんな事より、俺達も行くぞ!」
レッドとブルーは「あ、はい!」と答え、応戦した。ウヨは人型の蛇の化け物の軍勢を出現させ、レッド、ブルー、グリーンを足止めした。
一方でピンクとイエローはウヨに向かって行った。ウヨへの攻撃は柔らかい毛で通らず、苦戦していた。しかしイエローはイエローバズーカで一発ウヨに浴びせ、毛を燃やした。その後をピンクがピンクマシンガンで追撃し、ようやくダメージを与えた。攻撃への耐性が無かったのか、ウヨは蹲った。そしてピンクはトリガーマグナムとピンクマシンを、イエローもトリガーマグナムとイエローバズーカを合体させてトリガニックマシンとトリガニックバズーカを作った。
「照準!」
「ロック!」
「トリガニック・ピンク・スプラッシュ!」
「トリガニック・イエロー・ファイア!」
二人の弾は渦を巻いて飛んでいき、ウヨを倒した。
「……人間は、私達医者が治す……!」
「家族の愛を利用するなんて……!お父さん、お母さん、お兄ちゃん、私、負けないからね……!」
五人はそれぞれ家に帰った。
ミザルは鬼門のアパートに行った。女性同士の親睦会だ。ミザルはふと仏壇があるのに気が付いた。
「あれ?どなたの仏壇?」
「あぁ、お父さんとお母さんとお兄ちゃんのです。昔、事故で亡くなったんです」
ミザルは写真を見た。
「これは……!?あの時の……!?」
「あの時?」
「……この写真……どこかで……!」
「知ってるんですか?」
「……いや……」
ミザルは財布から何度も折りたたまれた一枚の古い新聞の記事を取り出した。その記事には、交通事故で亡くなった三人の家族が一人妹を残してあの世に逝ったという記事だった。
「この事故……」
「え?」
「鬼門ちゃん……私、あの時、現場にいたんだ……!」
「…………」
「あの時助けられずにいて、申し訳ありませんでした……!」
ミザルはそう呟きながら新聞の記事を握り締めた。鬼門はミザルの肩に手を置き「手を合わせてやって下さい」と言った。
ミザルと鬼門は仏壇に花を添え、線香を経てて鐘を鳴らした。
「お父さん、お母さん、お兄ちゃん……事故の事はまだ忘れられそうにないけど、それでも私は最後まで生き抜くからね……」
そう言って鬼門とミザルは手を合わせ、その日、ミザルは自分のアパートに帰り、二人はそれぞれ眠りに着いた。
『獣撃戦隊ゴートリガー』6
・巨大なアイツにトリガー・オン!
地下では五味九頭が作戦会議をしていた。
「今度こそこのセカンドとサードが手を下す!良いな!?」
「良かろう」
「出でよ!我が可愛い愛弟子!チョー!」
「はっ!俺はここに!」
「人間達の嫉妬心を集めて来い!」
「はっ!」
そう言ってチョーは地上に繰り出て嫉妬心を集めた。とある居酒屋に向かい、そこで特殊な音波を出し、人々に興味を与え、来店させた。そこで嫉妬心を植え付け、翌日に争わせるように仕向けた。その負の感情エネルギーを抽出し、それを地下に持って帰っていった。
一方その頃、ヘビーの停学処分が終わり、五人は改めて大学に揃って通えるようになった。
「やっと通えるな……」
「もう暴力は止めなさいね?ヘビー君」
「分かってるよ。羊馬さん。それにしても、一年留年が決まっちまったのが痛い……」
「何でですか?」
「一回でも休んだらアウトな実験科目があったんだよ……」
一同は「ご愁傷様です」と言った。ヘビーは「本当にな……」と本当に落ち込んでいた。
そこへトニーがやって来た。
「やぁやぁ。皆さんお揃いで」
一同は「トニー先生」と言った。
「トリガーマグナムの新しい研究結果が出たよ」
「何です?」
「これだ」
トニーは五発の弾丸を取り出した。
「これは?」
「トリガニック・ビーストだ」
「トリガニック・ビースト?」
「まぁ要するに巨大マシンだな。合体して、ロボットになる」
「そんなアッサリ言われても……どうすれば良いんですか?最初からそれで踏み潰せと?」
「それはマズい。おそらくだが、これを使うと三年、寿命が縮まるんだ」
「そんなに重い代償が……?」
「そうだ。だから無闇に使っちゃあいけないよ?」
「分かりました」
「じゃあ後は任せる。あ、そうだ」
トニーは五枚のコピー用紙を取り出して五人に渡した。
「これは……『サモン・バレット充填完了!カモン!トリガニック・ビースト!』……?」
「トリガニック・ビーストを呼ぶ時の前口上だ。覚えておき給え」
「は、はぁ……?」
「それと、各マシンの扱い方も渡しておこう。よく読んでおき給え」
「はい」
トニーは更に何枚もの資料の束を五人に配った。
「じゃあ私はこれで」
トニーは帰っていった。
「トニー先生って、いつ自宅に帰ってるんですかね?」
「さぁ?すぐそこに先生用の寮があるし、そこなんじゃないか?」
「あー、ありましたねぇ。そういえば」
そして五人はそれぞれアパートに帰り、。
翌日、乾は大学に向かった。そこで抜き打ちテストを出され、一瞬慌てたが、問題を見るなり「何だ。昨日の範囲じゃん」と余裕で満点を取った。するとそこの留年生が嫉妬心丸出しで突っかかって来た。
「おうおう。随分余裕じゃないか。新入生君?」
「大和さん。何ですか?テスト、そんなに悪かったんですか?」
「ギリギリ落第点だ」
「あちゃー。もっと頑張らないとですね」
「チッ……!この優等生がよ……!」
まさに嫉妬心丸出しで大和は乾に毒気を吐き、席を離れた。「何なんだ?」と思っている乾はモヤモヤしながら昼食を買って部室に向かった。
部室に向かうと、皆がいた。そこで話をした。
美龍も同じように同級生から嫌味を言われた。彼女と同棲している事への嫉妬心からだった。
ヘビーも同級生から「一年浪人下挙句、動物が飼えるだなんてよっぽど裕福な暮らしなんだな」とチクチク言われたそうだった。
ミザルもまた同級生から医師志望の理由を聞かれ、素直に答えると「正義感ってやつか。へー。偉い偉い」と嫌な返しをされたらしい。
鬼門も先生から「私って可哀想でしょアピール?あー可哀想可哀想ねー」と小言を言われたらしい。
皆、そんな事を普段言わない性格の人達だった為、何かおかしいと感じていた。
翌日、再び講義に向かうと、一同は吃驚した。昨日嫉妬心を剝き出しにして近付いてきた連中が平謝りしてきたのだ。昨日の嫉妬心なんかまるで無かったかのように素直になっていたのだという。
「これはもしや五味九頭の仕業では……?」
と違和感を覚えた五人はトニーに聞きに行った。
「トニー先生」
「どうしたね?」
「もしかしたらの話なんですけど……」
「周囲の人間が急に嫉妬心に溢れていた事かい?」
「よく分かりましたね」
「私もやっかみがられててね……『天才は良いよなぁ』とか『その歳で教授とか羨ましい』とか言われた翌日に、昨日の事が嘘のように謝って来ていてね」
「私達も同じです」
「やっぱりね。きっと、五味九頭の仕業だろう。探すには何か手掛かりが必要だが……」
その時、乾が言った。
「意外と近いかも……?」
「え?」
「こんなに近場で起きてるなら、近辺調査すればすぐに分かるかも」
「成程ね。じゃあ性格が変わってしまった人達に最後に何処に行ったかを聞いてみよう」
一同は「はいっ!」と答えて、それぞれの人物達に会いに行った。そこで分かった事は、最後に行ったのは皆共通してとある居酒屋だった。その居酒屋に向かってみると、憂さ晴らしをするかのようにやって来た客達が余計に苛々した様子で店から出てきているのを見た。
「やっぱりここか……」
「みたいだね」
「よし、行こう」
店内に入ると、すぐに出たくなる程ドンヨリした重い空気が広がっていた。流石に異常だと感じた五人は厨房に入っていった。
「すみませーん」
「何です?ここは関係者以外立ち入り禁止ですよ?」
そこでチョーが現れた。
「お前は……!五味九頭!?」
「何だ?俺の事を知ってるのか?」
「俺達はお前達を許さない!」
「小癪な!」
チョーは覇気を出し、五人を店外へと追い出した。五人は「チェンジバレット装填完了!トリガニック・チェンジ!ゴー!トリガー!」と言って変身した。
チョーは店から出て来た。
「あらら?お前達がゴートリガーさん?丁度良い。腹ごなしに行かせてもらうぜぇ?ハァッ!」
チョーは人型の蛇の化け物の軍勢を出現させた。
「雑魚共が……!」
五人は雑魚達の相手をした。一方でチョーは姿を眩ませた。
チョーは地下に戻り、ゴートリガーの正体をバラしに行った。
「よくやったぞ!チョー!」
「有り難き幸せ……!」
「ついでだ。倒してこい」
「えっ。で、でもこのままじゃ殺され……」
「あ?」
「あ、いえ……行ってきます……!」
「あ、待て。これを持って行け」
「は……?」
チョーはセカンドから指輪を渡された。
「これは……?」
「ちょっとしたおまじないさ。さぁ行け!」
「はっ……!」
再びチョーは地上に繰り出た。そこではもう雑魚は消えていた。
「あらら。お強いねぇ」
「貴様!何処に行っていた!?」
「何。ちょっと古巣にな。それより、大人しく殺されてくれないか?怠いんだよ」
「ふざけるな!」
「ふざけてんのは……テメェらだろうが!」
チョーは牙を尖らせ、五人に猛スピードで突っ込んでいった。五人は対処出来ずに散り散りに吹き飛ばされた。しかしそれが逆に好都合だった。グリーンとピンクはグリーンショットとピンクマシンで広範囲に攻撃し、チョーの足止めをした。そこにすかさずブルーがブルースナイパーで遠距離射撃で脚を撃ち抜いた。そしてイエローがイエローバズーカでチョーを吹き飛ばし、レッドがレッドマグナムとトリガーマグナムの二丁拳銃で更に吹き飛ばした。
「五人の武器を合わせるんだ!」
五人はそれぞれの武器をトリガーマグナムと合体させ、トリガニックマグナム、トリガニックスナイパー、トリガニックショット。トリガニックマシン、トリガニックバズーカを作り、照準をロックした。五人は「ファイナルシュート!」と叫んで撃ち込み、チョーは爆発した。
勝利に喜んでいると、急に地面が揺れ「地震か!?」と身構えていると、今倒したチョーが巨大化していった。
「何だと!?」とゴートリガーとチョーは驚いていた。チョーですら今の状態に理解が追い付いていないようだった。
しかしチョーは「動けるものなら……!」と体を起こし「この際、嫉妬心なんか関係無い!」と言いながら辺りを破壊していった。
レッドは「こんな時の為のトリガニック・ビーストだ!」と叫んだ。五人は先日もらったあの弾をトリガーマグナムに込め「サモン・バレット充填完了!カモン!トリガニック・ビースト!」と言いながらバレルを回転させ銃口を自分の頭に向け、発砲した。その瞬間、銃口を向けた方とは逆の方の頭からそれぞれの動物の頭をしたメカが現れた。
レッドからは鼠、犬、猪。ブルーからは鳥と龍。グリーンからは兎と蛇。ピンクからは馬、羊、猿。イエローからは牛と虎が現れた。それぞれが宙を舞い、鼠が胸部の装飾パーツに、犬と猪が半分ずつ分かれて合体し、胸部と両腕になった。鳥が翼に、龍が腰になった。蛇と兎は合体して両脚になった。馬と猿が両手に、羊が頭部になった。牛と虎は足になった。全て合体し、巨大なロボットになった。
五人は「合体完成!キングトリガー!」と叫んだ。乗り込むタイプではないらしく、最低でも一人の意思で動かせるようだった。但し、五人が息を揃えた方が攻撃力や俊敏性が上がるようだった。いきなりのデビュー戦で悪戦苦闘したが、動かす内に次第にコツを掴み、皆で無意識に息を合わせる事が出来るようになった。アクロバティックな動きまで出来るようになり、何とかチョーを倒す事が出来た。
「……何だ?この力……」
「分からない……だが、確実に、悪い事には使ってはいけないという事だけは分かる」
「で、でも、こんな力……!こんな力を制御し続ける事が出来るとは到底思えません……!」
「やるしかないんだ。無理にでも」
「そうね。これは私達にしか出来ない、私達だけの力、ね……」
五人はこの力を悪用しないように固く誓い、報告をしにトニーの所に向かった。
「トニー先生」
「君達か。どうだった?あのトリガニック・ビーストは」
「怖かったです……」
「怖かった?強かったじゃなくて?」
「強かったには強かったです。でも、それ以上に、怖かったです。この力は、あまりにも強大過ぎます」
「そうか……じゃあ使いたくないのなら使わなくて良いさ。次からは私も戦うから」
「トニー先生が戦う?どういう事ですか?」
「その時が来れば分かる。今日はもう帰って休みなさい」
「はい……」
五人はそれぞれのアパートに帰り、今日という日を忘れないように心に強く願いながら眠りに着いた。
『獣撃戦隊ゴートリガー』7
・居場所を失った彼らにトリガー・オン!
