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輝く笑顔に

目の前に迫る赤黒い短剣、先生は脚を大きく上げて振り抜くような仕草で短剣を全て打ち払う。続いて来るのは上からの一撃……ではなく横からの鋭い一閃だった。


「……なんだとッ!?」


「いきなりなんのつもりだ、ブラッド……」


横からの鋭い一閃、先日上からの攻撃をウサギに弾かれたので少し手を変えたのだろう、しかしブラッドの想像よりも先生との差は明らかだ。

目潰し用の弾ける短剣は一掃され、渾身の一撃も呆気なく槍を掴まれ防がれる。何度距離を取ろうと槍を引いても先生の手から槍は離れようとしない。


「ちょッ! ちょっとちょっとブラッド!? なんで先生に襲いかかってくるのよっ!?」


「そーだよ、ビックリしたじゃん!」


「実戦訓練か!? そうだよなブラッド! よぉーっし! 俺も仲間に入れてくれ!!」


先生の背後では生徒達がわいわいとブラッドを咎めたり一緒に戦おうとしていたりするが、ブラッドはそれを見た後に戦闘体勢を解きそっぽを向いてしまう。


「ふん、別に……俺に教える程の腕があるか確認しただけだ……」


「そうか……で、どうだった?」


「………まぁ、合格だ」


そっぽを向いたブラッドと先生の会話は短いものだったが、なんだかそれも先生にとっては懐かしいものに感じてしまい、そっか…と笑いながら答えるのだった。


「まぁ、合格だ……じゃないでしょっ! 今日はみんなで先生にお礼を言いに行くって約束だったでしょ?」


先生の背後からのしのしと足音を立てながら現れるエリーはブラッドの物真似をしながら約束を破った事について詰め寄る。

しかし、それに対してブラッドを知らぬ存ぜぬの態度を決め込み腕を組みながらそっぽを向きっぱなしだ。


「それはお前達が勝手に決めた事だろ? 俺には関係ない」


「何が関係ないよ! そもそも合格だ、とか言ってる割にはなにぃっ!? とか言ってたでしょーに!!」


「確かに、ブラッド本気で先生を倒そうとしてたんだぜきっと!」


「なんかカッコ悪いよブラッド~……」


「う、うるさい! 良いだろ別に……!」


クールな態度でそっぽを向いていたブラッドだったが、戦闘時のリアクションを突っ込まれてしまえば顔を真っ赤にしながらエリーに反論にならない反論をする。ユウとティニーもエリーに乗じてブラッドをからかい始めるのを見て、4人は仲が良いのだと確信する先生、4人の少年少女がじゃれあっているのを眺めていると少しだけ、今までで歩いてきた【異世界】での疲れを忘れた気がした。


「ん…?」


一通りじゃれ合いを眺めていると、4人が視線を合わせて一斉に先生に向き直る。何かするつもりかと眺め続けると、一人は頭で手を組み白い歯を見せて笑い、一人は腕を組みながらそっぽを向き、一人は両腕をいっぱいに広げて感情を全身で表し、一人は真面目に深々と頭を下げる。


『先生、助けてくれてありがとうございました!』


4人が同時に、それぞれの声の調子は違うが先生にお礼を言う。それを男は何事かと目を丸くするが、それが昨日のウサギに襲われていた4人を助けた件のお礼だと気付くのに時間はかからなかった。

お礼を言われるのも久し振りな気がする、初めて【異世界転移】を経験した日も、人を助け、当時の仲間に出会ったのを思い出した。もう二度と出会えない過去の仲間たち、忘れていたそんな彼らを思い出すほど、4人の表情は輝いていた。


「あぁ、どういたしまして……これからよろしくな」


先生が笑顔でそう答えた時にはもう夕日が空を赤く染めており、本の中と外では時間の流れが同じかはわからないが、そろそろ帰ろうか…誰が言うでもなく、5人は本の世界を後にするのだった。

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