92話 ラー油つくりは魔女の鍋のごとく。
厨房がカオスな匂いに包まれて、いつもの如くお味見に覗いたお二人が珍しく動揺している。
「これは薬かなんかかの?」
「リーシャちゃん、その鍋は爆発しないの?」
グツグツな赤い鍋は確かに爆発しそうな雰囲気だ。
ソースはまだ煮込んで欲しいので、食べるラー油の方を少し掬って、パスタに混ぜて生ハムを乗っけて出してみる。
「ほぅ、すごい色じゃが何だか華やかじゃの」
「でもすごい香りだわ~」
ペペロンチーノの超辛いヤツみたいな感じにしてみたんだけどどうかなぁ?
「・・・っ!」
「ッアー!!」
お二人ともお口に入れたらすぐ上下にビビビーーって震えた。
「リーシャちゃん⁉これ大丈夫なヤツなの?」
ルルゥが焦ってお義母さまを支えて、他のコックさんは蒼白だになっている。
毒を盛ったみたいなドン引きのされ具合だ。
ルルゥは辛いの平気だったはずだから、ラー油をスプーンで掬って口に差し入れてみた。
「・・・ぬお!」
あ、おっさん出て来た。自分に声にびっくりしてかすぐ口元を押さえちゃったよ。
「口の中が痺れるけどおーいしぃ~☆」
一拍置いてから、笑顔が出た。かなり辛かったみたいだけどすぐ目をキラキラさせて自分でもう一口食べた。
お義父さまたちも体を微妙に揺らしながらパスタを食べ続けている。
ニックスたちもやっとホッとして自分たちでスプーンを持って味見した。
みんなビビビッとなって崩れ落ちた。
リアクション大きいなー。
当然辛いのが苦手な人もいたから苦しんでる人にはレモン水もどきを差し出しといた。気休めだけど。
再起動したニックスにお肉を出してもらって香辛料を粉にして混ぜたのでお肉を揉んでから揚げてもらってラー油かけて、お義父さまたちに出してみた。
「む!これもうまいのぅ」
「痺れるわねぇ」
うーん?痺れるのって美味しいのかな?
煮込んでるソースは濾したのと残った搾りかすの方をミキサーにかけたので常備して欲しいってお願いした。いつでもたこ焼きに会える準備だよ。
まだ味が安定してないけど混ぜるスパイスとかで味わいが違うって伝えたからルルゥたちが研究してくれるはず。
途中で味見したルルゥが何か閃いたみたいな顔してたから超期待してる。
ソースの味が安定したらお好み焼きとかも良いな。焼きそばもイケちゃう。
マヨネーズ作りにまたコックさんの腕周りが鍛えられちゃうね。
やっぱ鰹節が欲しいな~。海の街にあると良いなぁ。作り方は流石にわからないけど魚を乾燥させたらそれっぽいの出来る?
何か特製の汁に漬けないとダメなんだよね?無理かな~。
夕食にはスープカレーと野菜カレー、激辛カレー、激辛チキンとステーキ、パスタっていう辛いコースになっちゃった。
いや、私辛いの苦手・・・
ルルゥに言って私の分はノーマルなお肉やパンを中心に出してもらった。
私を膝抱っこしてるジュリアスさまは最初だけ椅子から跳ぶような反応をしただけであとは普通に美味しそうに食べてくれた。
痺れつつも私への餌付けは忘れないのがすごい。
セリウスさまとクラウスさまは数回椅子をガタっとさせてプルプルしてたけど、一応気に入ってくれたみたい。
「リーシャちゃん、また凄いの出して来たねぇ~」
「面白いな~」
元塩味オンリーに慣れてた人たちだから食に刺激があるのが楽しいのかも?
でも辛い物はあんま食べすぎると胃に悪いよぅ。
お義父さまは美味しそうにおかわりしてるし、お義母さまは激辛カレーと野菜カレーを食べた後ケーキをホールで持って来てもらって。
最後の方にルルゥがトンカツ(何の肉か知らない)にソースをかけたのが持って来て。
初ソースを食べた家族の反応はすごかった。フリュアの薄味醤油よりいい反応だったよ。
「これはまた新しい扉が開いたようじゃのぅ!濃いの~」
お義父さまがトンカツを山盛りおかわり。
当然?三兄弟も続いたよ。
ポムとティムもいつの間にやらお義母さまのそばに陣取ってて、激辛チキンを頬張っては縦揺れ横揺れで痺れてた。
カレーも好きみたい。変な生き物だよ。
その晩、使用人棟や兵舎からは野太い声で、
「「「「ひーーーーっ!」」」」
って言う悲鳴が轟いたとか。
あまりに気に入ったとのことで、仲の良い貴族に〈食べるラー油〉を贈り物にするって。
毒だと思われたらどうするんだろう?
痺れる物が好きなのってここグレーデン限定じゃないのかしら?
その日のお布団で。
ジュリアスさまの唇がちょっと腫れてぷっくりしてたので少し笑った。
そんなになるまで食べたらダメだよ~。
「ジュリアスさま、ぷっくり~」
唇をツンツンしてプルプル感を楽しんだ。
「俺を揶揄うのはリーシャにはまだ早いな?」
って返り討ちにあっちゃった。翌日に私の唇がプルンプルン。
後日ソースとラー油を作る工房を作るって言われた時はびっくりした。
常備するように厨房で作るのが大変だから専用のがあった方がいいって。