ゴートリガーの正体を知った五味九頭は、彼らの居場所を探した。
「ファースト様~。これからどうする~?」
「エイス。勿論彼らを追放させるぞ。お前の部下を借りる。来い。ルイ」
ファーストがそう言うと龍の化け物が現れた。
「ファースト様。私はここに」
「ゴートリガーの住処を潰してこい」
「畏まりました」
「おっと。これを着けていけ」
ファーストは指輪を渡した。
「これは……先の戦闘でチョーが巨大化した……?」
「死ぬ歳に起こる死のエネルギーを増幅させる装置だ。まぁ、最後の手段だな」
「そうですか。では有り難く……」
ルイは地上に繰り出て自分の姿を人間の姿に変え、渋井大学に乗り込んだ。そして乾の講義している教室に向かった。そこで乾を見付けると「貴様か!」と詰め寄った。
「何だ、お前!?」
「ゴートリガー!貴様だな!?」
「何故それを!?」
「こういう者だ!」
ルイは正体を見せた。教室にいた生徒や先生はパニックになり逃げ回った。乾は仕方なくその場で「トリガニック・チェンジ!」と言って変身した。窓ガラスを割り、外に出た。特別警戒アラートが鳴り、美龍、ヘビー、ミザル、鬼門も外に出た。
「レッド!」
「皆!五味九頭だ!」
「見れば分かる!行くぞ皆!」
四人は「トリガニック・チェンジ!」と叫んで変身した。
五人は戦い、ある程度ルイにダメージを与えたところでルイはその場から逃げようとした。
「待て!」
「待たない。お前達の居場所はもう何処にも無い。二度と帰れると思うな!」
そう言い残してルイは飛び去った。
五人は「居場所はもう何処にも無い」という言葉が引っ掛かり、ふと自分達のアパートに向かった。そこには跡形も無く潰されたアパートがあり、実家に電話すると誰も出なかった。スマートフォンでネットニュースを確認すると、そこには自分達の実家が潰され、家族が全員死亡したという報道がされていた。
五人は膝から崩れ落ちた。今まで支えてくれていた家族が誰一人いなくなってしまった事に絶望したからだ。そして帰る家も無く、仕方なく部室に戻るとそこにはトニーがいた。
「やぁ。君達」
「トニー先生……!」
五人は泣き崩れた。トニーは何も言えず、ただ目線を落として肩に手を置く事しか出来なかった。そこに学園長が現れた。
「どうして戻って来た!?」
「学園長先生」
「トニー君!君は分かっていたのか!?彼らがゴートリガーとやらの迷惑ものだと!」
「……まぁ、はい……」
「迷惑……?」
「世界を救うヒーローがノンビリと学園生活を送れる訳が無いだろう!?」
「しかし学園長先生。彼らは貴重なデータです」
「データの収集でこの学園を危険にさらす必要が何処にある!?さっさと帰り給え!」
「それは……私達に退学しろ、と……?」
「当たり前だ!迷惑なのだよ!君達のような危険人物がいる事は!」
「危険人物……?俺達はこの世界を守る為に戦ってきたんですよ……?それを危険だなんて……」
「危険だろう!?君達がいかに人外的能力を持っている事自体が危険なんだよ!」
「…………」
「出ていくんだ!今すぐに!」
「……分かりました」
「ヘビー先輩?」
「俺達は、確かに大いなる力を手に入れてしまった……学園長先生。今までお世話になりました……!」
ヘビーは涙を流しながら部室を出ていった。それに続くかのように他四人も出ていった。トニーだけはこの大学に留まるよう学園長から言われた。この事実を隠蔽する為に口裏合わせを頼まれたのだった。
その後、緊急記者会見を開いた渋井大学は「当学園と獣撃戦隊ゴートリガーなる集団は無関係である」といった内容を話し、その場は落ち着いた。
一方で五人は途方に暮れていた。近所の河原で何をする訳でもなく、ただボーッとしていた。
「……なーんも無くなっちまたな……」
「そうだねぇ……私達、何の為に戦ってたんだろ?」
「分かりません……俺達は、本当に何の為に……」
「一番被害が少ないのは私ですね。家族が最初からいなかったから」
「そんなブラックジョーク、今は聞きたくない」
「ごめんなさい……」
そこにトニーがやって来た。
「皆」
「……トニー先生」
「ちょっと来給え」
トニーに言われるまま着いて行くと、そこは港の倉庫だった。その中はまるで生活が出来るかのように家電や家具等が揃っていた。
「ここは……?」
「これからはここで過ごすと良い」
「だからここは?」
「ここはもしもの時の為の隠れ家だ。私がトリガーマグナムを発見してから、いずれこうなると分かっていたからね。こういうのは何件か取ってある」
「……そうですか……」
「まぁ、何だ。私もあの大学を追い出されてしまったからね。気持ちは分かるよ」
「……分かる訳無いだろ!」
「美龍君」
「アンタは何か失ったか!?俺達は、家族を、恋人を、ペットを殺された!そして未来も失った!それなのにアンタは地位を失くしただけだ!それでフィフティフィフティな訳無いだろう!」
「美龍君!」
静寂が包まれた。
「……これからは私が戦う。君達には、まだ未来がある。希望は捨てず、これからを生きると良い」
「でも、五味九頭はどうするんですか?アレがいたら未来も何も無いですよ?」
「だから私が戦う。君達のトリガーマグナムを出してくれ」
五人はトリガーマグナムを取り出してテーブルの上に置いた。トニーはもう一つのトリガーマグナムを取り出した。
「それは……六個目のトリガーマグナム……?」
「これはトリガーマグナムの試作機。トリガーマグナムゼロだ。これはトリガーマグナムが揃っていないと効果を発揮しないんだ」
「じゃ、じゃあ最初からトニー先生も戦えば良かったじゃないですか」
「これは代償が大きいんだ。一度の変身で、五年、寿命が縮まる。トリガニック・ビーストも七年使ってしまう危険なアイテムなんだ」
「そうですか……」
「後の事は私に任せろ。君達はもう、何もしなくて良い」
「先生……」
「金の事は気にしなくて良い。私のポケットマネーでどうにかなる。これからは、君達の人生を歩むと良い」
トニーはトリガーマグナムとトリガーマグナムゼロを持って倉庫を後にした。
それから五人は何をするでもなく、ソファやベッドに座り、虚を見詰めていた。そして鬼門が腹を鳴らした。
「あっ……す、すみません……」
「そういえば、昨日の昼から何も食べてないな」
「冷蔵庫の中は……卵と牛乳くらいか」
「消費期限がとっくに切れてるな。捨てよう」
ヘビーはビニール袋に卵と牛乳を入れて捨てに行った。帰ってくると、乾と鬼門がいなかった。
「あれ?根住君と牛虎さんは?」
「買い出しに行ったよ」
「そうか。後輩をパシリに使うなんて悪い先輩だ……」
「もう退学になったんだし、先輩も後輩も無いでしょ?」
「……ハハッ。それもそうか」
乾と鬼門は近所のスーパーに向かった。すると報道陣が押し寄せてきた。
「な、何だ何だ?」
「獣撃戦隊ゴートリガーの方ですよね!?ちょっとお話を!」
「学園で被害が出たとの事ですが、その事についてどうお考えですか!?」
「ずっと正体を隠していた理由は!?」
「ちょ、ちょっとちょっと!?」
「乾君!行こう!」
乾と鬼門はその場から逃げ、一旦倉庫に帰った。
「ハァ……ハァ……ハァ……!」
「どうした!?二人共!」
「記者が……!記者達が私達を……!」
「マスコミが……!?じゃ、じゃあここも……!?」
「かもしれません……!」
ヘビーはすぐにトニーに連絡を取った。しかし向こうも向こうで忙しいのか、電話に出てすぐに「こっちも忙しい。暫く連絡を寄越すな」とだけ言って電話を切った。
「何だよ!?クソッ!」
「ヘビー君。どうしたの?」
「暫く連絡をするなって……!俺達もここから離れた方が良い」
「でもどこに……?」
「……じゃあ俺の別荘に来ますか?」
「美龍君。どういう事?」
「俺の両親が持っていた別荘があるんだ。ここから少し離れるけど、そこなら基本的に人は来ない」
「よし。じゃあそこに行こう。車は……」
「私のがある。ちょっと離れた所だけど、一時的に貸し駐車場に車を停めてある」
「何でアパートの前に停めてなかったんですか?」
「アパートがリフォームするって決まってたから、一時的にそこに停めてたんだ」
「そうなんですか」
「じゃあ行こう。そこももう時間の問題だ」
一同はすぐに駐車場に向かった。そこはまだマスコミが来ておらず、すんなり車に乗る事が出来た。しかしその車は……
「何でキャンピングカーなんだよ……」
「趣味だよ」
「アウトドアがですか?」
「そう。悪い?」
「だったら美龍君の別荘に行かなくても……」
「無限に水や食料が出てくるとでも思ってる?」
「あー、成程?」
一同は美龍の別荘に向かった。そこはまだマスコミにも知られておらず、電気、ガス、水道も通っていた。
「良かった……まだここは大丈夫みたいだ……」
美龍は畑の様子を見に行った。そこには使用人達がいた。
「美龍さん!?美龍さんじゃないですか!?」
「皆。久し振りだな」
「ニュース観ましたよ……大変でしたね……」
「あぁ……少しここで過ごさせてくれないか?」
「良いですよ。家畜場も十分に稼働しています。少しと言わず、暫くここに居ても問題ありませんよ」
「すまない」
「いえ。では我々は作業に戻ります」
「頼む」
これからはここが本拠地になる事となった。
『獣撃戦隊ゴートリガー』8
・銀色の新戦士にトリガー・オン!
