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自分の役目は

「いきなり現れて意味不明な事を言わないで貰えるかな?」


自分の目の前で尻尾をフリフリしつつ、拳を自身の顔の前で握り締め、可愛らしくガッツポーズを決める獣人の少女に冷たく突き放すように言葉をぶつける先生と呼ばれた男。


それもその筈、自分は今まで……【転移】で辿り着いた先で戦いしか行って来なかった。

若い頃の始めての転移から今までそれしか行っておらず、どう考えても自分の能力では先生など勤まる訳がない。


あまりにも言葉足らずだが、そう考えての言葉だ。



「そんな事ないですよ! 貴方は先生!! いつかきっと現れるって私を育ててくれた人が言っていました!! 貴方は光の中から突如として現れた!! 間違いないです!!」



獣人の少女は鼻息荒く、誰かから予言の様な事を聞いている事、転移を完了した一部始終を見ていた事、だからやっぱり先生で間違いないと考えていた事を力説する。常に言葉に勢いと力強さが満ちていたが、先生と呼ばれた男には響かない。


「……すまない、キツイ言い方をしたけども……やはりそれは多分私じゃないと思うよ。」


獣人の少女の話を聞きながら、改めて確信する。

やはりそれは"自分"ではない。世界的な予言、個人の勝手な戯れ言……特に誰かが現れる系の話は総じて"自分"には該当しない。


自分以外の特別な"誰か"の事のはずだ。

そして自分は、その"誰か"を助け……また次の【異世界】に移る。いつもそれを繰り返し、いつもそれが自分の役目の筈だった。


「すまないがもう行くよ、安心してほしい……君が探している人はきっとすぐに現れると思うよ。」



「あ、ちょっと……ッ」



少女が止める暇もなく、先生と呼ばれた男は丘から飛び降り、物凄い速度で走り出す。

男がなにかしらの特殊な能力を持つことは無かったが、今まで世界を移動し続ける度に、その世界では当たり前で、必須の能力は勝手に身に付けることが出来た。


世界によっては、それをレベルやスキル、ステータスとゲーム的に表現していた、男が元にいた世界でも練度が上がる、経験を積む、技術を学ぶ、知識を高めるなど、職業や役職によって色々な言い方があった。


だがやはりレベル、スキル、ステータスなどという言い方が分かりやすいだろう。レベルが上がれば強くなる、レベルが上がればスキルやステータスが強化される。そう言うものだった。


戦い続けた男のステータスはそれなりに高い、何度も恐ろしくも危険な世界を練り歩いた男はそれだけ経験を積み、生き残ってきた訳なのだから。


「おわ~ッ…なんて速さ! 瞬間移動じゃないけどあれなら一流の冒険者でもそうそういない筈ッ!! まってくださいよぉ~!!」



獣人少女はよたよたと、おそらくこの世界の少女の標準的身体能力で、先生と呼んだ男の後を追いかけるのだった。

どれくらいかかるかな?

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