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ちびっ子ボディのチート令嬢は辺境で幸せを掴む  作者: 紫楼
二章

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88話 ジュリアスの想い

 ボフ!


 腹にちょっとした衝撃を感じて目が覚める。

 可愛い俺の奥さんの小さい足が腹に乗っている。

 若干寝癖が悪いのか手が飛んできたり足が飛んできたりは良くある。

 一度局部を掠めた時は流石に痛かったのでなるべく抱え込んで寝るようにしている。


「んひゅひゅー、めっちゃマッスル~」


 そして寝言で謎の呪文を唱えたり。


「ぬー・・・雄ッパイ~たくまし・・・」

 俺の胸元を小さい手で揉むので少しくすぐったかったり。


 目を瞑ったままなのに百面相なのが面白くて眺めてしまう。


 

 王家に突然命じられた婚姻には困惑したし、かなり年下だとの事で俺との縁組なんて可哀想だと思っていた。


 先触れでリーシャの事情を知らされ、陛下がとにかくオレイユ家とハボット家との繋がりを断たせたいということ、愛情を与えられずにいたリーシャに居場所を与えておいてから気軽な移動などは絶望を与えかねないから、絶対に手放されない安心感を与えたい事、グレーデン家をひいては俺ならリーシャを利用したり、裏切るような事はないという信頼を伝えられては断るという事はできなかった。


 リーシャには知らされていないが、陛下はリーシャの両親の死について思うところがあるようで、力のある庇護者としての立場もグレーデン家に求められている。


 父上と母上は陛下からの書状を見てから屋敷を手入れし、「女の子の必要な物を買う日が訪れるなんて夢のようだわぁ♡」とあらゆる物を買い付けた。

 従者やメイドたちも都会のお嬢さんに気に入ってもらえるようにはどうしたら良いのかと浮き足だった。


 俺は急には都合がつけられず、ルークを迎えに行かせることになってしまった。

 途中連絡が入って予想より幼なげで用意された衣装などはサイズが合わないなど知らされて大慌てで衣装を買い足し、家具なども見直した。


 ルークに連れ帰えられてきた女の子は、かなり痩せていて髪も傷んでいて、持って来た荷物もおおよそ貴族の令嬢とは思えない有り様だった。

 それでいて聡明そうな瞳と背筋をしっかり伸ばして立つ姿は美しいと思った。

 父上たちも従者たちも皆一瞬で彼女の虜になった。

 ここらでは見ない庇護欲を掻き立てる人形のような可愛い女の子、放置されて食事も満足に取れていなかっただろう子が礼儀正しく悲壮な顔もせず、真っ直ぐに「よろしくお願いします」などと挨拶をしたのだ。

 健気過ぎて可愛がらずにはいられないだろう。


 まずはゆっくりこの地に慣れてくれれば良いと好きなようにと過ごして貰えば、思い立ったと美味しい物や便利な物を作り上げる。


 日々変わり映えのしないこの辺境の地で何かしら変化を起こす。


 父上に似て強面の俺を怖がらず、逆に懐いてくれる変わった女の子をただ可愛い子から手放し難い大事な子に変わるのにはそう時間が掛からなかった。


 生育環境から卑屈になったり陰鬱になったりしてもおかしくないのに素直で明るく遠慮し過ぎないのも、逆に貴族特有の傲慢さや媚びなども一切無いのも好ましい。


 何よりうちの両親や変わり者の多い侍従、騎士達を受け入れてくれるのも有り難かった。


 俺は結婚は正直どうでも良いと思っていた。ここに嫁いで貰うのはハードルが高いことも理解しているし、自分の体格が女性好みでは無いことも知っている。

 母上のような物好きが少数派だと言うことも知っている。


 学園に入ったばかりの頃はまだ成長しきっていなかったからか多少声が掛かったこともあるが、騎士科と領主コース、同行してくれた騎士団との日々の鍛錬もあって忙しく、いきなり誘って来ては連れ回そうとする令嬢には付き合えなかった。

 後腐れのない遊びとやらに誘われたこともあるが、どう考えても後腐れがあるのが透けて見えていたので断った。

 

 辺境伯という地位が目当ての下級貴族が見合いを申し込んできたこともあったが、肝心の令嬢が親に無理に連れてこられた感が満載であったり、俺が挨拶に手を取ろうとしたら貧血で倒れたりなどあって面倒になった。

 幸い出来た弟が二人と従兄弟達もいるから俺は結婚を焦る必要も無かった。


 今となっては見合いが不成立でこの歳まで独り身であったことが幸いだった。おかげでリーシャと言う可愛く面白い妻を迎えることが出来たからな。

 

 リーシャの魔道具や料理を彼女の閃きや思いつくままと周りには思わせているが、父上と陛下はリーシャの事を《稀人》《愛し子》ではないかと思っているらしい。

 我が国には記録がないがネイマーシェ国や近隣には幾度か現れた記録があるらしい。


 もし該当していてそれを他国に知られれば、リーシャを巡って戦争が起きかねないとのことで認定したり公表したりはしないそうだ。


 錬金術師としてのリーシャも十分稀有な存在だ。だから国内最大戦力を誇る我が家に託された。


 俺にとってはリーシャがリーシャであれば良いので真実を追求する気はない。


 陛下に言われるまでもなく、安心して暮らせるようにするだけだ。


「うにゅにゅ・・・炊き込みご飯~栗ー・・・オコワ・・・」

 

 また謎の呪文が出て来た。クリーオコーワとはなんだろう?


 バスーッ!


 まったりとリーシャの寝顔を見ていたら鳩尾に見事な張り手が降って来た。


「っゥ!」


「もっちもちーぃ♪」


 何がモチモチなのかわからないがまた張り手を喰らいたくないので抱え直して姿勢を変えさせることにしたんだが、どうも覚醒してしまったらしい。


「・・・ん?」

 

 身じろいで俺の事をジッとタンザナイトの瞳が見つめる。


「起こしてしまったな、すまない」

「んんーふひひーじゅりあしゅしゃま~」


 俺が謝って頭を撫でると俺の首元に頭を擦り付けてまた眠ってしまった。


 首がくすぐったいがリーシャの体温が心地よくてそのままにさせる。


 ただただ暖かくて愛おしいなどと思える相手が現れるなんて想像もしていなかった。

 まぁ欲求は多少アレなんだが、そんなことも苦ではない。

 腕の中に愛おしい者がいるなんて奇跡が起こったのだから。


「マッスルキングダム・・・桃源郷・・・クミちゃ・・・」


 今夜はいろんな夢を見ているようだ。

 俺ももう少し寝よう。


「んな~!ちぇい!八股許すまじぃい!クソオトコーーー」

 

 再び局部に危険が迫ったので一旦起こそうか。寝直せば夢も変わるだろうか?


 ハチマタとかクソオトコとは一体どんな意味だろう?





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