美龍の別荘に移って早二週間。世間ではルイが暴れて町が破壊されていた。トリガーマグナムをトニーに預けた五人は何も出来ずにただそのニュースを眺めていた。
そこにどこから情報が漏れたのか、マスコミがやって来た。
「ちょっとだけ!ちょっとだけで良いのでお話を!」
「帰って下さい!」
そこへ美龍が現れた。
「何だ?何の騒ぎだ?」
「あっ!鳥居美龍さんですね!?ちょっとお話を!」
「帰って下さい!美龍さん!奥へ行って下さい!」
「あ、あぁ……」
五人は地下室へと向かい、鍵を掛けた。そこでテレビを見た。マスコミはこの別荘に押し寄せ「何故戦わないのか?」「何故見殺しにするのか?」「何故逃げるのか?」と勝手な事を言っていた。それに鬼門は憤りを感じていた。
「勝手な事ばかり言って……!あんなに私達の事を悪く言ってたくせに……!」
「怒ってたってしょうがないでしょ?こうなっちゃったんだから……」
「だからって……!」
「落ち着けよ。鬼門さん」
「皆さんは悔しくないんですか!?」
「悔しいさ!」
「乾君……」
「俺達は全てを失った!それは変わらない事実だ!だからこそ、皆の家族の為に、いいや、この星の皆の為にも俺達が生きるべきじゃないのか!?」
「……そうだね……失ったのは、鬼門さんだけじゃない。私達も同じだよ」
「……そうでした。ごめんなさい……」
「良いのよ。これで皆、イーブンな立場になった。今までは鬼門さんだけが家族を失った悲しみを背負っていた……だけど、今回の事で、皆が貴方の気持ちを分かるようになった……」
「えっ……じゃあ鬼門さんは、昔……?」
「そうです……事故で家族を失いました……」
「そうだったのか……辛い事を思い出させてしまって、すまない……」
「良いんです。私がちょっと感情的になり過ぎました。ごめんなさい……」
「皆。これからは皆で命を賭けて生きていこうじゃないか」
「……はい……!」
「でも確かにこのままじゃいけない。そこで、だ。旅に出よう」
「旅って、何処にですか?」
「何処にしようかな……」
「まぁ私のキャンピングカーは無駄に大きいし、何処にでも行けるわよ」
「そうですね。でも、俺、このままじゃいけないと思うんです」
「乾」
「俺達、ここまで来たら、ちゃんとアイツら、五味九頭を倒さなきゃって思うんです」
「乾……」
「もう一度トニー先生に会いに行きましょう。それが大人が言う、責任ってやつだと思うんです」
「……そうだな。そうかもしれん」
「行きましょう?トニー先生の所へ」
一同は再び渋井大学に向かった。トニーの研究室は閉鎖されていたが、中に人の気配を感じた。中に入ると、口笛を吹きながら部屋の片付けをしているトニーがいた。
「トニー先生」
「……おぉ。君達か。元気そうだね」
「トリガーマグナムを渡して下さい」
「良いのかい?また人々から嫌われるよ?」
「それでも構いません。俺達は、世界を守ります。この命を引き換えにしてでも」
「……果たしてそれは正しい選択かな?」
「え……?」
「自分の命を代償に守った世界には、君達の功績は語り継がれるだけで、自分達には何も得は無い。栄誉は得られないままだ」
「栄誉の為に戦うんじゃありません。人類の、いや、この星の未来の為に戦いたいんです」
「……そうか。じゃあ返そう」
トニーはトリガーマグナムをテーブルの上に並べた。
「最期に聞こう。本当に後悔しないかい?」
「しません。だって、誰かの未来を救う事が出来るんですから」
「……そうかい。じゃあ持って行き給え」
五人はトリガーマグナムを手に取り、キャンピングカーに戻った。そしてルイが暴れている街へと向かった。
ルイは街で破壊活動を行っていた。そこに五人は現れた。
「五味九頭!」
「おや?ゴートリガーの諸君じゃないか。何だ?てっきり孤独感に苛まれているものと思ったが、意外と元気そうだな」
「ここでお前を倒す!」
「お前らだけは絶対に許さねぇ!」
「来い!」
五人は「チェンジバレット装填完了!トリガニック・チェンジ!ゴー!トリガー!」と叫び、変身した。
五人はルイを相手に戦ったが、龍である留衣にダメージがいかず、苦戦していた。やがて五人は膝を折った。
「このままでは……!」
そう思っていると、一台のバイクが走って来た。
「そこまでだ!」
そのバイクはルイを轢き飛ばした。
「ぐぁっ!?」
その人物はバイクから降りた。
「間に合ったな。ここからは私の出番だ」
「何だ?ゴートリガーでもないただの人間に俺をどうにか出来ると?」
「いたのさ。六人目、いや、ゼロ人目のゴートリガーがね」
マスクを取ったその人物はトニーだった。
「トニー先生……!?」
「これからは私も戦う。君達だけにこの責任を押し付けない。この責任は、大人の私が引き受ける」
トニーは腰からトリガーマグナムゼロを取り出して弾を込めた。
「チェンジバレット装填完了!トリガニック・チェンジ!ゴー!トリガー!」
そう叫んでこめかみに向かって発砲すると、銀色のスーツがトニーを包んだ。
「銀の銃弾!背負いし十字架!血を求めし悪鬼妖魔!このシルバートリガー……全てを守る!」
「シルバートリガー……!?」
「あれが、トニー先生……!?」
「っくぅ~……!決まったぁ……!行くぞ!皆!」
「おう!」
「あぁ!」
「はい!」
「えぇ!」
「は、はいっ!」
六人はそれぞれの武器、レッドマグナム、ブルースナイパー、グリーンショット、ピンクマシン、イエローバズーカ、シルバーライフルで畳み込みに行った。シルバーライフルを撃つ度に、シルバーは体力を著しく消耗していった。
埒が明かないと思ったルイは蛇の軍勢を送り込み、自分は自殺して巨大化した。
「こんな時に巨大化かよ!?」
「ここは私に任せ給え。サモン・バレット充填完了!カモン!トリガニック・ビースト!」
そう叫んで発砲すると、猫の頭の形をしたメカが出現し、変形して単体でロボットになった。
「雑魚は任せた。私は奴の相手をする」
シルバーは猫型ロボットの肩に乗った。
「変形完成!エンペラートリガー!」
エンペラートリガーは猫の俊敏性を活かしてビルとビルの間を擦り抜けてルイに近付いていき、爪と牙で押し切っていった。
「フィナーレだ」
シルバーは指をパチンと鳴らし、エンペラートリガーの胸部に入り、一発の弾丸となった。エンペラートリガーは自分の胸のトリガーを引き、シルバーを射出した。シルバーはルイの胸の中に入り、中でシルバーライフルを乱射して進んでいった。そしてそのまま真っ直ぐ出ていき、背中から出て来た。ルイは爆発四散し、消滅した。
「最後まで決まったねぇ……!」
五人も雑魚を倒し切り、シルバーと合流した。
「シルバー!」
六人は変身を解きキャンピングカーに戻った。
「トニー先生。アレはそう簡単に変身しちゃいけないんじゃ……?」
「今回の変身と戦闘で、約十五年私は自分の時を失った」
「そんなにですか!?」
「一回の変身で五年。エンペラートリガーで七年。必殺技で二年。そして普通の銃撃で一年分撃った。私は君達よりも先に死ぬだろう」
「そんな事……!」
「全ての戦闘データから計算すると、変身出来るのはあと四回だろう。それまでに決着を着けなければ……」
「……そうですね」
「ところでトニー先生。大学はどうなったんですか?」
「え?あぁ、クビにされたよ」
「じゃあこれからどうするんですか?」
「前にも言っただろう?金の事は心配無い。研究も、データは全て、ココ、に、ある」
そう言ってトニーは自分の頭をトントンと叩いた。
「だから後は敵を倒すだけだ」
「そうですか……」
「じゃあ、行こうか」
「何処へですか?」
「日本の中央だ」
「って事は……ここ、東京ですか?」
「違う。日本のへそ。岐阜県だ」
「岐阜?何でですか?」
「そこからあの壁画が見付かったんだ。おそらく、あそこに何かある筈だ」
「トニー先生っていつも『おそらく』で始まりますね」
「それで間違ってた事があるかい?」
「寿命以外は確かですね」
「寿命は確かに不確定だな」
「じゃあ行きましょう。岐阜へ」
六人は岐阜県に車を走らせた。
『獣撃戦隊ゴートリガー』9
・刃の民にトリガー・オン!
