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10話

【ダーリン! 大変! レベルが規定値を超えたよ!】




 ……唐突にボケを挟まないで欲しいんだけどな。

 ただ、ナヴィからこんな事を言われたのは初めてだ。エンジェルを倒した直後、運良く天使の羽も手に入った事だし休むとしようか。昼休憩には良い数を今日も潰したからな。


「アドラ、三十分の休憩だ。少しやる事が出来た」

「承知致しました。では、こちらも食事を取って休むと致しましょう」


 こういう時に命令通りに動いてくれて本当に助かるよ。ナツミには同じように命令を送っても拒否され続けているからな。何でもエンジェルを早く鍛え切りたいらしい。まぁ、ナツミ視点では俺と連携しているアドラが相当、羨ましいらしいし。


「んで、規定値とはなんだ」


 いきなり、脳内に多くの情報が流れ出した。

 なるほど……俺自身のレベルが最大値の百まで上がったらしい。エンジェルを簡単に倒せるようになってからはステータスなんて見ていなかったせいで気にもしていなかった。まぁ、ダンジョンを攻略しようとしている俺からすれば嬉しい誤算ではあるけどな。


「覚醒……はどうすればいい」

【ハニー! 愛してる! と言えば可能です!】

「ハニーアイシテルー」

【もう! い! け! ず! でも……それも良い!】


 お、力が漲って来る感覚があるな。

 一先ず……ステータスオープン、と。




 ____________________

 名前 ジョー(タイガ)

 職業 1.魔王LV37 / 2.見習い剣士LV1

 年齢 10歳

 レベル 1(覚醒+1)

 HP 55560/78060

 MP 37564/101500

 物攻 D

 物防 D

 魔攻 D

 魔防 D

 速度 D

 幸運 S(110)

 固有スキル

【ガチャ】【状態異常無効】【魔眼:鑑定】【ナビゲーション】【贄之焔】【神之毒】【天の羽衣】

 スキル

【料理LV10】【剣術LV6】【疾風LV7】【飛空LV6】

 魔法

【黒魔法LV10】【白魔法LV10】【光魔法LV4】【聖魔法LV6】【風魔法LV4】【炎魔法LV10】【毒魔法LV10】

 従魔

【アドラLV14】【ナツミLV10】【アLV26】【イLV26】【ウLV26】【エLV26】【オLV26】【カLV17】……

 ____________________




 おお、これは確かに……って、凄いなこれ。

 久し振りに見たとはいえ、体力と魔力の数値がおかしな事になっている。それと幸運以外のステータス値が見えなくなってしまったな。ここら辺は見えていた方がおかしかったのか。別に困る要素では無いから構わないけど……。




【凡そ、三万程度だとお考えください。ステータスの数値が見えなくなったのは銃魔の数が増えた事による計算上の問題だも思われます。本来ならば二十を超える数の従魔は作れません】


 想定されている範囲を超えるから出せないか。

 このシステムを作った存在タイマンでしかないだろうに結構な事だ。ただナヴィを通せば分かる点も踏まえて見えようが見えなかろうがどうでもいい。どちらかと言うと手に入れる度に使ったせいで増えた天使達の名前が映ってしまう事だ。名付けるのが面倒だったのがバレてしまう。

 ま、まぁ……名前の付け直しは出来るみたいだから別によくない。そもそも、確率が低いだけでドロップしてくれるアイテムで手に入る従魔なんだから大層な名前は与えられないだろ。そう、別に俺に名付けのセンスが無い訳ではないからな。だって、二十七体のエンジェルの名付けとか面倒この上無いだろ。


【私達との子供が産まれる時には私が名前を付けるので安心してください】


 あ、それなら天使達も俺達の子供だから……。

 って、面倒な事になった瞬間にナヴィの霊圧が消えやがった。まぁ、ナヴィから見てもエンジェル達はただの手駒でしかないんだろうな。それに今は意識を向けるべき方向はそこではない。覚醒してから新しく手に入ったセカンドジョブに関して、だ。

 今は見習い剣士となっているけど……今のところは他の職業も見習い職だから気にしなくていいか。個人的にはエンジェル狩りのために剣の腕前を高めたかったから丁度いい。さてと、エンジェル狩りの続きでも再開して───






「もう飽きたー! 何でナツミだけ子守りをしなければいけないんだー! 早く三階層に行こう! もう同じ魔物を狩り続ける生活なんてしたくなーい!」


 ……なんか、ナツミから声が届いた気がするけど気のせいだろう。うんうん、まだまだレベル上げしておかないと何が起こるか分からないからね。これで二人を危険な目に晒すなんて真似はしたくは無い。そう、きっと二階層のボスはかなりの強敵で……。




【何がとは言えませんが三体ですよ】


 はい……つまり、エンジェル三体ですね。

 はぁ……確かに剣を振れば倒せるエンジェルが三体相手なら簡単か。数えている訳では無いけど十日は確実に同じ事を繰り返しているし、そういった部分で飽きが来ていたのは俺としても似たようなものだ。それに二階層の全貌を知っているのすらナツミだけだし……良い機会か。


