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第一話:元勇者は、理由を語らない

「それでは――次世代勇者育成オーディションを開始します」


照明が落ち、会場が静まる。

百人分の視線が、一点に集まった。


司会席に立つ俺だ。


「肩書きの紹介は省きます」


進行役が一瞬だけ言い淀んだが、俺は気にしない。

どうせ余計な言葉が付く。

伝説だの、英雄だの――今さらだ。


「この番組は、才能を伸ばす場所じゃない」


マイク越しに、淡々と告げる。


「勇者に向いていない人間を落とす場所だ」


ざわめき。

カメラの向こうで、コメントが流れる。


『いきなり厳しすぎ』

『元勇者だから言える』

『でも正論では?』


「最初の課題は簡単だ」


俺は紙を一枚掲げた。


「三分間、何もするな」


剣を抜くな。

魔法を使うな。

喋るな。

動くな。


沈黙。


三分後、俺は顔を上げる。


「7番」


青年が反応した。

剣士だ。構えが綺麗で、姿勢もいい。


「失格」


一瞬、会場が止まる。


「なぜですか!」


食い下がる声。

当然だろう。才能はあった。


「今、何を見ていた?」


「前方です。想定敵を――」


俺は首を振った。


「それで死ぬ」


それ以上は言わない。

理由を説明する気はなかった。


「12番、失格」

「19番、失格」


怒号。

抗議。

炎上。


それでも判断は変えない。


勇者は、才能で死ぬ。

慢心で死ぬ。

だが一番多いのは――

“正しい判断を、正しいと思い込んで死ぬ”奴だ。


「残った者だけが次に進め」


俺は静かに告げた。


「――地獄は、ここからだ」


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