岐阜県、某所。そこは刀鍛冶が栄える町だった。そこの地下に巨大な刃の中に閉じ込められた五味九頭が存在した。彼らはその刃から一日に一体ずつしか活動させられない。それがトニーの研究結果だった。
「その話が事実なら、何でもっと早くに言わなかったんですか?」
「確証が無かったからねぇ。実際、主に現れるのは東京だったし」
「じゃあ何故岐阜だと?」
「前にも言ったが、あの壁画は岐阜県で見付かった。そしてあの古代文字を解析した結果、彼らが大昔にそこの刃に封じ込められたと書いていあった。だからそこに行くんだ」
「そうですか……」
キャンピングカーを運転し、一旦パーキングエリアに車を停めた。
「ここで水と食料を調達しよう。後……」
「後?」
「トイレだ」
「早く行ってきて下さい」
「すまん……!」
車を停めるなり、トニーはトイレにダッシュしていった。
「結構近いんだよな。あの人」
「意外とね」
五人も用を済まし、水と食料を調達してキャンピングカーに戻り、再出発した。
一方地下では五味九頭が苛々した様子で会議をしていた。
「何でここから一人しか出られないんだ!?」
「サード~。お前が苛々したからといって、私達のお腹がいっぱいになる事は無いんだよ~?」
「エイスにナインス!お前達は危機感が無さ過ぎる!このままじゃ餓死しちまうんだぞ!?」
「だぞ~?」
「それでもこれまで生きてこれたし~」
「たし~」
「サード。お前の気持ちも分かるが……」
「セカンド!お前も俺と同じなら分かってくれるだろう!?」
「そうカッカするな。こっちまで苛々して腹が減ってくる」
「……悪かったよ」
「怒られてやんの~」
「やんの~」
「五月蠅ぇ!」
「サード」
「ファースト」
「お前は早くに事を進めたがる癖がある。気を付けろ」
「……分かった」
「それにしても悲しいな……」
「あぁ。とっても悲しい……外に出たいぞ……」
「なー……」
「シックスス、セブンス。お前達はどうする?」
「何かゴートリガーがこっちに来てるみたいだし……」
「向かうつしかないんじゃないかなーって……」
「ならばどうする?」
「こちらから一人送り込む……どうだ……?」
「良いだろう」
「ファーストからの許しも出た事だし、行くか……」
「今度は僕達が……!」
刃を擦り抜け、力の半分ずつを出して二体の五味九頭、シックススとセブンスが現れた。シックススとセブンスは高速道路に立ちはだかり、道行く自動車を潰していった。
「この一瞬の不安感が美味いんだよな……」
「瞬発的に出てくる負の感情が美味い……」
そこにゴートリガーがやって来た。
「五味九頭!」
「ゴートリガー……」
「待っていたぞ……」
「……何かいつもの怪人と違うな……?」
「我々はシックススと……」
「セブンス……」
「最高幹部の二人だ……」
「最高幹部……!?」
「少なくとも、後五対はいるのか……!」
「我々も力の半分しか出していない……」
「我々を倒しても、まだもう半分が待っている……」
「何で半分だけ……?」
「お前達人間がそうしたんだろうが……」
「兎に角お前達を倒す!行くぞ皆!」
「先生は変身しないで下さい!」
「何でだ?」
「最終決戦までに寿命が来たら意味が無いじゃないですか!」
「成程?じゃあ私は避難誘導をしよう」
トニーは車を学走し、後から来る車を足止めしに行った。
五人は「チェンジバレット装填完了!トリガニック・チェンジ!ゴー!トリガー!」と叫び、変身した。
五人はシックススとセブンスに突っ込んでいった。トリガーマグナムが効かず、それぞれの専用武器でもダメージを与えられなかった。そこで五人はそれぞれの専用武器とトリガーマグナムを合体させ、撃った。それはダメージを与えられたが、体力の消耗が激しかった。
「やっぱり……!先生に頼るしか……!」
「馬鹿言うな!先生の寿命を縮めて良い訳が無い!」
「それはそうですが、しかし……!」
シックススとセブンスはゆっくりとゴートリガーに歩み寄った。しかしエネルギーが切れたのか、急に動きが悪くなり、互いに支え合う形でその場で止まった。
「今だ!五人の武器を合わせるんだ!」
五人はそれぞれの専用武器を合体させトリガニック・キャノンを作った。
「照準ロック!トリガニック・キャノン!」
トリガニック・キャノンの弾は二人に当たり、二人は爆発四散した。
「今回は……巨大化は無しか……」
「丁度良かった。これ以上、俺達も体力を消耗しなくて済む」
一方でトニーは警察に連れていかれ、キャンピングカーは道の横に寄せられていた。
「先生は……?」
「車だけ、だな……」
その時、近くの警察署からヘビーに電話が掛かって来た。
「もしもし?」
「もしもし?こちら警察ですが、笹江トニーさんの身元引受人は貴方だと言われて電話致しました」
「な、何で警察に……?」
「高速道路の逆走、及び交通妨害です」
「何でそうしたかは聞いてないんですか?」
「五味九頭との戦いに皆を巻き込みたくなかった、と供述しています」
「……分かりました。今向かいます」
そう言ってヘビーは電話を切った。
「どうしたの?」
「トニー先生が警察に捕まった」
「何で!?」
「高速道路を妨害したのが原因らしい」
「あー……この戦いを見てないから……」
「五味九頭が起こしたこの被害も、トニー先生の逆走によるものと誰かが通報したらしい」
「何てこった……」
「とりあえず行こう」
五人は警察署に向かった。
「すみませーん」
「はい。どうされました?」
「笹江トニーの身元引受人ですが……」
「……あぁ、君達か。来なさい」
警察官に着いて行くと、そこは取調室でトニーが事情聴取を受けていた。
「トニー先生」
「おぉ。やっと来たか。待っていたよ」
取り調べをしていた刑事が五人に椅子を用意し、座らせた。
「君達。獣撃戦隊ゴートリガーだね?」
「そうです」
「これからは我々警察と自衛隊が対処する。もう戦いに関わるな」
「本当ですか!?」
「あぁ」
「じゃあ、これからは安心して暮らせるわ……!」
「だが、君達が発砲、破壊した物の代償は大きい。その罪を償う為にも、君達を拘留する」
「何ですって!?」
「君達は罪人だ。その罪をしっかりと償って来ると良い」
「……トリガニック・チェンジ」
ヘビーはグリーンに変身し、トリガーマグナムで煙幕を張った。
「ヘビー先輩!?」
「行くぞ!」
「で、でも……!」
「今はグリーン君の言う事を聞こうじゃないか。行くぞ、皆」
六人は警察署を抜け出し、キャンピングカーに飛び乗って出発した。
「どうして逃げたんですか?ヘビー先輩」
「あのまま黙って逮捕されてたまるか。俺達の人生、まだまだこれからなんだ。こんな所で終わって良い訳が無い」
「ヘビー君の言う通りだ。我々はまだやるべき事、やりたい事が沢山ある。ここで全て台無しにされたら困る」
「でも……これで指名手配犯ですね。私達……」
「何。全てが片付いたら改めて皆の前に出れば良い。そうしたら、英雄扱いされて死ねる。それだけで十分じゃないか」
「死にたくはありませんけどね……」
六人は岐阜県に向かって再び走り出した。
『獣撃戦隊ゴートリガー』10
・日本の心にトリガー・オン!
岐阜県に着いたゴートリガーの六人。一旦休憩とパーキングエリアに車を停め、休んだ。その時、六人は共通の夢を見た。
「目覚めよ……若き戦士達よ……」
「貴方は……?」
「私はこの世界を創りし神……ゴートリガーの生みの親……」
「ゴートリガーの生みの親……?」
「そうです……貴方達が五味九頭に勝てば、永遠の栄光を獲得出来ます……その為にも、戦うのです……」
「でも、それって死ぬんじゃ……?」
「死んでも褒美は差し上げます……その為に、これをお使いなさい……」
六人は光の弾を授けられた。それは黄金に輝く弾だった。
「これは……?」
「貴方達風に言うなら、スーパーチェンジバレットです。これで五味九頭を倒すのです……」
「これの副作用は……?」
「寿命を大幅に削る……今はそれだけで良いでしょう……?」
「良くないです。具体的に何年寿命が縮まるんですか?」
「それはそこの男に聞くと良いでしょう……」
「わ、私か……?」
「忘れないで下さい……貴方方は選ばれた戦士なのだと……この星の守護者なのだと……!」
そう言って神は消えていった。
六人は同時に目を覚ました。
「今の夢は……?」
「皆も見たのかい?」
「はい……」
六人の手にはあの金色の弾が握らされていた。
「これは……?」
「スーパーチェンジバレットって言ってたな……」
「トニー先生。何か知ってるんですか?」
「いいや……?私も初耳だ」
「本当ですか?何か壁画に書いてあったとか」
「うーん……あ、そういえばまだ解析出来ていない古代文字の文章があったな」
「何て書いてあったんですか?」
「だからまだ解析出来てないと言っただろう」
「じゃあ解析して下さい」
「それより実際に使った方が早いんじゃないか?」
「それで大きな副作用があったらどうするんですか」
「その時はその時だ」
「何て無責任な……」
「その時は私も使う。それで良いだろう?」
「共倒れになったらどうするんですか?」
「その時はその時だ」
「だから何て無責任な……」
六人は車を走らせた。その後、山奥に向かって行った。そこはかつてあの壁画が発見された場所だった。もう発掘作業は終わっており、撤収した後だった。「ここに五味九頭の本体が眠る刃がある筈だ」とトニーは言った。
中に入り、奥へと進んでいくと、やたらとライトに反射する物質があった。それは無数の刃だった。その刃の林を抜けていくと、一本の巨大な刃が発見された。そこには五味九頭が封印されてた。
「これが……五味九頭が封印されている刃……!」
「何でここまで来て発掘を止めたんですか?」
「何となく、触れてはいけない禁忌のように感じたんだ。こう、何というか……自分達まで呪われる、と直感で感じてな」
「それであそこまで暴れていたのか……」
「これ、どうします?壊しますか?」
「壊したら中の五味九頭達が解放されてしまう。それだけは駄目だ」
「じゃあどうすれば……?」
「溶かすしか無いだろうな」
「溶かす?」
「そうだ。おそらく刃諸共溶けて消え去る筈だ」
「また『おそらく』ですね」
「私が間違っていた事は?」
五人は「無いです」と答えた。
「じゃあこれを外に運び出そう」
トニー以外の五人はゴートリガーに変身し、刃をゆっくりと外に出した。トニーが「そのまま、そのまま……」と誘導していると、外では警察と自衛隊が陣を組んで待っていた。
「待て!」
「どうしたんですか?」
「警察と自衛隊だ……!」
「警察と自衛隊……!?な、何しに来たんですか?」
「聞いてみる」
トニーは両手を上げながら外に出た。警察と自衛隊は銃を構え、臨戦態勢を取った。
「動くな!」
「はいはい」
「ここで何をしている!?」
「今世間を騒がせている五味九頭の本体を運び出そうとしている最中だよ」
「五味九頭の本体を……!?貴様ら、五味九頭の人間か!?」
「違う違う。退治しようと思って来たんだよ」
「だったら何故運び出す!?そこで破壊すれば良いだろう!」
「破壊したら外にウジャウジャ怪物が出てくるぞ?それでも良いのかい?」
「じゃあどうすれば!?」
「溶かす」
「えっ!?」
