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47.人工絹のドレス

夜会の後から学園ではアルバン様と踊ったフルールの話題で持ちきりだった。

シャルトット様が王妃席と並んで座っていたことは、

夫人たちには意味が通じたようだけど、

まだ社交界に慣れていない令嬢たちには効果が薄かったようだ。


「お二人はあれだけお似合いなのだもの。考え直した方がいいと思うのよね」

「そうよね。陛下と王妃様が選んだ婚約者だなんて古臭い考えだわ。

 王太子様のことを考えたらフルール様に変えて欲しいわよね」


と、なぜかアルバン様がフルールを婚約者にしたがっていると噂されていた。

しかもシャルロット様は陛下と王妃が決めた婚約者のように思われている。

ファーストダンスで仲睦まじく二曲踊ったことはなかったことにされていた。


これもそのほうが都合がいいから、

本当ではないことが信じられているのだろうか。


「ため息をついて、どうしたの?」


「あぁ、ローゼリア。フルールのことが噂になっていて。

 アルバン様とシャルロット様のことが心配なの」


「あぁ、あれね。あの時、お父様が怒りだして大変だったのよ」


「え?」


そういえば、ローゼリアも夜会デビューだったはずなのに、会わなかった。

私とハルト様が途中で退席したというのもあるけれど、あの時どうしていたのだろう。


「ほら、夜会デビューの時って家族と踊るでしょう?

 お父様と踊るのか、お兄様と踊るのかで二人が揉めてしまって」


「あら。それは大変だったのね?」


ローゼリアには公爵家を継ぐ予定の三歳年上の兄がいる。

ちょうどアルバン様と同じ年で、昨年学園を卒業している。

夜会で会えたら挨拶できると思っていたが、結局会えないままだった。


「揉めているうちにエミールが出てきて、

 アルバンがフルールと踊り出したでしょう?

 何を考えているんだってお父様が怒り出しちゃって、

 側妃のところに怒鳴り込みに行って」


「え?エミール王子ではなく、側妃様に?」


「ええ、フルールは側妃の相談役になっているってお父様が。

 だから、息子を使って何を企んでいるんだって。

 結局は側妃は何も考えていなかったようで、いつものように言い訳していたわ。

 そんなこと言われても私にはわからないわぁてうるうる泣いて。

 ホント、よくあんなので側妃が務まっていると思うわ」


「あぁ、そういう感じなのね」


実際には側妃様は仕事を放棄しているらしいが、

ローゼリアはそこまでは知らないらしい。

おそらくローゼリアの父のジョフレ公爵はよくわかっているんだろう。

それにしても、あれだけアルバン様には拒否されたというのに、

フルールはまだ王太子妃になろうとしているのだろうか。


フルールがアルバン様のことを話しているわけではないが、

カフェテリアでエミール王子と取り巻きの令嬢たちを連れて、

次の公式行事でどんなドレスを着るのかと盛り上がっているらしい。

また何か企んでいるのでなければいいのだが。


「それにしても、フルールのドレス。見た?」


「ええ、見たわ。緑色のドレス」


「色も問題だけど、あれ人工絹だったわ」


「人工絹って何?」


「隣国で開発された、絹みたいな布を人工絹って言うの。

 染めやすいから発色は綺麗なんだけど、安いのよね。

 だから、今までうちの国では流行らなかったんだけど、

 夜会でフルールが着ていたでしょう?

 ああいうの影響されて着る子が増えるかもしれないわ」


たしかにあのドレスの発色は綺麗だった。

シャルロット様が着ていた緑のドレスよりもあざやかに見えた。

ドレスは絹で作るのが当たり前だと思っていたけれど、人工絹なんてものがあったとは。

安いというのなら下位貴族でも買いやすいだろうし、人気がでるかもしれない。


「ドレスは高級だもの。お茶会の度に新しくするのも大変だし、

 フルールを支持している令嬢や夫人の間で流行るかもしれないわね。

 隣国からの輸入なのかしら」


「それがね、どうやら側妃の宮に出入りしている商会らしいわ。

 フルールに無償提供して、他の令嬢たちに売ろうとしているんでしょう」


「そういうつながりがあるの……」


「私は安っぽくて嫌だけど。だって、人工絹ってわかるのよ?

 安い素材で作りましたってすぐにわかるじゃない。

 お父様もそういうドレスは買ってくれないと思うわ」


「そうね、お義父様やハルト様も選ばない気がするわ」


ドレスを仕立てていた時の二人を思い出すと、

わざわざ人工絹を選ぶことは無さそうな気がする。

どれだけ高くてもいいから良いものをと言っていた。

贈ってもらう立場の私としては人工絹でも問題ないのだけど。



それから二週間ほどして、ようやく王宮が落ち着いたということで、

シャルロット様からお茶会の招待状が届けられた。


「兄上も一緒にお茶したかったようだけど、

 とりあえず今回は令嬢だけでということだった。

 王太子妃の相談役を決めるためのお茶会のようで、

 他にも令嬢を何人か呼んでいるそうだ。

 できればフェリシーに王太子妃の相談役についてほしいと言っていた」


「私がですか?」


「ああ、信頼できる令嬢は少ないからね。兄上の薦めもあるようだ。

 俺もフェリシーなら大丈夫だと思うし」


「お役に立てればいいのですが」


王太子妃の相談役となれば、ゆくゆくは王妃の相談役になる。

夫人代表のような立場になってしまうのだが、私につとまるのだろうか。

コレット様の相談役はローゼリアの母、つまりは王妃の義姉だと聞いている。

アルヴィエ公爵夫人になる予定の私に話が来るのも自然なことかもしれないけれど。




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