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スノードロップ  作者: 4コマ
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 これが全部夢だったらどれだけよかったと、考えることはしばしあることだ。

 少し前まで、非現実的な体験をしてしまった。

 もちろんこれもどうせ俺の妄想した夢にすぎないだろう。

 目を開ければ、いつもの退屈した教室にいて、椅子に座っているに違いない。

 

「お、やっと起きたね」


 が、現実はそんなに優しくはないみたいだ。

 一瞬だけ頭の中で否定してみたが、腕の痛みが、自分を現実へと教えてくる。

 それに、近くには見知らぬ子供もいる。

 てか、なんでここに子供がいるんだ? それは俺もか。 


「まだ状況が把握できてないみたいだね」

「あぁ、全然まったくもって理解できてないところだよ」

「ま、それが君たちの中での正常の判断なのかな?」

「知るか。 てかお前は誰なんだ? そう言うってことは、ここの人なんだろ?」

「ご名答だね。 僕はこの世界の人間だよ。 と言っても、君たちの世界の基準ではないけど」

「んで、ここはなんなんだ? てっきり王宮とか城とかに飛ばされたのかと思っていたんだが?」

「さぁね、気づいた時には君はこの世界の洞窟に転生していた」


 目の前の子供は俺の質問に一言一句答えてくれた。

 話を聴きながら、周りの観察をしてみるが特に目立ったものはない。 と言うか、目立つものしかなくて途中から考えるのを諦めている。

 

「んで、なんでお前みたいな子供がここに?」

「子供はそっちもでしょうが。 あと、僕は君が思っているほど子供でもないんだけどね」

「いやどう見ても子供じゃん」

「失礼だね! こう見えても僕は128歳なんだよ」

「……おかしなことを言う子だな」

「もー、子供じゃないって言ってるじゃんヨマ君!」

「いやいや見えねーよ! どう見ても128には見えないよ!?」

「いやいやどう見ても見えるじゃん!! 見てよこの僕の顔のしわを!!」

「いや、しわなくね?」

「特にこのシミとか!!」

「いやそれホクロ!」


 目の前の子供が、自分が思っているよりも年を取ってるとか信じれないんだけど?

 と思っていたが、異世界に転生する時点で何もかもが、俺たちの常識から外れているんだった。

 

「んで? 本当に128歳なのか? ここに来てから何を信じれば良いのか分からんのだが?」

「年齢はほんとだよ。 そして、何を信じれば良いかわかんなかったら、僕を信じれば良いよ」

「信じて良いのか? 少し胡散臭いんだけど」

「それに、こんな世界に来たからには少しばかり楽しんでくれなきゃ」


 そう言うと、目の前の子供からいきなり煙が出始める。

 

「おぅ!? なんだなんだ? 煙いんですけど」


 霧全体が少年を包み切ったとき、包まれていた少年がシルエット上になる。 

 そこから、みるみると大きくなり、俺よりも背が大きくなった。

 

「っと……」

「なんか姿が変わってるんですけどー」


 目の前にいたはずの少年は、誰が見てもイケメンと言ってしまうかもしれない姿になった。

 身長は175㎝の女性の理想の大きさである。

 ますます128歳が嘘に聞こえてきたよ。


「それで、ヨマ君」

「なんす……か? お前なんでその名前を知っている?」

「あら? まだ聞いてなかったんだった。 初めまして健二君」

「ますます気になってくるな。 おれ自己紹介なんてしたか?」

「したさ。 過去に何回もね。 ちなみに僕の名前はニゲラ・エーデンだよ。 気安くニゲラでもエデンとでも言ってくださいな」

「んじゃニゲラで」


 ニコニコと笑顔で自己紹介をしたニゲラ。

 そんな笑顔に引きつられ、とっさに笑ってしまう。

 どんなに、緊急的な時代でも、ニゲラみたいなやつがいると気が抜けてくるみたいなものなのかな?

 それに、接しやすいし。


「と、雑談はここまでで、今から簡単にって言うか、まあまあ細かくこの世界について説明してあげないとね」

「お、それは助かる」


 そう言うと、ニゲラはこの世界のことについて話してくれた。


「まず、基本知識として、この世界は君たちがいた世界とは全くの違う世界だ。 様々な人種、種族が多種多様の力を使って生きる世界なんだ。 君たちの世界だとファンタジーっていうのかな」

「てことは、俺が今想像しているファンタジー世界でオッケイってことか?」

「そーだね。 この世界の力の源は魔力で出来ているんだ。 もちろん、魔力を使えば想像通りに魔法を

使うことができるんだ」


 魔法と聞くと、マジで二次元の世界みたいだな。

 

「ちなみに、この世界での転生者ってものすごく特別な存在なんだよね。 例えば特別な力があったりとかね」

「おいおいまじかよ! てことはチート能力で無双伝説できるんじゃ!!!」


 異世界転生で無双とか、男のあこがれじゃん!! 特に何とは言わないけど、どっかのスライムみたいに何でもありになるんじゃないか!!