「溶かす。それ以外に道は無い」
「……分かった!後は我々がやる!大人しく投降しろ!」
「そうですか。じゃあご自由にどうぞ。皆、ゆっくりそれをこちらに持って来給え」
五人は変身した状態で外に出た。その時「化け物!」と言って一人の警察官が発砲し、ピンクの肩に当たった。
「痛っ!?」
バランスを崩し、巨大な刃は下に落っこちた。その瞬間、刃から一体の五味九頭が現れ、警察と自衛隊を攻撃した。
「我が名はファースト。五味九頭の長である」
「ば、ば、ば……化け物ぉ!」
警察と自衛隊は銃を乱射した。しかし効かなかった。
「ゴートリガー。ご協力感謝する」
「協力だと!?ゴートリガー!やっぱりお前達は五味九頭の仲間か!?」
「誤解だ!彼らは我々人類の敵だ!」
「君達のお陰で我々は自由の身だ。ではな」
ファーストは巨大な蛇となり、刃を丸呑みにしてその場から去っていった。
「待て!五味九頭!トリガニック・チェン……!」
「待って下さい!もう追い掛けても遅いですよ!」
「……クッ……!」
警察と自衛隊はジリジリとゴートリガー達を追い詰めていった。
「大人しく投降するんだ!この化け物の手下め!」
「だから我々は敵ではないと……」
「催涙弾、撃てぇ!」
警察は催涙弾を撃ち込み、ゴートリガーに目暗ましをした。その後、テーザー銃で動きを封じられ、六人は逮捕された。
目を覚ますと、そこは警察病院で、六人はバラバラの部屋に隔離されていた。乾は起き上がり、トリガーマグナムが無い事に気が付くと、急いで外に出ようとした。しかしすぐに扉が開き、外から刑事がやって来た。
「根住乾君、だね?」
「アンタは?」
「警視の引鉄修二だ。ちょっと話がある」
「何ですか?皆は?」
「安心しろ。別に危害を加えちゃいない。話を聞かせてくれ」
「何を話せと?」
「まぁまぁ。皆にも聞いてる事を事務的に聞かせてほしいだけだ」
「……答えられる範囲でなら……」
「ありがとう。まずは茶でも飲みながら聞かせてくれ」
修二はペットボトルのお茶を乾に渡した。
「こういう時って、急須で淹れてくれたやつを渡すんじゃないんですか?」
「良い所に目を付けるね。まぁ開けてみてくれ」
「?はい」
乾は蓋を「ピキキ」と開けた。
「それで我々を信用してほしい」
「……新品って事ですか?」
「その通り。わざわざ細工をしてまで君を騙そうとはしてないという事を分かってもらいたくてね」
「その前に、皆と会わせて下さい」
「駄目だ」
「じゃあ何も話しません」
「……仕方がない。皆ももう話を終えた。後は君だけだ。会わせてやろう」
修二は部下に命令し、トニー達五人を連れて来た。部下は更にパイプ椅子を五個持って来て五人を座らせた。
「皆……!」
「俺達は全部話したぞ。後は何を聞くんだ?」
「何。君達のお仲間が会いたいと言っててね。それまで何も話さんし、口も開かないと一点張りでね」
「そこまで言ってないッス。で?何の話を聞きたいと?」
「君達の全てだ」
乾は今までの事を語った。主にゴートリガーの話を。話を聞き終えた修二は「まるで先生の時代みたいだな……」と口を滑らせた。
「先生の時代?」
「あ、いや……気にするな。ところで君達は影の里は知っているかい?」
「影の里?知りませんね」
「そうか。分かった。じゃあ先生達とは無関係か……」
「何なんです?さっきから先生って」
「君達が気にする事は無い。さて。ここからは我々の提案の時間だ」
「提案?」
「君達のテクノロジーを、我々に教えて頂きたい」
「何故?」
「過去にもあったんだよ。君達のような存在が。そこで世界中で戦隊を作ったんだ。その話は知っているだろう?」
「……あぁ、その事ですか。何か都市伝説程度には知ってますよ」
「その都市伝説は本当だ」
「え?」
「だから教えてほしい。君達がどうやって戦っているのかを」
「……口で説明するのは簡単ですが……」
「それは私が全て話しただろう?ここでは実践出来ない」
「何故だ?」
「寿命が縮まるからだ」
「寿命が?どういう事だ?」
トニーは一からまた説明した。トリガニックについてを。全てを聞き終え、修二は目頭を押さえた。
「あ~……!どんだけ封印されてんだよこの国~……!?」
「だから何の話ですか?」
「着いて来なさい」
修二に着いて行くと、そこは警察署の地下だった。「警察署に地下?」と思いながら進んでいくと、そこには様々な戦隊が訓練をしていた。
「これは……!?ゴートリガー……!?」
「いいや。写導戦隊カゲレンジャーだ」
「写導戦隊……?」
「カゲレンジャー?」
「そうだ。かつてこの星を乗っ取ろうとした怪物達『闇光師団』がいたんだ」
修二は語り出した。カゲレンジャーは闇光師団と戦い、そのテクノロジーを各国の警察や自衛隊、軍隊に渡し、共に戦った。しかし闇光師団は改心して今は人間社会に溶け込んでいるという。「そういえば変な格好をした人が色んな場所で働いているのを何かで見た気がする」と六人は思った。
「あの伝説は本当だったんですね……?」
「そうだ。だから、これからはあの方達の守ったこの星を、世界中の我々が守らなきゃいけないんだ」
「……だが、タダで教える訳にはいかんな」
「トニー先生」
「金か?金ならいくらでも出すぞ」
「金じゃない」
「じゃあ何だ?」
「彼らに大学を通わせる手続きをして頂きたい」
「トニー先生……!?」
「彼らにはまだ青春を楽しむ時間が必要だ。たとえ最後になったとしても『良い一生だった』と思えるようにしてあげたい」
「トニー先生……」
「……戦いが終わるまでは無理だ」
「だろうな。だから、全てが終わったら、彼らに日常を取り戻してあげてくれ。私の事は構わない。せめて、彼らだけでも……!」
「……善処しよう」
「ならば我々のテクノロジーを教えよう。トリガーマグナムをこちらに」
「良いだろう」
修二は部下にトリガーマグナムと弾丸を持って来させた。六人は目配せし、頷いてトリガーマグナムとトリガーマグナムゼロを手に取り、一気に乱射して煙幕を張った。
「何っ!?」
「我々がやっているのは和解じゃない。殺し合いだ。そんな生半可な気持ちで我々に構ってもらっちゃ困る」
「待ってくれ!君達だけに責任を負わせたくないんだ!」
「さよなら。どうか邪魔だけはしないでくれ給えよ?」
ヒラリと一枚の封筒が落ちてきた。その中には手紙とUSBメモリが入っていた。
「警視!ゴートリガーの六人がいません!」
「……大丈夫だ。追わなくて良い」
「ですが……!」
「良いんだ。置き土産を貰ったからな」
その封筒に入っていた手紙には「この中にゴートリガーの秘密が入っている。どう使うかは君達次第だ」と書かれていた。
「まるで忍者だな。アイツらは」
六人はキャンピングカーを奪還し、また走らせた。
『獣撃戦隊ゴートリガー』11
・パワーアップでトリガー・オン!
警察から逃亡した六人は今度は東京に戻った。「おそらくだが、東京が一番人が集まる場所だから効率良く負の感情エネルギーが集められると踏んだんだろう」というトニーの憶測で戻ったのだ。またいつもの「おそらく」が始まった、と五人は笑った。「もうここまで来たら、行ける所まで行ってやろう!」と躍起になっていた。
一方で五味九頭はかつて闇光師団が根城にしていた地下にやって来ていた。そこは地下深くに獄熱で到底普通の人間は生きられない環境下で、アジトにするには絶好の場所だった。
「ファースト。ここは何処なんです?」
「フィフス。ここは闇光師団の元アジトだろう」
「闇光師団?あの温い連中の?」
「そうだ。フォース。アイツらのようには我々は人間の家畜なんぞにはならぬ……!」
「おぉ、怖、怖……」
「怒ってるファーストは何をするか分からないからなぁ。ところで俺達もここから出してくれよ」
「そのつもりだ」
ファーストは刃を嚙み砕き、中からセカンド、サード、フォース、フィフス、シックスス、セブンス、エイス、ナインスを中から助け出した。
「ふぅ~!やっと出られた~」
「られた~1」
「ありがとう……ファースト……」
「圧倒的感謝……」
「お前達、ここからはもう容赦はしなくて良い。存分に暴れてくるが良い」
「じゃあ合体しますかぁ~?」
「しますかぁ~?」
「あぁ。そうした方が良いだろう」
「俺も同感だ」
「僕も……」
「右に同じ……」
「行け行けドンドン!」
「押せ押せドンドン!」
「じゃあ行っくよ~?心を合わせて、せーのっ!」
セカンドからナインスは合体し、八岐大蛇になった。
「この姿になるのは久し振りだ……」
「このまま人間達を食べちゃおうよ~」
「良いな……ファースト。お前はどうする?」
「私はお前達を助け出すのにエネルギーを使い過ぎた。少し休む」
「そうかい。じゃあ俺達だけで行こうか」
「そうしよう……」
「しよ~!」
八岐大蛇は街に繰り出て人々を襲っていった。恐怖、悲しみ、怒り。憎しみ、孤独感、疎外感、不安感、疲弊感、罪悪感で街は溢れ、それを取っても取っても溢れる負の感情エネルギーに、八岐大蛇は歓喜していた。
「嗚呼……!美味い……!」
「流石人間~!良いエネルギーを持っているね~!」
「このまま一気に潰すぞ!」
「オッケー!」
そこにゴートリガーが変身して現れた。
「五味九頭!」
「ん~?あ、ゴートリガーじゃぁん!」
「この前はどうも御親切に……」
「助けた訳無いだろ!お前達を倒す!」
「やれるもんならやってみな!」
六人は「サモン・バレット充填完了!カモン!トリガニック・ビースト!」と叫び、トリガニック・ビーストを召喚した。合体と変形してキングトリガーとエンペラートリガーになった。
「行け!キングトリガー!」
「迎え撃て!エンペラートリガー!」
一進一退を繰り返し、互いのパワーは五角。いや、わずかだがゴートリガーの方が押されていた。共鳴率を上げていく内にゴートリガーはキングトリガーへのダメージが五人にも喰らうようになった。
「このままでは……!」
その時、六人は腰に熱い感覚を感じた。取り出すと、それはスーパーチェンジバレットだった。
「これは……!?」
「きっと神様がコレを使えと言っているんだろう」
「使ってみますか?」
「……仕方あるまい!」
六人はスーパーチェンジバレットをトリガーマグナムとトリガーマグナムゼロに込め「スーパーチェンジバレット粗点完了!スーパーチェンジ!ゴー!トリガー!」と叫んでトリガーを引いた。すると六人は金色の一人の戦士となり、キングトリガーに乗り込んだ。そしてエンペラートリガーが分離し、キングトリガーに合体した。
「合体完成!ゴッドトリガー!」
その姿は二体のロボが合体した姿で、まさに神に相応しいシルエットをしていた。
「ご、ゴッドトリガーだと!?」
「ちょっと大きくなったからって調子に乗らないでよね~!?」
八岐大蛇は火球や火炎放射で攻撃した。しかしゴッドトリガーには効かず、一方的に押されていった。
「ば、馬鹿な!?」
「行くぞ……!」
広背部から銃を取り出し、大きなリボルバー銃を出現させた。
「六連撃!トリガニック・バースト!」
金色の戦士、ゴッドトリガーは弾倉に元の六人に分離して装填した。そしてトリガーを引き、六連射した。
「マグナムワン!」
「スナイプツー!」
「ブルームスリー!」
「スプラッシュフォー!」
