100話 ルルゥは絶対に譲りませんよ!
陛下と王妃様と王女様と王子様お二人が登場する。
煌びやかである。
個々で会話を楽しんでいた貴族達が一斉に静かになって礼を取る。
「楽にせよ。皆が食事を楽しんだ後、報告がある。まずは楽しんでくれ」
夜会とか式典のマナーや流れは一応習ったけど、今日のは王家の方々に順番にご挨拶じゃないのかしら?
ご飯食べて良いみたいだし、料理コーナーに行っちゃう?って思ったけど、お義父さま達は普段あんなに爆食しているのに今は興味がない感じだ。
「ルドガーさま、ジュリアスさま、遅くなって申し訳けありません」
美声が後ろからしたので振り返ったらルルゥが貴族の礼装で!
ふおおお!騎士のもカッコよかったけど、さらにキラキライケメン度が上がってる!!
「陛下に一品頼まれてしまいまして・・・」
「良い。ご苦労だったな」
ルルゥがオネエ言葉でも無いよ!
ポカーンとした私を見てルルゥがウィンクして説明してくれる。
「リーシャさま、私は一応侯爵家三男でして。今日は護衛としてお側で控えられないのでこの格好なんですよ」
アラン達は控え室なんだよね。今は壁際に近衛騎士や王宮騎士が配置についてる。護衛たちはこの会場に入れないのだ。
「ルルゥってびっくり箱だねぇ」
思わず口に出しちゃったらジュリアスさまが「ん?」って首を傾げた。
この世界にびっくり箱はないか~。しまった。
「今度作ってお見せしますね」
「そうか」
ジュリアスさまもルルゥもふっと笑ってくれた。
「あの方って・・・」
おや、ルルゥが女性陣に注目を浴びてるようだ。
イケメンだし綺麗だしマッチョだし料理上手だしモテるよね!
でもグレーデン家やホーン家、リュフェリー家の面々を前にナンパ的な声掛けは出来ないよね~。
「ルーディ?久しぶりだな。お前が夜会に出るのは何年ぶりだ?」
おや女性陣を気にしてたらちょっと慇懃無礼そうな殿方が現れたぞ。
「・・・お久しぶりです。カーフィ卿」
ルルゥの纏う空気が一気に冷えてジュリアスさまがスッと目を眇めた。
「堅いな、昔みたいに話してくれ」
カーフィ卿とやらはまぁちょっと筋肉が足りないけどそこそこイケメンなんだろう。好みじゃないけど。
「主人の前ですので」
「ああ、ルーディは料理人になったんだったか。勿体無いな。だが評判は王都にも届いている。私の家で働かないか?」
こいつ、空気が読めないだけでなく無礼者だ!
主人である辺境伯の前で堂々と引き抜きだと⁉
「失礼します。ルーデウスは家の宝ですので貴方のお家には参れませんわ!」
思わずルルゥと無礼者の間に割って入っちゃったわ。
「仕事は本人の意思で選べるだろう?」
何おう!身長差のせいで見下げられた上、小馬鹿にしてる感も隠してないからめっちゃ嫌な感じでムカつく!
「・・・私は生涯グレーデン家にお仕えするので」
ルルゥが私を優しげに見つめてくれる。オネエモードじゃないからちょっと照れるよ。人前じゃなきゃヒシっと抱きついちゃうのね!それをする時は普段の姿の時だけね!
「辺境では不便だろう?昔のように大事にするぞ」
あー、はーん。ほーん。腐女子センサー発動。元カレだな!趣味悪っ!
宥めるような猫撫で声で、めっちゃイヤらしい目でルルゥの腰元に視線がいってた。
「はぁ、ルーデウス、もう良いか?」
ジュリアスさまが心底嫌そうに聞くとルルゥも頷いた。
「カーフィ卿、ルーデウス・フラウはうちの上位騎士であり総料理長だ。勝手に引き抜いてもらっては困る」
ジュリアスさまの威圧を込めた低い声に無礼者の腰が引けてちょっとふらつく。小物か。
「うふふ、カーフィ侯爵家には苦情を入れますわねぇ」
様子を見守ってたお義母さまが留め?を刺す。
「な!」
辺境という地と地位を軽く見て小馬鹿にしてる人がちょいちょいいるんだね。こういう人って王都から出た事が無いんかな?
「ルーディ!私の元に来たいだろう?」
うえぇ⁉何その自信。
別れた恋人(かどうかは知らんけど)に未だに未練タラタラとか思ってんの⁉ずっと好かれてるとか思ってんの⁉無いわ!!
「いいえ?私はグレーデン家に仕えていたいのでお断りします」
サクッと断られて顔を怒りで真っ赤にしてる。なぜ要求が通ると思ったし?
「ゴールデンサンダースビックホーンとかを簡単に仕留めて持って帰る腕の騎士を辺境から取り上げたいとか随分傲慢ですね?」
私の言葉に周囲がザワっとした。やっぱすごいことなんだ。
私だってどんだけすごい魔獣かよく分かんないけど、Aランク魔獣の群れを小隊で壊滅させてくる辺境騎士団を舐めんなよ!
周りがカーフィ卿を冷たく見ているのに気付いたのかチッって感じで去っていった。去り方も小物感満載だ。
「リーシャは見かけによらず随分攻撃的だの」
「あ、ごめんなさい」
「良い良い。言いたいことを全部言ってくれた」
お義父さま達は私の頭をポンポンとしてくれた。
「リーシャさま、ありがとう」
ルルゥがいつもの柔らかさに戻って笑ってくれた。
「私のレシピを最大限に活かせるのはルルゥだけだもん。逃がさないからね」
ついでに小声で言っとく。
「男の趣味悪すぎ」
ルルゥが目を見開いてから苦笑する。
「アタシにも若い頃があってね。若気のいたりよ」
そういうこともあるよね~。アイツと八股どっちが若気の至り度が高いかな?
「サンダービックホーンを軽々と狩れるのか?ウチの騎士より強いな」
場の空気を変えるようにアークさまがルルゥを褒めてくれた。
「いえ、私よりサーキス卿の活躍が大きいです」
「ほう!今代のグレーデンの騎士団は羨ましいくらい人材が豊富だな」
「ホーンも名を挙げた騎士が多いではないか」
強面オジ達がお互いに自領の騎士を褒め始めた。
「グレーデンの料理が評判に登りすぎてるとはいえ、料理長を引き抜きたいって言い出すのは予想外だったわぁ」
お義母さまがそう呟いた。
「グレーデン家に嫌われても良い家なんて公爵くらいだと思っていたわ。ウチもまだまだねぇ☆」
そんな話をしているそばで、料理コーナーで新しい味を知った貴族達がグレーデン家とお近付きになりたいと盛り上がってたのを知ったのは後の話。




