5 文明と環境
生物学において生命活動とは、
生物と環境の相互作用であるといわれます。
特に人間では、知的生活様式である文明を通して、
人間と環境の相互作用が行われます。
人間⇔文明⇔環境というかたちで起きる、
この相互作用の後半部分から説明します。
技術は自然・社会環境を制御することにより、
経済・社会活動を発展させるための手段といえますが、
政策はその技術により変化した自然・社会環境に対し、
経済・社会活動を適応させるための自己制御といえます。
経済・社会活動は文明活動の本体であり、
広い意味では技術と政策もその一部といえます。
一方、技術と政策が必要条件とする物的・人的資源は、
広義では自然・社会環境の一部といえます。
そこで、この〝(技術・政策を含む)経済・社会活動と
(物的・人的資源を含む)自然・社会環境の相互作用〟
というものを一言で簡単にまとめると、
〝文明活動と環境条件の相互作用〟であるといえます。
かつては〝技術は自然を対象とし、
政策は社会を対象とする〟という見方が
一般的だったと思われます。
(社会を環境すなわち技術の対象と見る、
社会環境や社会工学という言葉は、
19~20世紀以降のものだそうです。)
しかし、自然科学的技術の発達により、
自然は征服・支配の対象というよりも
保護・管理の対象とみられることが
多くなりました。
また、社会工学的技術の発達により、
人間や人々を動かす技術について、
その存在を認めたうえで正しく使うことが
求められるようになりました。
一方、政策の全地球化など広域化により、
国際政策は〝他国をどう動かすか〟よりも
〝人類全体がどう動くか〟の自己制御に
近づいています。
加えて、政策の民主化など分権化により、
国内政策も〝被治者をどう動かすか〟よりも
〝国民自身がどう動くか〟の自己制御に
近づいています。
そこで今では文明活動は、
技術による環境制御(操作)と
政策による自己制御(適応)からなる、
文明と環境の相互作用であるといえます。