「ファイアファイブ!」
「シュートフィニッシュ!」
六つの弾丸となったゴートリガーは八岐大蛇を貫通し、地面に着地した。八岐大蛇はもがき苦しみ、爆発四散した。
「クールだぜぇ……!」
「そういう事は言わない方がもっとクールですよ」
「日本人の癖に『言霊』を知らんのか?」
「日本人は察せよ文化です」
「オー。クールジャパン……!」
六人は変身を解いた。
「皆、副作用は……」
トニーがそう言いかけた時、全員がその場に倒れた。
乾が気が付いた時、そこはまた警察病院だった。
「ここは……?」
「目が覚めたか」
「警視さん……?俺達、また捕まったのか……!?」
「いいや、保護だ」
そこに写導戦隊カゲレンジャーのレッド、艦鎖カイトが現れた。
「貴方は……?」
「俺は写導戦隊カゲレンジャーのレッド。艦鎖カイトだ」
「カゲレンジャー……?あの、この前聞いた……?」
「そうだ。彼がカゲレンジャーの一人だ」
「残りのメンバーは?」
「それぞれ対応しているよ。君の仲間達にね」
「そう、ですか……」
「聞かせてくれ。君達の伝説を……」
乾は語った。これまでのゴートリガーの事を。するとカイトは立ち上がってスマートフォンを取り出し、他の五人に連絡を取った。
「……って感じなんだけど、どうだ?」
「概ね合ってるよー」
「こっちもね」
「俺の方もだ」
「俺の方も!」
「私の方も」
「そうか。じゃあ信用出来るな」
カイトはクルリと回り、乾に向き直って手を差しだした。
「根住乾君。君達と一緒に戦いたい。良いかな?」
「えっ……?で、でもお歳が……?」
「それは……忍法 若返りの術!」
カイトは自分に忍法を掛け、若い姿に変わった。
「その姿は……!?」
「一時的にだが、これで一緒に戦える」
「そうなんですか……で、でも俺達、犯罪者だし……」
「そんなのどうでも良い。事が全て終われば、そんなのは無かった事になる」
「そう?です?か……?」
「ところで君達の細胞年齢を調べさせてもらった。筋肉等は問題無いが、老化スピードが著しい。これからはカゲレンジャーの力を使うと良い」
「か、カゲレンジャーに……?」
「このシン・カゲマルを使え」
「シン・カゲマル……」
「このライトを照らして、そこに自分の考えた影絵を投射するんだ。そして『シャドウ変化』と言うんだ」
「こ、こう、か……?」
カイトに言われるまま乾は蟹の影絵を投射した。
「シャドウ変化」
しかし何も起こらなかった。
「……で?どうするんですか?」
「あれ?おかしいな……ちょっと良いか?」
カイトは今度は自分で影絵を投射し「シャドウ変化」と言ったら紅色の戦士に変身出来た。
「壊れてはいないな。どういう事だ?」
そこにトニー達がやって来た。
「やはり駄目だったか……」
「トニー先生」
「トニー教授。説明が出来るんですか?」
「それは我々が一回でもゴートリガーに変身したからだよ」
「どういう事です?」
トニーは語った。このトリガーマグナムとトリガーマグナムゼロを使った瞬間から「トリガニック」という物質を体内に埋め込まれたと。このトリガニックは他の強化方法を一切拒み、代わりに超人的な力を手に入れる事が出来るという。このトリガニックは、使わなければ命が伸びるが、代わりに、死んで次世代を見付けない限り追加で変身させる事が出来ない。そして変身して死ぬ事が栄誉であると昔の人々は言ったという。
「そんなの、見過ごせる訳無いじゃないか!」
「落ち着けよー。カイトー」
「そうだよ。叫んだところでこの状況は変わらないでしょ?」
「そうだ。これからは俺達が代わりに戦えば良い」
「確かにオッチャンの言う通りだ。君達。これからはオジサン達に任せろ」
「お爺さんもいるんだけどな」
六人は久し振りの戦闘に少しワクワクしている様子だった。それを見てトニーは声を荒げた。
「そんな軽い気持ちで英雄に成るな!」
背弱が流れた。
「そんな簡単に英雄に成れたら、誰も苦労しないんだよ!私達は、この命と引き換えにしてでも奴らを止める!邪魔をするな!」
肩で息をするトニーはその場に倒れた。
「ハァ……!ハァ……!ハァ……!」
「……そんな事言ってる場合かよ。もうそんなにボロボロじゃないか」
「それでも……!私達は……!」
「俺達だって生半可な気持ちで戦う訳じゃない。それこそ貴方の言っている『命を賭けて』世界を守るんだ」
「カイトさん……!」
「君達はよくやった。これからは私達大人が対処する」
「わ、私だって二十五歳だ!大人だ!」
「学校しか知らない大きな子供が何を言ってる?」
「……ッ……!?」
「暫く休みなさい。皆、行こう」
カゲレンジャーの六人は外に飛び出していった。
「私達は……英雄に成るんだ……!」
トニーは気を失った。
『獣撃戦隊ゴートリガー』12
・闇光師団からトリガー・オン!
気を失ったトニーは病室に運ばれた。残った五人は乾の部屋で話をしていた。
「俺達、もう戦わなくて良いんだな……」
「これで大学に戻れる……」
「もう、傷付かなくて良い……」
「俺達は、未来を貰った……」
「でも、私達は……!」
五人は部屋を飛び出し、トリガーマグナムとトリガーマグナムゼロを手に取って警備員を殴り飛ばし、蹴り飛ばして突破した。その後、五人はキャンピングカーを奪還し、出発した。
「ヘビー先輩。これから何処に行くんですか?」
「あの人の事だから……」
ヘビーはナビを起動した。そこには「おそらく」とタイトルが書かれた住所が載っていた。
「おそらくだが、ここに奴らがいる」
「……プッ」
「何だよ?羊馬さん」
「だって、ねぇ?」
「はい。まるでトニー先生みたいでしたから」
一同は笑った。
「何だよ……こっちは至って真剣なんだぞ……?」
頬を膨らませながらも内心笑っているヘビー。一同はその住所に向かった。
遅れて気が付いたトニーは、体を起こした。そこには謎の怪人が目の前にいた。怪人は林檎を剥いていた。
「う、うわぁ!?五味九頭!?」
「え?」
トニーはベッドから転げ落ちた。
「トリガーマグナム!トリガーマグナムゼロは何処だ!?」
「ちょっと落ち着けよ」
トニーは這いずって逃げようとした。
「私を殺しに来たのか!?この卑怯者!」
「だから落ち着けって……」
トニーは近くにあった物を手当たり次第に怪人に投げ付けた。
「誰かー!誰か来てくれー!」
「だーかーらー!」
怪人は剥いた林檎をトニーの口の中に押し込んだ。
「よーく噛め。そしてよーく味わえ」
「…………」
トニーはゆっくり林檎を噛み、その甘さに気が抜け、腰を抜かした、
「ほれ。病人は無理すんな」
怪人はトニーをベッドの上に戻した。
「俺は闇光師団の幹部。ブラック・ガイ。宜しく頼む」
「あ、闇光師団……?あ、アンタ見た事ある!日本のニュースで怪人が果樹園をやってるって報道されてた!」
「知っててくれて嬉しいよ。で、どうだ?俺の林檎の味は」
「え?」
「林檎だよ。今食べたろう?」
「あ、いや、甘かったけれど……?」
「そうかそうか!梨は好きか?」
「あ、まぁ、嫌いではないが……?」
「よし。待ってろ?今剥いてやるからな」
ブラックは梨を剥き始めた。微妙な空気感に堪え切れず、トニーは口を開いた。
「あの……」
「あ、すまん。もう少しだけ待っててくれ。代わりに、ほれ。葡萄でも喰ってろ」
「あ、いや、違くて……」
「喰ってろ」
「……はい」
トニーは梨が剥けるまでの間、ゆっくりと葡萄を二粒食べた。
「よし。剥けたぞ。喰え」
「あ、はい……」
トニーは恐る恐る梨を食べた。
「……美味しい!」
「そうかそうか!桃は喰うか?」
「はい!」
「よーし!待ってろよー?今剥いてやるからなー?」
トニーは一心不乱に梨と葡萄を食べた。
「……楽しいだろ?」
「へ?」
「生きるって、楽しいだろ?」
「…………」
「喰うって楽しい。遊ぶって楽しい。仕事を楽しいと感じる奴もいる。俺みたいに、趣味でやってた果樹園も、いまじゃあ立派な仕事だ」
「……何が言いたいんですか?」
「何。別に説教なんてモノをしに来た訳じゃない。単純に、お前という人間を見守りに来たんだよ」
「何の為に?」
「何でだろうなぁ……目的と目標がごっちゃになってる奴を見ると放っておけないんだよ。かつての闇光師団がそうだったようにな」
「目的と、目標……?」
「なぁ。アンタは何が目的でゴートリガーに変身して戦うんだ?」
「それは、当然、市民を守る為だ」
「じゃあ何を目標にしてんだよ」
「目標?そりゃあ人類の未来を考えて……」
「違うな」
「え?」
「お前さんはそんな大それた事を考えちゃあいない。アンタはもっと素直な生き物だ。違うかい?」
「……それは……」
「それは?」
「……違う」
「何が違う?」
「私は、私の研究は、人類の未来の為のモノだ。だから戦う」
「本当に研究の為か?」
「そうだ」
「じゃあ、何故そんなに涙を流すんだ?」
「えっ……?」
気付けば、トニーは涙が溢れていた。それが何が理由かはトニーには分からなかった。
「その涙が、答えなんじゃないか?」
「この涙は……何だ……?」
「その涙は、おそらくだが『生きたい』と願う気持ち、じゃないか?」
「生きたい……?この、私が……?」
「そうだとも。別に人生に飽きた訳でもない。失敗を経験をした訳でもない。金が無い訳でもない。栄誉だってある。自分を尊敬してくれる人もいるし、何より、仲間がいる」
「…………」
「そんな仲間達と、ずっと笑ってたい。そう願って、それこそ本当に変身した。違うかい?」
「……私は……!」
ブラックは目線を合わせ、トニーの肩に手を置いた。
「お前はもう十分に褒められる事をした。もう十分だ。もう頑張らなくて良い。もう、無茶は、虚勢は張らなくて良いんだよ」
「それでも、私は……!」
そこに警備員が慌てた様子で部屋の外を掛けていった。ブラックは「何事か?」と思い、駆けていく職員を呼び止め、事情を聞いた。
「おい。一体何の騒ぎだ?」
「あ、ブラックさん!ゴートリガーが逃走しました!」
ブラックとトニーは「何だって!?」と驚いた。
「何処に行った!?」
「それが……GPSを取り外されてしまったようで、追跡が出来ないんです!」
「トリガーマグナムは!?」
「持ち出されました!ゼロと一緒に!」
「何だって……!?探せ!これ以上、彼らを傷付かせてはいけない!」
「彼らを、傷付ける……?」
トニーは思った。「そうだ。この戦いは、自分が始めた事だ」と。「自分で始めた物語は、自分の手で締めなきゃいけない。それが彼ら、若者に対して出来る、大人としての最期のケジメじゃないか」と。
「ブラックさん!貴方、飛べますか!?」
「あ?何だよ、急に」
「彼らを追います!」
「何でだ?後は俺達に任せろ」
「駄目です!彼らにキチンと謝らないといけません!大人として、先生として!」
「……そうか。分かった。場所は見当が付くのか?」
「はい!」
「よし。おい、GPS」
「は?」
「GPSだよ!GPS!グズグズするな!」
「は、はい!どうぞ!」
「来い。トニー先生」
「はい!」
ブラックは翼を広げ、背中にトニーを乗せて飛び立った。
「どっちに行けば良い!?」
「北北西!」
「了解!」
二人はゴートリガーの所へと向かった。
『獣撃戦隊ゴートリガー』13
・君達を追い掛けて、トリガー・オン!
