第20話「真実の断片」
荒れ果てた倉庫の中、薄暗い光の中で俺は拳を握り締めていた。
椿の裏切りが心に深い傷を残したが、そこで終わりじゃない。
「俺は、もう一人じゃない」
背後から静かに足音が近づいた。
「蓮、無理をするな」
振り返ると、そこには見慣れた姿があった。
橘 彩――元司法記者。
政府の腐敗を追い続けてきた敏腕だが、裏社会に近づきすぎて失脚。
今はVeilの情報戦を支える参謀として動いている。
「彩……どうしてここに?」
彼女は微笑みながら資料を差し出した。
「これを見てくれ。相原律人の隠された記録の一部だ」
俺は目を見開いた。
資料には、相原が国家の倫理監察局に上がる前に関わっていた秘密プロジェクトの記録があった。
それは――
「人体実験と倫理の境界線を曖昧にした極秘計画」
相原が娘・彩音に施した教育の影響は、国家プロジェクトの一環だったのだ。
「だから、彼は娘の存在を隠し続けた。
“倫理の死体”として扱いながら、政治的な利益を優先してきた」
俺は資料をじっと見つめながら考えた。
「この真実を世に出せば、相原だけじゃなく、
背後にいる巨大な権力も動揺するはずだ」
彩は頷く。
「だが、リスクも大きい。
俺たちにとっても、命を狙われる危険は増す」
俺は拳を固く握り締めた。
「この道を選ぶしかない。
嘘を暴き、真実を光にさらす」
彩が一歩前に出て言った。
「これが、Veilの戦いだ。
復讐と正義の狭間で揺れながらも、進むしかない」
その時、遠くからヘリコプターの音が聞こえた。
「動きが早い。奴らも動いている」
俺たちは顔を見合わせ、静かにうなずいた。
「覚悟を決めろ。これからが本当の戦いだ」
――次回、第21話「崩壊の序曲」
巨大な権力が動き始め、Veilは追い詰められていく。
だが、その闇の奥で新たな真実が待ち受けていた。