第10話「舞台の影」
電話の一件以来、
俺は自分の周囲に“影”が増えたことを感じていた。
街の人混みの中、
カフェの窓越しの反射、
深夜の電車の車両、
あらゆる場所で誰かに見張られている気がした。
だが、俺はもう逃げない。
「Veil」として生きることを決めたのなら、
影の存在に怯えるわけにはいかない。
そんな中、俺の元に一通のメールが届いた。
差出人は“堺流真”からのものだった。
いや、正確には堺の名前を使った“何者か”からのメールだ。
件名は――
【Veil_014へ:最後の選択】
本文には短く、だが意味深なメッセージがあった。
「この舞台の裏側を見よ。
お前の知らぬ“仲間”と“敵”が存在する。
そして、“真実の主”は決して一人ではない。
最後に笑うのは、心に“影”を持つ者たちだ。」
俺はメールに記されたURLを開いた。
そこには、暗号化された動画ファイルと複数のデータが添付されていた。
動画には、黒いローブを纏った複数の人物が写っている。
彼らは互いに顔を隠しながら、ひそひそと話している。
「次のVeilは我々の手で選ぶ」
「だが、彼が本物かどうかはまだわからない」
「彼の動き次第で、計画は大きく変わる」
その言葉に、俺は背筋が凍った。
Veilは“組織”だったのか。
いや、もっと巨大な存在――“影の支配者”がいるのか。
それでも、俺は諦めない。
俺自身が“影”となり、
この舞台の主役たちを揺さぶり、裏切り、そして導く。
そう決めた時、部屋の扉が静かに開いた。
振り返ると、そこに立っていたのは――
「久しぶりだな、佐久間」
目の前に現れたのは、
あの日、死んだはずの“堺流真”だった。
――次回、第11話「帰還」
堺流真の秘密と復活の真相。
そして、新たな戦いの幕開け。