夢の中の少女
真っ白な空間に、私は立っていた。
前も
後ろも
横も
上も
下も
全てが白
そこにただ一人。
(ここは…どこだろう…?
私は、何でこんなところに?)
あまりの突飛な出来事に思考が上手く回らず、ただ呆然と立ち尽くすしか出来ない。
(とにかく、ここがどこなのか確かめないと!もしかしたら、周りに人がいるかもしれないし…)
暫く立ち尽くしていたが、少しずつ冷静になり、先程よりいくらかマシになった思考で人を探す事に決めた。
その場で首だけを動かし、辺りをキョロキョロと見てみたが、相変わらず真っ白で何も無い。
仕方なく、少し歩いてみる事にした。
どれ程歩いただろう。
ほんの少しの時間かもしれないが、それがとてつもなく長く感じられる程、ここには何もなかった。
いくら歩いてもそこには、ただ真っ白な空間が広がっているだけだった。
当然誰かを見つけられるわけもなく、私の馬鹿な頭で考えうる最後の手段を取る事にする。
その場で大きく息を吸い込み、大声で叫ぶ。
「誰かー!誰かいませんかー!」
叫んだ私の声は、真っ白な空間の中で反響し、よく響き渡った。
本当にこの異空間は何で出来ているんだろうか。
そんな呑気な事を考えていると、不意に後ろから声をかけられた。
「…誰?」
驚いて振り返ると、そこには少女が立っていた。
年は多分、私と同じくらいだろう。
だが、年齢よりも私は、少女のその顔に驚きを隠せず、魚のように口をパクパクする事しかできない。
「何をそんなに驚いているの?」
驚いて言葉も出ない私とは反対に、少女は冷静で静かな声で問いかけてくる。
その声にも、やはり聞き覚えがある。
あまりの驚きに上手く声が出なかったが、やっとの思いで、私も声を絞り出した。
「わ…私……?」
そう。
目の前の少女は、顔も声も私にそっくりだった。
そっくりというより、私がそのまま私の前に現れたような感じだ。
この空間も含め、何もかもが突飛すぎて私の思考はショートしかけている。
そんな私を気にもせず、問いかけになったかもわからない私の声に彼女は含んだ笑顔で答える。
「そうだよ?由衣 命さん。」
少女の口から出てきた名前に、私は再び驚き固まってしまった。
なぜ、目の前の少女が私の名前を知っているのだろう。
本当に頭がパンクしてしまいそうだ。
「…何で私があなたの名前を知ってるのか、気になるんでしょ?」
最早声も出ない私に、少女は少しずつ歩み寄り、言葉を続ける。
「だって…私はあなたの……」
少女の、私にそっくりな顔がグッと近付いた所で、私の意識は暗闇に沈んでいった。