81話 ランダーさんは強心臓。剛毛が生えているに違いない。
竜の肉は、痺れ牛よりより極上で。
魔力が濃くて力が漲る感じで翌日はみんなツヤテカ!どんだけ。独身のお人はどう過ごしたのか、超気になるよ。
ちなみにジュリアスさまはセーブして食べてたし、私はあまり魔力が強すぎる食べ物はまだ良くないってことで少し食べただけ。
なので素敵な展開にはならず!!
いい加減ウェルカムなのにね!健全で優しい旦那さまですよ~!
しばらくして近くの空き地に魔の森の植物を移植して、引退騎士さんを中心に警備するチームが組まれて、宿舎も隣接して監視を厳しめにする事になった。
どうしても調味料向上のための植物は捨て難いと。
魔の森産だけに頼ると外部への融通がコスト的に難しいんだって。
騎士さんたちは仕事のうちだけど、有事の際は当然戦場や魔獣討伐に出る。
冒険者さん達はレベルの高い森に入れる人は当然依頼料が高い。騎士さんと同じく有事の際はそっち優先。
ちなみに魔獣が出るとか魔素溜まりが出来るようなら炎上させて浄化っていう感じで処理するらしい。
仕方ないよね。
魔獣研究者や植物学者も招いて観察するんだって。
出来れば魔の森産じゃないノーマルな植物を探したいなぁ。
でも魔力が多い人にとって魔の森の食べ物は積極的に取り込む方が良いらしい。
魔力維持?循環的にってことかな?
今日もルルゥがクネクネっとレシピをおねだり。
そんなパパ~っとは出てこないよ。
午前のお茶を飲み終わって今日は何するべきかと悩んでたら玄関が騒がしくなった。
ニーナとアランとジェイクが緊張して私を庇う感じで前に出る。
「あらぁお屋敷の中なのに随分過保護ですこと」
騎士さんや侍従が止めようとするのを押し切って、ゴテゴテと着飾った令嬢が入ってきた!
無理やり入ってこれるのってまずくない?
どうやら貴族女性相手にどうするべきかと困惑状態らしい。
「ランダー伯爵令嬢、お待ちください!」
ハロルドが上から降りてきて令嬢の前に入り込んだ。
結婚式の時に毒吐いて来た人か。
「今日ご訪問されるとは聞いておりませんが?」
「嫌だわ、幼馴染みなのだから遊びに来るくらい良いでしょう?」
ランダー嬢はコロコロと笑ってるけど、良い年の人がいきなり遊びに来るって何ぞ。
「お坊っちゃま方はお仕事中ですからご不在にございます」
ハロルドが丁寧だけど慇懃無礼な感じで応対。かっこいいよ!執事さんっ!
「ええ、そうでしょうね。私そのお嬢さんにお願いがあってきましたの」
ん?仲良しでもないのに先触れなしでやって来てお願い事?
「ほう、ランダー嬢。うちの嫁に随分無礼な態度で何を願う?」
お義父さまとお義母さまがお部屋から出て来てくれた。
「おじさま!昔のようにレインと呼んでくださいませ」
お二人の顔を見て途端に笑顔ですり寄ろうとしている。
「あらぁ、お嫁にいかれた他所のお嬢さんの名前を呼ぶなんて致せませんのよ」
出戻ってるらしいけどね!
お義母さまが扇で口元を隠しながら笑ってる。ちょっと怖い。
「みなさま、聞いてくださいませ。そちらのリーシャさまでは奥様のお役目を果たせませんでしょう?私は第二夫人で構いませんのでジュリアスさまの妻になりたく存じます」
ん?お役目って・・・社交とか領地運営?
「何を言っておる?」
お義父さまがポカーンとした。私も。
「ですからそのような子供ではジュリアスさまを満足させる事もお子を授かることも難しいでしょう?私が後継を産んで見せますから」
そっちかーーーい。お子様体型で悪かったね!
「其方は何を言っておる?随分と破廉恥な」
「出戻って恥を捨てておしまいになったのかしらねぇ?」
お二人が不快気に眉を顰めているのにランダー嬢はへこたれない。
「ですから出戻りなので第二夫人で良いと申しているのです。そんな子供しか嫁に来ないなんてお困りでしょう?」
ランダー嬢は受け入れられて当然みたいな態度で胸を張っている。
「ますます何を言っておる?うちは子供は出来なければ親族の中で後継を決めるし第二夫人も妾も要らぬ。随分とウチを舐めておるようだな」
「ですがセリウスさまもクラウスさまもまだ婚約者もいらっしゃらないではありませんか」
なお言い募る強心臓。貴族令嬢ってあれくらい心が強くないとやっていけないのかな?義姉をちらりと思い出す。
「下の息子たちでは一度出戻った其方では嫁げぬからジュリアスと言うことか?」
え、消去法でジュリアスさまなの?贅沢~。
「そもそもウチは結婚も強制しない。うちの環境でやって行ける令嬢しか嫁いでこれないからな」
「私は隣の領ですから慣れています」
ランダー領も魔の森いっぱいで隣国との境界もあるの?地図を思い出してみる。あまり広くないし魔の森もなさそうだよ?