「ま、ヨマ君にそんな力はないけどね」とはっきり言われるのであった。 心になんとも言えない感情があふれてくるのを感じながら、ニゲラの話の続きを聞く。


「まあまあ、そんなに落ち込むんじゃないよ。 ヨマ君の力は弱いわけでもなければ強いわけでもないってことだよ」

「それって慰めてる」

「少なくとも、使いようには君の想像している物に化けると思うよ」

「はぁ……。 てか、その言い方だと俺にある特別な力を知っているみたいな口ぶりだが?」


「まぁ知っていますからね! これでも長く生きているので」えへんと、自慢げにそして誇り気に喋っるニゲラ。それに対し、「はいはいそうですね」と適当に合図地を放つ。

 

「ま、今までの話は今から話すことの前菜なんだけどね」

「おいまて、その前に俺の特別な力を教え――」


 盛大に俺の言葉を遮りながら「君には僕の手伝いをして欲しいんだ!!」と俺の手を掴んでいってきた。

 その顔は、ふざけているように見えて、少しだけ真面目な顔に見えた。 瞬間的に「何を?」といつもの癖が出てしまった。 待ってましたと言わんばかりに、ニコニコで俺の顔を見てきた。 

 あ、これ何かとんでもない事を言われる気がするぞ。

 そして、その違和感は見事に的中することになる。


「みんなを救う手助けをしてくれないかな」


 その言葉の意味が俺にはあまり理解できなかった。 こうゆうのって、世界を救ってほしいとか、魔王を倒してくれとか、自分を殺してくれとかの流れかと思ったが、思ってたことの斜め上をいく頼み事で(三浦君)びっくりだよ。


「どゆこと?」

「ごめんごめん、言う方を間違えちゃった。 僕と親友になってくれないかな」

「まてまて、もっとわからん。 いきなり、手助けしろとか親友になれとかどっちなんだよ」

「うーん……どっちもかな」

「親友になるのは別にいいけど……、最初のはマジでわからん」

「ま、分からないなら分からないでもいいよ」


 てか、親友になってほしいって、まず俺らであったばかりじゃね? 

 普通友達からとかじゃない?

 とか、思っていると、突然地面が揺れ始めた。


「おお! 地震だ」

「いや、これは地震なんかじゃないよ。 攻撃だよ」


 そうニゲラが言うと、向こう側の壁が勢いよく破壊された。

 破壊された石やら岩などがこちら側に飛んでくるのを間一髪のところで避ける。

 そして、破壊された方に視線を飛ばすと、そこには全長が6メートルもありそうな人型をした何かがこちらを見つめていた。


「これやばくね。 明らかに敵的な雰囲気出してるけど」

「敵だしね。 それにしても、しつこいったらありゃしない」

「なに顔見知り?」

「あんな顔立ちした知人とは会ってないんだけどね」


 視線の先にいるそいつは、しばらくこちらを見たのち、腕をこちらに指し出したのち、どでかい光線を放ってきた。

 気づいた時には、光線は消えていた。 その代わりに、今度は目の前に魔法陣が出ていた。


「いきなり打つなんてひどいもんだね」魔法陣の周りを見ると、ニゲラがニコニコで手を前に出していた。 もちろんその先には魔法陣があり、さっきの光線の攻撃を防いでくれたのだと分かった。

 もしニゲラが魔法陣を展開していなかったら死んでいた。


「なんだよあいつ……!!」

「ま、初めてだとそうなるよね。 でも、この光景はいずれ君が慣れてしまう景色でもあるんだよ。 元の世界の君のようにね」

「おいおい何でも知ってんじゃねえか」

「なんでもは知らないよ、知ってることしか知らないよ」


 さっきのセリフだと、確実に元の世界での俺の立ち位置を知っているみたいだし、これからどうなるのかも、ニゲラにとってはお見通しなのだろう。

 それが現実になるように、魔の前の化け物は次の瞬間俺の目の前からチリとなって消えていく。

 今の俺には何が起きているのか全く分からない。 

 ただ言えるのは、俺は生き残ったってことだけだった。


「ま、こんなものかな? やっていけそうかいヨマ君や」

「気がめいりそうだ」

「それは良いことだね」

「耳ついてますかー?」


 そうだ、これからはあんな化け物を正面から殺していかなくてはいけないのだ。

 正直いって自信がない。 何も知らなければ何もできない。

 こっちのルール一つも分からない。


「それじゃあ、始めますか」

「何を?」

「そんなの修業に決まっているじゃん!! 君たちの世界にもあるだろ?」  

「いやあるにはあるけども……」


 てな感じで、俺の言葉は当然のように無視され、流れに身を流す形で修業を開始するのだった。

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