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ちびっ子ボディのチート令嬢は辺境で幸せを掴む  作者: 紫楼
三章

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番外編 デイジー・スコットの事情 

 私の名はデイジー・スコット。

 レイドラアース国の隅っこにほんの小さな領地を持つ貧乏な男爵家の生まれ。

 父母と姉と弟がいる。


 家格のせいで友人の誘いを断れずにグレーデン家の次男狙いのステファニー・リード伯爵令嬢の引き立て役としてついて来たグレーデン領は、噂で聞く、荒涼とした未開地だとか、恐ろしい現地人がいるだとかの話とはまったく違っていて。


 ディゴーの街は私の住むスコット領より余程豊かで。気さくな領民たちが幸せそうに暮らしていて驚いた。


 街には、ステファニーさまの他にも爵位も年齢もばらつきのある令嬢たちが婚活のために集まっていた。


「お屋敷に早く招いていただきたいわ」

「せっかく来て差し上げましたのに挨拶にも来てくださらないなんて」


 呼ばれてもいないのに勝手に押しかけておいて不平を言う令嬢たちと同じ穴の狢と思われるのだろうと思うと憂鬱だが仕方ない。

 今回の同行を聞いた両親からは「お前が辺境伯家に気に入られるとは思わないがせめて騎士爵を賜ってる平民でもいいから縁を繋げ!」などと言われて来てるのだから、私も似た様なものね。


 王都住まいの適齢期の令嬢たちはセリウス卿に興味があっても、恐ろしい噂に尻込みしていた。でもあのリーシャ・オレイユ嬢が受け入れられ、大事にされているとのことで、自分ならばもっと幸せにしてもらえると勘違いしたり、「あんな罪人の出た家の貧相な娘が嫁で可哀想」だとかでジュリアス伯を狙うものまでいる始末。

 確かに多少体がデカいとは言っても見目上麗しく武功を上げている三兄弟は魅力的で、王家の覚えも良いグレーデン辺境伯家と繋がることは家としても個人としても美味しいとは思う。

 でも過去の辺境へ侮蔑発言を聞き齧っていた身としては社交界は見事な手のひら返しをするものだなと人間不信になりそう。


 グレーデン家から一番近いらしいディゴーは交通の便の良さを活かして各地より色々な商品が並ぶ商店、露店があって、私には楽しく良い街だと思った。

 姦しい令嬢たちが「カフェもドレスショップもないじゃない」「王宮のケーキってグレーデン発祥じゃなかったの?」などと騒ぎ立て、「こんな安っぽいお店ばかりでつまらないわ」などとケチをつけては何かと騒ぎを起こし、「宿も粗末だわ」などと日々愚痴ばかり。

 せっかくの楽しい気分も台無しよ。


 ステファニーさまは心を同じくした同志の令嬢と懇意になって私を放っていてくれたので、街中を自由に見て回ることができた。商業ギルドが賑やかで気になったので覗いてみると、農業従事者、商品梱包、調理師などグレーデン家が雇用主の募集があった。


 我が家は貧乏で姉妹二人分の持参金なんて用意できないし、親も私のために縁談を探す気はないだろう。探したとしても後妻や商家などを見繕うことになるだろうからと私は早々に家を出たいと思っていた。


 ギルドの求人広告は今の私に渡りに船だとじっくり求人票を見た。

 教師、簡単な読み書き計算を子供相手に教えるというのは私にも出来そうで、とても魅力的に感じた。

 給金の良さ、寮有りという条件は家を出て家族と縁を切りたい私にはまたとない好条件なのだ。

 まずはステファニーさまとこの期間を穏便に過ごして、次は一人でこの街に戻ってきて応募しよう。求人……残っているかしら。


 その後も令嬢たちは商店や領民に迷惑をかけていたので、ついに辺境伯家が「このグレーデンに暮らす覚悟があるというのであれば今日一日領内を案内してやろう」とセリウス卿とクラウス卿が出てきた。

 令嬢たちは浮き立ったが、こんな騒ぎを起こした令嬢たちを受け入れられるわけないのに何を期待できているんだか。

 笑顔で話しかけてくださっているけど、お二人も、側近らしき騎士さまたちも決して歓迎の笑顔などで浮かべていない。


「ついに身染められる日が来たわ」


 皆様、頭に大鋸屑でも詰まってるのでないかしら?


 ステファニーさまが私の手をとって、「やったわ!なかなかお屋敷に呼んでいただけなかったけどこれでセリウスさまとお話出来る機会を得たわ!」っと喜んだ。


 お屋敷に呼ばれない=お断りって理解出来ないのかしらね?


「これだけの人数では我が家の馬車では足りませんのでご自分の馬車でついてきてください」

 大軍を抱えているグレーデン家に馬車がないわけ無いのに令嬢たちは気付く様子もなくそれぞれの馬車に乗り込む。

 私はステファニーさまに便乗で乗せていただいている身なので何も言わずにただ従った。


 セリウス卿とクラウス卿は笑顔で先導してくださる合間に、自分たちは「婿入りはしない」「辺境を出る時はない」「妻を娶っても別居するなら意味はないと思っている」などとお話ししてくださるのに、大鋸屑脳な人は「まぁ!離れるのが嫌なのですね!」なんてどうしたらそう都合の良い方に受け止めるのか?と言った具合で。驚いてしまう。


 道中で魔獣が出たり、悪路で王都から直接来ていた令嬢方の馬車は車軸を痛めたり、車輪の摩耗でとても進めない程揺れたりでリタイアするなどして少しずつ減っていった。


「修理してくださいませ!!」

「これでは帰れませんわ~!お泊めくださいまし」

 などと騒いでいたけれど騎士様に「修理工場までご案内します」などとサラリとディゴー方向へ誘導されていった。


「長距離用で来ないのはちょっとダメですわねぇ?」

 さすがにステファニーさまも呆れていた。


 見栄えの良い馬車は車輪も細く車体の装飾過多で重くて。馬もスタイリッシュな種を使っているのでどうしても馬力がない。

 田舎に領を持つ貴族ならタウンハウスとの往復を考えて壊れにくさを優先しているし、馬も魔馬や農耕馬を使う。見栄で選ぶなどバカのすること。


 魔の森近くの街道や冒険者の多い街、最近開かれた農耕地、私にとっては実りある時間だけど、ほとんどの令嬢の顔には悲壮感が漂い始めた。


 最近リーシャ夫人が考えたという食べ物や魔道具を量産するために出来たフーゴの村では、クラウス卿がテンション高く案内してくれた。



_________


 もう一回デイジー回です。



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