第18話「告発前夜」
深夜、東京。
冷たい雨が街を濡らす中、俺はひとりで静かな部屋にいた。
明日、俺は“Veil”としての正体を公にする。
匿名の仮面の裏側から一歩踏み出し、
正義の名の下に全ての嘘と腐敗を暴く。
だが、その覚悟とは裏腹に、心はざわついていた。
「何かが動いている」──そんな予感。
スマホが震え、暗号化されたメッセージが届いた。
差出人不明。内容は短く、こうあった。
「お前の“過去”を掘り起こす者がいる。気をつけろ」
俺の過去。
それは誰も知らないはずの秘密。
裏社会での小さな失敗、
誰にも語らなかった挫折、
そして――
大学時代、ある人物に助けられたことがあった。
その恩人が、今になって何かを仕掛けているのか?
深く息を吐いて、俺は部屋の窓から雨の街を見下ろす。
「原口、これが現実だ。敵は情報を武器にしてくる」
間もなく彼が現れ、部屋の空気が引き締まる。
「こいつは、ただの揺さぶりじゃない。
動きは正確だし、情報網が広い。
相原派の残党か、それとも新たな刺客か」
俺は頷いた。
「だが、ここで怯んでは終わりだ。
明日の“顔出し”で、反撃の狼煙を上げる」
原口はパソコンを開き、証拠資料の最終確認に入る。
「今回の告発は、政府の不正から企業の隠蔽まで、
一気にぶちまける予定だ。
裏で繋がってる奴らは震えるだろうな」
俺は指を組み、冷静に計画を練った。
「そして、彩音の件も使う。
相原律人の“父親としての罪”を、世に晒す」
原口はふと、疑問を口にした。
「でも、蓮……
こんなにリスクを背負って、
お前は何を手に入れたいんだ?」
俺は答えた。
「……自由だ。
自由に生きること。
嘘に塗り固められた世界の中で、
本当の真実だけを見ていたい」
その時、部屋の外で物音がした。
振り返ると、暗がりの中に誰かの影が映っていた。
「来たか」
奴が動く前に、俺たちは動く。
復讐者の夜は深い。
――次回、第19話「裏切りの刃」
真実を暴くための闘いは、裏切りと共に始まる。
信じていた者たちの裏切り、そして蓮の孤独が深まる。