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釣り場の怖い話・第二話 生への執念

 これは、僕が釣り場の漁師さんから聞いた話ですが。

 かなり昔の夏の海で起こった、不思議な出来事です。

 瀬戸内海の島で釣りをしている人が三人いたそうです。まだ、携帯電話がそれほど復旧していない頃ですが

 それでも三人のうち、一人が携帯電話を持っていたそうです。

 三人は夜通し釣りをしていたそうですが、潮の流れが変わり一人を残して二人が移動したのです。

 歩いて十分ほどの場所で再び釣りを始めた二人でした。

 電気浮きを流れに乗せては釣り流していると、波間に浮かぶ人影らしきものが見えたそうです。

「ゴミかな」

 最初は何か大きなゴミが浮かんでいる程度にしか思っていなかったらしいのですが、雲の切れ目で月明か

 りが照らされたとき、はっきりと見えたそうです。

「おい、人だ!人が浮かんでるぞ!」

 釣り人が水死体を見つけるのは良く聞く話です。なんせ海で釣りをしているのですから、

 二人は息を飲み近寄りましたが、波間の岩陰で手を上げていたのです。

「よかった、生きている」

 水死体を誰も好んで見たいとは思いません。二人は生きている事にホッと胸を撫で下ろし、すぐに駆け寄

 ったのです。

「大丈夫か?」 見ると、ライフジャケットを着ている釣り人ではないですか。

「良かったな、ライフジャケットがなかったら、あんた死んでたぞ」

 一人が抱え上げ、ずっしりと重い体を岩に持ち上げ、一人は急いで携帯電話を持つ釣り人の方へ連絡をしに

 行きました。

「…生…きたい…死に…た…くない」

 今にも倒れそうな釣り人を、一人が支え必死に励まし続けました。

「頑張れ、今、連絡をとったから、すぐに助けが来るぞ」

 今にも死にそうな声で、死にたくないと繰り返すだけだったのです。

 すぐに、連れの二人が戻り、海上保安庁の巡視艇がくるまで、ずっと三人で励まし続けたそうです。

「死…にたくな…い」

 二船の巡視船が駆けつけ、収容した釣り人と共に、一人は巡視船に乗せられました。

 帰還する巡視船の中で、一人付き添いで乗せられた人が言われたらしいです。

「あんた、良く抱いてられなあ、普通は気味悪がって近寄らないから、また流されて探すのが普通なんだよ」

「え…」

 最初、何を言われているのか訳が判らなかったそうですが…

 基地港で下ろされる、自分が助けたと思っていた釣り人は、黒いビニールに入れられて運ばれていたそうです。

「…」

 その時もまだ本当の意味が判らなかったのですが…

 後から聞くと、発見時は死後一日以上たっていたそうです。


 その後のニュースでは、四日前から消息不明になっていた釣り人だったそうです。


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