「アドラ、ナツミ……今日はもうおしまいだ。明日からは三人で二階層の攻略に映る。我とアドラの役目はエンジェルに任せるから気にしなくていい」

「それって……本当に!?」

「ああ、ここまで鍛えれば二階層で手古摺る事はないだろうからな。今日の食事は一段と豪華にするつもりだ。アドラもそれで構わないか」

「ジョー様の命令に背く理由もありません。如何様にもお好きにお使いください」


 アドラ込みでのエンジェル三体相手、か。

 なんというか、それはそれで面白そうだし、天の羽衣とかも使わせてみていいかもな。なんなら、アドラに相手を任せるのもアリだろうから色々な意味で楽しみになってきた。一先ず、空いている階段から降りて夕食の準備でもしようか。


「貴方様ー! おかえりー!」

「……早かったな。急いで帰ってきたのか」

「楽しみで仕方が無かったのだ!」


 小さな羽がピョコピョコとしている姿は可愛い。

 だが、恐らくは本気で殺し合えば確実に死ぬのは俺の方だ。アドラに関しても同じだけど……ネーム付きの者達はどれもが化け物みたいな強さを持っている。だからこそ、相手に合った返答をしなければ困るのは俺の方だ。寝首をかかれて死ぬなんてゴメンだからな。


「我の我儘に付き合わせてすまなかったな」

「いいよ! でも! 程々にしてくれないと面白くないの! 同じ事の繰り返しなんてやっていて楽しくないから嫌なの!」

「確かに、その通りだったな」


 そうだな……忘れていた感覚だったよ。

 プロジェクトを成功させるためには犠牲があって当然……そんな考えで仕事をしていたせいで気にもしていなかった。同じ事を繰り返して、似たような書類と向き合って……やる気の無い部下達の尻拭いばかりをさせられる。かと言って、成功すれば上の奴らに取られて気に入っている奴に放り投げられて終わりだ。

 だから、今くらいは本当にやりたい事を……。

 ナツミの頭を撫でて無骨な岩の天井を眺める。見慣れない景色のはずなのに、見慣れてしまっているのは俺だからだろうか。目の前の景色に色が戻り始めたのだって勘違いでしかないのだろう。


「ふむ、随分と可愛らしい姿だな」

「……何、殺されたいの」

「それをジョー様が望むのならば請けましょう」


 二人から一気に殺気が漏れ出したな。

 止めても止めなくても面白いものが見れそうではあるが……止めなかった時の損害の方が大きそうだ。それに明日からは本気で攻略へと向かうための仲間でもある。その二人を仲違いさせるなんて愚かでしかないだろう。


「止めろ」

『ッ……!』

「そんな事で我が喜ぶとでも。喧嘩は好きにすればいいが仲間割れをするのなら不必要だ。どちらも我が大切に思う仲間、それで充分だと思えないのであれば我の中で一生を過ごすといい」


 殺す殺さないは二人には大して効きはしない。

 当たり前の事だろう……でも、二人からすれば俺がどこかへ行ったりとか、後は自分だけ仲間外れにされたりすると本気で嫌がる。この前なんてナツミの願いを聞こうとしたらアドラが代わりに二階層を丸焼きにしたくらいだ。


「我が望むものは全てだ。そのために必要な手駒を揃えているというのに殺し合いとは……不遜程度で済むわけも無かろう。我とて魔王の一介、優しさのみで他者を制御するのも限界があるのであろうな」

「い、いえ……私の不徳の致す限りでございます」

「な、ナツミは貴方様が第一だよ……!」

「なら、それ以上はやめろ。次は見逃さない」


 脅しになればいいと思っただけだが……。

 天の羽衣を二人の首へ迫らせるだけ、そんな予定を覆すように縛り上げてしまった。二人のステータスからして簡単に破壊出来るだろうに……容易に縛ったままでいられるんだ。下手をすれば先端を突き刺すだけで殺す事も……いいや、やめよう。


「俺の大切な仲間を殺させるような真似はするな。その数が増えようとも立場は変わらないのだから気にするだけ無駄な事だ。それともなんだ……現れる度に似たように虐めるとでも言うのか。俺の大切な配下を」

「いえ……私が未熟でした」

「ナツミも……少し気が立っていたんだよ、ごめん」

「なら、いいよ。今日は美味しい食事で英気を養おう。明日からは本格的にダンジョン攻略に踏み出すんだ。二人が殺気立つのも分かるから気にしなくていい」


 そう、これは明日のための覚悟の確かめあいだ。

 どちらも大切に思えるからこそ、簡単に死なれては困るんだよ。俺以外は従魔という立場の影響で死んだところで生き返る事が出来る。……その時点で誰も死ぬ事なんて有り得ない事実だ。


「期待しているよ。俺の配下は、な」

『は!』


 本当に明日からが楽しみで仕方がない。

 だって……本気で戦える環境が整うのだからな。

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