2 文明の構造(システム)
技術と政策は左右対称に各4本の経路で社会を助け、
これを〝文明の構造〟ということができます。
技術も政策も、広くは社会活動の一部といえますし、
その実現には物的または人的資源も必要だからです。
①社会を助ける直接ルート:
新分野を拓き、多くの他技術を高めて
社会を変革する、農耕、動力、電算などの画期技術。
社会に直接働いて生産投資・互助配分を最適化する、
産業振興、社会保障などの経済・社会政策。
②必要条件を確保する間接ルート:
技術を利用するため物的資源に具現化する、
土建、電機、光電などの実現技術。
政策実現のための人的資源(国民の健康や教育)を得る、
保健、教育などの人的資源政策。
③自身を助ける自助ルート:
技術自体の生産性を高める研究・開発技術。
政策自体の健全性を保つ行政管理政策。
④相方を助ける互助ルート:
政策の生産性を高める社会工学的技術。
技術の健全性を保つ技術的政策。
※互助ルートは相方のどのルートを助けるかで
さらに3つずつに分けられます。
1⃣ 共同支援ルート:
(相方が社会に働きかけるとき、自分も入って助ける)
経済・社会政策を助ける組織・会計技術。
画期技術を助ける社会工学的政策。
2⃣ 部分支援ルート:
(相方が自力調達しきれない必要条件の確保を助ける)
人的資源政策を助ける公教育・公衆衛生技術。
実現技術を助ける社会基盤政策。
3⃣ 特注(特別注文)支援ルート:
(相方の権力性や公共性など、特殊性に応じて助ける)
行政管理政策を助ける企画支援技術。
研究・開発技術を助ける研究・開発政策。
(技術的政策の具体的分類は資源・環境政策や
都市整備・防災・防犯・国防政策となりますが、
それらの内容は必ず上記3つのどれかに当たります。)
『第三の波』『シンギュラリティは近い』
『サピエンス全史』など、技術社会論の名著にある
農業・工業・情報・AI技術という画期技術や、
人々を動かし政策を助ける社会工学的技術など
各種技術の意味が、この分類から説明できます。
国際総合政策SDGsの5要素5Psも、
この分類に実務的修正を加えたものといえます。
①環境の持続可能性を示す地球(Planet)は、
自然環境に関わる、技術的政策の要素です。
社会環境に関わる防犯や国防は、分かり易さや乱用防止、
合意形成のため、他政策に振り分けたと考えられます。
②経済の持続可能性を示す繁栄(Prosperity)は経済政策、
社会の持続可能性を示す人々(People)は
社会政策と人的資源政策の要素です。
両者は保健福祉のように関係が深いので、まとめています。
③政策の持続可能性を示す平和と協働
(Peace、Partnership)は行政管理政策に対応し、
国際化・全地球的統治や民主化・官民協働など
広域化と分権化の必要から、2つに分かれます。
〝文明の構造〟はこれ以外にも、
様々な技術社会論や内外政策の理解に役立ちます。