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61.後始末

フルールたちを帰す前、コレット様たちが王宮に戻った時には、

私とハルト様は残ってアルバン様に説明することになっていた。


だが、フルールの女神の加護が消えたことで、

私たちも報告するために王宮に戻らなければいけなくなった。


近くにいた近衛騎士をつかまえて、

王宮に戻る旨をアルバン様に連絡してもらってから馬車に乗る。


ローゼリアはヨゼフ様を待っていることもあって、休憩室に残っている。

私たちが王宮に戻る理由を近衛騎士に言うわけにもいかないので、

帰った理由はローゼリアから話してもらうことにした。



「大丈夫?顔色が悪い」


「大丈夫です。ただ、目の前で令嬢たちがあんなことになってしまって、

 驚いたと同時に、これからどうなるのか心配になってしまって」


「さっき、フェリシーに祈るように言っただろう。

 フルールから無数の手が伸びて…

 あの場にいた人間から美しさを奪おうとしているのが見えた。

 特にフェリシーから奪おうとしているように見えて、危ないと思った」


「フルールに奪われないように祈ったのですが、

 あの令嬢たちには効果がありませんでした……」


私が祈ったのは効かなかったのだろうか。

結局、あの令嬢たちは美しさを奪われてしまった。


「それは仕方ない。あの令嬢たちはフルールの支持者だ。

 フェリシーが守ろうとしても、フルールの支配下にいるのであれば効果がない。

 だが、フェリシーのおかげでテラスにいたものは無事だった。

 フェリシーがいなかったら、もっと被害が大きかったはずだよ。頑張ったな」


「そうですか……」


全員は助けられなかったけれど、テラスにいた人だけでも助けられた。

そのことにほっとしていたら、ハルト様に抱き寄せられる。


「あの令嬢たちはしばらくしたら元に戻ると思う。

 フェリシーが元に戻ったように、

 フルールの影響から離れれば少しずつ戻るはずだ」


「……良かった。元に戻るんですね」


「ただ、ミレーとフルールは元には戻らないかもしれない。

 それだけ強い力を使っていたんだと思う」


「強い力……ミレーは頬に大きな傷跡があったんです。

 それをフルールの力で綺麗に治していて……そのせいでしょうか」


「おそらく、その後も綺麗さを保つために、

 何度も力を使っていたんじゃないかな。

 反動というか、無理に治したことで老化も早まっていただろうから」


「フルールとミレーはどうなるんでしょうか」


「……わからない。父上と母上がどう判断するのか。

 悪意をもって加護の力を使ったわけじゃないし、

 令嬢たちに求められて使った結果だ。

 フルールは加護の力が消えたらどうなるのか知らなかったのだろうし」


神の加護を悪用することがあれば罰せられることもあるという。

フルールは加護の力を無理に押し付けていたわけではないし、

こんなことになるとは思わずに使っていたはずだ。


「ただ、もう二度社交界には出てこないだろう」


「私もそう思います。

 誰よりも美しいことが自慢だったのに、あんなことになってしまって。

 もう部屋にこもってしまうのではないでしょうか」


「そうなるとラポワリー家を継ぐ者がいなくなるな……」


「誰とも婚約していない状況ですし、難しくなりますよね」


侯爵から伯爵に爵位を下げられ、領地も半分になってしまった。

その上、家を継ぐはずのフルールが閉じこもるようなことがあれば。


「フェリシーに話が来なければいいのだが」


「私ですか?」


「公爵夫人が伯爵家の爵位をもつこともできなくはないからね。

 あの家がフェリシーにしてきたことを考えると受け入れたくはないが。

 フェリシーはどうしたい?」


「……私も受け入れたくはないです。

 跡継ぎから外された時、領主代理達が話しているのを聞いてしまって。

 私じゃなく、フルールに変わったことをとても喜んでいました。

 どうせ女が継いでも仕事できないんだから、せめて美しいほうがいいって」


「……ふざけているのか。

 フェリシーがどれだけ領主の仕事をしていたのかも知らないで」


「私とベンがお父様の代わりに仕事していたことは内緒になっていました。

 だから、領主代理達は私のことを何も知らなかったんです。

 それでも女だということだけで期待されないのだと知って、がっかりしました。

 だから、私が継ぐことになったら、同じように言われるのだと思うと……」


「わかった。

 無理に受け入れる必要はないよ。もし言われても断ればいい。

 フェリシーが継ぐこともできるというだけで、義務ではないから」


「はい」


フルールが継げなくなり、私も断った場合、

ラポワリー領地と爵位は王家に返上される可能性が高い。

だけど、そのほうがいいんじゃないかと思う。



馬車が王宮に着いたころ、もうあたりはすっかり暗くなっていた。

ハルト様が近衛騎士に伝言を頼むと、急いで謁見室へと走っていく。


これから陛下とコレット様に説明しなくてはいけない。

事故のことはコレット様が見ていたから説明はいらないけれど、

その後のことは想像していないと思う。


謁見室に入ると、陛下とコレット様が話しているところだった。


「ハルトとフェリシーまで戻って来たのか?」


「父上、フルールの女神の加護が消えました」


「は?……本当なのか?」


「はい」









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