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第6話「見抜かれた罠」

新堂剛――

俺の元直属上司にして、

この“横領事件”をでっち上げた最有力候補。


計画的に俺を「架空のプロジェクト」にアサインし、

帳簿上の金を動かし、

由梨に俺の部屋の合鍵を預けて、証拠を奪わせた。


完璧な連携。

まるで**“誰かの設計図通りに”**進められていたかのように。


 


だが、俺はVeil。

どんなに綿密な計画でも、“人の心”までは支配できない。


そう――

今回は、新堂剛に“後悔させる”ことが目的ではない。


“あんたが何者か”を暴くことが目的だ。


 


まず俺は、“偶然を装って”新堂と接触する計画を立てた。

新堂が毎週金曜に通う都内のバー『Lotus Moon』に、

“新しい顧客として”潜り込む。


店内は暗く、照明はブルーのネオン。

テーブル席に一人、ウイスキーを傾けているのが新堂だった。


視線を合わせないよう、カウンターから観察する。


俺は帽子と伊達メガネ、そして低めの声で“営業職風のスーツ男”を演じる。


彼のそばの席で、わざとスマホの画面を光らせた。


そこに映っていたのは、旧・プロジェクト帳簿の一部


――“懐かしい名前”を見せつけることで、揺さぶるつもりだった。


 


……が、新堂は動じなかった。


いや、それどころか――

静かにウイスキーを飲み干し、

ゆっくりとこちらに目を向け、こう言った。


「君、何者か知らないが……随分、手慣れてるな」


――え?


完全にバレている。


俺は咄嗟にその場を離れようとした。


が、隣の席に座っていた男――店の常連らしい――が、

俺の肩を軽く押さえた。


「ああ、申し訳ない。君がこの店の“面接希望者”かと思ってたよ」


冗談にしては、冷たい空気。

逃げるタイミングを失った。


新堂が立ち上がる。


「……連れてきて」


それが合図だった。

背後から、黒い服の男が現れた。


 


俺は一瞬、言い訳を考えた。

が、同時に理解した。


これは――“俺が試されている”。


ここで逃げれば、それこそ“犯人の自白”だ。

ここで踏み込めば、逆に彼の“裏の顔”を炙り出せる。


俺は、腹をくくった。


 


バーの裏手にあるVIPラウンジ。

ソファに座った新堂と、対面に座らされた俺。

相手は明らかに“何かを知っている目”で俺を見ていた。


「佐久間蓮。いや、Veilと呼んだ方がいいかな?」


……完全にバレている。


「君の復讐は精巧だ。まるで、事前に“シナリオ”があったみたいにね」


 


……それは、俺が言いたいセリフだ。


俺を陥れたこの全体の構図。

あまりにも綺麗すぎる。

あまりにも出来すぎている。


俺が動く前から、すでに“予定されていたような展開”。


「君は何者だ? なぜ俺を嵌めた?」


静かに問うと、新堂は笑った。


「嵌めた? 違うよ。“招待した”んだ、君を」


招待――?


「君が選ばれたんだよ、このゲームに。

君がこの“連鎖する復讐劇”の、主役になるように」


 


背筋が凍る。


こいつは“俺が復讐を始めること”を、最初から知っていた?


いや、それどころか――

復讐者としてのVeilを、“導いた”存在……?


俺は問い返す。


「この横領事件の黒幕は、あんたじゃないのか?」


「違う。“私は”実行者ではない。ただの“案内人”だよ」


 


新堂はそれ以上、何も語らなかった。

そして一通のUSBを机に置いた。


「これは、“君にとって重要な記録”だ。

でも、見る順番を間違えると、死ぬほど後悔するぞ。」


そう言って、彼は立ち去った。


 


俺はUSBを握りしめたまま、しばらくその場を動けなかった。


新堂は、全てを知っていた。


俺がVeilとして動いていることも。


由梨が“利用されていた”ことも。


そして、おそらく――

“俺の正体”すらも


 


俺は一体、誰と戦っているんだ?

――次回、第7話「もう一人のVeil」

過去の記録が開かれ、ある衝撃の名前が浮かび上がる――

Veilは、最初から“複数”存在していた?



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