05 仮通夜
葬儀の日程が決まったので、親戚たちは三々五々と引き上げていった。
残ったのは父のふたりの弟たちだった。
彼らは、線香とロウソクの番をしながら葬儀が終わるまで呑み続ける覚悟らしい。
夜くらいは家族だけでひっそり別れを惜しみたいと月枝は思ったが、叔父たちもまた父の肉親には違いない。
真由を二階で寝かしつけ、酒の肴を用意しに階下へ降りると、日向子が「お姉ちゃん、任せた」と言い残してさっさと二階へ上がってしまった。
日向子も急な帰省と親戚の対応で疲れたのだろう。
明日もまた車を出さねばならない鉄郎と、昨夜から心労が重なっている母を先に休ませ、月枝は叔父たちとともに夜明かしをすることにした。
呑みながら昔話に花を咲かせる叔父たちは多分、朝まで線香を絶やさずに番をすることはできないだろうと思ったからだ。
きっと朝方になると、それは月枝の仕事になる。
この世はいつだって、醒めている者が貧乏くじを引く。
それに、月枝は眠るのが少し怖かった。
また、あの夢を見るのではないかという予感があったからだ。
幼い少女たちを乗せて雪原をゆく気動車。
揺れる車体とつり革のリズム。
あの汽車は、どこへ向かって走っていたのだろう。
ふたりは、どこへ行くのだろう。