第8話「死者たちの章」
ノートPCの画面に浮かんだ言葉の直後、
静寂を破るかのように、
次のフォルダが自動で開いた。
タイトルは――
【DEAD_CHAPTERS】
そこには、数十通の未送信メールと、複数の映像ファイルが保存されていた。
映像の一つを再生すると、
そこには痩せ細った男性が映っていた。
顔は影に隠れているが、その声ははっきりとしていた。
「これは…堺流真の記録だ。
彼が生前に遺した最後のメッセージだ。」
堺は静かに話し始めた。
「もしこの映像を見ている者がいるならば、
それは――私が消された後に、“物語”が続くことを意味する。
私は知ってしまった。
この世の中で、誰も知らないはずの“秘密”を。」
その秘密とは、
Veilという存在が単なる復讐者の集合体ではなく、
政府の極秘プロジェクトとして生まれた“社会制御装置”だったこと。
「我々は、過去の汚職・不正・犯罪を抑止するために、
極秘に作られた“正義の影”。
だが、制御は効かず、
“復讐連鎖”は暴走を始めている。」
映像は続く。
「そして、私が死んだ本当の理由は、
このプロジェクトの真実を世に出そうとしたからだ。」
未送信メールには、堺が調査していた内部資料の抜粋が添付されていた。
そこには、
“Veilプログラムの初期計画書”、
“政府高官と企業トップの密談記録”、
そして“不自然に処理された犠牲者リスト”の名前が並んでいた。
“犠牲者リスト”には、意外な名前があった。
堺 流真
佐久間 蓮
由梨
新堂 剛
原口 椿
……
そして、一番最後に、
血文字のように刻まれた名前。
“真実の主”
誰だ、“真実の主”って。
だが、そこに一枚の古い写真があった。
モノクロの、暗い部屋で4人の男が円卓を囲んでいる。
顔は隠されていたが、雰囲気から誰かはわかった。
「……あの夜だ」
あの事件の日。
俺を奈落に落とした、
横領事件の“発端”。
突然、パソコンが強制シャットダウンした。
外からは雨が激しく打ちつける音が聞こえる。
俺はその雨音に合わせて、誓った。
「真実を暴く。
誰が“物語の作者”なのかを――」
――次回、第9話「終わりなき序章」
復讐と真相、交錯する過去と未来。
物語は更なる深淵へと誘われる。