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お姉様、ワクワクします!

“マルスの月”は、大体5月のことです

 カーテンの隙間から朝日が差し込む朗らかな朝―

アリスは飛び起きた。


「今日は何日!?」


世界の終わりのような顔をして、オリビアに聞いた。


「今日は、マルスの月の5日ですが…」


アリスは絶望した。


「マああジいい!?」

「マジです」

「マジかあ…」


アリスの顔はどんどん血色を無くしていき、床に倒れ込んだ。そんなアリスを見てオリビアは強引に引っ張り上げ、顔を近づけた。


「お嬢様?」

「ヒュッ…(息を呑む音)」


 アリスはオリビアに髪を整えてもらいながらも、考え続けていた。


 何で、よりによって今日なの…?だって、今日は“あの事件”の日でしょ?それなのに買い物って… 中止した方がいいかも…!


 「アリス?今日は…」


編み込みをしたハーフアップにプリムローズイエローのドレスを着たディアナがアリスの部屋に入ってきた。


「ぎゃんわいい!」


アリスが顔を覆って床に崩れ落ちた。


「アリス!?」


アリスの意外な反応に驚くと同時に床に崩れ落ちたアリスを心配したディアナがアリスに駆け寄った。すると、アリスはディアナの手首を掴み、ズイッと顔を寄せた。


「今日は、楽しもうね!」

「え、ええ…」


ディアナはすっかり気圧されてしまい、引き気味で返事をした。

* * *


 「ここが王都ね!あれはっ!?」


人が行き交い混み合う昼の王都。アリスは衣服や宝石、本、骨董品、魔道具など、右を見ては左を見て目移りをしまくり、馬車の中ではしゃいでいた。


「そうね!」


ディアナも目新しいものを次々と眺め、心の底から楽しんでいた。

少し後ろを歩いていたセイラとオリビアは微笑んでいた。


「そこのお店です、お嬢様方」


馬車を降り、セイラが右手にある“Karina&mysha”というオシャレな外見をした店を指さした。


「カリーナアンドミーシャ?」


ディアナが不思議そうにその看板を読み上げた。貴族という立場上、買い物やドレスの新調は屋敷に商人やデザイナーが来ておこなっていたためか、わざわざ店に行くのを疑問に思っていたのだった。店を前にして苦笑いを浮かべるセイラとオリビアに首を傾げつつ、ディアナはアリスの方を向いた。すると、アリスはセイラとオリビア以上に冷や汗をかき、まるで戦闘の直前かと言わんばかりに身構えていた。


「!?」


ディアナは、絶句した。

* * *


 「ようこそ」

「私達の仕立て屋」

「カリーナ」

「「ア〜ンド」」

「ミーシャへ」

クセの強い息ぴったりな喋り方、黒と白の対比した色の服、独特なポーズ、派手な、白い肌に真っ赤な口紅…

ディアナとアリスはポカーンと口を開き、あっけらんとしてしまった。


「何度見てもクセが…」


アリスはそう呟くと、ハッとして、口を塞いだ。


「本当に、貴方達は…」


セイラとオリビアは呆れきって、ため息をついていた。その様子を見ていた双子のデザイナー、“カリーナ”と“ミーシャ”は2人で頬をくっつけ、抱きしめながら言った。


「久しぶりなのに酷いわあ、ねえ?ミィ?」

「大丈夫よお、お二人さん?ちゃんと愛らしいお姫様方の服はつ・く・る・か・らっ」


そう言った矢先に、カリーナはディアナを、ミーシャはアリスを2階の部屋にそれぞれ連れて行った。


 アリスは次々と持ってこられる多種多様な生地を眺めていた。


「これは…違う」


ミーシャが光沢のあるディープスカイブルーの生地を後ろに投げた。それから少し離れ、アリスを見た。


「金髪にピンクの瞳…レッドだと王道だしい、ブルーだと浮いちゃうしねえ…イエローだと溶け込む…ん〜、飾りはふんわりさせたいわねえ…」


アリスは、このままだったらデザインどころか生地すらも決まらないのかと、滅入っていた。


「まだかかるの…?」


アリスが辺りを見回し、一つの生地が目に飛び込んだ。夜明けのように、深い紫がだんだんと淡くなっていくような、黄色がかった紫色。


「お姉様の瞳の色…」


ボソッと呟いた言葉を、ミーシャは聞き逃さなかった。すぐさまその生地を持ってアリスと見比べ、笑顔になった。


「大切な人の瞳の色を身に纏うのは特別な意味があるのよお。例えばあ、“私は貴方のモノ”とか“大好きっ”とか」


アリスの目は輝いた。


 お姉様に大好きって伝えられる!


2人は微笑み合い、早速、レースやら飾りのパーツやらを準備し、デザインを決めていった。


 「どんなデザインがお好み?」


カリーナがディアナに、今までに作った服やドレス、それらの写真などを見せた。


「これは今の流行りに沿ったものになってるわあ。でも、少しふんわりし過ぎかしら?もっとシンプルな方が似合うと思うわよお」


ディアナが手元にある1枚の写真を見た。


「これは?」

「これ?」


カリーナがその写真を見る。何かをひらめいたのか、一つの生地を持ってきた。


「その生地じゃなくて、こっちに変えたほうが似合うと思うわあ」


ディアナはそれを見て嬉しそうに頷き、カリーナに顔を寄せ、小声でさらなる要望を伝えた。

 セイラとオリビアにQuestion

Q:「なぜ、わざわざ“Karina&mysha”に行ったのですか?」

セイラ(以下セ):「急に予定を入れたため、デザイナーの予定と合わなかったのです」

Q:「もっと他の店があったのでは?」

オリビア(以下オ):「カリーナとミーシャに謝ってください」

カリーナ&ミーシャ(以下カ&ミ):「そうよお、最低よお。ねえ?リナ?」「そうよねえ、ねえ?ミィ?」

Q:「なんでいるん?」

セ:「ちゃんと謝りなさい(圧)」

Q:「…すみません」

オ:「声が小さいですよ?」

Q:「すみません!」

カ&ミ:「「許しませえんっ」」

セ&オ:「「ん?(圧✕2)」」

Q:「許してえ…っ」


 その後の“Q”を知るものはいなかったそうな

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