5話 辺境の地グレーデン到着。歓迎は濃いかった!
畑と空き地の区別がない感じの野原? な景色を眺め、土剥き出しの大きな道を走って、頑健な門を通過して、だんだんと整地されている道になって。
サーキスさまは休憩中などにグレーデン領について少しずつ教えてくれた。
辺境伯領の広大な領地は、ほとんどが森と荒地で、人の住める区域が領地の一割程度なのだそう。
領内各地に大きめな街と小さな町が点在している感じなのだそう。隣町がかなり遠いって感じかな。
オレイユの領地もわりと大自然の中だったようだけど、ここまで何もない感じではなかったかな。おそらくグレーデン辺境伯領の十分の一程度の領地だったと思うから比べようがないのだけど。
ちなみにサーキスさまは旦那さまのことやそのご家族のことは話してくれなかった。説明するよりあったほうが早い的なことを言われたよ。百聞は一見にしかず?
長く馬車に揺られ、やっと辺境伯家に到着することができた。
初の長距離。初の馬車。私のためにソフトめに進んでくれてたと思うけどお尻が痛い。
王様の用意してくれた馬車も、辺境伯家からの馬車も、かなり良い馬車だったと思うけど結構揺れたよね。今後も乗るなら何か改良したいね。
馬車から下ろしてもらってホッとしたら、玄関から煌びやかな布の弾丸が飛んできて突然ギュッと抱き込まれた! 視界がゼロだよ。
辺境コワイトコデスカ。
「ちょっとなぁに、この子とっても可愛いわぁ」
「本当にうちの子になるのか? ラッキーじゃのう。陛下もたまには良いことをするのう」
抱き込みが少し緩んで顔を出すと、腕の筋肉がムッキンなかなり見目麗しいマダムと、これまた大きな赤髪のガチマッチョなイケオジがいた。
王家からのお手紙もサーキスさまからの情報も先に全部届いていたみたいで、私の見た目についてはなにも仰らずにお二人に無茶苦茶撫で回された。
「まずはご挨拶をなされては?」
サーキスさまが遮ってくれたので私はそっと解放されて、改めてお互いに姿勢を正して見つめ合う。
「私は前辺境伯でルドガーじゃ。前線に出ることもあるが楽隠居でのんびり過ごそうと思うとるので良かったら付き合ってくれるとうれしいぞう」
とても大きなおじさまが中腰になって、目尻を下げて握手をしてくれる。優しそうで嬉しいなぁ。
「私はスノウリリィと言うのよ。お仕事は息子たちに任せちゃったから今は領地巡りが楽しみなの。一緒に行きましょうね」
スノウリリィさまは女神さまかってくらいの美しさでこんなに気さくって素晴らしいお方です。
きっとファビュラスなお姉様はこんな香りなんだろうなってくらい良い匂いがする。はわぁ、ゴートゥヘブン!!
「歓迎してくださって嬉しいです。リーシャ・マーベルハントです。素敵な家族ができて嬉しいです。グレーデン領のためにやれることが有れば精一杯頑張ります!」
お二人ともニコニコお孫さま見てるみたいなお顔で。両側から頭を撫で回されまくった。
「父上、母上、良い加減にしてください。そろそろ俺も挨拶させてほしいのですが?」
そこで本日のメインイベントぉぉ!
ルドガーさまの次くらい筋肉が盛りっとした2m超えてるだろうなっていうナイスガイが玄関のところから声をかけてきた。多分、彼が私の旦那さまになる人?
その彼は、まず視線をニーナを向けてから首を傾げて、そっと下を見たの。先に報告を聞いていても子供みたいな見た目の嫁が来るって理解出来なかったよね? 仕方ないと思うよ。うん。
「君がリーシャ嬢? 遠いところよく来てくれたね。君と結婚することになったジュリアス・グレーデンだ。君の暮らしが平和であるよう約束するよ」
多分、私に微塵も興味ないだろうにちゃんと目を合わせて言ってくれた。
優しそうでしかもワイルドイケメン。そして、かなりのマッチョだ。王様お薦めの良い男って事できっと大丈夫。
□◇□
「ちょっとあれは反則だろう! 16歳って普通に俺と歳が離れてるし、見た目で判断したら俺と親子くらいだろ? 可愛いけど俺が襲っちゃったら俺は投獄されるんではないか? 手を出しても良いのか? 良くないだろう! 初夜とかどうするんだ!」
魔物相手には怖い物なし、戦場で怯むことも無い俺が女の子のことで震える。
辺境の子供達は俺を見てもビビらない。でも王都とかで街にでると子供に泣かれる。
強面なんだよな!
陛下、なんて無茶な王命を出すんだ!?
養子とか預かりじゃダメな理由はなんだ?
......でも可愛かったな。
ちゃんと仲良くなれたら良いのだが。