「其方は田舎暮らしが嫌で王都貴族に嫁いだのだろう?」
「ですから私は普段は王都のタウンハウスで社交をして暮らします」
あ"?この女、ジュリアスさまを満足させるとかなんとか言ってなかった?
「っふふ!貴女は確か贅沢が過ぎて婚家を追い出されたのに無理やりウチに嫁いできて王都で暮らしますって何を仰っているのかしらねぇ?」
「っ!!」
ランダー嬢のお顔がこわばった。
「こんな辺境に情報が入っていないと思ってらしたの?情報収集は戦場に出るグレーデン家では一番重要なお仕事ですのよ」
おお~!お義母さまが普段は私に見せない顔をしてる。ザ・貴族女性って感じだよ。カッコいい~。
「でもそんな子供よりは・・・お役に立てるはずですわ!」
私のなにを知っているのよ。ランダー嬢は私を指さして罵る。
「子供と侮るが、其方はこのリーシャより役に立つことなないだろう。最近この領地の評判が上がっているのはほとんどリーシャのおかげじゃ」
どんどん追い詰められてるような焦りを顔に出してるランダー嬢。私めっちゃ睨まれてる。
「まぁそもそもジュリアスが其方を娶ることはあり得ない。隣のよしみで今回は見逃してやるから二度とおかしな事は言わないことじゃな」
ランダー伯爵とは良好な関係だからってお義母さまが耳打ち。近隣で揉めるのは面倒だからお義父さまが見逃すって仰るならそれで良いや。
「嫌よ!私はジュリアスさまと・・・」
「俺はリーシャ以外を嫁に貰うことはない」
いつの間にやら帰ってきたジュリアスさまがキッパリお断りしてくれる。少し髪が乱れてるから急いで帰って来てくれたんだと思う。
「何よ。そんな子供が良いなんて貴方おかしいんじゃないの!」
子供子供うるさいな。ジュリアスさまとの年齢差を考えたら普通体型でも子供だろうよ。それに嫁になりたいならジュリアスさまを目の前に般若のような顔をしたらダメでしょ。
「そもそもウチとの縁談は昔お前が断っただろう。今更なんなんだ」
ジュリアスさまが呆れたように言う。
「だって王都に憧れるのは普通のことでしょ?」
「上手くいかなかったからと今更ウチに来るのは図々しいだろう」
ジュリアスさまったら、サッと近くに来て私を抱き上げちゃうからお子様扱いされるんだよー。
「だって嫁の来手が無かったんだからその子なんでしょう?私でも良いじゃない!」
ずいぶんと失礼なことを言っているのはわかっているんだろうか?
あまりの話の通じなさにお義母さまがイラッとしてる。
「いくらなんでも新婚のジュリアスに瑕疵のある貴女が強引に話を持ってくるのは無茶が過ぎるんじゃないかしら?」
お義母さまの声にトーンがだいぶ低くなってる。
「・・・」
「昔なら家同士の関係でまとまったかもしれないが、それをダメにしたのはお前だろう?今は可愛い嫁を貰えて幸せなんだ。二度とおかしな事を言わないようにしてくれ」
ジュリアスさまがキッパリ断ったところに髪がボサボサで着衣も乱れたランダー伯爵が高速スライディング土下座で入って来た。
見事な滑りこみ。土下座じゃなくて滑ってただけらしい。すごい滑り方だった。
伯爵はめっちゃ謝罪して後日またって言ってお嬢さんを引きずるようにして帰られたよ。
はー。義姉並みに変わった人は初めて見た。
あの令嬢はきっとジュリアスさまのこと好きだったけど都会に行きたい欲が勝って、中々嫁をもらわないからそのうちチャンスを狙おうと思っていたら私がやって来て、あまりに子供だから暴走したってとこかな。
ランダー伯爵はセリウスさまがワイバーンで連れて来たらしい。娘が乗って来た馬車で帰ったって。
いきなり空の旅させられたのか・・・。初めてだったらお気の毒さま。
庭に降りてたワイバーンを見たんだけどすっごい大きい。顔は可愛くないけど筋肉質な身体でカッコよかった。
そのうち乗せて欲しいな。
ジュリアスさまが私をめっちゃハグしてくれて「心配要らないからな」って言ってからセリウスさまとお仕事に戻ってった。




