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8話 黒い炎

 ルードは絡んできた酔っ払いを睨んでいた。

「なんだぁ、その目は…俺とやり合おうってのか?」

 ルードに絡んでいる酔っ払いのハンスはルードに掴み掛かった。ルードは掴んで来た手の手首を思いっきり掴んで払う。

「…てめぇ」

 ハンスはその行動に怒り、椅子に立てかけてあった剣を手に取った。

「俺を怒らせたことを後悔させてやる」

 歯軋りをさせながらそう言ったハンスは剣を抜いた。

「…はぁ」

 ルードもその行動に対してため息をついて、魔剣を抜く。そんなルードにハンスは剣を振りかざしながら斬りかかろうとした。だが、酔っ払っていたこともあり、ハンスはふらついていた。

「…死ね」

 そんなハンスを見たルードは小さく呟き、魔剣を横一線に振り、ハンスを真っ二つに斬った。

 そんな状況に周りは凍ってしまったかのように固まっていた。

 ルードは酔っ払いのハンスと一緒にいた男たちを一瞥して、その場を立ち去った。


 店を出たルードは曇天の空を見上げた。

「…雨は…降らないといいなぁ…」

 そう呟き、次の街へ向けて歩き始めようとした時に店から酔っ払いたちが出てきた。

「…おい、待ちやがれ!」

「お前、ハンスを殺してただで済むと思うなよ」

 2人の酔っ払いは大声で言った。ルードはその2人を睨みつける。

「…おい、ガル…俺は衛兵を呼んでくるからあのガキを止めとけ」

「はぁ…待てよ、タガ……ハンスを殺したやつだぞ、どうしろって言うんだ」

 2人はルードに睨まれたことで臆した。そんな中、店から店主が出てくる。

「私が呼んでくるから、あんたらが2人でなんとかしときなさい。私の店で人殺しをするようなやつを逃すつもりはないからね」

 店主は2人にそう言うと、ルードを睨んでどこかへ走っていった。

「…覚悟を決めるか。ガル、やるぞ」

「あぁ…分かってるよ。タガ…こいつは放置できねぇ」

 2人は店主に喝を入れられて、ルードに対して剣を抜いた。ルードもそれに応じて、魔剣を再び抜いて構えた。


 ガルとタガの二人はルードを挟むようにして、距離を置く。ルードは二人を交互に見ながら様子を伺う。

 しばらくはそんな状態が続いて、剣を交えた戦闘が始まることはなかった。

 ルードはそんな状況に痺れを切らしたのか、少しだけ距離が近かったタガに体を向ける。そして、動き出そうとした時だった。

 ここに近づいているであろう足音が響いてきた。衛兵だ。

 まだ、遠くから聞こえる足音。ルードは顔を僅かに顰めた。面倒になる前に立ち去ろうとすぐに行動を起こす。ルードはタガに真っ直ぐに突っ込む。

 ルードは速かった。タガもガルもその行動に少しではあるが、反応が遅れた。それがこの戦闘を大きく動かした。


 ルードはタガが剣を構えたままの状態の間に左足を斬った。それと同時にタガは剣を振り下ろし始めていた。

 だが、左足を斬られたタガは痛みのあまり、顔に苦痛を浮かべながら剣を手から離してしまった。

 その結果、ルードにとって邪魔だった剣が無くなり、ルードはタガの首を直接狙う。

 そんな中、ガルはルードの背を追うように背後に剣を振り上げながら迫り始めていた。だが、ガルの剣が届く前にルードの魔剣はタガの首を軽々と飛ばした。

 ガルはその状況に苦虫を噛み潰したような表情をしたが、ルードの背後に立ち、剣を振り下ろす。

 それに対してルードは後ろに飛び、ガルにぶつかりに行く。ガルはぶつかられたことでバランスを崩し、後ろに倒れる。

 ルードも後ろに飛んだことで少しバランスを崩していたがすぐに立て直し、魔剣でガルの首を狙う。

 起きあがろうとしていたガルは振られる黒い炎を纏う魔剣を見て、咄嗟に剣で防ごうとしたが、剣ごと首を焼き斬られてしまった。


 戦いを終えてルードは辺りを見渡す。少し離れて見ていたと思われる街の住人達の囲いができていた。

 ルードは住人を睨みつける。住人は萎縮して、その場から立ち去り始める。それと入れ替わるように衛兵が到着した。

「武器を捨てろ!」

 30人ぐらいいる衛兵の先頭に立つ、周りよりも年上と思われる男が剣を構えながら、強い口調で言う。

 ルードはその言葉を無視して、相手を睨む。衛兵の半数ぐらいはビビってルードから目線を逸らした。

 そんな様子を見て、ルードはゆっくりと衛兵達との距離を詰める。

 衛兵達の先頭に立つ男は周りの衛兵に視線を送る。それと共に周りの衛兵達はルードを囲むように足早に移動を始めた。

 ルードは衛兵達が移動を感じるとすぐに魔剣を構えると一直線に男へと突っ込む。男は応戦するために剣を構える。

 構えられている剣を無視するようにルードは黒炎を纏わせた魔剣を横一閃に振る。男は魔剣を弾こうとして剣を振る。だが、剣は魔剣によって斬られる。

 男は斬られた自身の剣を見たからか、それとも直感による無意識か、自らの体を後ろに反らして、魔剣を避ける。

「ゴレン副隊長!」「副隊長!大丈夫ですか」

 周りの衛兵が声を上げる。それと共に近くの衛兵はルードに斬りかかる。

 ルードはそれらを剣でいなしながら、後ろに下がって魔剣を構え直す。衛兵達も副隊長の周りに集まってすぐに体制の立て直しをする。

 ルードと衛兵達の睨み合いが始まった。

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