カゲレンジャーの六人は若返りの術を解き、車で東京に向かった。ゴートリガーのキャンピングカーのナビに入っていた「おそらく」と書かれた場所に向かっていた。
一方でトニー以外のゴートリガーの五人も「おそらく」という場所に向かっていた。
更に一方でゴートリガーを追うトニーとブラック。
三組は同じ場所に向かっていた。
現場に着くと、カゲレンジャーは五味九頭のアジトに辿り着き、中に入っていった。
「ここは……闇光師団の元アジトじゃないか」
「みたいだね。アタシ達に所縁のある場所だなんて、皮肉ね」
「皆。行くぞ」
一同は「応」と答え、奥に入っていった。その後を追ってくるかのようにゴートリガーも到着した。
「カゲレンジャーさん!」
「君達……!?何しに来た!?」
「闘いに、です!」
「君達はもう十分戦った!もう良いだろう!?」
「いいえ!俺達は、俺達の為に戦いに来たんです!」
「君達の為?」
「はい!俺達が始めた物語です!俺達が奴らを倒します!」
「……そうか。そんなに言うなら仕方ない」
「カイト兄ちゃん?」
「彼らの決意は固い。このまま一緒に戦おう」
「……そうか……」
十一人は地下に向かった。あまりの灼熱に耐えられず、十一人は変身した。そこには五味九頭の最期の一人、ファーストがいた。
「来たか……ゴートリガー……」
「カゲレンジャー様もお出でだぜ?」
「カゲレンジャー……闇光師団を体たらくにした元凶か……」
「彼らは自分達の意思で改心した。だがお前達は違う。ただ人々を恐怖に陥れるだけの悪だ」
「殺しをしない戦隊が、私を倒せるかな?」
「やってみないと分からない!」
「俺達だっているぜ!」
「小癪な……!」
「忍法 若返りの術!ライトアップ!シャドウ変化!」
「チェンジバレット装填完了!トリガニック・チェンジ!ゴー!トリガー!」
十一人は変身した。
そこから戦闘が始まった。ファーストは蛇の軍勢を出現させ、十一人を翻弄した。しかしカゲレンジャーは熟年の技で蹴散らしていき、ゴートリガーの五人も「スーパーチェンジバレット粗点完了!スーパーチェンジ!ゴー!トリガー!」と言って超変身した。
「トニー先生……俺達に力を貸して下さい……!」
レッドトリガーはトリガーマグナムゼロにもスーパーチェンジバレットを装填し、五人は更に強化変身した。不完全ながらも、一体の金色の戦士、ゴッドトリガーになり、ファーストに挑んでいった。
「トニー先生……力を貸して下さい!」
ゴッドトリガーはトリガーマグナムゼロにスーパーチェンジバレットを込め、撃った。トニーがいる時程ではないが、更に力を増したゴッドトリガーはファーストに向かって行った。
空から十一人が戦っている所を見付けたトニーとブラックは地上に降りた。
「皆!」
「トニー先生!」
「トニー教授!」
「私も戦う!」
「先生はもう戦わなくて良いです!ここは俺達が!」
「私だってゴートリガーの一人だ!私もその責任を負う!」
「トニー先生……!」
ゴッドトリガーはトリガーマグナムゼロをトニーに投げた。受けっ取ったトニーはトリガーマグナムゼロを見詰めた。ブラックが言った。
「後悔しないな?」
「……はい。後悔はしません!」
トニーは「スーパーチェンジ!」と言ってトリガーを引き、自分もゴッドトリガーになって一つになった。
完全体になったゴッドトリガーはカゲレンジャーの応援もあり、何とかファーストを追い込む事が出来た。あと一歩、というところで若返りの術の効果が切れてしまい、カゲレンジャーの六人は変身を強制解除した。
「こんな時に……!」
「後は俺達がやります!カゲレンジャーの皆さんは逃げて下さい!」
「いいや、俺達も最後まで戦う!」
「カゲレンジャー……!」
カゲレンジャーの六人は一斉にクナイを投げ、影縫いの術を使った。動きを封じ込められたファーストはゴッドトリガーの攻撃をもろに喰らい、倒されたかと思われた。しかしファーストは脱皮し、巨大化した。
ゴッドトリガーもロボットのゴッドトリガーを出現させ、応戦した。
新たに体を強化したファーストはゴッドトリガーを押していった。ゴッドトリガーは意地でどうにか喰らい付き、ファーストと戦った。
ファーストは脱皮したてで力を使ってしまっていたのか、撤退した。追い掛けようとするゴッドトリガーだったが、ゴッドトリガーも体力の限界でロボットは消滅。その下にゴートリガーの六人はその場に倒れた。
救出されたゴートリガーの六人はまた警察病院で目を覚ました。六人は同部屋で、皆がほぼ同じタイミングで起き、そこにカイトがやって来た。
「君達の体を調べさせてもらったよ」
「カイトさん……」
「君達の体は、あと二十五年の命だ」
「二十五年……!?じゃあ後数回しか変身出来ないんですか!?」
「君達はかなり無茶をしたからね。トニー教授はまだ四十年弱命はあるが、君達五人は後二十五年だ」
「スーパーチェンジバレットの代償か……!」
「あれは寿命を十年使うみたいだ。もう変身はしない方が良い」
「でも、奴らを倒さないと……!」
乾は吐血した。
「乾!」
他五人も吐血した。
「分かったろう?君達はもう、体が限界なんだよ。ここからはカゲレンジャーがどうにかする。君達はもう、残りの人生を楽しみなさい」
「……カゲレンジャーだって、あの時変身し続けられずに苦戦したじゃないか……!」
「何だと?」
「寿命が無いってのは、アンタ達だって同じ事……!アンタ達はもう年齢が年齢だ……!俺達若者が、未来を切り開く……!」
「……子供が無茶をするもんじゃない」
カイトはそう言って病室を出ていった。
「……君達」
トニーは口を開いた。
「何でトリガーマグナムゼロも持って行ったんだ?」
「それは……トニー先生を傷付けたくなかったからです」
「私を傷付けたくない?どういう事だ?」
「シルバートリガーは著しく寿命を削ります。だからこれ以上、トニー先生を苦しめたくはなかったんです」
「それは私を守ろうとしたって事かね?」
「そうです」
「……君達は守りたいんじゃなくて『戦いたいだけ』じゃないのか?」
「え……?」
「君達は最初は誰かを守りたいという気持ちがあった。だが、大切な人を失ってから、その寂しさを紛らわす為に、いや、その人達の下に逝きたくて戦っているだけなんじゃないのか?」
「…………」
「君達は私を、いや、我々を守ろうとして、逆に戦う事を目的としてしまっている。目的と目標があやふやになっている。違うかい?」
「……それは……」
「違うと言うのかい?だったら君達の目標を教えてくれ給え」
「俺は……復讐です」
「俺も、恋人を失った復讐です」
「俺も、ペットを、家族を失った復讐です」
「私も復讐です」
「私は……皆の悲しみを背負って闘います」
「鬼門さんだけ違うが……基本的に復讐心から動いてしまっているんだな。君達は英雄には成れない」
「…………」
「英雄に成る為には、正義とは何か。悪とは何か。悪を倒す目的は何か。悪を倒したその先の目標が何かをハッキリとしなければならない。だが君達はどうだ?大義名分を捨てて、感情的に動いている。それでは英雄には成れないよ」
「俺は……!英雄になんて成れなくて良い!」
「乾……」
「俺は、復讐出来ればそれで良い!大義名分なんてどうでも良い!俺は、家族の弔いの為に戦う!それのどこが悪いって言うんですか!?」
「乾君。それで命を落として、君の家族は喜ぶのかい?」
「それは……!」
「君の家族は、きっと、君に生きてほしい。褒められてほしい。そう思っているんじゃないかな?」
「だったら何で俺達にトリガーマグナムを授けたんですか!?何で俺達に戦わせたんですか!?何で止めなかったんですか!?」
「…………」
「ほら、答えられないでしょう!?俺は、家族の気持ちよりも、自分の気持ちを優先したい!家族がどう思おうと、復讐で俺の心が晴れるなら、それだけで構わない!」
乾はトリガーマグナムを手に、フラフラしながら病室を飛び出した。
「乾!」
「俺は止めませんよ。この戦い……!」
トニー以外の四人もトリガーマグナムを手に取り、トニーに頭を下げて乾の後を追った。
「……私は、何処で間違えたのだろうか……」
トニーは窓を眺めた。
『獣撃戦隊ゴートリガー』14
・最終決戦でトリガー・オン!
五人は病室を抜け出した。乾はトリガーマグナムを乱射しながら森の中を歩き回った。
「五味九頭!何処にいる!?俺はここだぞ!現れろ!」
「乾!」
美龍は乾を羽交い絞めにした。
「止めるな!美龍君!」
「止めるさ!そんなにトリガーマグナムを乱射したところで、奴は出てこない!」
「そんなの分からないじゃないか!」
「ここで根住君が暴れたところで、傷付くのは草や花木、ここに住む生き物全てが犠牲になるだけだ!」
「ヘビー先輩まで!?じゃあどうしたら……!?」
「トニー先生に聞こう」
「トニー先生に?絶対に教えてくれませんよ?」
「いや、私達の気持ちをちゃんと伝えればきっと分かってもらえる筈よ」
「ミザル先輩……!」
「一旦落ち着いて?頭を冷やそう?」
「鬼門さん……すまない。少し感情的になり過ぎた……」
「感情的なのは俺達も一緒だ。一旦戻って、作戦会議をしよう」
「……はい」
五人は病院に戻った。
「トニー先生……」
「乾君」
「さっきは申し訳ありませんでした……!」
「いや、私にも過失が大いにあったから……それより、覚悟は決まったかい?」
「覚悟は……正直、まだよく分かりません……」
「俺達もです」
「そうか……私にも正解が分からない。でも、ここで逃げたらいけないというのは私にも分かる。一緒に戦おう」
「……はい……!」
六人は作戦会議を始めた。カゲレンジャー側の情報を基にファーストの居場所を特定した。カゲレンジャーはそこに向かっている事が分かり、そこに向かう事を決めた。世界中のカゲレンジャーも集まり、その場に向かった。
現場ではカゲレンジャーが穴倉に向かいファーストを追い詰めていた。
「カゲレンジャー……!」
ファーストは外に出た。カゲレンジャーも外に出た。夜という事もあり、外でも活動出来た。しかしカゲレンジャーはタイムリミットが来てしまい、その場に蹲った。
「やはり年齢には勝てないか……!」
「死ね!カゲレンジャー!」
ファーストが手を掛けようとしたその時、後ろから「トリガニック・レッド・ショット!」という声が聞こえてきて、振り返るとレッドの弾丸がファーストの左目を撃ち抜いた。
「グァッ!?」
たじろぐファースト。そこには変身した状態のゴートリガーの六人と世界中のカゲレンジャーが揃っていた。
「貴様ら……!」
「五味九頭!ここでお前を倒す!」
「殺れるものなら殺ってみろ!」
ファーストは大量の蛇の軍勢を生み出した。世界中のカゲレンジャーは「ここは我々が引き受ける!」「君達は五味九頭のボスを!」と言ってゴートリガーを後押しした。ゴートリガーの六人は「ありがとうございます1」と言って蛇の軍勢を掻い潜ってファーストの所に行った。
「五味九頭!」
「ゴートリガーァ……!」
「お前を倒す!」
「返り打ちにしてくれる!ハァッ!」
ファーストは火球を吐いた。しかしゴートリガーの六人はゴッドトリガーとなり、その攻撃を防いだ。
「行くぞ……!」
そこから戦闘が始まった。毒を吐くファースト。銃撃をするゴートリガー。一進一退を繰り返し、やがてゴートリガーは疲労が溜まり、足を止めた。
「クッ……!」
「これで終わりだ!ゴッドトリガーぁあああああああああああ!」
ファーストが牙を向けたその時、急にファーストの動きが止まった。ファーストの足元にはクナイが刺さっていた。
「な……に……!?」
「忍法 影縫いの術!」
「今だ!ゴートリガー!」
「はい!」
ゴッドトリガーはトリガニック・キャノンとトリガニックライフルの二つを合体させた。
「スーパートリガニック・キャノン!照準ロック!スーパーファイナルブロー!」
スーパートリガニック・キャノンの弾は超近距離でファーストに撃ち込み、ファーストとゴートリガーは吹き飛んだ。
「ゴートリガー!」
カゲレンジャーの六人は駆け寄った。その瞬間、ファーストは巨大化し、一同を踏み潰そうとした。しかしもう一度ゴッドトリガーは「スーパーファイナルブロー!」と言って足を吹き飛ばし、自分達もロボットに乗り込んだ。
「これで終わりだぁあああああああああああああああああああ!」
広背部から銃を取り出し、大きなリボルバー銃を出現させた。
「六連撃!トリガニック・バースト!」
金色の戦士、ゴッドトリガーは弾倉に元の六人に分離して装填した。そしてトリガーを引き、六連射した。
「マグナムワン!」
「スナイプツー!」
「ブルームスリー!」
「スプラッシュフォー!」
「ファイアファイブ!」
「シュートフィニッシュ!」
六つの弾丸となったゴートリガーはファーストを貫通し、地面に着地した。ファーストはまだ耐えられたようで、まだ動いていた。
「もう一度だ!」
五人はもう一度「スーパーチェンジバレット粗点完了!スーパーチェンジ!ゴー!トリガー!」と叫んでゴッドトリガーになった。
「再六連撃!トリガニック・バースト!」
再び撃ち込まれた六人は、今度は貫通せずにファーストの中に留まった。そしてファーストの腹の中で連射した。ズタボロになったファーストは「この私が……!この私がぁあああああああああ!」と叫んで爆発四散した。
シルバーが変身を解いて五人の方を振り返ると、五人は死んでいた。二回の連続したゴッドトリガーと必殺技で寿命が尽きていたのだった。
「皆!皆!?」
シルバーの声も虚しく、五人は天国に旅立った。トニーは酷く絶望し、その場に崩れた。
天国に逝った五人は、ゴートリガーを作った神に会った。
「よくやりました。獣撃戦隊ゴートリガー。貴方達を神にしましょう」
「……永遠の栄誉って、これの事か」
「みたいですね。ヘビー先輩」
「貴方達には神になる前に、それぞれ一人一つずつ願いを叶えましょう」
「相談しても良いですか?」
「良いですよ」
五人は話し合った。そして、五つの願いを決めた。
「一つは、五味九頭によって殺された人々を生き返らせて下さい」
「分かりました。次は?」
「俺達を生き返らせて下さい」
「貴方達は神になるので、貴方達のクローンを作り出す事になりますがそれでも宜しいですか?」
「……この際良いでしょう」
「分かりました。次は?」
「トニー先生に伝言を残したいです」
「何と?」
「『誰かの為に命を賭ける事は素晴らしい。だけど、命を落として誰かを救う正義は絶対であってはならない。死ぬ事が美しいと、生きる事が恥だと言ってしまうものだから』と」
「分かりました。次は?」
「今後、五味九頭のような連中が来た時の新しい戦隊を作って下さい」
「分かりました。次は?」
「獣撃戦隊ゴートリガーという存在を消して下さい」
「……は?」
「獣撃戦隊ゴートリガーという存在を、消して下さい」
「それはどうしてですか?」
「答えなきゃ叶えてくれないんですか?」
「いえ。個神的興味です」
「そうですか。さっきも言ったように、死ぬ事が美しいとされるのが許せないんです。生きる事が素晴らしい。いや、生き抜く事が素晴らしいと皆に伝えたいんです」
「……そうですか。記憶から消すのは不可能なので、トリガーマグナムとトリガーマグナムゼロを回収します。それで良いですか?」
五人は「はい」と答え、神は彼らの願いを叶えた。
トニーは嘆き悲しみ、肩を震わせながら彼らの死体の前で涙を流していると、五人は起き上がった。
「皆……!?」
「トニー先生。俺達、やりましたよね?」
「もう終わったんですよね?」
「あ、あぁ……だが君達は?何故死んでないんだ……?」
「神様にお願いしたんです。私達を蘇らせてほしいって」
「そして俺達から、この言葉を託します。『誰かの為に命を賭ける事は素晴らしい。だけど、命を落として誰かを救う正義は絶対であってはならない。死ぬ事が美しいと、生きる事が恥だと言ってしまうものだから』と……」
「死ぬ事が美しいのが間違い……昔から考えていた、私の思想を完全に否定する内容だな……」
「そうです。否定しているんです」
「それに俺達は偽物です。本物は、オリジナルは神になりました」
「……永遠の栄誉、ってやつか」
「そうです。先生は後に十数年の命ですが、最後まで生き抜いて下さい。俺達の為にも。それに、トニー先生自身の為にも」
「……あぁ……!あぁ……!」
「さぁ、大学に帰りましょう?」
「先生の研究をもっと見たいです」
「私達も、青春を取り戻しますから」
「一緒に青春を味わい尽くしましょう!」
「そうだな……!そうだな……!」
六人は渋井大学に戻り、学園生活を送ったのだった。
『獣撃戦隊ゴートリガー』15(最終話)
・君の心にトリガー・オン!
五味九頭を倒して早五年。ゴートリガーの六人はそれぞれ大学を離れ、様々な職に就いた。トニーは大学に残りつつ講演会を開いていた。
乾はカウンセラーになり、人々の心に寄り添った信頼のおける人物になった。
美龍も乾同様、信頼のおけるカウンセラーとなり、愛美との間に子を設けた。家族三人で幸せに暮らしている。
ヘビーは開業し、地域の様々なペットもとい家族を救う獣医師として活動していた。
ミザルは渋井大学附属病院に就職し、医師として常に緊急事態に備えて非常勤として過ごしていた。
鬼門は渋井大学を卒業後、教師として生活していた。時折トニーを呼んで「獣撃戦隊ゴートリガー伝説」を語ってもらい、命の尊さを教えていた。
トニーは大学で日本の考古学を研究しつつ、鬼門の呼び出しでたまに小学校に行って講演会を開いていた。
トニーは子供達からすると「正義のヒーロー」「命を犠牲に戦う悲劇の英雄」というような言い方をされてしまっていたが、本人はそれを否定。
「命とは、限りある時間の中に、何を残すかが大切」
と唱え、子供達からは「よく分からない」という顔をされたが、保護者からは絶賛されていた。
それから更に十五年余り経ち、トニーは寿命を迎えた。トニーは死の間際「私の人生、もっとやりたい事があったのに……!」と思いながら死んで逝った。
トニーが目を覚ますと、そこには神になったゴートリガーの五人がいた。
「皆……!?」
「トニー先生。待っていましたよ」
「皆は、神になって……?」
「そう。神になりました。そして、貴方の活躍をずっと見ていましたよ」
「私は活躍なんてしていない……ただ、悪戯に若者を死に追いやって、自分も自滅しただけの、孤独な存在だ……」
「それでも俺達を救ってくれたじゃないですか」
「君達を、救った……?」
「はい。生き返った私達と一緒の時を過ごしてくれた。それだけでも十分救ってくれたんです。トニー先生。ありがとうございました」
五人は「ありがとうございました」とトニーに頭を下げた。
「……何でだ……!?生き返った君達もそうだったが、何で私を責めないんだ……!?私は君達の人生を滅茶滅茶にしたんだぞ!?もっと怒れよ!殴れよ!罵詈雑言を浴びせ給えよ!?」
「…………」
静寂が包まれた。しかし鬼門が言った。
「トニー先生。貴方と獣撃戦隊ゴートリガーをやっていたのは、私達にとって大きな青春でした。それだけで十分なんです」
「青春……?」
「そうです。命とは何か。生きるとは何か。死ぬとは何か……それを考えさせてくれた一年間でした。私達は、とっても大きな青春を味わう事が出来たんです。それはトニー先生も同じじゃあないんですか?」
「私は……!確かに君達と一緒に居た時は楽しかった……でも、それは私のエゴで……!」
「エゴじゃありませんよ。トニー先生がしてくれた、最初で最後の講義です」
「えっ……?」
「分野は違えど、楽しい哲学の授業でした」
「後、体育な」
「あはは。そうだね。乾君。『青春』っていう講義をしてくれたトニー先生に、私達は深く感謝しています。笹江トニー先生。今までご苦労様でした!」
五人は「ご苦労様でした!」と頭を下げた。
「私は……!私は……!」
「トニー先生は私達のトリガーでした。あの一押しがあったから、世界を救えたんです」
「誇って下さい。トニー先生」
「ありがとう……!ありがとう……!」
五人はトニーの手を引いた。
「さぁ逝きましょう?」
「どこへ?」
「天国です」
「いや、私は折角だから地獄に……」
「あの世は天国でもあり、地獄でもあるんです」
「どっちに逝っても大して変わりませんよ」
「そ、そうなのか?」
「はい。じゃあ逝きましょう!」
五人は大砲に入った。
「え?」
「どうしたんですか?早く!」
「いや、天国に逝くのって天使に導かれて、とか、フヨフヨ浮いて逝くとかじゃあないのかい……?」
「現実はこれです。さぁ。逝きましょう!」
「あ、あぁ……?」
トニーは大砲の中に入った。
「じゃあここはトニー先生にトリガーを押してもらいましょう」
「トリガー……これか?」
「あ、それです。それを押して下さい」
「分かった。逝くぞ?三、二、一……発射!」
大砲から六人の魂は遥か宇宙の彼方に飛んでいった。
その後、彼らがどうなったのか。それは皆さんが逝ってみてのお楽しみという事で……




